ようこそ姉至上主義の教室へ   作:キフ

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有栖視点です



~有栖から見た弟~

ホワイトルームなる施設を見学してから2年が経ちました。今は私の部屋で弟とチェスを打っています。

 

「チェックメイトです。」

私はそう言って流貴に微笑みます。

 

「……まいりました…」

流貴は悔しそうではありますが、どこか誇らしいような顔をしています。変な人ですね。

 

「姉さんは凄いな、たった2年でここまでチェスの腕を上げるなんて俺も姉さんと同じ時期に始めたはずなんだけどな~」

流貴は私を褒めますが、別に大したことはしていません。ただ相手が打ってきた手に対して最適な行動を常に取っていれば負けることはありませんからね。まぁ、チェスは先行有利なのでお互いが最適な行動を取ると後攻が負けてしまうのですが…

 

「ふふっ、流貴ももう少し時間をかければもっと上達しますよ。それに、流貴は先月の空手の大会で優勝したではありませんか。運動方面は私はからっきしですからね。頭脳方面は私にお任せください。」

私は流貴に自信をもたせるように話します。実際、流貴は僅か半年で空手の型を全てマスターし、公式戦も未だに無敗ですからね。流石私の自慢の弟です。

 

「いや~、大会と言っても同年代の地方の大会だからね。流石にこれぐらいの大会勝てなくちゃマズいよ。」

 

流貴がその同年代の大会で負けた人たちをナチュラルに煽ります。少し面白いですね。

 

すると、流貴が何かを思い出したかのような顔をして私に話かけてきます。

 

「そうだ、姉さん。次の大会姉さんも来れない?俺の成長を姉さんに見せたいんだ。それに次の大会は全国大会だからね。かなり強い人も来るから、見ていて飽きないと思うよ?」

 

全国大会…ですか。面白そうですね。

 

「分かりました。次の大会は私も流貴の応援に行かせてもらいましょう。期待していますよ?」

 

「姉さんの期待なら俺も全力で応えるよ。必ず優勝するさ。」

 

流貴は獰猛な笑みを浮かべながら、こちらに視線を向けてきます。

少し自信が溢れ過ぎているとは思いますが、流貴は慢心したり、油断も緊張もしないタイプなので大丈夫でしょう。

 

「それと、もし怪我をした時は罰を受けて貰うのでよろしくお願いしますね」

 

「大丈夫さ、姉さん。俺は空手で怪我したことなんて今までで一度もないからね」

 

どうやら流貴は自分が怪我をするとは思えないようですね。

 

「えぇ、万が一ですよ。」

そう言って私は薄く微笑みました。

 

※※※

 

それから1ヶ月後、遂に流貴の大会がやって来ました。現在私はお父様と一緒にいます。後10分程で流貴の1回戦目の戦いが始まります。流貴の試合は何度か見たことがありますがこの大会は全国大会。少し流貴の力がどこまで通用するのか不安になってきました。柄にもなく緊張してきましたね、なんて考えていると流貴の試合が始まります。

 

体格のいい男性審判が流貴とその対戦相手の中央に立ちます。審判が試合上での注意を告げて、審判がやや後ろに下がります。

 

「Eブロック第1回戦始め!」

力強い声で闘いの烽火をあげました。

 

流貴の対戦相手は流貴よりも身長が高いです。上背があるため流貴の方がやや不利かもしれません。流貴と対戦相手はお互いに相手の隙を探っているようで緊迫感があります。10秒程して埒が明かないと対戦相手は感じたのか流貴に素早く近づき中段突きを放ちます。基本的な技ではありますが、次の一手に繋げ易いため妥当な判断と言えるでしょう。流貴は当然この技を躱して反撃に出ようとします。しかし、その前に相手が上段蹴りを放ってきます。蹴りは一撃の重さが突きよりも非常に高いためヒットしてしまうと一撃で敗北してしまうことが多いです。その分蹴りをした後の隙は大きいので躱すことができればむしろチャンスに繋がります。

 

流貴は相手の蹴りをしゃがんで躱しすぐに中段回し蹴りを放ちます。相手は蹴りを放った後だったため態勢を崩しておりそのまま流貴の蹴りが脇にクリーンヒットします。試合は続行不可能となり流貴が勝ちました。

 

 

危なげなく勝ったことに少しホッとしました。弟が怪我をするところなんて見たくありませんからね。

 

「流石だね、流貴は」

お父様が私に話かけてきます。

 

「そうですね、しかし思ったよりも苦戦しませんでしたね。対戦相手の方はこの大会の中では弱い方なのですか?」

 

「…いや、さっきの対戦相手は東北地方の大会で何度か優勝しているから強い方だとおもうよ。」

 

お父様は苦笑いをしてそういいます。

 

「…凄く強い対戦相手だったのですね。」

私は流貴のことを正しく評価していたつもりですが、どうやらまだ過小評価していたようですね、、、

 

「流貴は空手の練習をかなり頑張っているからね、毎日夜に部屋で型のおさらいや新しい技を体に馴染ませようとしている位だよ。これも有栖を守りたいという流貴の思いさ。」

 

「そう言われると少しくすぐったい感じがしますね。」

しかし、嬉しくはあります…

 

それからの試合も特に危うげなく流貴は勝ち進んで行きました。

 

ここで今大会について少しおさらいしておきましょう。まずこの大会は小学生の大会であり、学年が異なっていても試合をします。…1年生が6年生と当たったら勝てませんね。またA,B,C,D,E,F,G,Hのブロックに分かれており、その内のABCDのブロックを①と表し、EFGHのブロックを②とします。そしてこの①と②で1位となる選手を決め最後に1位に輝いた人同士が試合をして今大会の優勝者を決定します。

 

 

 

「これより、今大会の決勝戦を開始します。①で1位となった人をお呼びします。小学5年生の堀北学くん試合場までお越しください。…続いて②で1位となった小学3年生坂柳流貴くん試合場までお越しください。」

 

周りが少しザワつきます。この大会は学年関係なく試合を行うのでまさか決勝戦が6年生以外とは思わなかったのでしょう。それも小学5年生位ならまだしも3年生が決勝進出するなんてかなり稀でしょう。

 

どうやら流貴の対戦相手が入場してきたようですね。確か…堀北さんでしたか。堀北さんは鷹の目のような鋭い目つきに黒曜石のような色をした艶のある髪をしています。今から格闘試合をするというのに眼鏡をかけているのは余裕の表れでしょうか。

 

っと、流貴も入場してきましたね。流貴は堀北さんを見るなり、少しだけ本当に僅かに眼を見開きます。恐らく流貴の変化に気づいたのは私だけでしょう。あの反応は少し気になります。この試合の前から交流があったのでしょうか?いや、堀北さんは流貴を見ても特に反応はしていません。一方的に相手を知っているということでしょうか。後で問い詰めてみましょう。

 

この試合の主役が両者揃ったところで老齢な70代ほどのお爺さんが審判を務めます。この大会の決勝戦の審判を任されていることから、かなり武術に精通していると思われます。

 

「これより今大会の決勝戦を始める。」

 

改めて審判が反則行為やルールについて説明してから、一歩後ろに身を引きます。

 

「第32回空手全国大会…始め!!!」

 

 

「ッシ」

 

流貴は今までの試合とはうって変わって自分から攻めて行きました。刻み突きを放つや否や防がれることを当然かのように逆突きをして、そこから流れるように下突きや鎖骨打ち、蹴り技の中でも隙が小さい下段回し蹴りをします。しかし、どれも堀北さんには通じず、最小限の動きで躱されいなされ、流貴の技を流していきます。流貴もこのままでは先に自分の体力がなくなると感じたのか一度バックステップをして堀北さんから距離をおきます。堀北さんは息一つ乱しておらず、体力の減少は感じられませんね。そもそも流貴と堀北さんでは体力に2年分の差があります。小学生にとっての2年とはかなり大きいため、このまま順当にいってしまうと体力の差で負けてしまいます。流貴が勝つためには短期決戦以外の選択肢がありません。

 

流貴もそう考えたのか蹴り技を主体にしていき、堀北さんに襲いかかります。いきなり胴回し回転蹴りをして、それを顔を引いて避けた堀北さんに先程の勢いをつけたまま飛び後ろ回し蹴りを放ちます。これは堀北さんにとっても予想外だったのか腕をクロスにして、急所を守りつつ後ろに跳んで衝撃を逃がしていきます。それを好機と見た流貴が裏回し蹴りを放ちます。裏回し蹴りはカウンターにも単発技でも便利な技で技を出している間は太ももの裏で相手の技を防ぐことができ非常に使い易いです。

 

しかし、堀北さんは瞬時に自ら流貴の方へ向かっていき、軸足を刈り取って投げつけました。流貴は受け身を取って最小のダメージに抑えましたが、一瞬の隙をさらしていまいます。たかが一瞬されど一瞬。勝負事に置いて一瞬のラグは致命的です。そのまま堀北さんに裏拳を顎に打たれて負けてしまいました。惜しい所まではいきましたが、勝てなかったようですね。残念です。

こちらに戻ってきたら励ましてあげましょう。

 

     ???

 

流貴が起き上がりませんね?どうしたのでしょうか。

すると、審判が係員に何かを言いつけます。

 

 

タンカーだ!タンカーを用意しろ!早く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

「軽い脳震とうですね。命に別状はありません。」

待機していた医師がそう伝えてくれました。

 

「そうですか、良かった…」

お父様が心底安堵したような声でそう言います。

 

しかし、、、あれだけ自信満々にして怪我をしないと言っておきながら怪我をするとは。罰を2倍…いや、10倍位にしておきましょうか。姉である私を心配させるとは弟失格ですね。全く一時はこちらの心臓が止まるかと思いましたよ。後でお母様にも叱って貰いましょう。

 

 

「………ん?」

 

どうやら流貴が起きたようですね。

 

「流貴、気分はどうだい?」

お父様が流貴にそう尋ねます。

 

「あ~、頭が少しクラクラするよ…」

流貴がゲンナリした声でそういいます。

 

「全く…あれだけ強い衝撃を受けたら当たり前でしょう。」

私は正直大分頭にきています。

 

「姉さん…ゴメン、優勝出来なかったよ、、、」

流貴がバツの悪そうな顔で謝ってきます。

 

「えいっ」

私はそんな流貴にデコピンをします。

 

「いてっ」

流貴が額をおさえます。

 

「流貴、何か勘違いしているようですが、私は流貴が優勝出来なかった事に怒っているのではありません。貴方が怪我をしたことに怒っているのです。以前の約束をお忘れですか?」

私は冷たくそう言い放ちます。

 

少し流貴が悩みます。

「…あっ」

 

「どうやら思い出したようですね。流貴には後程罰を与えます。」

私は有無を言わさぬ声音で流貴にそう伝えます。

 

「あっハイ」

流貴が姿勢を正す。

 

…どうやら少し落ち込んでいるようですね。

 

私はそんな流貴の頭を撫でます。

「え?」

驚いた顔をして目を開けています。口が少し空いており、どこか間抜けな印象を受けます。…少し可愛いいですね

 

 

「流貴、確かに私は罰を与えるとは言いましたが、ご褒美をあげないとはいっておりません。先程の試合よく頑張りましたね。それに、流貴が私のために夜も練習していると聞きましたよ。ありがとうございます。」

私は自然と笑顔になって流貴に感謝を伝えます。ここまで出来た弟は中々いないでしょう。

 

「姉さん…俺は姉さんの力になりたいだけだ。言うならば自己満足だよ」

流貴が顔を伏せてそう言います。

 

私の弟は自己評価が大分低いようですね。一体なにを目標としているのでしょうか?

 

「それでも、流貴が私のためを思って行動していることは知っています。いつもありがとうございます。」

私は再度流貴に感謝の言葉を述べます。

 

「いや、俺の方が姉さんに感謝をしているよ。」

流貴が自信満々にそういいます。

 

どこに自信を持っているのですか、、、

 

「そうだね、有栖も流貴もお互いを本当に大切に思っているからね。」

お父様が嬉しそうにそういいます。

 

「私はお父様のこともお母様のことも流貴と同じ位大切に思っていますよ。」

 

「俺だって父さんと母さんのことを大切にしているよ。」

流貴もそうお父様に伝えます。

 

「もちろん、僕も彼女も有栖と流貴のことを愛しているよ。」

お父様は先程よりも嬉しそうにそう言います。彼女とはお母様のことでしょうね。

 

「流貴はこの大会とても頑張ったからね、どこかで食事をして帰ろうか。」

 

「ヤッタ、俺はアイスが食べたいよ。」

流貴は切り替えが早いですね。

 

「あっ、、、流貴、罰はまだ終わっていませんからね。逃げないでくださいよ。」

私はちゃんとそう流貴に伝えておきます。

 

「あっハイ」

流貴が哀しそうに呟きます。

 

そんな私たちのことをお父様は少し苦笑いしつつも、温かく見守ってくれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




堀北学ここで登場です。堀北兄はあれだけ体の使い方を熟知していて、格闘技術も高かったので恐らく何かを習っていたと思われます。

次話から原作突入したいのですが、その前にキャラクター紹介と背景についてを皆さんに伝えておこうと思うので原作突入は次々話ですね。

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