「お前等、今日の事は嘘にするぞ!!」
「ええっ!?」
「なんでですかキャプテン!」
「悪い海賊をやっつけてお嬢様を身を挺して守ったんですよ!自慢しなきゃ」
「馬鹿野郎、俺の自慢話は全て嘘……そうだろ?」
キャプテン・クロを撃ち抜けば戦いはそこで終わった。
生きるか死ぬかの世界、所詮この世は弱肉強食、弱ければ死に強ければ生きる世界だ。この件に関してはルフィやゾロは文句を言わねえ。戦う者として死ぬことが名誉じゃないし死ぬ覚悟をしていろなんて言わねえし、戦う奴はそういうもんだと認識している。
「キャプテン…………」
俺はキャプテン・クロの遺体を処理している。別に悪魔の実の能力者でもなんでもねえしこれから先に関わってくる奴じゃねえ。
遺体はコンガリと燃やす。こういう時は焔の錬金術は便利だなと思いながらもコッソリとウソップ達を見守る。
たまねぎ達が今回の事は自慢に出来る話だというがウソップは今回の出来事を嘘にすると言う。悪い奴からお嬢様を守ったことを自慢にせずにホラ話にする。ウソップは嘘をつくことこそが自分の自慢の武器だと言う。
「そんでよ……お前等に大事な話があるんだ」
「ちょいと待ちな」
「大輔!?お前、ルフィ達と飯を食いに行ったんじゃねえのか?」
「その前にキャプテン・クロの遺体の後始末だよ………………お嬢様、隠れてるんだろ?」
「……バレてたのね」
たまねぎ達と密会しているウソップを見守っているカヤお嬢様。
見聞色の覇気を使えばこんなのは簡単だと隠れるのをやめて出てきた。
「ウソップ、重大発表があるんだろ……キャプテン・クロは処理したし飯食ってくるわ」
「あ、ああ……」
ウソップがなにか重大発表があるのだと前フリをして俺はお嬢様を残して飯屋に向かう。
「プファア!やっぱ勝利の後の酒の格別だなぁ!」
「おめえ、その傷でよく酒飲んでられるな」
「バーロー、勝利した後に飲む酒の前じゃこんな傷は痛くも痒くもねえよ!」
飯屋に向かえばゾロが酒を豪快にガブ飲みしていた。
勝利の後の酒は格別に美味いのだと言っている……酔っ払って出来上がってはいねえな。
「そうそう!勝利の後の肉は格別に美味えんだ」
「あんた殆ど寝てたでしょ……いやぁ……ガッポリ頂けたわね」
「おめえ、せめて船に置いてけよ」
「嫌よ!危うく盗まれかけたもの!」
キャプテン・クロは殺したがジャンゴ達は殺してねえ。
財宝を寄越せば見逃してやると脅せばお宝を置いて逃げ去っていった。そのお宝が入った袋をナミは大事そうに抱えている。
ジャンゴ達がやってきた港の方に船が置いてあるから危うく盗まれかけた……そのお宝は俺達に取り分があるだろうと言いたいんだがな。
「ウソップの奴、遅えな……このままじゃ肉無くなるぞ」
「あいつは肉より魚派っぽいぞ」
「そっか!じゃあ、魚は残してやるか」
「俺にも食わせろ」
一夜を通して見聞色の覇気でどっちに来るのかを見ていた……割と疲れてんだ。
肉の塊をガブリと喰らえばゾロが酒が入ったジョッキを出してくるがそれは無理だと葡萄ジュースを飲む。
「ウソップの奴は、今回の一件で覚悟を決めたみたいだぜ」
「覚悟?」
「ヤソップみてえな勇敢な海の戦士になるって……あの野郎、俺達が居なくちゃ今頃は死んでたってのに」
「大輔、そいつはちげえよ。確かにウソップは嘘つきで弱っちいかもしんねえ。でもよ、海賊に必要な覚悟を持ってんだよ。覚悟がねえ奴は海に出ちゃいけねえ…………」
ウソップは弱いけどもスゲえ男だとルフィはウソップを認めている。
ただ純粋に強いか弱いかで人を見ねえ、やっぱりルフィは大物になれる素質があるな。
「皆様ここにいました」
「あ、羊のおっさん!」
「執事です。実は皆様を探していたのです、よかった。ここに集まってくれて」
「祝勝会は無しだぜ?ウソップの奴が嘘を貫き通すんだから祝勝会なんてもんは最初から存在してねえんだからよ」
飯を食っていれば傷を錬金術で治した羊の執事が現れる。
今回はウソップに花を持たせる意味で祝勝会なんてもんは最初から存在してねえ、その件に関しては一応はルフィ達も納得している。
「ええ、分かっております…………実はお礼にあるものを用意したのです」
「おいおい、今回は海賊同士が戦っただけだぜ?」
「ウソップさんはまだこの村の住人ですよ……ささ、是非ともついてきてください」
海賊同士の喧嘩の末で何故に礼を言われなくちゃならねえんだと言えばウソップはまだこの村の住人と言い返される。
確かにこの村の住人だ……今はまだだが、それでもウソップが戦ったっていう事実は変わりねえ……回りくどいか。だが、そうしておかないと、船長はヒーローは好きだがヒーローにはなりたくねえって考えてるからな。
飯を食い終えたので執事のメリーについていけば俺達がこの島に辿り着いた際の海岸に来た
「おぉ!!すんげえ!!」
「どうでしょうか?コレは私が20年ほど前にデザインしたものでしてね」
「もしかして、くれるのか!?」
「はい!……では、この船について説明をしますね。先ずは」
「ナミ、頼んだわ」
「ええ……ルフィが聞いても多分意味無いからあたしが聞くわ!で、コレってどういう感じの船なの?」
海岸にはゴーイングメリー号があった。
ニコニコ顔の執事はゴーイングメリー号をくれると言い、念願の船が手に入ったのだと喜ぶルフィ。執事が船の系統等を説明しようとするが、んなのルフィが分かるわけねえだろうとルフィに説明させるんじゃなくてナミに説明を聞いてもらう。
「この船がありゃ遠慮なく煙草が吸えるな」
「この船がありゃ遠慮なく筋トレが出来るな」
「この船がありゃ遠慮なく宴が出来るな」
ゴーイングメリー号を見てこう、心が動かされる。
いや、確かに原作知識的にこうなるってのは知っていたんだがこうして最初の船を見れば心が動かされる。
俺はもう気にせずに煙草が吸える。ゾロも気にせずに刀の素振りが出来る。ルフィも遠慮なく宴が出来ると笑みを浮かべる。
「羊のおっさん、この船ってなんて名前なんだ?」
「私の名に因んで、ゴーイングメリー号……そう名付けました」
「ゴーイングメリー号か…………いいね!オレ、あの羊の頭に乗りたい!」
「おめえ、落ちたら助ける身にもなれよ」
「大丈夫だって……ん?」
「ぬぅおぁあああああ!!」
ルフィが一足先にいや、一番最初に船に乗るんだとワクワクしていると巨大な鞄を背負ったウソップが転がってきた。
「なにやってんだ、あいつ?」
「転がってるな……」
「ゾロ、こっちに来てるから止めてくれよ」
「あいよ」
「げゔぉ!?」
ゾロは転がってくるウソップの顔に足をつけて、ウソップの回転を止める。
「ありがどう……」
「おう」
お礼を言ったウソップは若干の涙目だった。
これから先、色々と泣くことが多いってのにこんなところで泣いていたら先が思いやられる。荷物が重いとウソップは一先ずはリュックを肩から外した。
「うぉお!コレ、カッコいい船じゃねえか」
「だろ。羊のおっさんがくれたんだ」
「おぉ、そうだウソップ……お前、絵を描けるか?」
「絵なら描けるけど、どうしたんだ?」
「コイツは俺達の船になるんだから海賊旗を掲げねえと……描いてくれねえか?」
「ああ、任せろ!」
これからこの船に暫く世話になる身だし、ここからだと海賊旗をウソップに描いてもらう。
ルフィが船長だからルフィのシンボルマークである麦わらを被った笑みを浮かべているドクロマーク、麦わらの一味の証である海賊旗が完成した。ルフィはその海賊旗を見て満足な顔をしている。
「っへ、どんなもんだ?ウソップ様にかかれば他にもこんなのも出来るぜ!」
「お、コイツは嬉しいな」
ゾロの海賊旗と俺の海賊旗も用意してくれる。
掲げる海賊旗はルフィのマークだが俺達の形の海賊旗があるのもそれはそれで嬉しい。ルフィがコレがオレ達の海賊旗だと認めれば帆にウソップが麦わらの一味のシンボルマークである髑髏を描いてくれる。
「ウソップさん」
「カヤ……」
「行くんですね」
「おう!男がやるって決めた以上はそうするもんだ…………お前に嘘をつけなくなるのはちと寂しいがよ、海が俺を呼んでいるんだ。許してくれよ」
「ふふふ…………………仕方ないですね……………許しますよ」
ウソップはこれから大海原に冒険に出ると自信満々にカヤお嬢様に語る。
今度からは寂しい思いをさせる、ウソップ自身もそれを理解しカヤお嬢様もウソップの嘘を聞くことが出来ない。ウソップの嘘によって曇っていた笑顔や悪かった体調も良くなっていったのに、悪い奴等を倒したから御伽噺ならばコレでめでたく結ばれて終わるが、ウソップはこれから冒険に出る。
「っと、コイツでいいか」
俺は手合わせ錬成で布を小さな海賊旗を作った。
ついさっき作ったばっかだってのになにをやってるんだ?とウソップは疑問を抱いているみたいなのだが俺は気にすることをせずにカヤお嬢様に小さな海賊旗を投げた。
「そいつをお守り代わりにしておけよ……未来の海賊王の
「……え?え?お、おい、なに言ってるんだよ?確かに俺は旅立つけどよ、それは1人で」
「ウソップ、お前こそなに言ってるんだ…………オレ達、もう仲間だろ?」
ウソップはなにを言っているんだと慌てているが、ルフィは既にウソップの事を仲間だと認めている。
一緒に飯を食ったし一緒に戦ったし、それはもう仲間だ……ルフィの言葉に対して誰も反論する事をせずにウソップは笑みを浮かべている。
「し、仕方がねえな……お前等はこのウソップ様が必要だからな!特別に乗ってやるぞ!カヤ、その海賊旗は未来の海賊王の海賊旗!そしてこの村の人間であり勇敢な海の戦士が乗っている船でもある!だからよ……………また海賊が襲ってきたって言うなら俺がお前の所に戻ってきてぶっ飛ばしてやる!そいつはお前を海賊から守ってくれるお守りだ!」
ウソップもカヤお嬢様に会うことが出来なくて寂しいという思いはある……だが、それでも冒険のロマンが待っている。
男としてそいつを求めない理由は何処にもねえんだとウソップは泣かない。決して悲しい別れじゃないから、ここから始まる冒険だから。
「ウソップさん、この海は広いわ……私も知らないことが沢山あるわ。だから、ウソップさんの無事を祈ってお守りを」
「おう!大事にしっ」
「おぉ!」
「だ、大胆ね!」
「ったく、なに見せられてんだ俺達は」
「まぁ、いいじゃねえか。男の旅立ちのお守りとしては最高の物だ」
カヤお嬢様が……ウソップにキスをした。
突如としてされたキスを見てルフィは驚きナミは顔を真っ赤にしゾロは惚気を見せられていると呆れている。
確かに俺達からすれば惚気話だが、勇敢な海の戦士となる男の旅立ちとしてはこの上ない極上のお守りだ。
「……………コイツで引くに引けなくなったな、ウソップ」
「お、おぉおぉおぉお、おう!」
「じゃ、じゃあ失礼します……」
ウソップにキスをしたカヤお嬢様は顔を真っ赤にしており、ウソップも物凄く動揺している。
惚気話だが……たまにはこういうのも悪くはねえ。ウソップという新しい仲間が加わりゴーイングメリー号という船を手に入れた。実にめでてえ事だがまだ俺は酒は飲まねえ。そいつだけはまだしねえんだ。