【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十五幕 29 『大地の傷跡』

 

 ロランさんに案内され、大地に刻まれた傷跡のような巨大な谷の底へ降りていく私達一行。

 

 上から見ていた時は断崖絶壁で下に降りられる場所なんて無さそうに見えたのだけど……ロランさんが言った通り、まるで階段のようになっている場所があった。

 しかし道は細く、せいぜいが二人並んで何とか通れるくらいだ。

 間違って踏み外してしまえば奈落の底へ真っ逆さまである。

 

 

 

「……ロランたちは、300年前もここを通ったの?」

 

 シェラさんがそんな質問をする。

 

 そうか、彼女は黒神教に攫われたから……テオフィールのパーティーがどうやって『黒き神の神殿』までやって来たのか分からないんだっけ。

 

 

「そうだ。……あの時。お前が攫われた時……俺達は必死に捜索をしたんだがな、とんと手がかりが掴めなくて焦っていたんだ。当然、俺達にはお前を見捨てるなんて選択肢は無かったんだが、途方に暮れたのも事実ではあった」

 

 

 そして、ロランさんが300年前のテオフィール達の足跡を語り始める。

 

 魔王討伐を目指していた彼らは、帝都パニシオンを目指してグラナの国境を乗り越えたのだという。

 

 

「あの険しい山岳地帯を抜けて行った……って事ですよね?」

 

 以前から彼らがどうやって黒き神の神殿まで辿り着いたのか気になっていた私は、ロランさんに質問する。

 

 

 今も昔も、カルヴァードとグラナを隔てる急峻なアールヴ山脈は、殆ど魔境とも言える危険地帯だ。

 

 だが人が往来できない訳では無い。

 困難な行程ではあるが、獣道程度はあるとの事。

 あるいは、グラナ軍が進行してきたときのように魔物の力を借りるか……

 聖域のリュートが言うには、道案内をしてくれるキヒタ族という少数民族もいるらしい。

 

 

「いえ、私達はアールヴ山脈は通ってません」

 

「え!?じゃあ、どうやって……」

 

「リシィの伝手で、東大陸の強力な力を持つ大型飛竜(ワイバーン)を手に入れて、一気に東大陸に向かったのです」

 

 大型飛竜(ワイバーン)……カルヴァードでは殆ど見ることのない、殆ど上位竜種とも言える強力な魔物だ。

 飛竜よりも気性が荒く使役するのは非常に難しいが、複数人を載せて一日で千里を飛ぶと言われている。

 

 

 しかし、そんな魔物を手配できるシェラさんの伝手とは……

 

 

「……ヴィーの事ですよ。その時は魔族になってしまってるなんて知らなかったので……ようするに、罠だったんです」

 

 

 あ〜……なるほど。

 

 ヴィリティニーアさんは、シェラさんに固執していたフシがあるからねぇ……

 それでグラナに呼び戻して、自分と同じ魔族にしたかった……と言う事か。

 

 

「とにかく、リシィ(お前)の行方を探すために手がかりを探していたんだが、俺たちの前に怪しげなヤツが現れて言いやがったんだ……『お前の仲間は黒き神の神殿に囚われてる』……ってな」

 

「それは……」

 

 めちゃくちゃ怪しいけど、その情報は正しかったんだよね……

 

 

「何者だったんです?」

 

「フードで顔を隠していたので正体は分からなかったのですが……あれは、おそらく『軍師』だったんじゃないかと。俺が魔族となったあと……それとなく聞いてみた時には、はぐらかされましたけど」

 

 

 軍師……やはり、全ての出来事の裏で暗躍しているのは彼なのか?

 

 今回の私達にそうするように、敢えて敵対者を神殿に呼び込む……その意図は謎だけど。

 

 

「とにかく、他に情報も無かったので、ソイツが示した場所に向かってみれば……」

 

「……まさに私が生贄にされる寸前だった、と」

 

 

 そこから先は夢で見た通りか。

 

 

 これから向かう『黒き神の神殿』には、魔王の他にも『軍師』が待ち構えているのだろうか?

 

 おそらく、そうだろう。

 

 

 だけど……これまでの行動からすれば、魔王との直接対決の場面に現れるのだろうか?

 

 彼の深謀遠慮は何を目的としているのか?

 

 

 

 もうかなり下ってきた。

 奈落の底に思えた谷底も、直ぐそこに見えてきている。

 『黒き神の神殿』も、もう目前に迫っているだろう。

 

 

 そこに到達したとき、果たして全ての謎が解けるのか?

 

 

 今はただそれを信じて……前に進むだけだった。

 

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