インフィニット・ストラトス~進化を望むマジン~ 作:スタノヴァ
戦闘はさっさと済ませて次回の本命である話につなげたいものです。
俺が死んで新たに生まれ変わって3年が過ぎた。俺の前世はどこにでもいるような学生で運動が出来るわけでも勉強が出来るわけでもない、メガネをかけたパッとしないやつだった。
何をしても楽しいと思えることがなく対して友人もいた訳ではない俺には小説やゲームなどといった所謂娯楽のみが全てだった。しかし、そんな俺に転機が訪れた。
その日は予約していたISのゲームを購入するために自宅を出ていた、交差点が青になり自電車を漕ぎ始めた時、横からゴッ!と激しい衝撃を受け俺は遥か遠くの場所まで吹き飛ばされ頭を強く打ち付けて死亡した。
「なんて下らない人生だったのだろう」死ぬ間際にそう思いながら意識を手放すと次に目が覚めたのは光の玉と出会った。そこで俺が完全に死んで神と呼ばれる存在に選ばれたということだ。
それからの、俺の新たな人生はバラ色だった言っていい。両親は存在せず神に頼んだハイスペック&優れた容姿、そして最大の特典によって障害は存在しないと言ってもいいほどだった。
転生先が日本の沖縄という巫山戯た状態だったのはムカついたがそこにいるモブ達に特典の一つであるニコポを駆使して篠ノ之という苗字を調べてもらいその人物が住む地域を調べてもらい、そこに転校するための資金と書類を書いてもらい転生してから3年の月日を経て漸く俺はISのキーパーソンとなる少女「篠ノ之束」の通う学校へと向かうことが出来た。
転入初日は緊張したぜ、高まる期待とこれからの余生に笑みを抑えることができなかったくらいだ。
どんなやつでも初対面で俺の笑みを受けて虜にならなかったやつはいなかった。だからこそ俺は束も虜にしてやることくらい造作のないことだと考えていた。
・・・・・・・だが、現実を見てみると俺の虜になるのは雑草程度のモブばかりそれに数人は俺の笑みに嫌悪感を覚えたらしくできる限り離れて行動している。そして肝心の束は俺の見るどころか認識しているのか定かではないという体たらくだった。
この事実に俺はショックを受けていた。今までどれだけ上手くいってきたニコポがここに来て意味のなさないのだから仕方がない。
もしかして今のニコポ程度じゃ原作キャラである彼女には効果が薄いのではないか?そう思った俺はそれから毎日、束に話しかけるようにした。
その内何度か視線を上げてコチラを見ることがあったがその際浮かべた笑みにすら眉一つも反応しなかった。
それから暫く俺は虜になったモブどもの面倒をみながら束を攻略すべく周りから情報を集めていた。すると原作では描かれていないことがいくつかあった。
まず織斑千冬がこの学校に存在しないことだ、確か原作では古い友人だと描かれていたがどういうことなのだろう?それともう一つ、クラス中が彼女を避けているためそのお守りをとある生徒に押し付けているらしい。その名前は「白河秀」、容姿も良く頭もイイという俺の虜になった女子達ですら目の前で褒め称えるいけ好かない奴だ。一瞬奴は俺と同じ転生者ではないかという思考に至ったがそれならば常に束の傍で俺に対して威嚇しているはずだ。それをせずに遠巻きからコチラの行動を見ている程度で済ましているということは完全なオリキャラ、モブということになるのだろう。
試しにIS関連のキャラの話をしてみても反応どころか意味が分からないという表情だった。
それ以来奴の警戒を解いて束のみに集中していたのだが・・・・・・・遂に束から口を開いてくれたのだ。
もしかして今までの努力が報われたのでは?そう高まる気持ちで彼女に聞き返すと、そこから俺の心を踏み潰す言動が流れた。
「うざい」「気持ち悪い」「ナルシー野郎」
どれも俺に惚れたようなセリフではなく完全に俺を見下し貶めるような言葉のみだった。
コチラを真面に認識せずそれこそその他大勢を見ているかのようなあの視線、俺が盛大に振られていることに周囲の男どもは嗤い俺のことを馬鹿にしていた。
ふざけんなよ・・・・・
俺は転生者だ、俺は選ばれた存在なんだ。その俺がどうして高々ガキ一匹にここまでコケにされなくてはならない?ISの製作者だからか?天才と呼ばれているからか?調子に乗るなよ!この俺を神に選ばれた俺にこんな扱いをしやがって!!
そこからの俺の行動は早かった。
虜になった女子達に命令し束達が去った後で机を焼却炉で燃やしロッカーの中身のグチャグチャにして終いに近くで捕まえた動物の死骸を詰め込んでやった。
次の日、それを見た奴は直ぐ様教室から出ていきその後も姿を見せなかった。
胸がスカっとする気分だ。直ぐ様教師が現状を確認すると同時に誰がやったのか?!と怒鳴るも誰も出やしない。当然だここにいる奴らは殆どが束を嫌っている。そんな奴のために誰がやったなどという証言はしないだろう。それからHRを使用しても誰も出なかったためクラス全員がロッカーの片付けをしろと言ってその場を後にしていったが誰も動こうとしない。それどこか男子は固まってざまぁみろと囁き、女子達はあの子普段から調子に乗ってるのが悪いのよという言葉があちこちで聞こえてくる。その声に嗤いが溢れそうになったが何とか抑えることに成功した。
ここで笑っていれば俺がやったと思うことだろう。虜の何人かに視線を送り良くやったと褒める。
さて、今頃奴は皆に隠れて泣いていることだろうしそれを慰めに行きますかねぇ。
少しは身の程を知ってお淑やかになってくれれば俺としても嬉しいのだけど。
そう内心で思い立ち上がろうとした瞬間、教室の後ろ扉が開いた。
全員が話声をやめ其方に顔を向ける。そこにはゴミ袋を持った白河の姿があった。
あぁ、きっと教師に頼まれたんだなと俺は思い労いの言葉をかけようとし・・・・
「皆さん、こんな話を知っていますか?」
いきなり奴が話を始めた。
静まり返ったクラスに奴の声は驚く程響いて聞こえ穏やかにしかし薄ら寒いナニカを感じながらも俺達は奴の声が耳から離れなくなっていた。
「人を呪わば穴二つ・・・これは他人に害を与えたのならばその害は必ず自身にも降り注ぐという意味です。今回のように誰かを貶めようとするならばやった本人に必ず帰ってくる、それ故に人と人とのコミュニケーションを大事にするのですよ。確かに彼女は他者とのコミュニケーションを疎かにしていましたが貴方達に害を与えたことはありましたか?精々口で申した程度でしょう?それをこのような形でしかやり返せないということは彼女が言っている通りの低脳であるということを認めていることにほかなりません。」
「な、何よ。そもそも白河君もアイツに苦労かけられてるじゃない。なんであんな奴の肩を持つの?」
一人の女生徒が白河に批判にも似た疑問をぶつける。振り向くと俺の取り巻きのリーダー格の女子だった。
それを奴は表情を見せることなく淡々と言葉を紡いでいた。
「その程度の苦労など可愛らしいものですよ。周りとの関係を上手く取れずただ自分の世界に閉じこもっている程度なのですから、それに彼女は徐々にですが周りとのコミュニケーションを取ろうとしていました。人数こそ少ないのですがね、それも今回の所為でやはり他の奴等は意味のない行動しかしないと再認識してしまうようになったのですよ。私が長年かけて諭してきたことも全てが無駄になってしまいました。」
そこまで呟いた白河は顔をクラス全員に向き、
ッ!?
全員が息を呑む、そこには呆れた様子の白河ではなく能面のような無表情でコチラを見つめてくる。それはまるで害虫を駆除するかのような冷徹な瞳でその視界に入るだけで皆は言葉を発するという人特有の行動が封じられてしまったのだ。
いつの間にか奴から、白河から離れるように皆が距離をとり奴が発するであろう次の言葉を待ち続ける。
「いいですか、もう一度言っておきます。『他者に悪意を持って害を与えたのならばその悪意は必ず自身に帰ってくる』のです。それからは決して逃れることのできない、夢々お忘れなきように。」
声に覇気を感じ少々強声で話す白河。反論し傍に近寄っていた女子は腰を抜かしながら涙目になり震えている。かくいう俺自身もその迫力に何も出来ずに座り続けるだけだった。
その後は何事も起きずに白河が淡々とロッカーを掃除し新しく机を運んでそれを確認した教師からの説教で1日が終わった。
結局俺は束に声をかけるどころか関わることすらできずに自宅に帰っていったのだ。
そして次の日、取り巻きのリーダー格の少女が突然登校拒否を起こした。
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・・・・・・・・・・はぁ、何時かは起こるだろうと思っていましたが思った通り束を対象としたイジメが発生してしまいましたか。束は大したことでは無いかのように(若しかしたら本当に何も感じていないのかもしれませんが)振る舞いその日は自宅へと直ぐに帰って行きました。
それでも彼女のことです、ヤられたことは何倍にして返すことでしょうし今のうちに慰めながら私の方で処理を済ませなければなりません。
まずは今回の事態の原因と犯人の特定ですね。誰にも話してはいませんが先月辺りからこの教室にカメラを仕込んでいたのですよ。それも赤外線機能を完備し深夜でも精密に撮ることができるものをね。それを亜空間を繋いで置けばレンズ以外が露出せずに撮影が行えます。
その結果、やはりというか犯人はあの獅子堂とその取り巻きたちでした。
獅子堂が彼女たちに命令を出し束の机を燃やしロッカーを汚したようです。
しかも管理人の目を誤魔化す為に麻酔薬を使用し眠らせてから行動するとはなんともまぁご苦労なことですね。
犯人の絞込みは済ませましたし後は束を慰めてコチラに彼らの処分を任せてもらうようにしてもらいましょうか。
「束、入りますよ?」
私は自宅に戻った後私は直ぐ様束の自室に向かいました。部屋には束がおり不機嫌な表情のままコチラに振り向き
「どうしたのシュウくん。」と返してくれました。
ふう、これで最悪の事態は避けれるかもしれません。束が本気で怒りを覚えている間は私にすら声をかけても無視してしまいますからね。その上で時間が経つと私の部屋に入り込んで抱きついたりゴロゴロしたりと甘えたいのかイライラを発散したいのかわからない行動をとりますから。
「まずはこれを・・・」
私は無事だったロッカーの荷物の内束愛用のモノのみを手渡しました。
そのいくつかは私が手作りして渡した物もあり少々古くなっているものもありましたが依然として新しいものを買わずに使用し続けてくれたものも無事に取り戻しました。
・・・・・・本当はこれらは壊されていましたが破片を回収し亜空間内の時間修復装置などを使用し物質の数時間前の状態に戻し復元することに成功したものを彼女に手渡した。
「ぁ・・・・・」
それを見た彼女は手をとめて受け取り優しく受け取った。俯いていたが頬の肉が上がっているのを見て安堵しているのだと認識した。
「それで・・・・・・今何をしていたのですか?」
私が尋ねると束は静かにPCに手を伸ばし私に見せてくれた。その画面には私が調べた情報、つまり今回の犯人の写真と住所、及び家族構成や両親の勤め先までデータが閲覧出来る状態になっておりもう少し時間が遅ければ彼女自身が彼らに制裁を加えていただろうことが容易に理解できました。
「アイツ等のデータ、その全てを調べてたんだ。それでまずはあの口汚いメス共の親の財産を没収して会社を倒産させてから多額の借金を擦り付けてやってから・・・」
「分かりました、もういいですから。」
本当に危なかった、下手すれば今回のことで完全に部外者の一般人にも被害が及ぶ可能性があった。流石にそこまですればその異常な光景に警察並びに政府が原因解明をしてくるだろう。この世界の警察は馬鹿ではない、金絡みの事件、それも多数の会社の一斉倒産などが起これば何らかの大事件が関わっているのではと勘ぐり全力で調べるはずだ。政治家に対してもそう会社のTOPレベルならコネクションとして存在する者もいるそのコネを一瞬にして失うというのはかなりの痛手だろう。何らかの組織に圧力をかけて仕掛け人の排除を狙ってくるかもしれない。
幾らなんでも「今の」束では国との政争並びに情報戦に勝てるかどうかは微妙だ。郡を成せばその実力以上の成果を発揮する。その状態で1対多数に持ち込まれればどうなるか・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・なるほど、そうでしたか。それで束、物は相談なのですが今回の処理を私に任せてはくれませんか?」
「シュウくんに?」
「えぇ。今まで彼らの行動を観察してきましたが今回のはあまりにおイタが過ぎます。ですがタカが彼ら羽虫如きに束が全力で行動するのはどう考えても時間の無駄なのですよ。幸い既に主犯である人物は特定できていますしその人物以外は適当に私が壊しておきますから束は手を出さずに見ていて欲しいんです。」
「・・・・・・・・・・・・」
私の少々(いや結構)無茶苦茶な要求に束は黙って何かを考えるような仕草をしている。これはも少し踏み込めば交渉成立するでしょうか?
「正直な話、今回の件は私も怒りを抑えきれないのですよ。私の大切な束に対してあのような行動をとり尚且つそれで楽しそうに嗤い続けているというのはどうにも許しがたい。しかし、たかが羽虫の所為で他の人達が悲鳴を上げるのを聞くのは精神上宜しくない。なら私が、この私の手でゆっくりと確実に壊してあげなければいけない。」
「私のため?」
語りだす言葉に反応し聞き返す束、あともうひと押しと確信した私は直ぐ様彼女に視線を合わせて、
「えぇ、貴女の為です。」
と優しく告げた。
暫くどちらも口を開かなかったがくひひと束から笑い声が漏れだした。
「そっか、そうかぁ~。私の、束さんの為か。うん、ならしょうがないね~。そこまでお願いされちゃァ束さんも答えない訳にはいかないよ。わかったそれじゃアイツ等の処分はシュウくんに任せるね?」
と満面の笑みを浮かべながら束は承諾してくれた。
私もその笑みに答えるように微笑みで返し、軽い返事したあと束の部屋を後にした。
束の許可を取ったのでこれで必要以上の被害は出さずに済みました。
とりあえずは見せしめも含めて主要格である少女には少々怖い夢でも見ていただきましょう。
なに、ほんの20秒で済みますよ。20秒ほど私のグランゾンとの追いかけっこに参加してもらうだけですから。といってもあちらの亜空間では20時間の追いかけっこになりますがね。
それが終わり次第次の日から一人ずつ亜空間に誘い込んで最後に獅子堂をどうするか、ですかね。
次の日、あの騒ぎが起きた次の日に一人の女子生徒が登校拒否を起こしその関係者達は暫くの間恐怖で震えることになったのですが・・・・・まぁそれはどうでもいいことですね。
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あの事件から数日が経ち、既に俺の取り巻き達は全員登校拒否をして学校どころか自分の家から出ることすら無くなってしまった。
あるものは髪の色素が抜け落ち、またあるものは虚ろな目で何処かを見つめ続けるようになりまたあるものは声が潰れる程の懺悔をし続けているという。
その実情を知った俺と俺のクラスメイトはあの日から来なくなった束にどうやって謝るかという相談で溢れ返り、同時に俺と行動していたら不幸になるという噂が立ち始め仲の良かった女子も含めて誰も近寄らなくなってしまった。どれだけニコポを使って靡かせようともそれ以上の恐怖に染められている人間には能力が通用しないようだ。
畜生!どうしてこんな目に遭ってるんだ、俺はただ幸せになりたいだけなのに。
そう悩み続けていると数人の生徒が俺を囲むようにして話だした。
「おい、獅子堂。お前篠ノ之に謝ってこいよ。」
「はぁ?!」
いきなりの言葉に俺は混乱してしまった。どうして俺が謝らなくてはならないのか?そもそもこいつらは俺がやったという事をどうして知っているのか?
「獅子堂くんが篠ノ之さんの机とロッカーをやったんでしょ?居なくなった美月ちゃんから聞いたんだから!」
「それにアイツが来なくなったのはお前たちを呪うために来なくなったって聞いたぜ?なんでお前の所為で俺達まで怖い目に合わなくちゃいけないんだよ!!」
そうだ!私達を巻き込むな!さっさと謝ってこいよ!!
周りから責め立てられながらも俺は必死に違うと弁明し続けた。
「俺じゃねぇって確かにそう話したのは俺だけど実行したのはあの女たちだ、あの女たちが実行してアイツ等がその仕返しを受けただけだ!」
そう言い放ったがその視線は冷たく俺を見ていた。
「自分がやった事を人の所為、それも女性の所為にするなんて最低。」
「見損なったわ、獅子堂くん。」
「な、何だよお前ら!?お前らだってアイツが出て行った後ざまぁみろとか言ってたじゃないか!お前らだけ善人ぶりすんじゃねぇよ!!」
俺は怒鳴りながらあの時言った奴の顔を見ながら言う。
それを言うと誰も何も言わなくなったが「さっさと謝れよ。」と言って終いには皆自分の席に戻っていった。
「巫山戯んじゃねえぞテメェら何だよ、俺だけに責任を押し付けるのか?!俺は悪くねぇ!!!」
どんなに俺が叫んでも誰も話を聞く耳を持たずに離れていく。
そんな時だ・・・
教室の扉が開きある人物が教室に入ってきた。
白河秀だ、皆奴が入ってきた瞬間に奴の元へと駆け出した。
「白河!篠ノ之は元気か?」
「白河君、私達篠ノ之さんが心配で・・・」
さっきまでの空気が嘘のように皆が皆不安そうな表情で話を始めた。
その全ては自身を守るための偽りの心配というのだから恐ろしい。
白河はその全てを静かに聞き流し何時も通りの笑みを浮かべて自身の席についた。
「皆さん、最近クラスメイトが相次いで体調不良で倒れているのに不安を感じているのは分かりますが少々落ち着いたらどうですか?まるでノロイから逃れようと必死になっているようにしか見えませんよ?」
穏やかな声で話を進めていく白河に俺は何とも言えない感情を芽生えていくのを感じた。
なんでアイツがあんなに余裕を持って行動できるのか分からない。
束の面倒を見ていたからか?それとも違う理由があるからか?
そう問いかけようとすると再びクラスに誰かが入ってきた。
先生だった。ソイツは俺を見つけるといの一番に俺の元に近寄って少々話があると言って手を引っ張っていった。
「はぁ?!施設に入れ!?」
職員室に連れて込まれた俺は担任の言葉に衝撃を受ける。
「えぇ、獅子堂くん貴方親御さんが亡くなってしまったのよ?そんな子を1人で大人のいない家に置いておくことはできないわ。それに世間体の問題もあるし私達教師陣もそんな子を放ってはおけないの。話に聞くと財産もそんなにないらしいじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・へ?」
その言葉を聞き惚けてしまう。財産がない?そんなはずはない、転生の際に莫大な金額を銀行に振り込まれていたし昨日もそこからお金を下ろして金を使用していた。
その金が無いだと?!
俺は直ぐ様自宅めがけて走り出した。呼び止める教師の話すら耳に入らずに直ぐ様自宅に置いてある通帳を取りに向かった。
暫く走り続けて俺が自宅に向かうとそこには俺の家が無くなっており取り壊された後だけが残されていた。
「―――――――――――ぁ?」
あまりにも現実離れした光景に思考が働かずに立ち竦んでいた。
どうしてこうなったんだ?俺は何も悪いことなんざ、大体どうやってたった数時間で俺の家が根こそぎ消え去ることができるんだよ。
「――――あ、ああぁ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
!!!!!?!」
俺はとうとう震える身体を抑えることが出来ずに発狂し駆け出していた。
場所は決まっている、ある人物の家に向かって走っていたのだ。
そう篠ノ之束がいる家に。
俺はその時彼女に助けを請うことのみを考えていた。
このような不可思議な行動が出来るのは原作を知っている中で彼女しかいなかったからだ。
もし彼女があの事で俺に怒りを覚えたのなら彼女に謝罪をしどうにかもうやめてくれるように頼もうと走り続けていた。恥も外聞もなく10歳程度の少女に頭を下げようと身体を酷使して彼女の元に向かったのだ。元々彼女との仲を深めたら彼女の家にいつでも迎えるように場所だけは頭に入れていた。そのお陰か俺は迷うこともなく篠ノ之家に辿り着くことができた。
直ぐ様彼女を探そうとして玄関を潜ろうとして視界の端に何かが映ったのだ。
それをよく見ようと顔をそちらに向け、硬直する。
そこには束がいた。それも上機嫌のようで笑みを浮かべながら隣に座る人物に語りかけているのだった。そしてその隣にいる人物が・・・・・・・・
「―――白河?」
今学校に通っているはずの白河秀だった。
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私は一足先に自宅に戻り獅子堂がこの篠ノ之家に向かってくるのを待ち続けていた。
彼が自宅を離れた瞬間に家丸ごとを亜空間に飛ばし中のモノを物色しつくした。これで獅子堂がどう行動するかは大方把握済み、更に彼の両親が存在しないことが発覚したのでそっち方面で責め立てながら彼の固有の財産である莫大な金額の講座を回収し講座を抹消した。
そこまでした後漸く下準備が終わり私は束の元に向かい彼女の願いを可能な限り聞き入れていた。
「・・・・・・・・・・・・という風に今はここに来るまで待つのみという状況ですよ。」
「ふひひひ、すごいね~もうみんなボロボロじゃんか。やっぱりシュウくんに任せて正解だったね。」
上機嫌の束はそのまま頭を私の膝につけてケラケラと笑い始めた。
正直小学生中に彼女を再び学校に向かわせるのは不可能だろう、仕方がないので卒業後に多少遠目の中学に進学させて改めて人間関係の構築をさせなければならない。その為に今のうちから少しずつコミュニケーションの勉強をしていかなければならないのですが・・・・・・・・・・・・・・・・・正直前途多難過ぎて半ば諦めています。
「ねぇシュウくん。」
「ん?どうしました束。」
「今回の馬鹿どもの処理が終わったらさぁ、箒ちゃんも連れて何処かに遊びにいかない?」
膝に頭を乗せて束は目を閉じながらそう言った。
「遊びに・・・・・・・・・ですか?」
「そうそう、3人でさ遠出して色んなところ見てさ。今回ので結構な金額が入ったんでしょ?知ってるよ~。」
「そうですね、・・・・・・・・・いいでしょう。箒も喜ぶことでしょうし、序でに両親も連れて行かれては?」
「・・・・・あの人達を?」
先ほどまでのダラけた様子は無くなり少々低くなった声でそう告げる。
「えぇ。皆で行けば箒も更に喜びますし貴女とご両親の仲も深まるでしょう。」
「別に・・・・・いいじゃんあの人たちは。」
視線を逸らすように反対方向に顔を向ける束。
「今回の件でお二人は表情に出なくても心配していましたよ?いきなり貴女が自宅に引きこもるようになってどうしたのかと私に尋ねるほどでしたし。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それで原因を知った後もどう声をかけてやればいいのか分からずにそれでも束の助けになって欲しいと私に頭を下げてましたし。・・・・・全く、貴方達は本当に不器用な親子ですね。」
親が娘のために頭を下げて頼った、その事実を聞きピクリと肩が震えるのを私は見逃さなかった。
「束、あの人たちは私達と違い頭が優れているわけではありません。寧ろ彼らほど凡人に相応しい人はそういないでしょう。それで彼らは戸惑っているだけなのですよ、自身よりも遥かに先を行く子供に何を教えてやれば良いか、どう接していいのか分からず手を拱いている。素直になればいいのです。互いに一言でも二言でもいいので声を、話をしてみてください。今はまだ無理でも何れ他の家庭のように気兼ねなく話せられるようになりますよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうかな?」
微かに、微かにだが束の声が震えているのを感じ取った。その束の手を掴み優しくそれでいてはっきりと私は断言してあげた。
「必ずです。もしダメであったのならば私が何でも願い事を聞いて差し上げますよ。」
私は束の髪を梳くように撫でてあげた。
その時、私の視界に彼が現れたのだった・・・・・・・・。
「束、どうやら待ち人が来たようですし部屋の奥に行ってもらってもいいですか?」
「えぇ~、いいじゃん。シュウくんがどんな手を使ってアイツをぶっ倒すのか見てみたいし。」
先程までの弱気な彼女はいなくなり何時も通りのおちゃらけた様子に戻る。
「フフフ、そうはいきませんよ。私にとってもこれは奥の手ですので今はまだお見せできません。」
ケチ~とブウ垂れる彼女を起こし上げて私は立ち上がる。
「何れは私の奥の手というもの見せて差し上げますから、今はまだ準備が整っていませんので。・・・・・・・・・・・・・・・・・そうですね、今度の誕生日に完成させてプレゼント致しますのでそれまでは待っててくださいませんか?」
そう告げると先程までの表情が一瞬にして笑みに変わり絶対だよ!と言って彼女は部屋の奥へと引っ込んでいった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これで漸く最後の処理ができそうです。
私は廊下から中庭に出てコチラを見て未だ呆然としている少年、獅子堂に話しかけた。
「思っていたよりも遅かったですが、・・・・・・・どうかしましたか?」
「―――――・・・・・・・・お前、なんで?」
未だに理解ができていないのか私を指差して驚愕の表情を浮かべ続けている。
「ヤレヤレ。まだ理解できていなかったのですか?先ほどの光景を見ていたのならば簡単に想像できるでしょうに。」
私は語り始めると同時に静かにある装置を起動した。
それは亜空間へと繋ぐ為の結界でありこの瞬間、私達以外の人物にはここに存在することができず認識することも不可能になる。現実と完全に隔離されてしまった世界、それが亜空間である。
「簡潔に申し上げるとしたら、今回の騒動は全て私が仕組んだということですね。」
「お前が?」
「えぇ、どうでしたか?自身の手足も同然だった少女達を失い、魅了を用いて作り上げてきた友人達に敵意を向けられ財産が砂糖菓子のように溶けて消えるというのを体験するのは。中々スリリングでしょう。」
そう言いながら懐から取り出したモノを彼の足元に投げ捨てた。
「ッ?!!俺の通帳!!」
「フフフ、流石にあの莫大の大金を抹消させるのは些か勿体無かったので私の方で管理させていただいてます。いやはや、凄いですねぇ神の援助というのは。」
「ど、どうしてそれをッ!?・・・・・・も、もしかして」
漸く何かに気がついた様子の獅子堂に深く、深く笑みを浮かべながら私は肯定した。
「えぇ、私も貴方と同じ転生者という身分です、忌々しいことにね。それにしても驚きましたよ、いきなり知らない人間の話を振られた時は何の話をしているのか分からなかったので。今思えばあの名前は貴方の知る原作知識というものなのですね。」
パチパチと軽く手を叩きながらゆっくりと彼に近づく、未だに硬直が解けておらず預金の入っていない通帳を握り締めて無様に惚けている彼の様に私は笑いを堪える。
「私はこの世界の原作知識が一切ないのですよ。教えられたのはISという起動兵器が登場したことによる女尊男卑の世界という話は聞いていたのですがそれ以外はさっぱりでして。」
「じゃ、じゃあ・・・・・・・・」
「えぇ、本当に助かりました。私では誰が原作キャラでそうでないのか一切理解できないので貴方の方から名乗り出て下さり本当に助かりました。そうとも知らずに必死に束を口説こうとしている姿は本当に笑えましたよ。フフフフ・・・・・・無様ですね。」
ブチッ
何かが切れる音が獅子堂の方から聞こえ手に握っている通帳が潰れてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・す。」
そして懐から何かを取り出し腕にはめ込んだ。すると起動音と共に彼を包むように機械の鎧が展開されていく。
「・・・・・・・・・殺す、お前だけは必ず殺す!」
そうして一気に私めがけて加速し・・・・・
「ガフッ!?」
獅子堂の身体は正反対の方向へ吹き飛ばされていく。
「フフフフフ、・・・・・・ここではあまり暴れられませんから場所を移しましょうか。」
パチンと指をならし私と獅子堂を亜空間へと送り出す。
では、始めましょうか。
愚か者の処分を・・・・・・・・・・。