「坂柳、こっちだ。」
葛城が手招きしてくる。俺と葛城は午後4時50分頃に体育館前で合流した
「悪い、遅くなった」
俺は集合まで時間があったため図書館でミステリー小説を読んでいた。
「気にするな、俺も今来たばかりだ。」
なんてデート前のカップルのような話をしていると不機嫌な声が割り込んでくる。
「葛城さん、何でコイツもいるんですか、俺がいるじゃないですか!」
…何でコイツがAクラスに配属されたのか俺には分からない。
「
「でも~…」
「ほら、体育館に入るぞ。」
葛城が戸塚を無理やり納得させる。
体育館へ入ると100人近くが待機していた。体育館に入った際にパンフレットを配られたのでそれを軽く見ておく。
「葛城は中学では生徒会に入っていたらしいから、やはり部活はしていなかったのか?」
「そうだ、生徒会に入っていたと言うのもあるが単純に興味が湧く部活動がなくてな。たが、俺には双子の妹がいるんだが妹曰く部活動は青春と表裏一体らしい。」
「へ~、葛城には妹がいたのか。しかも双子って俺と姉さんと一緒だな。なんか親近感が湧くよ。」
まあ、原作を見たので既に知っていたが。葛城はかなり妹思いだったはずだ。
「俺は既に知っていたがな!」
ドヤ顔で叫ぶ戸塚。戸塚、お前もう船降りろ。邪魔だ。
「1年生の皆さんお待たせしました。これより、部活代表による入部説明会を始めます。私はこの説明会の司会を務めます。生徒会書記の
体育館のステージにズラッと各部代表者が並ぶ。野球部のユニフォームを着ている先輩やサッカーのユニフォームを着ている先輩、着物を来た先輩もいる。彼らの説明に秀でたものはなく、次々と終わっていき、最後の一人となった。
身長170センチちょいと、細身の身体に黒髪。シャープな眼鏡からは知的さを覗かせる。マイクの前に立ってから一切微動だにしない。周りから野次が飛ぶ。
「どうしたんすか~ww」「緊張しちやったのww」
「がんばえ~ww」「富竹フラッシュ!」
いや、最後の野次は違うだろ!徐々に空気が張り詰めていき気づけば静寂が広がる。
「私は、生徒会長を務めている
肌を突き刺すような緊張、壇上に立つ男が場を支配している。
「それから私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。我が校の生徒会には規律を変えるだけの権利と使命がある。そのことを理解している者のみ、歓迎しよう」
淀みない演説
「皆さまお疲れさまでした。説明会は以上となりますこれより~」
司会者が話ているが俺は葛城に話かける。
「凄い覇気だったな。」
「あぁ、あの人がこの学校の生徒会長か…俺の生徒会所属を許可してくれるのか?」
「葛城さんなら大丈夫ですよ!」
根拠のない自信だね、戸塚。
「坂柳は結局部活に入るのか?」
葛城が聞いてくる。
「ん~、正直まだ迷ってるよ。ちょっと様子見かな。」
「けっ、優柔不断な奴だ」
戸塚ァマジで覚えとけよ?俺は戸塚を無視して葛城と話す。
「少し野暮用があるんだ。ここで失礼させてもらうよ。」
「あぁ、ではな。」
「俺のいない間に葛城さんとはしゃべんなよ!」
このドブカスがぁ、マジでもう喋んな。
ひとまず俺はあるところを目指して歩き出す。
※※※
「生徒会室…ここか」
実に入りにくい雰囲気を醸し出している。
コンコンコンッとノックをする。
「入れ」
冷静で覇気に満ちた声だ。
「失礼します。」
「
「もう、新入生の名前を覚えているんですか?」
「あぁ、それにお前とは小学生の頃にも会っただろ?」
「…覚えていたんですか、あの大会のこと」
俺は少しだけふて腐れる。あれは…嫌な記憶だ。なんで姉さんを大会に呼んだ時にあんな負け方しなくてはならないんだ。あの後の罰は…キツかった、思い出すのヤメヨ
「あの時はすまなかったな。あそこまで苦戦するのは初めてだったんだ。それも自分より年下の人間にな。」
「あれは試合でしたからね。堀北生徒会長が謝ることではありませんよ。」
「そうか…で改めて何の用だ。生徒会に立候補しに来たのか?」
鋭い目線とプレッシャーをぶつけてくる。
「単刀直入にいいます。取り引きしませんか?」
俺は臆せず取り引きを持ちかける。
「なに、取り引き?」
堀北生徒会長が思案げな顔をする。
「えぇ、この学校の伝統を…次期生徒会長から守るために。」
「どこでその話をきいた?」
ブワッと堀北生徒会長から敵意が、いや殺気が溢れ出す。凄い殺気だ。戸塚がこの殺気を受けたら死ぬな。
…頼んだら戸塚に殺気ぶつけてくれるかな?
「この話をどこで聞いたかなんて些細な問題ですよ。大事なのは、来年貴方は卒業し
俺は原作知識を使っているだけだから誰からもこの話は聞いていない。ただ大事なのは未来ということだ。
「…何が目的…いや、対価はなんだ?」
俺は表情に出さないまでも内心驚く。なんせぽっと出の1年を南雲への抑止力に前向きに検討しているのだから。
「、、、200万です。200万でこの学校の伝統を南雲から守ります。そして…南雲にもこの契約を持ち掛けます。」
「なるほど、スパイ活動か。」
凄いな、生徒会長。この一言だけでよく俺が何をするのか解ったな。
「いいだろう。今から200万ポイント振り込む。」
即答か。
「俺が堀北生徒会長を騙しているとは考えないんですか?それに本当に俺でいいんですか?1年には俺より有能な生徒はもっといますよ?」
姉さんとか、
「安心しろ、俺は今の会話をすべて録音機で録音している。それに俺が注目している生徒はどうも事なかれ主義のようでな。こちらに協力してくれるか分からんのだ。だったら、たったの200万ポイントでこちらに協力してくれる生徒がいた方が都合がいい。」
綾小路には既に目をつけていたか…てか、200万ポイントをたったのとか言うな
「では…改めて契約成立ですね。南雲の情報が来たら逐一貴方に報告します。」
「わかった。」
俺は学生証カードに200万ポイント振り込まれているのを確認した。
「では失礼しました。」
「あぁ、ではな。」
俺は生徒会長の返答を聞いてから生徒会室を退室した。しかし、もっと吹っ掛けてよかったか?300万ポイントとか、これでも結構吹っ掛けたつもりなんだが…
お、前から生徒会書記の橘先輩がくる。ちょっと
「橘先輩、生徒会長と是非恋仲になって下さい。俺全力で応援しますので」
俺は清々しい笑顔で橘先輩に伝えた。
「えっ…?え、え、…」
しばらくリンゴのような赤い顔でフリーズしていたので俺はそのまま立ち去った。橘先輩の反応は面白かった。
※※※
今日はプールの授業がある。だが、Aクラスの男子諸君は落ち着いていた。さすがAクラス。Dクラスのサルとは違うのだ。
昼休みが終わり更衣室へ行く。俺たち男子は着替えをして更衣室をでる。3分くらいたつと女子たちがやってきた。お~とは思うが顔には出さない。俺たちは理性を持たない獣とは違うのだ。マッチョ体型の体育教師がやってくる。
「見学者は5人か。まあこんなもんか。俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやる。安心しろ」
無人島試験があるもんな。
「泳ぐ能力はそんなに必要なんですか?」
Aクラスのイケメンコミュ力強者、
「ああ、必ず役に立つ。必ず、な」
体育教師の話も終わり準備運動もかねて程よく泳いでいると体育教師が声をかけてくる。
「よ~し、ではこれから競争をする。男女別50M自由形だ。1位になった生徒には5000ポイント支給する。」
別にポイントは要らないが勝負事で負けたくはないし、全力を尽くすか。
男子の部はもちろん俺が勝った。そのとき、鬼頭といい勝負を繰り広げて、そのまま筋肉の話になり意気投合した。鬼頭とは仲良く出来そうだ。女子の部は神室さんが1位をとっていた。神室さんも普通に身体能力高いからな。
「あんた結構筋肉あるのね。」
っと競争も終わりゆっくり座っていたら神室さんが話かけてきた。
「あ~、鍛えているからね。神室さんも速かったじゃないか。凄いな」
神室さんが俺の隣に座ってくる。
「お世辞は要らないわ。それよりもあんたの姉、何とかしてくんない?」
神室さんは無事万引き現場を姉さんにバレて姉さんの女友達(強制)になっている。姉さんがLI○Eで連絡してきたからな。どうやら姉さんは俺がいない間に神室さんをパシッているようだ。
「ははっ、それは難しいね。なんせ姉さんだからね。運が悪かったと思ってくれ。」
「…最悪…」
その後俺と神室さんはとりとめのない話をしながら授業が終わるのを待った。可愛いい女子と話せて悪くない時間だった。内心では緊張しまくってたからな…上手く喋れてたか?
※※※
<綾小路視点>
オレは櫛田のお願いにより、櫛田と堀北仲良くさせよう大作戦を決行することになった。しかし、この作戦は現在進行形で失敗に終わりつつある。いや、大失敗だな。
「もう帰っていいかしら?」
堀北は深いため息をつくと、櫛田の目をまっすぐ捉えた。
「櫛田さん、あなたが無理に私に関わらなければ、私は何も言わない。約束する。あなたはバカじゃないのだからこの発言の意味が分かるかしら?」
「それじゃ」と一言かけ、堀北は店を去って行く。オレと櫛田は取り残されてしまう。
「失敗、だったな。助け船だそうと思ったけど無理だった。あいつは孤独に慣れすぎている。」
ストン、と櫛田は無言で腰を落とす。だがすぐにいつもの笑顔をこちらに向けてくる。
「ううん、ありがとう綾小路くん。確かに友達になることは出来なかったけど……でも、大切なことは知ることができたから。私はそれで十分。ごめんね、私のせいで堀北さんに嫌われるような真似、手伝わせちやった。」
「気にするな。オレも、堀北に友達を持つ良さを知ってもらいたかったし」
オレは櫛田のテーブルへ移った。
「それにしても、驚いたよ。綾小路くんに友達がいなかったって話。本当なの?全然そんな風には見えなかったから。どうして一人ぼっちだったの?」
「ん?あぁ本当だよ。
「やっぱり友達が出来ると、嬉しい?楽しい?」
「そうだな。煩わしいと感じることもあるけど、喜びの方が勝っている感じかな」
櫛田は目を輝かせるようにして笑顔を見せ、うんうんと頷いた。
「ただ、堀北には堀北のー」
「あれ櫛田さん?」
思わず声をかけてしまったと言うような声音でオレの言葉を遮ってきた。
横を見ると銀髪に紫紺色の瞳を持つ美少年と金髪をオールバックにしたチャラそうな男がいた。
「あれ、坂柳くん。どうしてここに?」
どうやら櫛田の知り合いらしい。
「あぁ、俺は
「
「あぁ、悪い。」
銀髪の男が金髪の男に申し訳無さそうにする。金髪は後ろを向いて手をヒラヒラさせながら席を取りにいった。
「偶然だな、櫛田さん。櫛田さんも遊びに?」
「まぁ…そんな所かな」
櫛田は僅かに陰のある笑顔をみせる。…堀北とは仲良くなれなかったからな。
「そっか。それでこちらの方は?」
銀髪の男はこちらに視線を向ける。
「あっ、紹介するね!私と同じDクラスの
櫛田はそう言ってオレを褒めてくれる。ニヤニヤしないようオレの鉄壁の表情筋で事無きをえた。
「
「初めまして、俺はAクラスの
随分積極的な奴だな。まぁ、こちらは断る理由が無い。
べ、別に連絡先が増えたからって喜んでないぞ?いや本当だから。マジでマジで。
「それじゃあ、俺はデートの邪魔をしないよう退散するとしよう。」
坂柳はニヤニヤしながらこの場を去って行く。
「デ、デートなんかじゃないよ、坂柳くん!」
櫛田は顔を赤らめて否定する。しかし、こうも必死に否定されると…悲しくなってくるな…
この時のオレは心のどこかで浮かれていたのだろう。
自由の鳥になれたことが、友達が出来たことが、普通の学校生活を楽しめることが。
来月からオレたちDクラスには過酷な運命が待ち受けている。
…そしてオレはこの時の
綾小路は何の行動を後悔することになるのか。
皆さん分かりますか?
あと、最近『ひぐらしの鳴く頃に』を見て面白かったので、ちょっとネタを入れてみました。分かってくれたかな?