【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十五幕 31 『大魔王』

 

 私達は黒き神の神殿に足を踏み入れた。

 

 外から見たときは、中は暗闇だと思っていたが……いや、確かにそこは闇が支配している。

 しかし、不思議と内部の様子は見て取ることが出来た。

 闇の光……そんなものがあるのか分からないが、そうとしか表現出来ない。

 

 

 そして、禍々しい邪神の波動がより強く感じられる。

 肌が粟立つような不快感も……

 

 

 神殿の内部は、かつて夢で見た光景と同じだ。

 

 広大な空間。

 奥の方は階段状になっており祭壇らしきものが設けられている。

 そして、悪魔のような巨大な邪神像。

 『闇の光』は、その像から放たれているようだった。

 

 

 不意に、声が響き渡る。

 低く威厳あふれる男の声だ。

 

 

「よく来たな、カルヴァードの勇者たちよ。そしてリシェラネイア、再び私の前に立つか」

 

 長身に鍛え上げられた肉体を持つ壮年の男性。

 白銀の短髪に顎髭を蓄えた精悍な顔つきを彩る黄金の瞳は、魔族である証だろう。

 

 いつの間にか邪神像の前に現れたその男は、夢でも見た時と同じ姿の魔王だった。

 

 

「お父様……」

 

「あなたが、魔王……ファーガス三世?」

 

 夢で見た姿と同じであるし、何よりシェラさんが『お父様』と言ってる。

 そして、ただ立ってるだけでもヒシヒシと感じられる強大な力のプレッシャー。

 改めて確認するまでもないけど……私はそう問いかけた。

 

 

「いかにも。そして……我こそ『黒き神』を宿し、全人類を変革させ導く者なるぞ。我は既に人の身を遥かに超越し、魔族をも超える存在となったのだ!!」

 

「まさか……もう邪神をその身に降ろしたのか!?」

 

 魔王の言葉に、テオが驚きの声を上げる。

 確かに、『黒き神』を宿し……と言ったね……

 

 果たして、邪神を人間の身に降ろすなんて事が出来るのか……?

 

 

「その通りだ。もはやお前達ごときでは我を止めることはできぬ。さぁ、大人しく我が軍門に下ると良い。……なに、悪いようにはせぬ。お前たちほどの力を持つ者であれば優れた魔族となろう。……新たな幹部として迎えてやっても良い」

 

「お断りだね」

 

 魔王の誘いの言葉を、私は即座に一蹴する。

 

 まあ、ラスボスが勧誘してくるのは格式美かもしれない。

 

 

 

「そうか……ならば仕方ない。黒き神に仇なす者共よ。その身を供物として我に捧げよ!!」

 

 

 その瞬間……!!

 

 邪神のプレッシャーが爆発的に増大し、衝撃波となって押し寄せる!!

 

 

 それだけではない……

 

 何と、魔王の身体が大きく変化を始めるではないか!?

 

 

『ウグォーーーッッ!!!』

 

 獣のような咆哮を上げ、纏った衣服を破りながら肥大化する!!

 

 肌は漆黒に染まり、その相貌は狼のような肉食獣のようになる。

 こめかみの辺りから二本の長い角が……背中から蝙蝠のような翼が生える。

 そして、爬虫類の様に鱗に覆われた太い尻尾まで……

 

 

 瞬く間に人間を捨て去り、その姿はまるで……

 

 

「悪魔……」

 

 誰かが呆然と呟きを漏らす。

 

 

 確かに、それは悪魔そのもの……祭壇の奥に立つ邪神像とそっくりの禍々しい姿だった。

 

 

 

『ふしゅーーぅ…………どうだ?これぞ人の進化の到達点。矮小な人間ごとき、我の前では塵芥に等しい』

 

「そんな醜い姿が人類の到達点?冗談じゃない!!もう二度と可哀想な異界の魂がこの世界に迷い込まないよう……今ここであなたを倒す!!さぁ、みんな行くよ!!」

 

「「「応!!!」」」

 

 

 それが戦いの合図となった。

 

 ただでさえ強大な力を持つ魔王が、邪神の力を得て……その強さは想像もつかない。

 魔王を超えた大魔王とでも呼ぶべき存在だろう。

 

 

 だけど、この戦いには世界の命運がかかっている。

 

 負けるわけにはいかないよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ロラン ーーーー

 

 

 カティア様の号令のもと、遂に魔王との決戦が始まる。

 

 300年前……テオフィール様やリディア、そしてリシィとともに戦い、大きな犠牲を払いながらも……残念ながら完全に倒すには至らなかった。

 

 今回、魔王はあの時よりも更に強大な力を身に着け、再び俺の前に立ちはだかる。

 

 だが、こっちもあの時以上の力を持つメンバーだ。

 今度こそきっちり引導を渡してやる……!

 

 

 

 しかし……

 

 

(リシィ……魔王だけじゃなく周囲の警戒も怠るなよ)

 

 俺は小声で、リシィに警戒を促す。

 

 

(周囲……?)

 

(『軍師』のヤツが居ねえ。何か仕掛けてくるかもしれん)

 

(……確かに。分かったわ)

 

 

 俺は今まで黒神教に居たから分かるが……300年前も、今も、裏で糸を操っているのはヤツだ。

 もしかしたら、魔王ですらヤツの手駒に過ぎないのかもしれん。

 

 

 目の前の敵と全力で戦いながら、周囲にも目を配らなければ。

 

 そして、何かを仕掛けてくるのなら、その相手はおそらく……

 

 

 

 もはや仕える国も失った俺だが……テオフィール様とリディアの命は確かに繋がっている。

 

 

 もう二度と……失ってなるものか。

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