【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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サマーバケーション(4)

 

 私は今、美しい水中の光景に目もくれず全力で泳いでいる。

 息継ぎのタイミングでちらっと横を見れば、テオがほぼ同じスピードで泳いでいるのが目に入った。

 

 最初はテオと勝負するつもりだったのが、ルシェーラを皮切りに次々と参加者が増えて、総勢9名による水泳レースが開催されることになったんだ。

 みんな自信ありそうだったので、かなりのデッドヒートが繰り広げられてるのではないだろうか?

 

 

 ゴールは浜辺から遠くに見えていた特徴的な岩場で、目算では500メートルほど。

 遠泳と言うほどではないけど、かなりの距離がある。

 【俺】の感覚で言えば全力で泳ぎ続けられる距離ではないのだけど、この世界での身体能力は前世に比べて非常に優れているので、このまま泳ぎきれるはずだ。

 

 

 ペースが安定してくると、水中の光景にも目を向ける余裕が出てきた。

 

(あ……大きなお魚さん発見!)

 

 まるで私を先導するかのように先を泳ぐのは、1メートルは優に超えそうな魚。

 この辺は、身長がそれほど高くない私でもなんとか海底に足がつくくらいに浅い。

 そんなところにも結構大きな魚が来るものなんだね。

 

 他にもカラフルな熱帯魚が群れをなして泳いでいたり、海底を歩く蟹や海老なんかも見えた。

 ……夕ご飯用に確保したいな。

 

 

 そんな風に、全力ながらも楽しんで泳いでいると、やがて海底の景色が変化してきた。

 浜辺からずっと続いていた白い砂地の中に、ゴツゴツとした岩肌が混じり始める。

 前を見ればゴールの岩門がすっかり大きく見えていた。

 

 

(よし、ラストスパートだ!)

 

 これまでも全力で泳いでいたけど、私は力を振り絞って更にギアを上げラストスパートの体勢に入る。

 隣を泳いでいるテオの方からも、激しい水飛沫が上がったのが見えた。

 

(テオ、負けないよ!)

 

 

 海底は岩場がメインとなってきてるけど、比較的平坦な地形だ。

 前方の岩場……というか、小島の上陸ポイントを見定めながら猛スピードで接近していく。

 

 

 あと50メートル……

 30……

 20……

 10……

 

 そして……!

 

 

 

「ゴール!!」

 

 私は小島に上陸を果たした。

 隣にはテオの姿も。

 

「同着だったかな……?」

 

「そうだな。引き分けだ」

 

 お互いに顔を見合わせて微笑み合う。

 少し疲れたけど、ここまで泳ぎきった達成感が心地よい。

 浜辺にいたときよりも少し強めに吹く海風が気持ちいい。

 

「みんなももう少しで到着しそうだね」

 

 私達から少し遅れて他の皆もゴールしそうだ。

 

 どうやら私とテオがトップみたい。

 ……と思ったのだけど。

 

 

「カティアさん、テオフィルスさま、お疲れ様です」

 

「「っ!?」」

 

 背後からかかった声に驚いて振り向くと、そこには……

 

「フローラさん!?」

 

「もうゴールしてたのか……」

 

「はい、お二人より少し前にゴールしました」

 

 

 なんと……もう既にフローラさんがゴールしていた。

 少し前とか言ってるけど、その様子を見るとかなり前には到着していたのではないだろうか?

 

 

「ふぇ〜……凄いよ、フローラさん!」

 

「全くだ。自信があると言うのも頷けるな」

 

 

 私やテオ、ルシェーラ、シフィルは、邪神との最終決戦に挑んだ……この世界でも最強クラスの身体能力を持ってるはずだと思うのだけど、それを差し置いてトップでゴールするなんて凄すぎる。

 

 

「ふふふ……子供の頃からこの岩場までは何度も泳いでますから。潮の流れも良く知ってますし」

 

 そう言って少しいたずらっぽく言うフローラさん。

 いつも大人しい彼女がそんな表情をするのが意外で、ちょっと新鮮かも。

 

 

 

 やがて他のメンバーも次々とゴールする。

 大体みんな同じくらいだったけど、現役騎士の三人が意地を見せて先着していた。

 

 

「負けましたか……残念ですわ」

 

「く〜っ!!イスパルのトビウオたるオレっちが負けるとは……!」

 

 ルシェーラとフリードが悔しがってる。

 っていうか『イスパルのトビウオ』とか初耳だよ。

 

 

「誰が一位なの?カティア?テオさん?」

 

「ううん。フローラさんだよ。もうぶっちぎりで」

 

「い、いえ……そこまでの差はなかったですよ……」

 

 シフィルの問に答えると、みんな驚きの表情になり、フローラさんは恥ずかしそうにはにかみながら言う。

 

 

「凄いわね。これでフローラはカティアに2勝したことになるのね」

 

「学園で噂を流さないとですわね!」

 

「や、やめてください!?」

 

 シフィルとルシェーラが面白そうにからかうと、フローラさんは慌てて止めようとする。

 しかし、残念ながら彼女たちを止めることは叶わないだろう。

 また伝説が増えることになるのは間違いないね。

 

 

 

「ふむ、大したものですね。フローラさんは騎士志望でしたか?」

 

「え?あ、はい……」

 

 あ、そうなんだ。

 意外かも。

 でも彼女は武術も魔法もかなりの実力を持ってるから、騎士志望でも不思議ではないのか。

 

 

「あ、だったらさ……こんど女性騎士だけの部隊が結成される予定だから、そこを目指したら?ルシェーラお嬢様も一緒に」

 

 と、ケイトリンが二人を勧誘する。

 

 実は、その話は私も知ってたり。

 と言うか、私の直属部隊になる予定なんだ。

 

 で、これはケイトリンは知らないと思うけど、彼女が部隊長候補だったりするんだよね。

 

 

「まあ、それは素敵ですわね!ねぇ、フローラさん?」

 

「そうですね。でも、何だか華々しいイメージで、私なんかが入っても良いのでしょうか……」

 

 

 もう、相変わらず自己評価が低いなぁ……

 彼女はもう少し自信を持つべきだね。

 

 

「何をおっしゃいますか。カティアさんに二度勝利してるなんて……これ以上のハクはありませんわよ」

 

「だ、だからそれは……!」

 

 

 ふむ……これはもう『伝説の女騎士フローラ』爆誕は待った無しだね!

 

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