「くそっ……」
ナミは苛立ちながらゴーイングメリー号に向かっていた。
賄賂を貰って暴虐無道なアーロンに関してなにもしないネズミ大佐、そんなネズミ大佐よりも偉い人間が現れたと思えばなにもしてくれない、それどころかゴーイングメリー号に積んでいるお宝を寄越せと要求してきた。
「海軍なんて…………海軍も海賊も嫌いよ!!」
腐りきった海賊、腐りきった海軍、嫌になる思いしかナミには宿っていない。
心の中で憎悪の念を燃やしながらもゴーイングメリー号に戻った
「今までが台無しじゃない……」
ルフィ達と出会って海賊と戦うことで得たお宝の数々。
これを換金すれば夢の1億ベリーにまであと一歩のところにまで届くというのに、それが無くなってしまった。
アレだけの思いをしたのに全てが無に帰る。ゴーイングメリー号に乗っている宝を少しだけ誤魔化す事を考えるが嘘をつけばアーロン一味に血祭りに上げられる。
「ゴーイングメリー号にもう少しお宝があったら……」
ルフィが大食いだから財宝があっても直ぐに食料に切り替わる。
順調に財宝を手に入れているけどルフィの食費と財源がエンゲル係数が地味に合わないと思っているとナミは違和感を感じた。
「ゴーイングメリー号……そう、ゴーイングメリー号よね……」
自分は外に停泊している海賊船でなくゴーイングメリー号にあるお宝を取ってこいと言われた。
泥棒稼業をしている身なのでそういう事を言われてもおかしくはない、おかしくはないがゴーイングメリー号という単語に違和感がある。確かに今、自分が乗っている船はルフィがウソップの故郷で貰ったゴーイングメリー号に乗っている……乗っているのだが、何故にゴーイングメリー号?
「……なんであの海兵はゴーイングメリー号の名を知ってるの……」
ここでナミが違和感の正体に気付いた。
ゴーイングメリー号にあるお宝を取りに行けと言われた。海賊船にある宝を取りに行けと言われたのでなく、ゴーイングメリー号と指定されていた。ルフィ達は海賊だがまだまだ無銘も無銘の駆け出しの海賊だ。七武海レベルに有名な海賊じゃない、何よりもゴーイングメリー号をもらった瞬間をナミは立ち会っている。ゴーイングメリー号という船を知っているのはあの時に居た人間だけだ。
『プルルルプルルル』
「っ!!」
渡された電伝虫が鳴った。冷静になって考えてみれば船に行って戻ってくるだけの事に電伝虫を預けてくる事もおかしい。
なんなのか分からない、けど今の自分にとって最善の手になれるかもしれないとナミは恐る恐る電伝虫に出ると電伝虫は麦わらの帽子を被った。
『大輔、何処だ!?』
「っ!!」
電伝虫の電話の相手はルフィだった。
大輔とルフィはハッキリと言い切ったのでナミは確信する。さっきのブロッケンという准将の正体は大輔だと。
大輔が自分を追ってきたのはまだ理解出来る。でもなんでわざわざブロッケンという名を名乗り全く違う姿に変装しているのか分からない。
「ルフィ……」
『お、なんだナミか……おい!ナミ!なに勝手に1人で行ってるんだ!』
『ナミさん私、男サンジ、この度貴女の冒険に付き添う事になりました!!貴女の為にめいいっぱい料理を』
『場所はわかってるからな!ウソップ様がお前のお尻をペンペンしてやるから覚悟してろ!!』
『ガー』
ルフィが新たにサンジを仲間にした。目当てのコックを仲間にした。
ウソップはゴーイングメリー号を盗んだことに関して多少は怒っているが殺意を抱いておらずゾロは熟睡している。
呑気な麦わらの一味達の声を聞いてナミは心の何処かでホッとしている自分がいた。それはルフィ達を仲間だと思っている自分が居るからだ。
「ルフィ……………ルフィ……………」
『お、おい、どうした!?』
『ルフィ、なにナミさんを泣かせてんだ!!』
「大輔が……大輔が……」
『大輔がどうしたんだ!?お前の横に居るんじゃねえのか!?』
このままだと大輔が殺されてしまう……その事を伝えたかった。
ほんの少しの時間だったが楽しい時間を過ごすことが出来たナミは大輔が危ないと言いたい……だが、最後の一言をナミは言えなかった。ガチャンと電伝虫の通話を切れば涙を流した。
「行かなくちゃ…………1億ベリー貯めるんだ……そうしたら、そうしたらココヤシ村を買える……」
涙を流しながらもゆっくりとナミは宝が入っている箱を持っていく。
バギーやアルビダ達から巻き上げた数々の宝だが惜しくない。大輔が味方だったら純金を大量に錬成してもらえばいいんだと乾いた笑みを浮かびを上げながらアーロンパークに戻った。
「なっ!?」
ナミの目に留まったのは粉々になっているアーロンパークだった。
どういうことなのと急いでアーロンパークの内部に入れば無数の魚人の山の上にブロッケンが乗っていた。
「ゴーイングメリー号からお宝を盗んだか?」
「アーロンが……………嘘でしょ…………」
無数の魚人の山の頂点には血塗れのアーロンがいた。ブロッケンの右手にだけ返り血が浴びており他には一切の血が浴びていない。
アーロンの絶対的な強さに怯えていたナミ、海に繋がるプールが直ぐ側にある。水中では魚人は無敵な存在……それなのにも関わらず正義のジャケットを落とすことなくブロッケンはアーロン一味を撃墜した。
「大輔、あんたは」
「大輔?……お前は誰の事を言ってんだ。俺は海賊から金を巻き上げてる不良海兵だぜ」
何者なのか云々を聞こうとすれば知らぬ存ぜぬを通すブロッケン。
ナミが持っているブロッケンが渡した電伝虫を手にすれば何処かに電話を入れた。
「こちらブロッケン、王下七武海の海峡のジンベエと通話させろ」
『なんじゃい。またお前さんから電話が来たと思えば』
「こちらブロッケン、王下七武海の海峡のジンベエと通話させろ」
『事件か!だったらワシがそこに行ってやる!!』
「テメエはコビー達を鍛えろ……こちらブロッケン、王下七武海の海峡のジンベエと通話させろ」
ブロッケンが何処かに電話をしている。
電話の相手は事件だなんだと言っているのだがブロッケンは海峡のジンベエに繋げとだけ言っている。
場所は何処だと何度か電話の相手は聞いてくるがブロッケンは王下七武海の海峡のジンベエと通話させろの一点張り
『海峡のジンベエと繋がったわ。それとネズミ大佐の情報も……何年も前から羽振りが良いみたいで他の海軍がその辺の島に調査に来たら沈められてるわ』
「怪しさ満点じゃねえか……ジジイ、もう1度電話を掛けてきたらどういうことなのか覚えとけつったろ……まぁ、いい。間接通信だろうな?」
『ええ……白電伝虫は無いけど、聞かれる話じゃないわ……もしかして疑ってるの?ヒナ心外だわ』
「ほらよ」
ブロッケンがナミに対して電伝虫を渡してきた。
電伝虫の向こうにいる相手をナミは知らない。いったい誰なのとナミは電伝虫の受話器を手にした。
『もしもし……わしが海峡のジンベエだが……』
「!!」
電伝虫の一本通話でなく電伝虫を使った間接通話の為に若干のノイズが走っている。
だが、それでもわかる。海峡のジンベエという自分達に不幸を訪れさせた張本人が電話の向こう岸にいる
「あんたが……あんたが!!あんたさえ居なければ、アーロンを牢屋から出さなければ、ベルメールさんは!村のみんなは……」
『っ……アーロンの奴は、アーロン奴はどうしとる!!……』
「そいつを聞いてどうする?テメエの手でケジメをつけて仁義を通すつもりか?そいつは仁義を通すんじゃねえ、ただの自己満足だ」
『………………………』
「〆るのは俺でも出来る、そいつを代わりに譲ってくれなんてのはテメエの自己満足だ……詫びの言葉を入れたとして、それこそ魚人のせいでだ…………憎悪の念を燃やしている奴は目の前にいる。そいつの前で腹切って詫びるだなんて真似もやめろ。それはやったと見せるパフォーマンス、ただの自己満足、同情を引く真似だ……」
アーロンは悪いことをしている。普通の人間を苦しめている。
間接通信越しでジンベエのその事は伝わった。ジンベエはどう詫びればいいのかが分からない。アーロンを〆るのも腹を切るのもただの自己満足だと断言される。確かにそうかもしれないと納得をしている自分もいる……だが、どうやって詫びればいいのか分からない。
「この際だからお前でいいからとっととココヤシ村に来てくれ……モーガンといいネズミといい海軍の未来は薄暗いな」
『酷いわね。ヒナは貴方にとって都合の良い女じゃないわ……30秒で支度するわ』
「その前に海軍基地に立ち寄れよ……今まで巻き上げてきた血税を返してやれ」
ブロッケンはそう言うと電伝虫の通信を切った。
「つーわけだ、海峡のジンベエを代表してしばくのはお前次第だ……おっといけねえ、海峡のジンベエは偉大なる航路に居るんだったな。いやはや、向こうも忙しい身で海軍が代わりに来ちまうからジンベエに出会うことが出来ねえな」
「……なによ……わざとらしい……」
「その一言も言えねえお前と大して変わらねえよ……じゃあ、遠慮なく宝を頂くぜ」
「……え!?」
ブロッケンはつけていたマスクを外した。ブロッケンJr.からもとの大輔に戻った。
服装も声もさっきまでの同一人物なのかと思わず疑うぐらいに差が出ているのだがブロッケンから大輔に戻った大輔はナミが持っているゴーイングメリー号に乗せられていたお宝を掻っ払ってゴーイングメリー号がある方向に向かった。
「なによ……あいつ……………カッコつけちゃって……………」
ブロッケンなんて偽名を名乗り徹底した見た目に拘っていた。
海軍の人間は腐りきっている、そう思っていたけどもこうして自分を助けてくれた……でも、自分は助けての一言も言っていない。
ブロッケンは、大輔はいったいなにがしたかったのかは分からない。ナミは心の中にモヤが残ったままアーロンパークからココヤシ村に向かった。
「ナミ……おかえり」
ココヤシ村に戻ればナミの姉代わりを務めていたと言ってもいいノジコという女性が声をかけてきた。
「ノジコ……………………………やったわ!!」
「え?」
「アーロンが、アーロン一味が倒されたのよ!」
「ナミ……」
「ブロッケンっていう海兵が、倒してくれたのよ!ホントよ!」
「ナミ……だったらなんで泣いているの?」
「え、あ…………」
ノジコに涙を流してると言われればナミはやっと自分自身が涙を流していることに気付く。
なんで涙を流しているのか?それは自分でも分からないこと、分からないことだけどもこの事を言いに行きたいと育ての親であるベルメールの墓の前に向かった。
「ベルメールさん……終わったよ…………やっと終わったのよ………アーロンを倒してくれる。やっぱり海兵って正義の味方なんだね」
アーロンが倒された……コレでもう怯える日々はおサラバだ。
ナミはやっと幸せを掴むことが出来るのだと報告をし涙を流す。苦しみから解放された……今まで我慢していた分の涙が流れてきた。
ブロッケンという海兵のおかげで全てが終わった……今までの苦労もあるのにあっさりと終わってしまったが、コレでやっと救われた。
「ホントに、ホントにアーロン達が……」
「……ねぇ!言ったでしょ!アーロン達が倒されたのよ!!」
ナミが痩せ我慢で言っているものだと思っていたノジコだったが、事実を確認するとアーロン達は叩きのめされていた。
ホントにアーロン達が倒されたのかと困惑をしているノジコにナミは満面の笑みを向ければノジコはナミを抱き締めて。
「もう、もういいのよナミ……………ココヤシ村の皆は知ってるわ。貴方が1億ベリーを貯めてココヤシ村をアーロンから買い取ろうって」
「ノジゴ……あだじ……あだじ……………ベルメールさん…………」
言葉を出そうとするのだがナミは言葉が出ない。
やっとアーロンからの恐怖に解放されたのだと涙を流しまくりゆっくりと眠りについた。
「そこ、隠れてるんでしょ?」
「なんでバレた?見聞色の覇気でも気付けねえ様にしてたぞ」
アーロンがやってきてから見続けていた悪夢から解放されると健やかに眠るナミ。
ノジコはホントに全てが終わったのだと涙を流したが直ぐに涙を拭い、近くに隠れている大輔に声をかけた。見聞色の覇気でも見つけるのが難しいレベルで気配を消していたのになんでバレたのか大輔には分からなかったがノジコはハッキリと言った。
「女の勘よ」
「カァーッ!結局はそれか!人が何年もかけて見聞色の覇気や見聞色の覇気に引っかからねえ様に覇気を抑える技術も会得したってのに最後はそれで見つかるのかよ」
女の勘で見つかったのだと分かれば大輔は嫌そうな顔をしている。
見聞色の覇気に引っかからないぐらいに覇気を抑え込んでいるのに女の勘で気付いた。これだから女は怖えんだよと煙草を2本取り出した。
「まぁ……なんだ………………許してくれだなんて言うつもりはねえよ」
煙草の一本に火を付け、ベルメールの墓の前に置いた。
大輔はなにから語ろうかと思ったが謝罪の言葉や言い訳はしないという……そう、大輔は知っていた。ナミの故郷の村であるココヤシ村がアーロンに支配されているのを。海軍のブロッケンとして活動している頃に海賊から泥棒をしているナミに対して救いの手を一切差し伸べなかった。未来を知っているからその未来を回避させないといけない義務は無い。だが困っている人を知っているのに見捨てたという事実は消えない。大輔は地獄の転生者養成所で原作の悲劇のヒロインの救済云々は各々の勝手と習った。何故ならば悲劇があるからこそ物語になる。ただの日常は物語じゃない非日常が物語になるから、読者はそれを求めている。
もしONE PIECE世界で最も悪い人間が誰かと聞かれれば案外、尾田栄一郎先生かもしれない……ナミ達を悲しませる物語を語っているのだから。
「お前の娘さんは立派に戦った……たった1人で人間よりも遥かに強え魚人を相手に立ち回った。それどころか数々の海賊を騙してきた魔性の女だ……これだから女ってやつは厄介なんだよ」
大輔も煙草を口に咥えてライターで着火する。
あんまり味わった事がない不思議な味がする煙草だが決して悪くはねえ……だが、自分らしくねえなと煙草を吹かせており持ってきていた酒瓶に入っている酒をベルメールの墓にぶっかける。
「…………ありがとう…………ありがとう…………」
「俺はただの通りすがりの海賊さ…………間もなく仲間達もやってくる。そうすりゃ希望である海軍も他の海賊達も絶望する…………ま、娘さんが貯めた金は親の立派な墓を建てるのに使ってやれよ。娘の意思がここまで紡いで来たんだから立派な墓の1つぐらい必要だろう?」
大輔はそう言うとベルメールと自分の煙草の火を消して酒瓶を置いていった。
ノジコは彼が助けてくれた正義の味方、正義の海兵なんだと笑みを浮かび上げるが大輔は振り向かない。何故ならば大輔はなにもしていないから、ただ純粋に原作知識があるのに何もしなかった事に関してベルメールに謝罪に来ただけであって大輔は何もしていない。正義を掲げているちょっと残虐な海兵がココヤシ村を脅かすアーロン一味を退治してくれたから。
「こんのクソガンマン!!よくもナミさんを泣かせやがったな!!」
半日後、ルフィ達がやってきた。
新たに仲間になったサンジが大輔に対してブチギレて蹴りを叩き込もうとしているのだが軽々と大輔は回避する。
「ちげえよ……ここがどういうところかぐらい聞いてんだろ?あの女、アーロン一味だった」
「ナミさんがそんなわけねえだろう!!なにをした!ハッキリと言え!」
「なにもされてないわよ、サンジくん」
「……ナミさん、無理して隠さなくていいんですよ。この村の騒動を見ればなにかがあったかぐらい理解出来る」
アーロン一味が撃退されたのだと大喜びで宴会をしているココヤシ村の人達。
ココヤシ村の人達がこういう風に騒いでるのとヨサクとジョニーから事前に話を聞いていたサンジは大凡の事情を察して理解する。
「なぁ、ルフィ……ナミさんを航海士にしたいのか?」
「アイツはオレ達の仲間でうちの船の航海士だ!嫌だぞ、他の奴に頼むのは!オレはナミがいいんだ!」
だからこそ、ルフィに海賊の道を歩ませてもいいのかと疑問を抱く。
やっとのことで訪れた平穏を手に入れた。夢である世界地図を描くことが出来るようになったナミを無理矢理縛る様な真似をしていいのか?少なくとも大輔は恩義を理由に船に乗れとは一言も言ってこない。
「見つけたぞぉ!!」
「ん……どっかで見た顔だな」
宴会で飲めや騒げやで盛り上がっているとボロボロの海軍の船が現れた。
そこから1人の男が降りてくる……サンジにボコボコにされた大尉、いや、元大尉といったところか。サンジにボコボコにされた事で海軍本部の顔に泥を塗ったと降格させられて今は東の海の雑魚海賊を相手にしろと言われてたりする。
「ルフィ、相手が海軍だ……たまには思いっきり暴れろよ」
「よし、食後の運動だ!ゴムゴムのぉ!
ルフィはやってくる元大尉を食後の運動だと殴り飛ばした。
大輔は相手を見てものを言わなきゃならねえと呆れながらも肉を喰らう。
「ねぇ、大輔」
「なんだ?」
「その……………ありがとう…………」
「なにを言ってるかサッパリだな……あ、そうそう今回の事は海軍本部に通報しているからもうすぐ海軍本部からアーロンをボコボコに出来る強え奴がやってくるから」
「ちょっと!!なんて事をしてくれるのよ!!」
「仕方ねえだろ。汚職事件洗い浚いしなきゃならねえし、暴れてやがるアーロン一味、今は牢屋に閉じ込めてるけど誰が連れてくんだ?」
「そりゃそうだけど…………ああもう!ルフィ、ウソップ、サンジ、ゾロ!宴はここまで、さっさと次の航海の準備をするわよ!」
「クククッ…………ま、よろしく頼むわ」
何時の間にかナミの入れ墨が原作通りになっているが細かいことは気にしねえ。
間もなく黒檻のヒナがやってくるのだから相手にしてられねえとルフィ達の出港準備をしているとニュース・クーが新聞を売ってくるので一部購入した。
麦わらのルフィ
懸賞金 30,000,000ベリー
早撃ちのプロフェッショナル 大輔
懸賞金 20,000,000ベリー
お、俺も懸賞金かけられたか……コイツは少しだけ自慢する事が出来るな