【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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サマーバケーション(6)

 

 復路の優勝はシフィルだった。

 宣言通り風魔法を駆使してたね。

 と言うかほとんど空飛んでたでしょ、アレ……

 

 ルシェーラも『氣』を後方に放って猛追してたけど、一歩及ばず。

 しかし、『氣』ってあんな使い方できるんだ……

 

 

 その二人以外は普通に泳いでたよ。

 で、先行する二人に少し遅れてゴールしたんだけど……浜辺は大騒ぎになってた。

 そりゃあ、あれだけ盛大に水飛沫を上げて近付いてきたら『すわっ!?魔物か!?』とか思われても仕方ないね。

 

 リュシアンさんとフローラさんが『すみませんすみません』と謝ってまわり、ルシェーラとシフィルは正座して反省、レティとメリエルちゃんが腹を抱えて笑い、ステラは天を仰いでため息をつく……

 まぁ、カオスだった。

 

 

 

 

「やりすぎましたわ」

 

「そうね。……でも私の勝ちよ!」

 

「……アレは勝てねぇ」

 

 シフィルはもう少し反省しなさい。

 フリードも対抗しなくていいよ。

 

 

 

 

 

 

 とにかく。

 落ち着きを取り戻した浜辺にて、私達はまったりと休憩していた。

 綺麗な海を前にビーチチェアに腰掛けてると、何だか優雅な気分になるね。

 

 男性陣は、もうすぐお昼になるので飲み物や食べ物を買いに行ってくれている。

 場所取りとかテント設営とかもやってくれたし、買い出しくらいは私達が……と言ったのだけど、荷物が重くなるだろうからと固辞された。

 

 私やルシェーラなんかは、そこらの男よりも腕力あるんだけどね……

 まあせっかくの好意なので甘えることにしました。

 男性としては女子に甘えられるのは嬉しいのかもしれないし。

 そのくらいの男心は覚えてますとも。

 

 

 ということで、パラソルやタープの陰に入ってゆったりと過ごしていたんだけど。

 

 

 

 

「そこのお前たち、こちらに来い。ドスケーヴェ伯爵家のご令息であるチャーライ様がお呼びである」

 

 ……などと、男たちが声をかけてきた。

 どいつもこいつも高慢でイヤらしい笑みを浮かべた、いけ好かない感じの連中だ。

 

 取り敢えず、まともに相手するのも面倒くさいので、まるっと無視する。

 フローラさんとアリシアさんがアワアワしてるけど、他の皆は平然としてる。

 レティやメリエルちゃんなんかは、むしろ目を輝かせてる。

 絶対、面白がってるよね……

 

 

 私達の態度が気に障ったのか、男たちは笑みを消し苛立ちをあらわにする。

 

 

「おい!聞いてるのか!?早く来い!!」

 

「うるさいわね。用事があるならそっちが来なさいって伝えなさいよ。その『チャラい・どスケベ』くんにさ」

 

 私は手をヒラヒラさせながら言い放った。

 ほっとくとギャンギャン煩いので、手っ取り早くボスを連れて来い、と。

 

 

「くっ……優しくしてやればつけあがりやがって!貴様ら、後悔するぞ!!」

 

 ハイハイ。

 

 しかし、男性陣の誰かには残ってもらえば良かったねぇ……

 まあ、貴族階級を笠に着るようなヤツには関係ないかもしれないけどさ。

 

 

 そうして男たちは一旦は引き下がったのだけど。

 直ぐに新たな人物を加えて戻ってきた。

 

 水着の上から装飾過多でゴテゴテしたガウンを羽織った、私と同年代くらいの男だ。

 顔はまあ悪くないんだけど、その致命的なセンスと表情がそれを台無しにしてる。

 貴族の威厳を出してるつもりなのか、余裕の態度を装っているが、下心ありありの舐め回すような視線が気持ち悪い。

 

 

 

「どうやら、ずいぶん小生意気な子猫ちゃんたちのようだね?」

 

 こ・ね・こ・ちゃん(笑)。

 思わず噴き出しそうになるけど何とか耐えた。

 でも、たぶん顔が引き攣ってると思う。

 見た目は可愛らしい子猫でも、ライオンとかトラとかヒョウが混じっているんだけどね〜。

 

 

「おや……そちらにいるのはフローラ嬢ではないか?」

 

「う……は、はい。ご無沙汰しております」

 

 おや?

 どうやら、チャラい君とフローラさんは知り合いらしい。

 でも彼女の反応を見る限りはあまり嬉しくなさそう。

 こそこそ私達の後ろに隠れようとしてたのに「見つかった!」って感じですごくイヤそうだった。

 

 確かドスケーヴェ伯爵家はラズレー子爵領の隣が所領だったかな?

 だったら知り合い同士でも不思議はないか。

 

 

「ふふふ……僕との婚約の件は考え直してくれかい?」

 

「……その件は何度もお断りしてると思うのですが」

 

 あ〜……なるほど、そう言う関係か。

 ても、例え家格が上でもこんな傲慢なヤツは願い下げだろうね。

 

 

「何故だ?私は伯爵家の嫡男だぞ。何の不満があるのだ?『学園』に入学できたからと言って随分調子にのっているようだな」

 

 そこで彼は笑みを消して凄んできたけど……大した迫力もない。

 だけどフローラさんは青褪めている。

 

 ……ここらで割り込むべきか。

 と思ってたら、彼の方から話を振ってきた。

 

 

「君たちはフローラの学友かな?彼女と付き合いがあるということは、精々が男爵家程度だろう?……どうだ、私の妾にならないか?私は伯爵家嫡男だ。願ってもないことだろう?逆らってもろくな事になるまい」

 

「なっ!?こ、この方達は……!!」

 

 と言いかけたフローラさんを手で制止する。

 

 と言うか、ケイトリンが止めるんじゃないかと思って横目で見ると……ニヤニヤしてた。

 めっちゃ面白がってるし。

 

 じゃあルシェーラは?と思ったら、流石に怒りの表情を浮かべていたけど、どうやら私に対応を預けるようだ。

 

 ふぅ……しょうがないね。

 私はフローラさんを庇うように前に進み出て、ヤツに言う。

 まずは穏便にね……

 

 

我が(・・)イスパル王国では、例え高位貴族であろうと、女性を好き勝手にする権利などありません」

 

「ほぅ、気の強い娘だな。確かに表向きはそうかも知れんが、そんなのは建前さ。伯爵家の力、あまり見くびらないほうが身のためだぞ?いいからつべこべ言わずに来い!」

 

 痺れを切らしたヤツは、無理やり連れていこうと私の手を掴もうとするが……

 

「何すんの!!」

 

 バチィンっ!!

 

「ぶべぇっ!?」

 

 私のビンタが炸裂し、ヤツの顔面が砂に埋もれる。

 相当手加減したから怪我はしてないだろう。

 たぶん。

 

 

「チャーライ様!?」

 

「てめえ!!なんてことしやがる!!」

 

 取り巻きの男どもが激昂するが、襲いかかってくるような度胸は無い様子。

 まったく情けない……

 

 

「き、貴様……!!俺をぶったな!?親父にもぶたれたことないのに!!」

 

 ネタか(笑)。

 

 

「……父上は有能で真面目な方なのに、ご子息の教育はあまり出来なかったようですね」

 

「な!?お、お前……親父を知ってるのか……?」

 

「ええ。内務次官のハーヴェイ・ドスケーヴェ卿でしょう?よ〜く(・・・)知ってますよ」

 

 ハーヴェイ卿は所領持ちの貴族当主ではあるけど、王城で役職にも就いている方だ。

 こんなドラ息子がいるとは思えないほど真面目な方なんだけどねぇ……

 ていうかフリードの時もそれ思ったな。

 一緒にしたらステラに怒られそうだけど。

 

 

「お、お前……いや、貴女はいったい……?」

 

「レティ、[解呪]お願い」

 

 私の髪は非常に目立つので、例によって魔法薬で黒くしている。

 なので、この場をおさめるために正体を明らかにすべく、レティにお願いをする。

 

「はいは〜い。それ、[解呪]!」

 

 魔法の光が私の身を包むと、髪の毛が本来の輝きを取り戻した。

 

 すると。

 彼らは目を見開いて私の髪色に注目し……

 

「金銀の星の如き輝きの髪……ま、ま、まさか……貴女様は……!」

 

「邪神征伐の英雄姫……!」

 

「「「星光の歌姫(ディーヴァ・アストライア)、カティア王女!?」」」

 

 

 と、私の正体が分かったところで、満を持してケイトリンが前に進みでる。

 そして。

 

「そうだ、下郎共!カティア様の御前なるぞ!控えおろう!!」

 

「「「へへ〜っ!!」」」

 

 いや、どこかで見たノリだわ。

 

 って!?

 いつの間にか集まってきていたギャラリーも一斉に跪いてる!?

 

 あちゃあ……他のお客さんたちにも、完全に正体がバレちゃったかぁ……

 

 

「あ〜ぁ……せっかくのお忍びだったのになぁ……」

 

「……まあ、カティアだからね」

 

「「「「うんうん」」」」

 

 ど〜いう意味なの、レティ?

 それに、皆も納得するんじゃないよ!!

 

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