【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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サマーバケーション(5)

 

 さて。

 急遽開催された水泳対決は、地元の星フローラさんの勝利で幕を閉じた。

 

 そして今、参加者全員がゴールとなった岩門のある岩場……というより規模的には小島とも呼べるような場所に上陸している。

 

 

「遠くから見た時はただの岩礁かと思ったけど……結構大きかったんだね」

 

「そうだな。この『門』も相当な大きさがあるぞ」

 

 テオの言う通り、岩門は見上げるような大きさがある。

 数階建ての建物がすっぽり収まってしまうくらい。

 

 

 

「しっかし……なんだか凄え場所っすね」

 

「そうですわね……フローラさん、ここには何か謂れがあるのでしょうか?」

 

 フリードの呟きに頷きながら、ルシェーラがそんな質問をする。

 確かに、なにか曰く有りげな場所って感じがするよ。

 そしてフローラさんが頷いて答える。

 

「はい。確かに、この場所にはある言い伝えがありますね」

 

 

 ほうほう。

 やっぱりそう言うのがあるんだね。

 

 海の神様や精霊を祀ってるとか、巫女が荒ぶる海を鎮めるためにその身を犠牲にしたとか……そんなありがちな話を想像したんだけど。

 

 

「伝説によると……あのアスティカントの祖である賢者様が、何か重要な秘密をここに隠した、とか」

 

 

 ……………

 フローラさん以外の皆の視線が私に集まる。

 

 まあ、そうなるよね……

 でも、賢者リュートと【俺】(わたし)は元は一つの魂でも、もはや別人だから。

 わたしがこの世界に来てからの記憶を持っていないのは、たぶん魂が分離したことによる影響だろう。

 

 

 私は皆の視線に苦笑を返してから、その反応に戸惑いの表情を浮かべていたフローラさんに話の続きを聞いてみる。

 

 

「その秘密ってどういうものなの?もしかして、ラズレー家に代々伝わってるとか?」

 

「あ、いえ。うちは祖父の代で爵位を賜って……貴族家としてはまだまだ新興ですから。ただ、この地域に古くから伝わっている話で、私も子供の頃に一緒に遊んだ友達から聞いたんです」

 

 なるほど。

 フローラさんって貴族にありがちな高慢さとは無縁だから、平民に混じって遊んでたとしても違和感ないかも。

 

 

「それで、その伝承なんですが……ここに何かを隠した、というのは伝わってるのですが、それが具体的に何なのかまでは分かってないそうです。噂を聞きつけた学者さんが調査に来たこともあるらしいのですが、何かが見つかったと言う話は聞いたことがないですね」

 

「そっか……まあ、ただの伝説かもね」

 

 実際、彼は色々と後世に遺しているけど、伝承の全てが必ずしも事実とは言えないだろうし。

 

 しかし。

 

 

「はい。……ただ、伝承によると賢者様はこんな言葉を遺されたそうです。『私の望みを叶えてくれた者のために、ここに報奨を遺す。鍵はダンキチが持つ』……と」

 

 !?

 

 私は思わずテオやルシェーラ、ケイトリンと顔を見合わせる。

 

 

「『ダンキチ』って……」

 

「彼……の事ですわよね?」

 

「ですよねぇ」

 

「賢者繋がりなら間違いないだろうな」

 

 

 かつて賢者の足跡を追って辿り着いた、アクサレナダンジョンの最深部。

 そこで出会った迷宮管理者(ダンジョン・マスター)のダンキチのことに間違いないだろう。

 

 

「リュートの『望み』と言えば……魔王や邪神を何とかする事だったはず」

 

「でしたら……カティア様たちには、その資格があるという事でしょうね」

 

 リュシアンさんの言う通りかもしれない。

 

 リュートの遺したご褒美……めっちゃ気になる!

 だけど……

 

 

「まぁ、でも……暫くはお預けかな?アクサレナダンジョンに行ってダンキチに会って、『鍵』とやらを手に入れてから、またここに来る……って事だもんね。そうそう気軽にここまで来れるわけじゃないしねぇ……」

 

「でも、気になりますわ」

 

「確かにね。でも、焦らなくても私達以外には関係ない話だろうし、気長にいきましょ。フローラさん、また来年お世話になるかも?」

 

「は、はい。ぜひ来年もお越しください!」

 

 ちょっと図々しいお願いしちゃったかも知れないけど、むしろ喜んでくれてるし……

 まあ、いっか。

 

 

「じゃあ、レティたちが心配するから、そろそろ戻りましょうか」

 

「……そうか。帰りも同じくらい泳がなきゃいけねぇのか……」

 

 フリードがゲンナリして呟いてるけど、何を当たり前のことを。

 

「ほらほら、ステラにいいトコ見せるんでしょ?帰りも競争だよ!」

 

「マジっすか……いや、姫サンの言う通りっすね!待っててくださいステラさん!今度こそ俺っちの勝利をあなたに捧げます!!」

 

「私だって!カティア!今度は魔法解禁で!風魔法でジェット泳法よ!」

 

「シフィルさん、ズルいですわよ!でしたら私も『氣』を使って……!」

 

 まったく、二人とも負けず嫌いなんだから……

 と言うか、『氣』をどう使うつもりなの?

 

 

 それで結局シフィルたちに押し切られ、帰りは『何でもあり!』ルールで勝負することに。

 

 そうやって、私達は浜辺に戻ったんだけど……

 ゴールの際にちょっとした(?)騒ぎになったのは言うまでもない。

 

 

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