インフィニット・ストラトス~進化を望むマジン~ 作:スタノヴァ
今回でこのマジンの話はおしまいです。
フラグを放置して終わらせるとか納得いかんとは展開が早すぎるんだよ巫山戯てるのか!という感想が届いてきそうですがここで一度区切りとさせていただきます。
第二回IS世界大会から3年、大会中止後に世界から注目されていた織斑千冬が現役引退を宣言し世間を騒がせた。詳しい話は不明で一節ではあの災害の時に手足を負傷して選手生命を絶たれたと言われている。もう一節では自身の弟達があの大会で重症を負いそれによって自身を責め立てて引退を宣言したという話がある。
数ヵ月たった後、千冬はドイツ軍IS部隊への指導官として向かった。恐らく何らかの裏取引を行っているのでしょう。突然の引退からそう経たずに海外で指導を行うというのは流石におかしく感じます。
一年間という契約で千冬はドイツへと向かった。任期が終わり次第日本に戻り国連が建立させたIS学園の教師として就職している。それから現在まで教師として未来の代表候補生を育てている。
それとは別に世界を震撼させる事件が発生する。
『篠ノ之束の失踪』これは第二回IS世界大会から1年後のこと、彼女は国連による保護を受けて467機のISコアを製作していたがそれ以降製作は中断されその後世界各国からの監視の中忽然と姿を消したという。それ以来彼女に対し全世界で指名手配を行っている状態だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・現在の彼女は私が作り出したラボを提供している。私が旅立つ為にその後を任せられる人物が必要だからだ。ミツコさんらは他にやってもらうことがあるので無理ですし新たに生み出そうとしているアンドロイドなどは寿命設定を引き伸ばしMS、戦艦の管理と整備に回しており全て亜空間に収納している。
それにしてもたった10年も経たない内に世界中で大きな変化が起きている、いや起きすぎているというべきだろうか。一夏達を誘拐しようとして現在他国の刑務所に入っている彼女達からの記憶を見てある組織の実態を知ることが出来た。「亡国機業(ファントム・タスク)」それは非正規にISを複数所持し同時にそれを乗りこなすパイロットを複数人確保している裏組織だ。
主な行動は他国での略奪及びパイロット候補の誘拐を主にしている組織であり一端ならず者達の組織のように見えるがその裏には誰もが名を聞けば分かるような有名企業の姿がチラホラする。
亡国機業はその手足、悪く言えば使い捨て部隊のようなものだ。他の仕事も要人の暗殺や密輸の補助又はそのものを行っておりとてもじゃないがマトモな者が所属出来ないような組織である。
そう、表に立っている人々では到底入ることができない場所。しかしそのような場所でも全てを失った者にとっては居場所となるのでしょうね。
調べたところによると企業の実験中にISが爆発し死亡扱いとなった元国家代表や元々モルモットとして作り出された少女など、自らその組織に所属している者たちもいる。
そのような者たちからすれば汚い仕事ばかりの組織でも立派な『居場所』なのでしょう。
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カタカタカタカタ・・・・・・・・・・・・・・・
PCの前に座り私は今までの記録を全て書き込んでいく。
今年ももう終わりとなり次の年へと移行しようとしている。
一夏達も来年度には高校生になっているのだろう、その姿を見ることができずにこの場を去ることになるが・・・・・・・・・・・・・仕方がないことだろう。
そう今年で15歳、来年には一夏達は原作という名の運命が待ち受けている。
変質しつつあるこの世界でドレだけ原作が通用するか分からない。
私を含め多数の異分子を取り込んだこの世界がどのような起動を辿り軌跡をもって未来を創り出すのだろうか。この目で見てみたいという一時の衝動に駆られるも矢張り自由を欲するのか計画通りに進めていくことにした。彼らの観測はミツコさんと束に任せることにしよう。そうすればまたこの世界に戻った時の楽しみが増えるというものだ。
さぁ、時間だ。束たちが準備をして待ってくれている。
私は全てのデータのバックアップを取り終わると個人用のPCからデータの全てを消去した。
それと同時に私の生みの親である両親から私の記憶を消し去りこれで完全に私の足跡を消し去ることができる。
自宅も父名義に直し戸籍からも私の情報を消し去った。もしもの為に別名義で戸籍をとっているがそれを使う日が来るかどうか・・・それは今気にしても仕方がない。
今度こそ私は全ての処理を終わらせ数年であるが住み慣れた家を後にする。
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日本から南の方角に向かう為に私は自作である戦艦に乗り込んでいる。宇宙、空中、水上、水中の航行と潜水が可能でありこの一艦を作り出すだけで小国を丸ごと買い付ける事のできる資金が使われている。名前はありませんが強いて言うなら「プトレマイオス」と名付けることとしましょうか。勿論本艦には「GNドライブ」などの動力源は一切使わず現代にでもある核エンジンを採用しています。それに加え宇宙空間戦闘を想定としたビーム兵器、対空中戦の弾幕兼牽制のバルカン砲、超電磁砲、水中用の魚雷など戦艦としての機能以上を持ったオーバースペックですがつくろうと思えば誰でも作り上げることのできる装備です。更にこの戦艦には如何なる目からも補足できないように特殊な妨害装置を取り付けている。ガンダムデスサイズに搭載されているハイパージャマー、これは電子戦を想定された装備であり強力な妨害電波を発生させることによりセンサー・カメラなどの電子機器の機能をほぼ完全に無効化することができる。後は対肉眼視認用としてステルス機能を取り付ければ90%の確率で誰にも認識する事のできない高速艦の完成だ。
これを用いて私はとある場所・・・・・・・・・・・・・・・束が隠れ住む秘密ラボへと向かっているのだ。
東南アジアの島々にある地図にも乗らない小さな島、そこに束のラボが存在する。
本来は私が兵器開発兼試作機の実験などを行うために用意したモノをそのまま彼女に譲渡した施設だ。ここでは金属を作り出す鋳造施設もあり材質を一から製作することができる。更に製造、加工、改造と思うままにすることができる。
流石に今までの開発データは渡すことができないのでそれらを消去した真っ新な状態であるが彼女の研究に役立つだろう。
深海に作り出した進入路に入りトレミーを隠す。完全に進入路に入り込むと後方のハッチが閉まり装甲外の海水が抜けていく。同時に酸素が進入路を満たし漸く奥から施設に向かう為の入口が伸びてきた。
私はそのままトレミーから降り施設内に向かう。
施設内に入ると通路奥から二人の女性がコチラに向かってくる。
一人は束でもう一人はミツコさんだった。
「マスター、長い時間お疲れ様でした。」
「こっちはもう準備OKだよ~!」
ミツコさん達が迎えに来てくれたらしい。私も彼女らの言葉に頷いて返事をする。
「お待たせしてすいませんでした。こちらも全ての処理は済ませていますよ。」
笑みを浮かべながらそう告げる。それを聞いた束はところで・・・言いたそうに視線はトレミーに向いている。その瞳は昔から見てきた好奇心を刺激された時の輝きを放っていた。
「――――・・・・・・・・フゥ。あのトレミー、プトレマイオスを調べるのなら後でにしてください。一応アレも貴女への贈り物ですから。」
「本当!?あの戦艦貰えるの?!」
「えぇ、あれ以外は全てAE社の所属にしてますしこれだけは色々と情報を出せないモノがありますからね。トレミーをどうするかは束に任せますが一応あの艦は脱出経路として持ってきてますので程々に。」
「分かってるよ~!フヒヒヒ、楽しみだね~。」
だらしなく顔を歪ませながらガラス越しに頬ずりをする。
「―――――それではそろそろ向かうとしましょう。束、もういいですか?」
「あぁ!待って後もうちょっとだけ見せて欲しいよ~!」
ダダを捏ねる束を放っておいて私はミツコさんの案内を受けていく。
「わわわ、待ってよ!今行くから~!!」
慌てて駆け出す束を背にして少々苦笑を浮かべる。
彼女はドレだけ時が経っても変わらないのだなぁ、と何故か微笑ましく思った。
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自動ドアを抜けて試験場にまで到着すると様々な機械と共に一人の少女の姿が目に映った。
「クーちゃ~~ん!ただいま~。」
後ろから飛び出した束は駆け寄りながら銀髪の少女に抱きつく。
「キャっ!?・・・・・・・博士、お帰りなさい。」
「んも~。博士呼びしないでお母さんって呼んでって言ってるでしょう?」
「さ、流石にそれは・・・・・・ちょっと。」
照れたように笑う少女に束は何処か不満げに唸る。
しかしコチラの存在に気づいた少女がそんな彼女を引き剥がして近寄ってくる。
「お久しぶりです秀博士。」
「えぇ、元気そうで何よりですよ、クロエ。」
私はそう言って目の前にいる少女、クロエ・クロニクルに微笑みかける。
彼女は束が連れてきた少女でとある国のデザインベイビーとして生みだされ最高の兵士育成としての取り組みであったがその後に現れたISの存在により彼女は新たなISのモルモットとして選ばれた。国連の監視下から抜け出した束が彼女の存在を知り自身の作り出したISが非人道的な方法で利用されているという事実に我慢ならず彼女を強引な方法で引き取ってきたのだ。
その時行動を共にしていたので私も彼女と面識がある。最初はかなり弱っており言葉すら発せられない状態だったが今では自由に動き回り束のサポートの為に日夜励んでいる。
・・・・・・・・・・・・・・・・唯一の欠点と言えば彼女の作る食事だけだろう。
「コチラの準備は整っております。後は秀博士のロボットをジャンプポートに設置すれば何時でも使用可能です。」
クロエの説明を受け私は頷き直ちにグランゾンを設置しようとジャンプポートに向かう。だが・・・・・
「秀くん。」
束の声に私は足を止まった。
「・・・・・・・・あのさ、ちょっとお話があるんだけど。その、一君達のこととかで。」
何時ものように巫山戯たような声ではなく真剣な、それでいて何処か寂しげに感じる声だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・分かりました。ミツコさん、スミマセンが先にジャンプポートへグランゾンは既に出してありますから。」
「かしこまりました、マスター。」
「それじゃあ先に行ってますね。」
ミツコさんは礼をした後眼の見えないクロエの為に手を掴み誘導するようにそのまま奥の扉へと消えていく。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その後互いに言葉を発せずにどちらかが切り出すのを待ち続ける。
「・・・・・・・・・・本当にいいの?一君達の成長を見てからじゃなくて。」
長い沈黙の中束が静かに口を開いた。
「・・・・・えぇ。覚醒の予兆は確認取れました、後は一夏が己の力に目覚めるかどうかですから。」
「アキ君は?」
「十秋は私が望む力を持っておりません。しかし、彼にはまた別の力が眠っています。それを開花させるのは束に任せますよ。」
「にゃはは、責任重大ですな。」
苦笑を浮かべる束に笑みを浮かべて「でも、もう準備は出来ているのでしょう?」と尋ねた。
「勿論!」と部屋の奥に置かれている純白のISを示す。
「もうアキ君のISコアは準備してあるよ・・・・・・・・・後は完成したISをアキ君に渡すだけだし。けど一君のは―――」
「大丈夫ですよ、彼は必ずISと関わります。どのような流れであろうともそれは決して覆ることはありません。」
私は一夏に手渡した腕輪のギミックを思い返す。
束には説明しておりその後の処理も任せているので実質私ができることはもう無いのだ。
――――――――――本当にもう何も無いのだ。
「―――――――――――――――――うー。」
ふと聞こえてきた声に私は視線を向ける。その先には納得いかないというような表情で頬を膨らませている束が私を睨んでいた。
「私としてはもう少し一緒にいて欲しいんだけのなぁ。」
「フフフ・・・・・・それは流石に無理ですね。知っているでしょう?私の願いを。」
何故か彼女の行動が微笑ましく感じ私は笑みを零してしまった。
「知ってるよ。・・・・・・・・・・・・・貴方が望んでいるいことも、転生者という存在だということも。全部教えてもらったんだから。」
視線を逸らし俯きながら束は語る。
私は彼女の言葉を静かに聞きながらここに彼女を招いたときの事を不意に思い出した。
政府によって監視されていた彼女を拐いだし秘密ラボに連れてきて直ぐに彼女に私の秘密を語ったのだ。
自分が一度死んでいること、神の加護という呪いによって転生してしまったということ、私以外にも転生者がいる可能性があること、その結果私の親しい人達が危険に合う可能性があること。
最初に語った時は束も半信半疑だったが亜空間と私のグランゾンを見せることにより私の話が事実であることを理解してくれた。そして私の親しい人物は束にとっても大切な人物であるということに気づき私の計画に彼女は乗ってくれた。
計画という程の大層なものではないがそれを行うにはどうしても束の力が必要である。
それと同時に私という異物を消し去る必要もあった。
その私をこの世界から消し去るという行動の為に彼女に協力を求めた。
「私が知る限りでは一夏を起点として様々な怪事件が起こることでしょう。若しかしたら私などの介入により原作以上の被害を出すかもしれません。それにより一夏達が傷つく恐れがあるのです。」
それに加えて何やら裏で幾多の悪意が蠢(うごめ)き犇(ひし)めいている。
それは原作にあった組織以外の存在が。全貌は掴めなかったがそれらは皆一様に一夏達を、IS関連を狙っていた。
「ミツコさん達には引き続き全勢力の監視と報告を任せておきます。どうか有効に彼女を使ってやってください。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「資金や鋼材は全て使用してもらって構いません。何でしたら新たに戸籍も用意して行動しやすいように手はずを整えておきますので。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
束は何事も発せずにただ俯き続けてる。その表情は見えず何を考えているのか確認できなかった。
そんな彼女の様子に私も話を辞めて束に近づいた。
「・・・・・・・・・・・・・・私もね、分かってはいるんだ。自分を押し通してきたから他の誰かのことを言う権利は無いって。それに散々秀くんに迷惑をかけて来たんだ、それに大して何らかのお返しをしないといけないって感じている。けどさ・・・・・・・・・・・」
俯いていた顔を上げ、表情を晒す束を見て硬直してしまう。
静かに彼女は・・・・・・・
「離れたくないなって思うんだ。」
涙を流していたのだ。
「あ、あははははは!変なこと言っちゃったね、全く束さんはそんなキャラじゃないんだからもっとおちゃらけた感じで話さないと。うん、任せてよ秀くん!この束さんがきっちりと秀くんの居ない間の世界を守ってみせるからね~!」
何時ものようにあっけらかんと笑い続けて話す束。
そんな彼女を見て私は、・・・・・・・・・・・・・・・・・
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幼い頃の私にとって秀くんはとても大切な存在だった。
物心がついた時には常に私の隣にいて色んな事を教えてもらっていた、それを当時は不思議に思うことはなく両親に尋ねても曖昧にしか返さないのでちゃんとした答えを出してくれた秀くんが大好きだった。
この頃の好きっていうのは親愛の意味だったと思う。それが何時の日か親愛以上の意味を持つようになって・・・・・気がついたら彼の事が気になっていた。
・・・・・・・・フフフ、にしてもこんなに捻じ曲がった性格をしていた私がねぇ?
人が一番大切にしているコミュニケーションを放棄してただ自分が望むように生きてきた私が、両親すらも気にかけることが無くなっていた私がイッチョ前に『』をしているなんて。
でも、それは仕方がないことなのだろう。
彼が居なかったらきっと私は歪んだ性格のままで箒ちゃんと関わり歪んだ愛情を示していただろうし、ちーちゃんとだって今のような関係を築けていなかっただろう。・・・・・・・・・・IF(もしかしたら)なら私がちーちゃんを○○ていたのかもしれないし。
でも彼がいてくれたから私は箒ちゃんを好きでいられた。両親を好きでいられた、チーちゃん達と友達になることができた。
私を支えてくれた・・・・・・・・・ううん、『私』を作り上げたあの人が私は『』していた。
―――――きっと、あの人はそう言った感情を私には向けていないのだろう。
長年隣にいたのだ、それくらい察せられる。あの人はそう簡単に誰かを認めたり懐に入れるような人ではない。しかし一度でも『大切な存在』と認識して認めたのなら持てる全てを持ってして皆を守ろうとする。
その中の一人としてしか私は認識されてないだろう。若しかしたらまだまだ手のかかる子供としてしか見てないのかもしれない。
そうだとしたらかなり失礼なことだよ?これでも私は大人なんだから・・・・・・・・・・・・。
・・・大人、そう年齢だけで見れば私はもう立派な大人だ。けれど、それがほかの人から見ればそう大層な人間ではない。今の私が一人前の大人とは言えないのは分かっているしISによって様々な人間の、そして私の大切な人達の未来を壊してしまったという自覚はある。
・・・・・・・・でも、それでも私には夢があったんだ。
「この果てしない『宇宙』を飛び続けたい、何の縛りも枷もなくただ自由に、思うがままに。」
これが私の夢だった。
この夢を叶えたい、そう打ち明けた時チーちゃんと秀くんは手伝うと言ってくれた時は嬉しかったな。
そうして完成したISは世界に認められた。――――――――――既存の兵器を上回る兵器として。・・・・・・
私の生み出した子供たちがただ人を殺すだけの存在と一緒くたにされて兵器としてのレッテルを押され続けられることに。
悔しく、憎くて、それでいて・・・・・・・・・・・・・悲しかった。
でも分かっていたことだ。あの『白騎士事件』を行えば私のISの性能を世界に認められるだろうという考えで行ったこと・・・その結果ただの兵器として見られるだろうことも、想定していたことだ。
だけど・・・・・・・・・・誰でもいいからあのISに篭っていた願いを正しく理解してくれる人がいて欲しかった。結果は散々で私は政府に保護という名の監禁を受けて、家族は私の所為でバラバラになり軟禁に近い生活を余儀なくされた。そんな中でも、政府の人間に連れてかれる私に必死に手を伸ばし泣き喚いていた箒ちゃんを見て堪らなく罪悪感を覚えてしまった。それからの3年間、私にとっては無駄と言ってもいい歳月であった。無価値の大人達や私以下の知能しかないグズ共が私のISを調べ何とか量産させようとして何度も失敗しその結果私が手作りでISコアを作らなければいけない羽目になった。
特に何もしてはいないし聞かれたことはちゃんと答えてやった。一度目の質問で正確に答えてやったのに何度も同じ質問しかして来ないグズに嫌気がさし、無口になると遠まわしに家族を脅して来る無能な大人ども。設計図も見せたし開発経路も教えてやった、それでも奴らは設計図を見ても「不可能だ」「有り得ない」「他にちゃんとした構造があるだろう」と意味のない言葉しか発さない。
今までが以下に恵まれていたのかを理解してしまった。
私の隣に秀くんがいて一度聞いただけで理解し見直した方がいい箇所を的確に見抜いた彼を常に見つめ続けていたからかココで出会ったグズ達がどうしようもなく哀れに見えて仕方が無かった。
それからは3年間の内に467個のISコアを作り出したが製造には1割も労力を割いていなかった。
大した使用法でも無いのに私が作り上げたISを我が物顔で兵器として扱われるのは我慢ならなかったから。アソコでの楽しみと言えばチーちゃんの闘いっぷりを見ることと内密に秀くんとの連絡ぐらいだ。
そして3年前の大震災の日、あの時から私の中で妙な胸騒ぎが起きていた。
それから直ぐにチーちゃんが日本代表を引退したという連絡を受けて更に嫌な感覚が胸をついた。
その感覚は正しいものだった、チーちゃんの記者会見の後に私の目の前に秀くんが現れたのだ。
突然に空間を割いて現れる姿に私は本で見た『カミサマ』を連想させるものだった。
伸ばされた手を掴み私は秀くんに導かれるまま脱走を行った。
流石に何の痕跡もなく脱出されたからか捜索は難航し終いには世界的な指名手配という形でしか手を打つことができなかった。
誰も空間を割って逃げたなどと思わないだろう、かくいう私自身も実際に目にしなければ理解できなかったと思う。それほどまでに秀くんの技術は私の上をいっていたのだ。
そして彼に連れられて今のラボに住み着くこととなった。
その代価して今後起こるであろう事件と一君達のフォローを任された、最初は秀くんが言っている意味が分からずに不覚にも何度も聞き返してしまった。これではあのグズ達の事を言えない。
そうして何とか理解し彼の秘密を知って私は嬉しさと共に不安に満たされるようになった。
彼の出生の秘密、カミと呼ばれる存在、彼の持つグランゾンというオーパーツ。
そして彼の願い・・・・・・・・・・それを聞き入れて私は彼に協力することを誓った。
誓う事しかできなかった、もしあそこで私が協力しなかったら彼は私抜きで計画を進めていただろう、それだけの力が彼にはあった。
私よりも上手く世界に溶け込み、それでいて何もかもを制御していた。私が目をつけていたPTなども彼が手がけたモノと知った時は驚愕の前に納得という感情があった。
最も会社から人材に含めてその全てが彼の手作りと聞いた時は私らしくない声で驚いてしまったが・・・・。
流石の私でも人型の、それも人間に最も近いロボットの製作は未だ出来ていない(考えたこともなかったという理由もあるが)。故に最初に挨拶の際に出会ったミツコさんにみっともない嫉妬心を燃やしてしまったのは私にとって黒歴史である。
そして秀くんに連れ出され今に至るまでの3年間に私は秀くんから凡ゆる物事を教わり続けた。
機械関連は勿論のこと資金調達のための経営、人間関係からのトラブル、それの対応策。そしてコミュニケーションの方法・・・・・・何もかもを知り尽くそうと暇があれば秀くんに話を掛けていた。
そしてその合間にクーちゃんの存在を知って私の作り上げたISが誰かを苦しめる為に使われていると知り今まで感じたことのない怒りを覚えた。秀くんに協力を求めてクーちゃんを拐い、研究う施設のデータを完膚なきまで破壊し二度とその研究が行えないように徹底して関係者を洗い出し全員牢屋にぶち込んでやった。
それ以来私はクーちゃんを実の娘のように扱い育てている。彼女なら私の願いを正しく理解して受け継いでくれると信じて。
・・・・
・・・
・・
・
あっという間に期限となる3年間が過ぎ秀くんは完成した装置を設置し後の始末を終えると私たちのラボに戻ってきた。
そして・・・・・・・・・・・・・・・
「離れたくないなって思うんだ。」
私は顔を上げて秀くんに訴えかけるように言ってしまった。
みっともない、この天才である篠ノ之束にあるまじき行動だ・・・・・・・・・けれど偽りない本心でもあった。
私は貴方が好きだ、今まで貴方に話しかけていたのも知識欲ではなく貴方との繋がりを保ち続けたいという想いだけだった。貴方が消えてしまう今になって漸く理解した、私は貴方が好きなんだ。
「あ、あははははは!変なこと言っちゃったね、全く束さんはそんなキャラじゃないんだからもっとおちゃらけた感じで話さないと。うん、任せてよ秀くん!この束さんがきっちりと秀くんの居ない間の世界を守ってみせるからね~!」
そう言って私は空元気で彼に微笑みかけてる。
卑怯な方法だ、本当に卑怯でどうしようもない。涙を流しておいてそんな顔をしても決して納得できるはずがないのに・・・・
ほら秀くんも微妙そうな顔をしている、私らしくない。本当に・・・・・・・・・・・・・・泣きたくなる。
ガッ!!!
「ッ!?」
一瞬、彼から視線を逸らした瞬間に私の身体は彼に引っ張られ抱き寄せられていた。それを私は抵抗もせずにただなされるがままに抱きしめられ、いや自ら彼の腰に手を回している。
「・・・・・・・・・・束。私は自分のしたことに迷いはありません、私は私の望むように生きてきました。それを邪魔するモノには徹底した排除していった極悪人です。その上自分勝手で自分達の介入で歪みつつあるこの世界を放っておいて他の世界に逃げようとする卑怯者です。」
「・・・・・・・・」
見上げると秀くんは語りかけ続けている。
「その上私の代役として一夏に戦いを強要させている、文字通りのクズですよ。・・・・・・・・・・束、こんな私なんかよりももっと「それ以上言ったら怒るよ?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・束?」
私はその先を口にしようとするのを遮り抱きしめる力を強くする。
「秀くん、世界ってさたった一人の力の所為で壊れていくことなんて絶対にないよ。私が世界を変えたって言われ続けているけれど、それは違う。私の作ったISを私利私欲の為に使い始めた国上層部達の思惑によって歪んでいったんだ。確かに始まりの種を作ったのは私だよ、けれどそれをどう使うかによって色んな結末にもなる。」
私は瞳を閉じてそう呟いた。
私が作ったIS、それは人が宇宙に上がり無限の可能性があることを証明するための翼だった。
それが国の為、地位の為と何も知らない大人達によってあることないこと補聴して今のような女尊男卑に近い世界に変わりつつある。
誰が使うか・・・・・・・これによってISは翼は希望にも兵器にもなるのだ。
故に私はこの世界に絶望しかけた。魂が重力に縛られて大空を見上げたことのない国のトップと持たざる力に酔いしれ自身が尊いものだと錯覚しているクズ女達に、そしてそれにより比例的に落ちぶれていく軟弱者達に。
それでも、私は宇宙を目指したい。腐った世界を綺麗にするのではなくそれすらも乗り越えてISの正しい在り方を示し続けていきたい。
「私一人じゃ到底無理だよ。けれど私にはチーちゃんがいる。皆がいる。だから変われる・・・・・・・・・・・・・・・・たった一人の存在ではこの世界は変わらないのだから。」
私は抱きしめた腕を解き、彼の抱擁から抜けて彼の手を掴む。
「私は待ち続けるよ、秀くんが帰ってくるの。・・・・・・・・・・・・ドレだけ時間が経つが分からないけどそれでも私は・・・・・・・・・・貴方の事を『愛』しているから・・・・・・・」
私は秀くんの手を掴む力を強め背伸び気味にして秀くんに顔を近づける。
そして―――――――
『――――』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・
束との会話を終わらせて私たちは二人の待つジャンプポートまで向かう。
二人同時に入るとそれに気づいたミツコさんと気配で気づいたのかクロエは意味深にニヤニヤと笑みを浮かべていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・久々に羞恥心を刺激された気がする。
この『白河 秀』になってから初めてではないだろうか?隣で顔を赤くしている束も相まって中々に恥ずかしい。
「―――ンンッッ!!それでもう準備は終わってますね、それでは直ぐに取り掛かりましょう。」
「畏まりました、ではマスターはグランゾンへ。」
「えぇ。それでは皆さん・・・・・・・また何時か。」
私はそれだけ言ってグランゾンへと歩みを始める。
振り返る一瞬束の顔を見てしまった、だが考えを改めることはない。
「世界はたった一人では変えられない。ですか・・・・・・・・・・まさか束の口からその言葉を聞けるとは思ってもいませんでした。」
人間嫌いで自身の能力を深く理解し一部の人間を除いた他者の価値ないモノだと認識していた彼女が。
彼女の夢を否定され醜い欲望で彼女が作り上げたISを汚された。一時前の彼女ならそんな彼らを粛清していただろう。だが違う・・・・今の彼女はただ夢を追い続けている。ひたすらに手を伸ばし宇宙に顔を向いている。
そう実感できて私は何とも言えない喜びを感じた。それと同時にネオ・グランゾンを手に入れてから、(・・・・・・・・・・・或いは生まれ変わってから)自惚れていた自身を恥じた。
「何時から世界などどうにでもなると思っていたのですかね?全くその通りだ。私だけが生きているんではない。賛同してくれるものも入れば頑なに拒むもの、人の足を引っ張り続けるもの。60億の頭脳と人の感情が私の力以下なわけがない。『人は一人では生きてはいけない。』誰の言葉だったか忘れてしまいましたが正に正論ですね、もし思うように全てを造り変えることが出来るのならばそれは生きることではなく単なる人形遊びをしているに過ぎない。」
本当にどうかしている。こんな体たらくでは転生する元となったシュウ・シラカワにも失礼だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・グランゾン。私たちは真の意味で変わらなくてはなりません、装甲や機能、力などの目に見えるようなものではなく己自身の精神から。」
そうだ―――それくらいの覚悟が無くては『カミ』に対抗できない。転移した先でただ力を振りかざしそれに酔いしれている愚か者に成り下がってしまう。強くならなくては・・・・・・・この世界には待ってくれている人がいるのだ。
『ジャンプポート起動します。マスター準備は宜しいですか?』
機械を通したミツコさんの声がコチラに届く。それにシグナルで返しシステムを起動させる。
禍々しい魔神はそれに応えるように二つの瞳を怪しく輝かせる。
「――――――――システムも良好。これよりパラレルワールドへの転移を開始します。」
私はその一言だけ告げてプログラムのトリガーを押す。
今回の転移は亜空間の領域を使用しそこに擬似的なブラックホールを生み出すというものだ。
ブラックホールそのもの自体が宇宙と外宇宙を繋げるゲートとして使用し更に次元連結システムの平行世界への移動を敢行する。これで確実に私は他世界への移動を行えることとなる。しかしそれは理論上の話であり未だに実験を行っていない(そもそもそれを行うためには今のグランゾン程のオーバースペックの機体が必要なので実質不可能といってもいい)。
故に今回が初の試みのためその観測結果を束たちに任せているのだ、ゆくゆくは指一本での群体による平行世界への移動を行えるようにするために。
勿論侵略などという無駄な行動をするためではない、万が一のための備え程度で考えているぐらいだろう。
『観測途中経過・・・順調です。』
『こっちのカメラも問題ないよ!』
束とクロエもモニター計測機を見比べ異常がないかを常に調べ続ける。
「それではこれより開始し『――――』?」
開始します、そう言おうとしたとき私の腕につけていた腕輪が音もなく震えたのだ。
これは一夏達の腕輪と同じような作りになっており更に一夏達に何らかの変化が起こった際にはこうして震えて知らせてくれるように作っている。
私はそれを見て直ちに束に一夏達の状況を教えてもらうように伝えた。
そして送られてきた映像を・・・・私はこの目でハッキリと映した。
『――――――そうか、コイツは風の魔装機神。そういう名前なのか・・・・・・・・・・・・・・・へッ!いいぜさっさとこのデカ物とあのバカ女をぶっ飛ばすぞ、行くぜ『サイバスター』!!!』
青白い西洋の甲冑のようなフルスキンに背中には3対の6枚の翼、そして装飾が施され光の反射で文字が浮かんでいる西洋剣『ディスカッター』を握り締めた騎士、サイバスターの姿を。
「――――・・・・・・そうですか。もう、始まるのですね・・・・・・・・・・」
私はレバーから手を放し静かに瞳を閉じる。そして何かに祈るように呟いた。
「どうか貴方の物語を描き続けてください。それが私から貴方へ望む唯一の願いです。その力、『サイバスター』と共に・・・・・・・・・・・・」
それだけを告げて私は私はレバーを強く握りスイッチを押した。
視界が光によって遮られていく。
音も感覚も薄れていき自身が何処にあるのかすら分からない。
そんな中、声が聞こえた気がした。
―――行ってらっしゃい。―――
えぇ、行ってきます。
ここまで読んでくださり有難うございました。
本来なら夏休み中で終わらせるつもりだったこの小説も気が付けばもう10月です。
色々とネタバレすると束さんと一緒に異世界に行ってイチャコラさせようぜ!という展開に持ち込もうと思ってたんですよハイ。ですが気がついたら真面目路線でこの話を書いていて「あ、この人はついてきませんわ。まだやり残していることがたくさんあるし・・・・」となり秀のみが異世界へと送ってしまいました。
さて、話は変わりますが次回作のことで少しお話をしようかと。
全壊・・・・・もとい前回アンケートを取りその結果として二つの案が生まれました。
一つが「スーパーロボット大戦IS(仮)」です。
2の案を元に一応原作を沿っているように進めていこうかと思っています。
もう一つが「秀くんの異世界縮退砲」です。
恐らくギャグ満載の大暴れになるかと、展開的にモウヤメルンダって言いたくなりそうですけれど。
ということでこの話の続きはただいま作成中なのですがリアルが忙しく来年就活が始まったりと忙しくなるので次回作が上がるのがいつになるのか分かりません。
大体のプロットと流れ、そして話数が出来次第またここで書いていこうと考えていいます。
そのときはどうぞよろしくお願いします。
ここまで読んでいただき誠に有難うございました!!
( ^ω^)ノシ