インフィニット・ストラトス~進化を望むマジン~ 作:スタノヴァ
また、最後の方にイジメを示唆する表現があるので苦手な人はお気をつけて。
グランゾンの初の性能試験から更に4年の月日が経ち私は高学年の六年生へと進級していた。
私の近辺では大きく変わったことは無く平穏そのものですが・・・・・私ではなく束の方は色々と変化していった。
まず一つ目に束と両親との関係に溝が出来始めていったことだろう。
原因は母親の箒に対する愛情の深さである。彼女は初めての娘として束を授かってからいち早く自身の娘の異常さに気がついたのだ。何事も予想よりも先の思考を行える頭脳。1から10~100を理解するというのは傍から見れば不気味でしかないのだろう。徐々にだが彼女から距離をとり始めてしまったのだ。それに加えて父である柳韻さんは不器用な性格であり娘と母親の関係が不安定になりつつあるのを知っているがどう口にすれば良いか分からず時々嫌がる束に剣術を教えるということでしか語ろうとはしない。・・・・・いや、出来ないのだろう。
二つ目はクラスメイトからの完全な孤立状態だ。今はまだイジメなど目立った行動をするものはいないが彼女には決して話を振らず教師からの伝言を伝える以外誰も会話をしようとはしなくなっていった。そして束自身も低脳と見下しているクラスメイトと関わりたくないと思っておりこの孤立状態を好んで作っているのが手に負えない。確かに彼女は天才だろう・・・・・・だが人との団結を知らずに育つと将来ロクなことにならない。天才系にアリがちな自分以外が悪いと周りとコミュニケーションを取らずに自分自身の考えが常に正しいという思考になってしまう。
私自身、自分の行っている方法が一番効率がいいのに何故他は無駄なことをしているのだろうか、と感じることが多くなっていた。・・・・シュウ・シラカワの持つ能力「天才」の弊害だろう。
平凡であった頃の想いと天才である今の思考が噛み合わず歯がゆい想いをすることも暫しある。
どうにかして人それぞれの良さを理解させなければと考えるも今の彼女の周りには同じ天才の部類にいる私以外に対してのコミュニケーションを取れていないのが痛い。
少なくとも彼女が社会に出るまでには矯正せねばなりませんね。
そして最後の三つ目・・・・・それは去年転校してきたある生徒のことである。
名前は「獅子堂 神威(ししどう かむい)」。
容姿はかなり整っているが銀色の髪色に白い肌、赤と緑のオッドアイという日本人名にしては違和感が在りすぎる少年であった。そんな彼は5年の終わり頃に獅子堂は私達が在学する学校に転入し奇しくも同じクラスとなった。それだけならば良くある(奇妙な容姿の少年なぞあまり見かけないがこの際放っておこう)が彼が微笑む度にクラスの女生徒が歓喜の声を上げるのだ。入ってきた時には小さく戸惑いの声を上げていたにも関わらず彼女達は獅子堂の笑みを見た瞬間に彼の虜になっていた。女生徒だけではない僅かだがその笑みに魅了された少年も存在した。どうやら彼の魅了は同性にも通用するらしい、これは魔法の領域ではないだろうか?
話が脱線した・・・・・・この転入生が何故か他者と関わりを持たない束に興味を抱いたのだ。
彼女は彼の笑みを見ても動揺するどころか鼻で笑ってそれ以来口をきかないという徹底ぶりである。それにメゲないのかそれとも気づいていないのか分からないが毎日のように獅子堂は束に愛の告白に似た声を常にかけ続けているのだ。
これを見た女生徒達は面白くない、という風に更に彼女に対する風当たりが強くなっていった。
この三つの要員によって束は益々クラスメイト達から、両親から離れていき遂には私以外で笑みを向けることが無くなりかけていた。
・・・・・・・・・だが、何事にも例外があるように束は私以外のある人物にだけは自ら近寄り言葉を交わすことがあった。
妹の箒である。赤ん坊の頃から彼女を見ていた束は当初母を取られたという可愛らしい嫉妬によって彼女に近づこうともしなかった。しかし箒が一人で立つようになり行動範囲が広がるにつれて箒から初めてアクションを起こしたのである。
それは5年の夏休みのこと・・・・・私と束は自宅の一室共に作業を行っていた。
私から強請り私に作らさせたノートパソコンを使用し製図ソフトを起動して何らかの設計図を書き込んでいる。それを私は時折視界に映しながら近くに置いてある本を読む・・・振りをしてその裏で亜空間での実験データ、エネルギー開発の成果を確認していた。
互いに言葉を交わさないがその静かな時間が私達はお気に入りでよく共に行動しているのだ、そんな時だった。
「ねーた!」
暫し私以外から声をかけられることが無かった自宅で私以外の声に引き止められたのだ。
驚いた表情をしていた束だったが直ぐに無表情になりあっちに行けと冷たくあしらい続けていたが幼い彼女には理解できないのだろう。直ぐ様束の傍により足に抱きついて「ねーた!ねーた!」と声をかける。次第に苛立ちを見せるようになっていたが私が端で笑っているのを見てブスっとした表情で睨んできた。
「シュウくん、見てるんだったらコイツを引き剥がしてよ。」
そんな彼女から視線を話すように近くにあった本で顔を隠し笑いながら話す。
「フフフ、嫌ですよ。なんせ久しぶりに私以外の人に無表情以外の顔を見せているのですから、これを期に少しは妹とのコミュニケーションを取っておくのも一興ですよ。」
「嫌だよ、だってコイツ私の邪魔しかしないんだよ。」
不機嫌な顔で箒の両脇を掴み私の方へと手渡してくる。
私の腕の中に押し込まれた箒はキョトンとしていたが姉から離れてしまったことに不安げな表情を浮かべていた。それを見た束は一瞬表情が崩れるが直ぐ様顔を強ばらせノートパソコンに視線を戻した。
「ねーた・・・・」
徐々に顔を歪めていく箒、それを見かねて私は箒を抱きしめて優しく声をかける。
「フフフ、安心してください箒。束も箒のことが大好きなんですよ、ただちょっと恥ずかしがって態度に出ないだけです。」
「ちょ、ちょっとシュウくん!?」
私の言葉に反応したのかいつもよりもトーンの高い声で抗議する束。
「貴女もいい加減妹との接し方を学ぶべきですよ。」
「だってソイツ・・・・・」
むくれながらジッと箒を見る。
束のいつもの言い分は知っている。『私みたい理解してくれないバカなんだもん』と言って彼女は妹から離れていってしまうのだ。
子供らしい言い訳だが何時までもそれを理由にさせる訳にはいかない。
「当たり前でしょう、この世界で束という人間は1人だけなのですよ、同じように思考を働かせ同じような成果を出せる天才はそうそういませんよ。」
「だって、シュウくんがいるし・・・」
「私のことは置いておきましょう。・・・それよりも私が言いたいのは妹を少しは見てあげなさいってことですよ。」
私の言葉の意味を理解できていないのか不思議げにコチラを見つめる。
「ちゃんとって、さっきもみてたでしょ?アイツのことを。」
「そういう意味ではありません。私が言いたいのは篠ノ之箒という世界に1人だけの貴女の妹としてちゃんと認識してあげなさいと言っているんです。」
「・・・・・・・・・・・・」
「束、貴女はまだ一度の箒のことを名前で呼んでいないでしょう?それは貴女が意識的にその他の有象無象としてみようとして貴女自身を守ろうとしているからですよ。」
「そんな、私は・・・・・」
私の言葉を否定しようとして口を挟むもその後が続かず言いよどむ。
「さぁ、彼女の名前を言ってご覧なさい・・・・・・・まずはそこからです。」
箒を静かに立たせて束の元へと向かわせる。
暫く視線をを逸らし続けていた束だったが意を決したのか箒の顔をしっかりと見つめて・・・・
「・・・・・・ほ、箒・・・ちゃん・・・・・・。」
「ねーた!!」
小さくとも自身の名前を呼んでくれたことに箒は喜び彼女に抱きついていった。
その行動に束はあたふたしていたがその光景はとても微笑ましいものだった。
それ以来、束は箒の世話をよくするようになり彼女も自然と笑みを浮かべるようになっていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そうして束は私と妹以外の人間を遠ざけるようになり獅子堂の登場でその傾向が高まり始めるようになった。・・・・・・・・ホント、人によって落差が有りすぎです。
そして今日も彼女は1日無表情で自身の机に座り無断で持ち出しているPCに視線を落とし作業をしている。
それを周りは何時ものこととして認識することもなくそこに存在しないかのように振る舞い続けている。そこに今日も懲りずに奴は来た。
「やぁ、おはよう束。」
「・・・・・・」
獅子堂が教室に入り爽やかな笑みのままいの一番に束の元に向かい挨拶をする。
それを視界に入れることもなく手を止めることなく動かし続けていく。
「それにしても束はいつ見ても可愛いね、まるで天使のようだ。」
彼女の正面に周り何とか会話をしようとするが視線を上げることすらなくキーを打ち続けていた。
頬を引きつかせながらも何とか笑みを保ち続けている。
「はは・・・・・・・・そういえば今日の夕方に僕と遊びに行かないか?近くに美味しいケーキ屋があってさ。名前は・・・」
「ねぇ。」
話を続けてようとする獅子堂を遮るように言葉を発する束、漸くの反応に喜色を浮かべ笑みを深める獅子堂。
「なんだい?もしかして他に行きたい所でも「うざい。」・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」
「最近さ、お前なんなの?訳分かんないことばかり呟いて私の邪魔をして無駄な時間を使わせてさ。いい加減に迷惑なんだよ、二度と私に話かけてくんな。」
特に声を荒げることは無かったが流れる罵倒には確かに苛立ちを感じられた。
獅子堂はいきなり罵倒されるとは思っていなかったのか呆然とした表情で固まる。
「な、何だよ。別に照れなくても・・・・」
「これを見て照れてると思えるとしたらお前の頭は腐ってるか不要だよね。何時も言ってるけどさ私無駄なことはしたくないの。でも何度言っても理解できないゴミみたいな奴がいるとは思わなかったよ、大体なんなのその目と髪はカッコ付けのつもり?気持ち悪いんだよ笑うな化物。貴様の所為で最近銀色を見てるとイライラが溜まってしょうがないの。本当にこれ以上私に纏わりつくんならこれからは徹底的に駆除するよ。」
「・・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・」
「だからさっさと失せろナルシー野郎。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おうふ・・・・
ま、まさかあの束があそこまで罵倒をするとは思いませんでした。無表情のまま垂れ流される罵倒の嵐に流石の獅子堂もポカンと口を開けていた。周りのクラスメイトもそうだ、声を聞いたと思ったらスラスラと呪文のように流れる罵倒に唖然とする者、いい気味だと静かに笑っている者、その罵倒の嵐に静かに興奮する者と・・・・・・・・最後以外は予想通りで笑えてくる。
そこに教師が教室に入ってきて皆を強制的に席に座らせて授業を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その後は獅子堂も束の元に向かうこともせずただ俯いてナニカをブツブツと呟いている。これで彼が懲りてくれれば私も楽なのですがね。
大変なのですよ?貴方が彼女に近づくたびに必ず私にその愚痴を喋りに私の時間を削るのだから。
・・・・・・・・変なことを考えていないですよね、もしそのような事を考えているのなら少々手を打たなければ行けませんし。
そして、次の日・・・・束の机が無くなりロッカーの中には動物の死骸が強引に詰め込まれていた。
今回は束が如何にして人間嫌いもとい、人間不信に至るかということを表現、同時に束が箒を完全にほかの人間とは違う存在だという認識の為の話でした。
そのせいかスパロボ成分がががががが!!
次回は転生者側の視点から話が進み、・・・皆さんお待ちかねの魔神の降臨です。(ゲス顔