“美少女ハレム団”の日常   作:ウサギの化身

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見てる人いるこれ?


第4話 “あしあと”の始まり

 

 

─────珪子のやつ、なに悩んでやがる?

 

迫り来るツタの触手を左払いでまとめて薙ぎ払い、その流れで左手で槍を引き絞り、右手を添えて目の前の敵目掛け突き、戻す。触手を失った変な植物、《リトルペネント》とやらが突きを受けて怯んだ隙に、再び右への薙ぎ払い。横一文字に赤い線をはしらせて断末魔と共にポリゴンとなって消えた。

 

「……これで最後か」

「ナイスだトーちゃん、リトルペネントと胚珠の情報はこんなもんだナ。攻撃パターンや花つきの出現率もβから変更なしカ?」

「体感的にそんな感じだね」

「だね。てか、結局ほとんどトーゴーくんひとりでやっちゃったねぇ」

 

周囲を見渡しても気色の悪い植物の姿は無い。再出現までに時間があるのだろうか、少し離れたところから歩いてくる彼女らの手に得物はなく、背中や腰にそれぞれ納めてられた。

腰に短剣を佩いたアルゴが露骨に顔を顰めており、その後ろではアリアとアミュが苦笑を浮かべていた。

 

「……まさか実を壊すとは思わなかったがナ。死ぬかと思ったんだガ?」

「実を壊すと敵が増えるとアリアが言っていたからな」

「敵が増えると危ないから壊さないでって言ったんだよボクは。めちゃくちゃ怖かったんだからね」

「かかってくるやつが増えるからいいかと思ったんだが」

「こっわ。HPゼロで死ぬかもしれないって状況でそれ言えるの控えめに言って頭おかしいよ!?」

「他ゲーとかβの初期に流行ったMPK(モンスタープレイヤーキル)以外で実を率先して割に行くやつとか初めて見た気がするナ」

「トーゴーくんもいい変態っぷりだねぇ。あっ、マゾっぷりの方がよかった?」

「そこは武者振りで頼む。変態だのマゾだのはお前みたいだからヤダ」

「おっ、ナーイスレスポーンス。今のお姉さん的に評価高いよぉ」

「そんなことでお前に評価されたくない」

「はいはい、変な言い合いしてないでトーゴーくんはHPの回復して、あと武器の耐久もチェックすること」

「仲良いなオマエラ」

 

くねくねと気色の悪い動きをするアミュを槍の石突きで小突きつつ、アリアの言うように回復薬を飲みつつ槍の耐久を確認する。消耗はだいたい4割強といった感じだろうか。

 

「アイテムのドロップ率はどうだい?」

「んー、体感的にβの頃と変わらない気がするな」

「敵のモーションとか学習AIの癖も植物系モンスター共有の感覚から変更ないと思うし、やっぱりβからの変更とかは無いのかな?」

「いや、実を割った時のポップ数がβより多かった気がするゼ」

「うーん、そうかなぁ」

「もしそうだとしたら“攻略本”には絶対書かなきゃね」

 

アリア、アミュ、アルゴの3人のよく分からない会話を横目に、HPの回復を確認して未だに少し離れた位置にいるシリカに近づく。

 

「おいシリカ」

「っ!……あやさん」

「あやさん言うな」

 

俯いたまま、短剣を胸の前で強く握り締めている。チラリと覗ける顔に浮かぶのは後悔だろうか。

 

「何を湿気たツラしてんだ」

「えっと、その……」

「後悔してんのか。このゲーム勧めたこと」

「それはっ」

 

このゲームで少しでもゲームに触れて欲しい。自分と同じ世界で同じ話題でお話したい。刀を思いっきり振り回せて、リアルではできないことをして欲しい。そう言って始めたこのゲーム。

だが、蓋を開けてみればそこはゲームオーバー=死のデスゲームであった。

わかりようがなかった。仕方がなかったこととはいえ、こんなことになってしまったのを悔やんでいるのだろうか。

 

「あれ、おーいふたりとも、もう行くよ!」

「そのうち次のがリポップしちゃうからね。街を目指すよー」

「ん、おう」

「は、はーい!」

 

アリアたちの方へと逃げるように駆け足で向かうシリカの後ろ姿に、思わずため息を着く。

 

─────こんだけ死の淵に立って槍を奮えて、後悔なんてあるわけないというのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、とりあえず最初の探索を全員で生きて帰れたって事で、かんぱーい!」

「カンパーイ!」

「乾杯」

「カンパイです!」

「ぱいぱーい!」

 

無事に始まりの街に戻ったきた俺たちは、ドロップアイテムを街の店に売り、手元に残った金で拠点としている宿屋のほど近いレストランに向かった。

周りには何人かのNPCらしき人物の姿ばかりでプレイヤーの姿はなく、俺たちの話し声と店内BGMだけが響いている。

 

「もう、調子乗りすぎだよアミュ」

「えへへ、いーじゃんかぱいぱいでもー。私もアリアも立派だし偽りないんだしさぁ」

「よくないよ」

「βの頃からだったが、やっぱオマエ身体ネタ好きだな」

「そんなことないよ?ねぇーシリカちゃん!」

「喧嘩ですか?喧嘩ですよね。喧嘩売ってますよねそれ!」

「べっつにー?ただちょーと寄せて上げてるだけ」

「寄せることすらできないんですよこちとらー!」

「ほらシリカ、落ち着いて」

 

艶やかないい笑顔を浮かべて両手で胸を持ち上げてみせるアミュにシリカが吠えた。持たざる者の怒りだ。そんなふたりを静止していたアリアがこちらを見て。

 

「まぁ、シリカちゃんぐらいの歳の子なら慌てることないってぇ」

「そんなこと言って……っ!」

「トーゴーくんもなんとか言ってよ」

「相変わらず飯が微妙だ」

「そんなことは別にいいよ!」

「じゃあアミュさんが12歳の頃はどーだったんですか!」

「ん?あー、夏のプールとか、体育の時とか男子の視線が凄かったなぁ」

「それ、遠回しにデカかったって言ってるようなもんじゃないですかそれぇ……っ!」

「アリア、米だ。米が食いたい。あとはもうちょいうまい飯。頼んだ」

「無茶ぶり言うのやめてくれないかな?」

「おまえら自由だナ」

 

クロワッサンらしいパンを片手に呆れたようにアルゴが笑う。席を立とうとするとなりのシリカに軽くゲンコツを食らわせてひとつパンを齧る。固くパサパサとしていた。一緒に頼んだスープに付ければマシになるが、スープもスープで微妙だ。

 

「あいたっ」

「用もなく飯中に立つな。行儀が悪い」

「─────っ!」

「立たなくていいからねアミュ」

「パンはまぁいい。だが、今朝のカフェの飲み物と言い、このメインの肉と言いスープと言いどうしてこう微妙な出来栄えなんだ」

「お肉の味がないですよねこれ……」

 

カフェのコーヒーと紅茶は変な渋みが目立ち、メインとしてテーブルの中央に置かれた牛らしき肉質のステーキは異様に味が薄く、スープは謎に塩っ辛い。

アリアとアルゴ、アミュのβ組が苦笑を浮かべる。

 

「そこら辺は味覚エンジンがどうしてもねぇ」

「難しいのはやめろ。俺にはわからん」

「この人はエンジンって聞いて車とかのエンジンしか出てこない人ですよ。味覚とエンジンの繋がりよくわかってませんって。」

「うるせぇ」

「味覚エンジンってのは食べたものの情報を脳に送って擬似的にとはいえ食事を再現してるって考えてくれていいんじゃない?」

「元々はアーガスって言うとこのダイエットゲームに組み込まれてたシステムらしいんだけど……。まぁ、人間の味覚をデータで正確に再現するのは難しいってことさ」

「床とか装備はともかく、草とか木とかのテクスチャも近くで見るとアラが結構あるでしょ?まだVR技術も未完成ってことだよ」

「塩かわさびが欲しい。ないのかアルゴ」

「いや、そんなこと言われてもナ……」

「……聞いてる?」

「聞いてない」

「聞いてよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事も片付き、宿の部屋に戻ったボクたちは宿の部屋でそれぞれくつろいでいた。ソファに座っているトーゴーくんと何故か膝枕されているアミュ、ふたつあるうちのひとつにシリカが寝転んでいて、もうひとつにボクが腰掛けていた。

ボクたちは今の状況で少しでも節約するために4人でツインベッドの部屋を取っている。アルゴは他に宿を取っていると行ってしまった。

 

「なぁ」

「ん、どうしたのトーゴーくん?」

「本当に良かったのか、俺も同室で」

「えぇ、今更それ言っちゃう?」

 

天井を見上げながらそう呟くトーゴーくんにアミュが反応する。それに対しバツの悪そうな顔でまた考え始めた。

 

「私は別にいーよー?」

「ボクも、まぁ。シリカに信頼されてるみたいだし、一応通報機能もあるからいいかなって」

「わたしは全然大丈夫です。むしろばっちこいです」

「……軽すぎやしないか?」

「わたしたちがいいって言ってるんだから気にしなーい!そんなことより頭撫でて?」

「うるせぇ」

「あー!よく見たら何やってるんですかあやさん!アミュさんも!」

「うるせぇ。てかあやさん言うな」

「あいったぁ!」

「あはは……」

 

トーゴーくんの手によってアミュが転がされてソファから音を立てて落ちた。そこにすかさずシリカが滑り込み、膝枕にありついた。

 

「ここはわたしの特等席なんです。アミュさんは引っ込んでてください」

「えー、いいないいなー」

「なんで野郎の太もも取り合ってんだおまえら」

 

そんな3人を眺めつつ、ふと気になったことを聞いてみることにした。シリカの年齢だ。

 

「そういえばシリカってまだ12歳だっけ」

「え、あ、はい」

「またえらく急な話だな」

「あれ、そういえばレーティングあったよね?15歳以上推奨だっけ」

 

床から起き上がりすごすごと椅子へと向かっていたアミュが思い出したようにそういった。

確かSAOは15歳以上推奨、ナーブギア自体も13歳以下は使用禁止だったはずだ。

 

「……レーティング?」

「年齢制限って言えばいいのかな。ほら、ゲームって残酷な描写とか性的な描写ってどうしてもあるでしょ?だからレーティングがあるの」

「年齢制限……だと?」

「あ、あはは」

 

青筋を浮かべたトーゴーをみて血の気の引いたシリカが逃げ出そうとするが、その前に頭を抑え込まれている。じたばたと暴れる手足とは裏腹に、頭はがっしりと固定されていた。

暴れるシリカの手足が何度か下にいるアミュを蹴って殴って叩いて、しばらくして動かなくなったところでトーゴーくんが口を開く。

 

「なんでおめん親どんがあげん反対しちょったんかち思うたや、年齢制限ってんなどげんこっだ?」

「え、えーとですね」

「わい、おいになんちゆぅた?ちょっち特殊なゲームじゃっで親に許して貰えんじゃっどん、どげんしてんやろごたっ。じゃっでおいも頭下げけ行っせぇ、勉強すっ時間を確保すっこととおいが同伴きて監督すんならよかって許可もろうたんじゃな」

「う、うぅ……」

 

静かに、しかしこれまでで1番つらつらと言葉を発するトーゴーくんの姿に、恍惚とした笑みを浮かべたまま這いずってこちらのベットまでやってきたアミュと顔を合わせる。

 

「……何言ってるか、わかる?」

「言ってる意味はなんとなくわかるけど、方言がキツすぎる……」

「九州っぽい感じだよね。てかすごく怒ってるし」

「そういえば、ボクが初めて会った時に保護者からの時間制限つきってのは聞いた気がするけど」

「あー、えー?わかった」

「それ、わかってない反応じゃないか」

 

そっぽを向いてわかったという彼女の姿が、勉強を教えていた後輩の姿に重なって見えた。特に仲の良かった彼女とは、同じ黒髪でも髪型もメガネも年齢も、何もかも違うはずなのに。

 

─────現実(リアル)かぁ……。

 

「アミュはさ、リアルだとなにしてたんだい?」

「私?私は普通に都内でJDやってた。これでも成績ゆーしゅーだったんだよねぇ。そういうアリアは?」

「ボクもただの女子高生さ。ちょっと、剣道の大会でいい成績を残したことのあるね」

「私はそういうのないなぁ。就活はがんばってたけど」

「就活かぁ。全く意識したことないや」

「いいねぇ高校生。……んで、どしたの急に」

「いや実は……」

「あっ、ちょっと待って!」

 

不思議がるアミュを横目に、シリカにゲンコツを落としてひと段落している2人に声をかける。アミュが同じようにゲンコツをくらいに行って蹴り飛ばされた。

 

「なんだお前は」

「んぶっふ」

「……2人はリアルの付き合いなんだよね」

「リアル?」

「あっはい。リアルで近所のお兄さんなんですよ」

「そういう事か。うちの親父とこいつの親父が幼なじみでな。昔から面倒見てやってたんだ」

「へぇ」

「それであやさん?かわいいじゃん」

「かわいいですよね!」

「あやさん言うな。シリカは黙ってろ。それでアリア、どうしてそんなことを?」

 

トーゴー、シリカ、アミュの3人の視線がボクに集まる。

 

「いや、これからもこの4人で行動することになるだろうからさ。少しみんなのこと知っておきたくてね」

「なるほど!だったらあやさんの取っておきの話が─────」

「ん?」

「え?」

「……え?」

「……ふ、2人とも?」

 

不思議そうな顔をするトーゴーとアミュのふたりに、思わず固まってしまうボクとシリカ。

 

「これからも、一緒に動くのか?」

「あ、当たり前じゃないですか!?βテスターと一緒とか心強いじゃないですか!?」

「ぇ……私なんかが、ここにいてもいいの……?」

「お、重い、急に重たいってそれ!?どうしたのさアミュ!?」

「だ、だって、私だよ?」

「あ、アミュだったらなんなのさ!?いてもいいから!」

「……うん」

 

いやにしおらしいアミュに気持ちの悪さを覚えつつ、怪訝そうなトーゴーくんの説得にかかる。

 

「女しかいないの肩身が狭いんだが」

「まさかのそんな理由!?道場で男とばっかりいたんですから、ここでぐらい可愛い女の子と一緒でもいいじゃないですか!」

「いや、女子しかいないの落ち着かん……」

「うんまぁ、トーゴーくんの気持ちはわかるけどさぁ」

「─────え、ちょっと何言ってんのトーゴーくん、ハーレムだよハーレム!」

「急に元気になったな」

「そうです、ハーレムですよ!それも美女美少女の!」

「知らん」

 

ハーレム!ハーレム!と騒ぐアミュとシリカをトーゴーはうっとおしげに睨みつけた。

─────だが、ボクとしても彼がいるのは心強い。昨日あの広場で見た限り、男女比はかなりのものだった。そんな中で女性だけのグループは、色々と狙われることもあるだろう。彼という存在は、抑止力としては申し分ないものだ。

 

「……えっと、とりあえずシリカさんも一緒に動くよね?」

「もちろんです!」

「ということでさ、トーゴーくんも一緒にいようよ」

「……ならそうしよう」

「やりぃ!あ、ハーレム作る時は言ってよ?協力するからさ」

「馬鹿言え。俺は純愛派だ」

「ふふっ、やっぱりわたしとの純愛」

「年の差考えろガキ」

「ひどいっ!」

 

本当に嫌そうな顔でアミュとシリカから距離を取り、2人がじわじわとその距離を詰めて追いかけ回し、そんな3人の追いかけっこにボクは笑ってしまった。

 

「抱きついてユーワクだよシリカちゃん!」

「はい!」

「やめろ、来るな。うっと惜しいから来るな……っ!」

「ふっ、ふふ……。あははっ」

 

 

 

 

 

─────こうして、後に団長となるカサンドラを加えたギルド“オレの美少女ハレム団”の前身、“チーム・あしあと”の物語ががこの日のこの宿で、始まった。

 

 

 

 

 





〇トーゴー
トウゴウと呼ぶのがめんどくさいのかだんだんみんなトーゴーになる。槍が振れて満足。

〇シリカ
あやさんはあやさん。デスゲームに誘っちゃって凹んでるけどけど本人が楽しそうなのに気づいてない。

〇シルバ
みんなの頭文字で“あしあと”と名付けておきながら、実は間違えてるのに気づいてない。

〇アミュ
この後チーム・あしあとときいて1人だけシルバが間違えてることに気づいてた。多分からかわれる。

〇アルゴ
攻略本の情報集め。それはそれとしてデスゲームだって言うのになんでこいつら楽しそうなんだと不思議がってる。



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