【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第一幕 4 『ステータス』

 ギルドの食堂を後にして宿への帰路につく。

 すっかり日は落ちて、ときおり酒場かららしき喧騒も聞こえてくるが、人通りは疎らだ。

 

 この街は比較的治安は良いが、だからといって若い女の子が夜道を一人で歩くのは勧められたものではない。

 自衛はできるし父さんもそのへんの心配はしてないと思うが、変に絡まれても面倒と思い気持ち足早になる。

 

 

 しばらく歩き、やがて東門近くの宿に到着する。

 宿と言っても、長期滞在者向けに提供されてるどちらかというと賃貸アパートのようなものだ。

 普通の宿として短期の宿泊客もいるが、ある程度まとまった期間で契約することで普通に宿に泊まるよりもかなり割安になる。

 一座の皆はこういった宿のいくつかに分かれて泊まっている。

 

 扉を開け中に入ると、魔道具の灯りに照らされたそこそこ広いロビーが出迎える。

 何人かソファーに座って談笑しているようだ。

 

 

「あ、お姉ちゃん!おかえりなさい!」

 

「あら、カティアちゃん~。おかえりなさ~い。今日は、外で食べてきたのかしら~?」

 

 そう言って出迎えてくれたのは、元気いっぱいのちいさな女の子と、間延びした口調で話す綺麗なお姉さん。

 ティダ兄の娘のリィナと、奥さんのアネッサ姉さんだ。

 

 リィナは母親譲りの金髪をツインテールにして、こちらは父親譲りの琥珀色の瞳。

 人形みたいに愛らしい8歳の女の子だ。

 

 アネッサ姉さんは肩まである緩やかに波打つ金髪をおろし、藍色の瞳、おっとり系の美人さんだ。

 ティダ兄以上に年齢不詳で、リィナとは少し年の離れた姉妹と言われても違和感がない。

 どうなってんだこの夫婦。

 独特ののんびりした口調で話をしていると眠気に誘われることがある。

 こう見えて一座でも随一の魔法の使い手で、【私】の魔法の師匠でもある。

 

 

「リィナ、姉さん、ただいま。ギルドで食べてきたよ。父さんとティダ兄も一緒だった」

 

「あら~そうなのね~。もう、ティダったら言ってくれればいいのに~」

 

 ぷんすか、という感じなので一応フォローしておこう。

 

「侯爵様が来てたんで捕まったんだと思うよ」

 

「そうなんだ~、じゃあしょうがないわね~」

 

「あ、そうそう。その侯爵様から話があったんだけど…」

 

 と、先刻の話をかいつまんで伝える。

 ふむふむ~なるほど~、と聞いていた姉さんは話を聞き終えると

 

「わかったわ~。リィナ?明日からお留守番できるかしら~?」

 

「うん、大丈夫だよ!女将さんのお手伝いして待ってるよ!お母さんもお姉ちゃんも気をつけてね!」

 

「そっか、偉いわ~」

 

 姉さんが頭をナデナデすると、嬉しそうに目を細めている。

 かわいい。

 本当、しっかりした子だね。

 

 面倒を見てもらうかわりに宿の女将さんの手伝いをしているらしいんだけど、結構戦力になってるみたいで女将さんもすごく可愛がっている。

 最近ではすっかり宿の看板娘だ。

 

 

「と言うことで明日は早くなるから、私はもう部屋に戻って休むことにするわ」

 

「そうね、私達も戻るわ~」

 

「お姉ちゃん、お休みなさい!」

 

「うん、お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿の自室に戻り、荷物をおろして一息つく。

 借りている部屋はおよそ8畳くらいの広さ。

 部屋の中にはシングルベッドとデスクが置かれ、それとは別にクローゼット、簡単な自炊くらいは出来る小さなキッチン、トイレ、湯船は無いがシャワールームが付いている。

 この世界の基準で言えばかなり快適な方だ。

 前世の感覚でいうとビジネスホテルに近いだろうか。

 

 

「ふぅ、とりあえずシャワーでも浴びますか…」

 

 

 ……ん?シャワー?

 

 ……つまりそれは当然、裸になる訳で。

 【俺】の意識が罪悪感を感じる。

 しかし、これからは当たり前になるわけで……

 

 しばし葛藤し、自分に言い訳しながらも最終的には服を脱ぎシャワールームに入る……

 

 

 

 

 

 結論から言って、特に思うところは何もなかっった。

 あくまでも自分の体という認識しかない。

 

 それはそれで、もと男としては複雑で……

 でも、いちいち自分の裸で興奮するようなことが無くてよかったとするべきだろう。

 

 

 さて、一息ついたところで今日の出来事を整理してみる。

 

 まず、記憶の共有は思ったよりも違和感がなく、カティアとして暮らすのになんの支障もなさそうだ。

 女になったことの違和感も思ったよりなかった。

 まだ心情的には複雑だけど……

 

 戦闘も経験したが、これも危なげなかった。

 むしろ、元のカティアよりも強くなっていたような気がする。

 そういえば、たしかエメリール様は魂の接合のインターフェイスとしてゲームを参考にした、と言っていたな。

 能力もある程度引き継ぐ、とも。

 

 

 ん?

 ゲームのインターフェース?

 ……もしかして。

 

 

「……『オープン メニュー』」

 

 ふと気になって試しに呟いた言葉。

 すると、目の前に見覚えのあるゲームのウィンドウ表示のようなものが現れたではないか!

 

「……開いた。マジか……いや、これどうなってるの?」

 

 触れてみようと手を伸ばしたがウィンドウを突き抜けてしまった。

 どうやら実体は無いようだ。

 

 これ、他の人も見えたりするのかな?

 あまり人のいるところでは開かないほうが良いかも。

 

 閉じるには……

 

「……『クローズ』」

 

 閉じた。

 まんまゲームのシステムだ。

 

 

 もう一度開いてメニューの内容を見てみる。

 

「……【ステータス】以外はグレー表示……選べないってことかな?」

 

 グレー表示のところに触れてみるが何も起きない。

 

 今度は【ステータス】を選んで見る。

 指先でその部分に触れてみると、ウィンドウの枠が広がって表示内容が変わった。

 

=======================

【基本項目】

 名前 :カティア

 年齢 :15

 種族 :人間(?????)

 クラス:ディーヴァ

 レベル:36

 生命値:1,564 / 1,564

 魔力 :2,987 / 2,987

 筋力 :287

 体力 :185

 敏捷 :489

 器用 :255

 知力 :383

 

【魔法】 ▼

 

【スキル】▼

 

【賞罰】

 ■請負人相互扶助組合

 ランク:B

 技量認定(戦闘):上級

 技量認定(採取):中級

 

【特記】

 ■エメリールの加護(魂の守護)

 ■?????????

 

【装備】

 

=======================

 

 ゲームの時とはやや異なる項目。

 ギルドの鑑定の魔道具で見れる内容と同じみたいだ。

 

 まずツッコミたいのが、人間(?????)って何?

 『お前人間か?』って意味か?

 もしかして、これは【俺】の影響なのかなあ?

 

 まあ、考えても分からない。

 他のところを見てみよう。

 

 クラスのところ。

 ゲームではメインとサブの複数のクラスを設定できたが、こちらは一つだけ。

 また、取得したクラスを自由に付け替えられたが、それをするためのメニューがそもそも選択できない。

 

 数値面は、【私】の記憶にある、ギルドで確認したときのものと大きな差異は無いように見える。

 ゲームではもう少し高かったはずだけど、身体は変わってないのだからまあ納得だ。

 

 次に、魔法とスキルだが……これは【私】のものに加えて、一部ゲームで覚えていたものが加わっている。

 

 魔法の内容は数が多いので割愛。

 ざっと見た感じだと、これまでに【私】が使ったことのあるものが履歴として記録されているようだ。

 

 スキルについては戦闘関連のものから日常生活のものまで幅広く、確認するのも一苦労。

 [剣術8]とか[魔力制御7]のように、技能名とその熟練度(最大で10)が記載されている。

 

 熟練度は5もあれば十分一流と言える。

 最高の10ともなると人外レベルという感じだ。

 

 ステータスに記載されているスキルの内容を確認していくと、記憶にあるものから熟練度が変わってるものがある。

 例えば[剣術8]は……本来の【私】では6、ゲームでは10だった。

 もとのカティアより強くなってる、と言うのは気のせいではなかったようだ。

 [魔力制御7]や[察知4]などはゲームには無いスキルで熟練度は変わっていない。

 [乗馬4]はゲームでのみ所持で熟練度は8だった。

 

 これらのことから、両方で所持してた場合はその平均値、もとのカティアのみ所持の場合はそのまま、ゲームでのみ所持の場合は半分となってるようだ。

 

 しかし、これに当てはまらないものがいくつかある。

 [刀術6][歩法7][数学6][自然科学6]…など。

 これは恐らく【俺】のものだろう。

 

 これまでの3人(?)の経験が引き継がれ、こうして目に見える形で確かに存在すると思うと感慨深い。

 

 他に注目すべきスキルとして[絶唱★]がある。

 ★はクラス固有のスキルであることを示す。

 

 カティアのアバターはイベントクリア報酬で特別に入手したものだが、その時の初期クラス[ディーヴァ]と、スキル[絶唱]は他では入手出来ない固有のものだった。

 【私】のクラスは元々は[歌い手]で、[絶唱]も無かったはずだ。

 

 [絶唱]の効果は歌によって、その歌声が届く範囲の対象に特殊な魔法効果を及ぼすと言うものだ。

 ゲームでは、物理・魔法に関わらず攻撃力を上昇させるもの、自動回復効果のあるものなど様々な「歌」があった。

 実際に使えるかどうかは検証が必要だが、対象がいない事にはどうにもならない。

 

 賞罰はギルドの資格などが記載されている。

 これは見たままだ。

 

 特記にあるのはエメリール様の加護だ。

 これは転生する時に守りを与える、て言っていたものだろう。

 そしてまた「?????????」の表示。

 気にはなるが、分からないものはしょうがない。

 

 装備欄には何もない。

 別に裸じゃない。

 シャワーを浴びたあとに下着と寝間着は着ている。

 基準がよく分からないが、剣とか鎧とか、特殊な効果のあるアクセサリーなんかだと表示される。

 

 

 ふう、こんなところかな。

 魔法やスキルの検証はここでは出来ないし、明日は依頼があるし、追々かな。

 エメリール神殿に行くのも依頼から戻ってきてからになってしまうか。

 

 さて、明日は早いから荷物の準備して寝よう。

 

 

 こうして、転生一日目を終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ん?

 ここは……?

 

 周囲はぼんやりと明るいが何も見えない。

 

 あれ?また死んでしまったのか?

 

「……ねぇ」

 

 うん?だれかの声がした?

 

「こっちだよ」

 

 声の方に振り向くと、とても可愛らしい小さな女の子がいた。

 ……はて、どこかで会ったような?

 

「えっと、キミは?」

 

「ん~とね~、なまえは『かてぃあ』って言うの」

 

「……えっ!?」

 

 カティア?

 

 言われてみれば、特徴的な髪の色や顔立ちにも面影があるが……

 

「えっとね、おにいちゃん、かてぃをたすけてくれてありがとう」

 

 お兄ちゃん?

 

 と、自分を見てみると顔は分からないが体は男のそれだった。

 おそらくこれは【俺】のものなのだろう。

 

 そうすると、この女の子はもとのカティアってことか?

 

「えーと、カティアちゃんは自分に起きた事を覚えているのかな?」

 

 何か覚えているなら、原因が分かるかも知れないのだが……

 

「……ん~?よくわかんない。でも、なにかこわいことがあって、おにいちゃんがたすけてくれたのはわかるの」

 

「そっか……」

 

 そんな都合よくいかないか。

 

 というか、これは夢……なんだろうか?

 

 たしかに頭に靄がかかったかのように意識がはっきりしない感じがするが、夢にしては明瞭な気もする。

 明晰夢というやつだろうか?

 

 ……分からない。

 でも、ただの夢ではないだろう。

 

 それに、この子。

 

 カティアは15歳の少女だ。

 だが、カティアと名乗るこの女の子はせいぜい3歳くらいだろう。

 俺のことを「助けてくれた」と言っていたことから、多分もとのカティア本人(?)だと思うのだが……

 

 魂を大きく損傷してしまった影響でこんな状態に?

 もしそうだとすると、こうやって会話ができると言うことは、僅かでも彼女の意識が残っていると言うことなのだろうか?

 

 この子がもとのカティアだとして、気になったことを聞いてみる。

 

「カティアちゃんはさ、自分の中に【俺】がいるのは嫌じゃない?」

 

「うん、いやじゃないよ。おはなしできてうれしいな」

 

「そっか、よかった」

 

 子供の感覚だとちょっと違うのかもしれないけど、嫌に思ってないなら良かった。

 

 魂の修復が進んだら、この子も成長するのかな?

 そうなった時、俺との関係はどうなるのだろうか?

 エメリール様も分からないと言っていたし、なるようにしかならないか……

 

 それから、しばらく他愛ない話をしていたが……

 

「あ、おにいちゃん。そろそろおきるじかんみたい」

 

「ん?ああ…目が覚めるのか。今もこうして意識があるのに、なんか不思議な感じだな」

 

「また、おはなししようね」

 

「そうだね。またね」

 

「ばいばい!」

 

 

 そうして話を切り上げると、だんだん水中から浮上するような感覚がして、【俺】は目覚めた。

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