光月おでんが処刑されて数日が経過した。
九里にあったおでん城は勿論のこと、おでん城の城下町をも粉々に壊しやがった。いや、壊しやがったってのは少しだけ違うな。カイドウが全力を全く出さずに赤鞘の侍達を殺そうとした攻撃の余波で崩壊してしまったらしい。流石にその現場に居なかったから噂だけだが九里の城下町が大震災でも発生したのかと思うレベルで倒壊している。
「終わっちまったか……」
月は夜明けを知らぬ君
叶わばその一念は
まばゆき夜明けを知る君と
光月おでんの妻である光月トキが最後の最後で残した遺言である。
コレを聞いたオロチは20年後に赤鞘の侍達がカイドウをぶっ倒すと思っている。赤鞘の侍達の遺体が1つも出てこなかった事を怯えている。
カイドウという巨大なバックが控えているというのになにを怯えているんだとオロチについている奴等は思っているだろう。
肝心の、最後の希望とも言える存在であった光月おでんは殺されてしまった。
敵無しと言えるほどに強かった赤鞘の侍達は遺体の1つもない……そしてオロチは九里以外の大名に自分の配下になれと言っている。ワノ国の侍と呼ばれる存在はそこらの海兵よりも強い、特に腕自慢な大名やヤクザなんかは最低でも海軍の少将レベルっぽい。
「……墓荒らしなんて罰当たりな真似は許してくれよ、閻魔大王」
そんな九里の焼けた城の跡にやってきている。
城にある金目の物が目当てってわけじゃねえ。そもそもでオロチの馬鹿野郎がワノ国の経済を支配しちまってたからオロチ派以外は貧乏だ。
「あ、君はこの前の!」
「ヤマトか……ここにゃ金目の物はねえぞ」
「墓荒らしなんて罰当たりな真似はしないよ……ただ……光月おでんの生きた道が気になったんだ」
「すっかり光月おでんのフ……
おでんの城の焼け跡地に俺だけでなくヤマトも来た。
光月おでんのファンと言えばおかしいので愛好家だと言って上手い具合に誤魔化しつつ、この地には生きた証拠はもう無いことを伝える。
「いや、まだ生きた証拠は消えてないよ。確かに光月おでんは殺された。家臣であった侍達も……でも、皆の心が覚えている。僕も君も、皆、光月おでんという男の生き様を覚えているんだ。それだけで生きた証拠になる」
「詩的だねぇ……」
「そういう君はどうしておでんの城の跡地に来たんだい?まさか、おでんが持ってた刀を奪いに来たのか?」
「そこまで罰当たりな事はしねえ……いや、墓荒らししに来たから罰当たりか」
「墓荒らしだって!?君はいったいなにをするつもりなんだ!!」
「待て待て、その物騒な金棒をしまえ」
確かに墓荒らしなんて罰当たりな真似をしに来たのは確かだ。
だが、光月おでんという男の名誉や誇りを踏み躙るような真似はしない。
「俺は光月おでんの日誌を探しに来たんだ」
「日誌……どうしてそんな物を探しているんだい?」
「色々と考えに考えた結果、ワノ国から一旦出ていこうかって決めたんだ」
「ワノ国から出ていくって、重罪だよ!?」
「完全な余所者がなに言ってんだ……望遠鏡で見える距離にある鬼ヶ島に移動するレベルならば今の俺にも出来るがよ、外の世界で本格的な航海をするには航海術を覚えておかなきゃならねえ。だが、知っての通りワノ国は鎖国国家で外の世界を移動する航海術は誰も知らねえんだ……たった1人の男を除いて」
「……光月、おでん……」
「そう、光月おでんは外の世界を冒険してきた……日誌を付けてるらしいから、もしかしたら航海術の1つでも書いてるんじゃねえかってな」
望遠鏡で見えるレベルの島への移動だったらこんな苦労はしねえ。
ただONE PIECEの世界は地球と比べて圧倒的なまでに海の世界、正しい航海術を持ってねえとロクな事にならねえ。だからたった1つの希望に縋る。光月おでんが残した日誌の中に航海術の1つでも残ってるんじゃねえかって。無かったら潔く諦めて船を出す……ただそうなるとリスクが馬鹿高い。それこそ本音を言えばログポースの1つでも欲しいがワノ国じゃ先ず手に入る事がねえ代物だ。
「そっか……よし!僕もおでんの日誌を探すのを手伝うよ!」
「ここにあるかどうか怪しい物だぞ?」
「きっとあるはずさ!一緒に探そう……え〜っと……そう言えばまだ名前を聞いてなかったね」
「
「大輔、僕はあっちを探すから君はこの辺りを探してみてくれ」
「ああ、分かった」
危うくこの姿の本名を名乗るところだったが、そうなれば確実に上の名前で呼ばれる。
確かにハードボイルドでカッコいい男だが生憎な事に俺はそいつにゃ程遠い。紺色のスーツじゃなくて紺色の着物の時点で大分異なる。
ヤマトは別の所を、俺は今探しているところを探す。
原作知識が間違いじゃないならば光月おでんの日誌は確かに存在している。問題はその日誌に航海術が書かれているかどうかだ……いや、それ以前におでんの日誌がこの城の跡地にあるかどうかも怪しいんだな。
「あったぁ!!あったよ、光月おでんの日誌が!」
「って、もう見つかったのか!?」
2,3時間ぐらい費やして光月おでんの日誌を探していたのだがヤマトが探し始めるとあっさりと見つかった。
こんなにもあっさりと見つかるって……俺は不運なのか?それともヤマトが滅茶苦茶幸運なのか?……ヤベえな、どっちか分からねえな。ともあれ光月おでんの日誌が見つかったことは喜ぶべき事だ。
「え〜っと……………ごめん。なんて書いてあるか分からないよ」
「貸してみろ」
おでんの日誌を読むヤマトだったが読めなかった。
ワノ国の文字みたいだから読むことが出来ねえと俺はヤマトからおでんの日誌を借りる。
「【遂に遂にこの日がやって来た。白きっちゃんの船に乗せてもらい、ワノ国を出ていった。どうやらワノ国は滝の上にある変わった国みてえだ】」
パラリと開いたページを読み上げる。
おでんが白ひげの船に乗った日の事を書かれており、夢にまで見た大冒険がやっと出来るのだと喜んでいる事が書かれている。
光月おでんの日誌を続けて読む……ラフテルに辿り着いたこと、
「スゴい、スゴイよ!光月おでんは!」
「ああ、スゲえな……」
ひとつなぎの財宝がなんなのかは知ってっけどもまさかこれほどのものとはな。
おでんの日誌を読み上げれば子供のように目を輝かせるヤマト。あんたは海賊であり英雄であった最高の男だな。
「よし決めた!僕は光月おでんになる!」
「おでんになるってお
「意味の無い事じゃないよ!僕はこの広い大海原を旅して、最後にはワノ国に帰ってくる侍になるんだ!」
「そういう意味で言ってんじゃねえよ……お前はお前、光月おでんは光月おでんだ……どれだけ努力しようとも同じ存在になることは出来ねえ。憧れることは良いことだが何時かはそいつを越える存在にならなくちゃ意味がねえだろう」
「おでんを越える……ぼ、僕がおでんを越えるだって!?…………」
「おでんの様に偉大になりたいって思いは持っててもおでんになりたいって思う気持ちは意味はねえんだ。例えお前が単独でカイドウの野郎をぶっ殺すことが出来たとして、果たしてそれは光月おでんと言えるのか?」
「……………言えない」
「ああ、言えねえ……なに、お前のその憧れる気持ちは否定しねえよ。誰だって尊敬したりカッコいいと憧れる存在は居るんだからよ」
「大輔にもそんな人が居るの!?」
「まぁ…………俺じゃ一生届かねえ、大泥棒の右腕がな」
憧れる思いがあるかどうか聞かれればある……だから、俺の容姿がこんなんなんだろうか?
だが、俺とは縁遠い存在……俺の魂はなんでこの容姿にしたって言うんだよ。
「会ってみたいな」
「俺も会ってみてえよ……っと、本命を忘れちまってたな」
おでんの航海日誌に航海術がないのかを探る。
光月おでん特製のおでんの作り方とかが書いてて海の上では栄養のある物を食わなきゃならなくておでんは栄養価が抜群だと書かれている。おでんも美味えが俺はすき焼き、特に隠し味にビールを入れてコクが増しているすき焼きが好きなんだよ。
パラパラとページを捲れば海の冒険での心得が書かれている。いちいち読み上げるのもめんどうなので重要そうな部分だけを読み上げておく。
ヤマトは光月おでん特製のおでんを食べてみたいと涎をこぼすのだが今のワノ国じゃおでんを作れねえ、というかオロチがおでんの名を思い出させるからとおでんを作ることを禁止にする筈だ。
「お、あったあった」
日誌の最後の方に航海術があった。
島から島へと渡る普通の船でなく大海原を駆け抜ける船はワノ国の素材じゃ出来ても作る職人が存在していねえみたいで…………あ〜…………。
「ログポースが必要か……」
偉大なる航路はコンパスが狂う、だから方角が分からねえ
新世界はそれよりも質が悪く、3つのログポースを頼りにして航海をしなければならない。航海術云々以前に道具が必要になってくる……こりゃマズイな、あてもなく旅をするぐらいにゃ危険だわな。
「ログポースが欲しいのなら持って来ようか?」
「そういやお前さん海賊の子供だったな……持って来れるのか?」
「ああ、百獣海賊団は巨大な組織だ。ログポースの1つや2つ盗んだとしてもバレない…………それよりも…………光月おでんのおでんを食べてみたいな」
「なら、ログポースと一緒に材料を持って来いよ。幸いにも作り方には航海日誌に書いてるんだから、完璧とは言わねえけども再現する事が出来る」
「ホントかい!?」
「ああ……って事だからおでんの具材とログポースを持ってきてくれ。材料は大根、はんぺん、昆布、クジラの脂身」
食い意地の張っているヤマトだがヤマトが居てくれた事は奇跡……いや、そうなるように仕向けてるのか?
ヤマトに光月おでん特製のおでんの材料を教えればヤマトは颯爽と鬼ヶ島に向かっていく。
「さて…………冒険に出る準備をしねえとな」
1週間後に会おうとヤマトと約束を交わした。
その間に俺もワノ国を出ていく為の準備をしに伊達港に向かえばボロボロになって使うことが出来ねえ船が沢山あった。船の墓場だなこりゃあ。
「ワノ国は滝の上にある国……降りる時を入念にしろ、か」
光月おでんの航海日誌に書かれているワノ国を出ていく方法を見る。
ワノ国は滝の上にある国だ、だからワノ国を出ていくには滝の下に急降下しなきゃならねえ。ワノ国の製造技術で出来た船だとワノ国より下の海に飛び降りた時の衝撃で壊れてしまうとも書いてある。だから、普通の船じゃなくて海賊や海軍の船の構造を書いてくれている……外の世界を知りたいからおでんは勉強熱心だな。今回はその冒険熱心な心と勤勉さに救われた。
「さて……見た目だけ直せばなんとかなるって感じじゃねえが……先ずは見た目の修復からだな」
船の墓場にある船の中から船を一隻選んだ。
別に何処かが良いからじゃなくて適当に選んだ後に俺は手と手を合わせて船に触れると……木材に変化した。
「悪魔の実の能力にしなくていいのか、こいつぁ……」
俺の貰った転生特典は鋼の錬金術師の錬金術だ。
ただの錬金術じゃねえ、エルリック兄弟の様に錬成陣無しで出来る真理の門を見た者にだけ出来る錬金術だ。今回、俺はその錬金術の技術を応用して壊れた船を木材に変えた。物質的な意味合いでは船は木材になるだろうが問題はこの錬金術のエネルギーが何処から来てるのか…………世に言う賢者の石が無くてもこんな事が出来るんだから仏様も中々にチートな転生特典をくれた。悪魔の実の能力の一種って設定にしといた方がいいんじゃねえかと思うが……まぁ、泳げなくなるデメリットを回避する事が出来るからいいか。
俺は手合わせの錬金術で船を分解する。
錬金術は錬成する物だってのに俺がやってる事はその真逆、素材に分ける事をやっている……この錬金術、マジでチートだな。
「さて……こんな感じ……こいつぁ便利だが本職には負けちまうな」
バラバラにした木材や帆を錬金術を用いて1つの船にする。
あんまりにも大きな船だったら人数的な意味合いでは操縦が出来ねえから人が住める船にちょこっとだけ改造しておく……が、直ぐにこの能力の問題点に気付く。俺の錬金術はチートだが、完璧じゃねえ最高じゃねえ……例えるならばインスタントラーメン、冷凍食品だ。美味いには美味いが上位互換が普通に存在している代物、料理は一匙の塩で変わると言うがそれと同じで絶妙なバランスが取れてねえ。仮にこの錬金術で料理を再現しても美味いけれども上位互換が存在している料理が出来る。
恐らくはこの能力で槍や刀を作り上げてもこの世界の一流の職人が作り上げた槍や刀を超える事は出来ねえ。
職人が作り上げる刀に含んでる成分が錬金術だと再現をする事が出来ねえ……いや、Fateの投影魔術の基礎である解析能力があれば再現する事が出来るだろうが、仏様もそこまでチートは恵んでくれねえ。
「余った鉄は純金にでも……いや、金目の物を持ってたら厄介か…………銃を作るか」
船の造船の過程で船の装飾品だった鉄なんかが余っちまった。
外の世界がベリーがどれぐらい必要なのか分からねえが、金は必要だから純金があればいいが金目の物を持ってたら厄介だ。
色々と考えに考えた結果、銃を作ろうと思った。刀は原子構造云々がクソややこしいから作れたとしても鈍らだからな。
「そういや、ONE PIECEの世界って銃は不遇だな」
これでも弓矢とかの中距離以上の武器を扱わせれば右に出る奴は居ないぐらいには地獄の転生者養成所では腕自慢だった。
手合わせ錬成をしようとするんだがONE PIECEの世界には物凄い銃が存在してねえ。雨に濡れれば銃火器が使えないとかいう描写があった……雨で銃火器が使えないとかいうのは現代じゃありえねえ事だ。
「ワルサーP38,コルト・パイソン357マグナム、SVDドラグノフ…………う〜ん……まぁ、こんなもんだろうな」
材料が少ないし俺しか使わねえから銃をそんなに作っても意味はねえ。
それよりも銃弾を大事にしておかなきゃならねえ…………なるほどねぇ…………
「運営はこれが分かってたから錬金術にしてくれたのか?」
RPGに出てくる伝説の武器や能力よりも俺は銃火器を選ぶ。
地球が舞台だったら闇ルートで銃を入手すりゃいいが、ONE PIECEの世界は銃が未発達だ。そして俺には銃の知識がそれなりにある。
だから錬金術で銃を作ることが出来るようにしてくれた……ワノ国スタートってのは迷惑な話だが、この能力は万能でありがてえ能力だ。
「ま、色々とあれこれ考えてもしゃあねえ事だな。与えられたカードをパワーアップさせるか、コンボを見つけるか、さらなるカードをドローするかは
なんでもチートじゃ世の中は狂う。世の中はある程度は理不尽でその理不尽を滅茶苦茶にして楽しむのが人生ってものだ