“美少女ハレム団”の日常   作:ウサギの化身

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第5話 襲来、カサンドラ

 

 

SAOが始まって1ヶ月と少しが経過した。あれからボクたちはアルゴや他のβテスターと協力し、1層でわかっていることをまとめた《アルゴの攻略本》を無事に出版、流通させることに成功した。

そのおかげ、とまで言うほど驕るわけではないが、かなりのプレイヤーがレベルをあげたり、装備を整えたり、安全な場所を見つけられたりして生存につながっていると思う。

さらに前線レベルのプレイヤーがそれなりに集まり、ついに先日第1層が突破され、第2層の攻略も半ばほどまで進んでいた。

 

「うん、マズイ。ポーションのがうまい」

「……飲まないでよ?」

「飲まん」

 

隣でそう項垂れるのトーゴー。黒髪を総髪風にまとめて結っていて、ボクより少し高い背丈で無愛想、ぶっきらぼうな性格。でも、ボクと一緒に第一層のボス攻略に参加した、いろいろと頼れる男の子。武器を槍から曲刀へと持ち替えたものの、嬉々として敵を斬り殺しに行く見敵必殺の精神のせいか、既にレベルが前線組の1つ2つは上をいっている。

ボス攻略の際にちょっと普段からは想像もできないはしゃぎ方をしていたのが印象的だ。─────ここだけの話、大人ぶってはいるがまだまだ男の子って感じがしてかわいかった。

 

「たしかに、この紅茶変に酸っぱい……」

「ポーションならおいしいのに、変なのぉ」

「シリカ、アミュ、今すぐそのポーションしまって。そのうち飲みそうだから」

 

はーいと声を揃えて返事をするのは、茶髪をミニツインテにし、瞳の色を赤く変えたシリカと、ストレートのロングヘアに黒縁のメガネが特徴的なアミュ。

それぞれレーティング破りの幼児体型にβ時代に変態野郎という2つ名を持っていたモデル体型の美少女といういろいろとやばい2人だが、なんだかんだで仲が良かった。

前線に立つことは少ないけれど、最低限身を守れるように下手なプレイヤーよりレベルを上げ、戦闘スキルも磨いている。

 

「今日はふたりともお休みですか?」

「そうだね。アルゴからも連絡ないし、連日フィールドに出てちゃ疲れちゃうからね」

「2層全体のモンスター出現場所とポップ数、リポップまでの時間調査。色々やったな」

「わたしたちのほうも、もっとがんばらないと、ですね!」

「たしかし。でも、私達も今日は休もっかぁ。ねぇ〜シリカちゃん」

「はい、ゆっくりしましょ」

 

そう言って2人は仲良くベットへと身を倒し、ゴロゴロし始める。ボクはもうひとつのベットから立ち、ソファに座るトーゴーの左横へと腰を下ろす。

 

「……素振りしてきていいか」

「だーめ、今日はボク達もゆっくりしよう?」

「だが」

「焦っても刀スキルは手に入らないって」

「ん……」

 

立ち上がろうと腰を浮かせるトーゴーの左手に右手をそっと乗せ、もう一度ソファに座らせる。

さっきから飲み物片手にモンスタードロップで手に入れた曲刀を眺めていると思っていたら、案の定こういうことを言い出す。少しはゆっくりできないのだろうか。

 

「もう、休憩はしっかりしないと」

「それはもちろんだが」

 

表情の変化が少ないので分かりづらいが、不貞腐れたようにして手にしていた曲刀をインベントリに収納し、再びソファへと腰掛ける。そんな姿を見て、再びあの日のこと、第一層のボス攻略の時のことを思い出した。

 

「……それにしても、あの時は面白かったなー」

「おい」

「ふふっ、倒れたディアベルたちを横目に真っ先に突っ込んで行ったと思ったら、言うに事欠いて」

「やめろ」

「刀ぁーー!ここにあったのか、刀ぁ!……ふ、ふふっ」

「やめろ─────っ!」

 

目元をヒクつかせてこちらを睨みつけてくるが、それすらもなんだかかわいい。そこに身を起こしたシリカが。

「あー、あやさん刀大好きですもんね。保育園に刀持っていこうとしたとか聞きましたし」

「あやさん言うな」

「へぇ、昔っからなんだぁ。やっぱかっこいいから?男の子だねぇ、トーゴーくんも」

「ここでうったくり殺されたかこん野郎」

「うったくりってなにー?お姉さんわかんなーい」

「あとたまに刃文眺めてニヤニヤしてたとか、腰にさして鏡の前で満足気にしてたりとか……」

「シリカぁ!」

「きゃー!」

「あーもう、余計なこと言うから」

 

シリカとトーゴーと何故かアミュを含めた鬼ごっこが部屋の中で始まり、ドタバタとやかましく暴れる3人に思わずため息を着く。このひと月、なんだかこの光景も見慣れてきた。

 

「この……っ!」

「ぐぇぇぇ」

「はいはい、3人とも落ち着い、て……。まって、なんでアミュはドアに頭挟まれてるの……?」

 

この数秒で何があったのか、トーゴーに後ろから首を絞められているシリカの後方で、何故かアミュが外のドアに首を挟まれて脱力している。

 

「知らん」

「……さぁ?」

「いやほんとになんで?」

 

まさかついに自分から挟まりに行った?いやいくらあの変態でもそこまではしないはず……。しないよね?

そんなことを考えていると、扉の開く音がした。

 

「アミュ、悪ふざけがすぎる……よ?」

「邪魔するぜ」

「……えっと」

「ここがチーム・あしあとの拠点、でいいんだよな?さてさてオレ様のかわいい女の子はどこかな」

 

てっきり立ち上がったアミュかと思ったら、そこには見知らぬ人物が立っていた。片目を隠した金髪のショートボブから覗く自信に満ち溢れた緑の瞳がボクと交差する。

 

「あぁ、君もなんてかわいいんだ!ねぇ、今日からオレと一緒にこない?」

「え、えぇ?」

 

ズカズカと部屋に入り込み、だんだんと距離を詰めてくるその人物に、思わず後ずさる。と、ボクの前にシリカをベットのうえに投げ飛ばしたトーゴーが割り込んだ。

 

「誰だお前」

「チッ。ほーら、そんな無愛想な男なんて放っておいてさ、オレと一緒に行こうぜ」

「その、そういうのは困るって言うか……」

 

トーゴーの手は既に曲刀へとのびており、いつでも抜刀できる状態だ。一方の向こうも、かなり機嫌が悪そうで。一触即発、とでも言うべきだろうか。

しばらくの睨み合い、冷たい空気が流れる中で、未だベットの上で状況が飲み込めずにキョトンとした顔のシリカが満面の笑みを浮かべた。

 

「カサンドラさん、来てくれたんですか!」

「あぁ、来るに決まってるじゃないか。マイラブリーエンジェル?」

「「え?」」

「あのー、そろそろ誰が私のボケに反応を─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とアリアが街の外に出てアルゴと情報を集めたり、素材を集めたりしている最中、シリカとアミュはまた違った活動をしていた。女性プレイヤーや子供プレイヤーの保護である。

街の中で済むようなおつかいクエストを熟す傍らではあったが、そういったプレイヤーに声をかけて回ってもらった。

 

SAOのメインコンテンツである戦闘において、体格によるリーチや状況判断能力、身体を動かすセンスは自前のものがモロに出る。

身体能力やらソードスキルやらはステータスを上げれば自然と挙げられるし、初動の構えさえ出来れば効果的な攻撃をくりだせる。

しかし、その身体能力を使いこなすことやソードスキルを使う判断、使わない時の戦闘能力、異形のモンスターが画面越しではなく目の前にいる恐怖、更には死と隣り合わせにあるという様々な理由から、女性プレイヤーの多くは《始まりの街》から出られずにいるものも多い。

 

子供プレイヤーは言わずもなが、保護する対象であるという他ない。戦闘で無茶をしても死ぬ一方、無秩序がまかり通っている《始まりの街》において1番危険な立場だ。

 

「そこで、オレが《始まりの街》で保護活動の下地を作ろうと奔走していたのさ」

「そうしたらたまたま、同じような活動をしている2人と出会って意気投合した、と」

 

ソファにふんぞり返って座る金髪の少女(・・)が、アリアの言葉にイグザクトリーと得意げに笑って返す。机を挟んで向かい合う3人がけのソファ。俺、シリカ、アリアの対面に、アミュと少女が座っている。

 

「そういえば自己紹介がまだったね。オレはカサンドラ。片手剣と片手盾を使う騎士(ナイト)さ。改めて、キミ達の自己紹介も聞かせてくれないかな」

「“騎士(ナイト)”か、どこかで聞いたな。トウゴウだ。曲刀を使っている」

「えぇっと、アリアです。武器は片手剣で、一応この4人のリーダーやってます」

「そして、シリカちゃんにアミュさん、か」

 

シリカ、アミュ、シルバとひとりひとりにじっくり目を通し、そして俺のところでとまる。

じ、っとこちらを見つめる青い瞳を、同じようにこちらも見つめ返す。根踏みするようなものではない、既にこちらを訝しんでいるような目だ。やがてそれが細められ、キッと睨みつけるような目となった。

 

「そう、君がトウゴウ」

「なんだ」

「街で噂は聞いてるよ。それも良くない噂をね」

「は?」

 

何を言っているんだ?良くない噂、というものに微塵も心当たりがないのだ。

そんなこちらを察してか、今度はハッキリと不快そうに顔を歪めるた。

 

「正直、最初はただのやっかみがほとんどなんだと思っていた。女性人口の少ないゲーム内において、見た目麗しい属性の違う美少女を連れている男、ということからくるね」

「たしかに、そういう声は聞こえてきたよ?まぁわたしもシリカちゃんもシルバもかわいいもんねぇ。嫉妬しちゃうってぇ」

「トーゴーさん、わりと顔がいいからそこもあるのでは?」

「ふたりとも……。それで、どういう噂があったんですか?ボクはあまり街の中で動かないからそういうのに疎いんです」

 

アミュとシリカがふざけている横から、いつもより真面目なアリアが質問する。それに対しカサンドラは右手で3本の指を立てた。

 

「オレが聞いた噂は3つある。ひとつはソードスキルも使わずエネミー相手に切った貼ったよ大立ち回りをする異質な人。動きはいいのにソードスキルを使い始めた途端動きが悪くなるんだっけ」

「あー、それはまぁ、うん」

「そろそろソードスキル使いこなしましょうよ」

「ん……」

 

アリアとシリカから呆れたような視線が投げかけられた。

 

「ふたつめは女の子たちを無理やり同じ宿の部屋に押し込めている」

「待った」

「待って」

「なんだ?」

 

彼女の口から放たれた言葉に思わず待ったを掛ける。全く心当たりのない言われだ。隣にいるアリアも頭を抱えていた。

 

「それにはとんでもない誤解が含まれてるよ」

「まず第1に同じ部屋にしたのはコイツらだ。俺も最初は別室に行こうとした」

「ふん?」

 

俺の言葉を聞いても納得は行かないようで、鼻を鳴らしてアリアたちに確認を取るように視線を送る。

 

「まだわからないけど、《解錠》スキルをとってる人がいるかもって思うと、女子だけよりも男の子いたほうがいいかなー、って」

「わたしはもう子供の頃から面倒見てもらってきているので別に同じ部屋でも大丈夫です」

「それにトーゴーくん、気配とか視線とか?そういうのに敏感みたいで自然と私たちの護衛みたいな感じになってるんだよねぇ」

「─────だが、彼は男だろう?」

 

ほのぼのとしているアミュとシリカは置いておくことにしたのか、俺とアリアだけを見るようにして鋭い視線を投げかけてくる。とくに、男といったあたりで一気に声が固くなったように感じる。

 

「男なんてのはケダモノだ」

「誰がケダモノだ。理性を忘れた覚えは無い」

「でもトーゴーくんそういう素振り微塵もないよ?私のおっぱいにもおしりにも視線向かないし。むしろ目すら合わせてくれない時もあるくらいだし」

「オマエにそんな目向けるか」

「あぁん、冷たい目っ」

「……そんなもの、隠しているだけだろう」

 

シルバが無言の圧力をかけることでアミュを黙らせたのはいいが、状況は悪化していくばかり。もう面倒だから投げ出してこのまま前線行ったら怒られるか、なんてことを考えていると、シリカが手を上げる。

 

「それなら問題ないと思いますよ?」

「……なんでだい?《倫理コード》があるからかい?」

「そうだ《倫理コード》ってなんだシルバ」

「うぇ!?」

「そもそもあやさんって──ですし」

「あやさん言う、な」

「え」

「おぉう」

「─────ふぇ?」

「─────おい待てふざけるなよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、見ろよあれ」

「ん、あぁ。かわいい子たちだなぁ。ここじゃ珍しいな」

「そうじゃなくてよ、あれ」

「あれ?」

 

それから数日後、とある帰り道、夕暮れ時の赤みがかった空の下。遠巻きにこちらを眺める男2人組が、なにかに気づいたように声を上げた。

 

「銀髪ボブ美少女、茶髪ツインテロリ、黒髪ロング美女ときて」

「黒髪のポニテヘアーの男!」

「─────っ!」

 

ボクとシリカとアミュ、全員の視線がトーゴー1人に集まる。本人は俯いていてどんな表情をしているのかわからないが、固く握られた拳が細かく震えている。

 

「EDザムライじゃねあれ……!?」

「武者インポだ……!?」

「あんな高身長美少女といるってのに!?」

「妹系ロリ幼なじみが隣にいてか!?」

「黒髪ロングメガネのダイナマイトお姉さんに無反応だと!?」

 

ざわめきは伝播し、2人を皮切りに周辺にいた人々がそれぞれ反応を見せる。そしてついに、我慢の限界を超えた彼は吠えた。

 

「ひゅ、ひゅ〜」

「あーらら」

「─────誰がED、インポの玉無し野郎じゃ……っ!」

「これはシリカが悪いよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〇トーゴー
武を極めるために半ば煩悩を捨てようとしているだけで、本当は性欲あり(?)

〇シリカ
冗談で言ったら噂が広まってしまった。でも内心ではEDを疑ってたりする。

〇アリア
シリカを諌めつつ、どうにかして噂を消せないかと思考中。なおこの後また倫理コードについて聞かれた。

〇アミュ
私なら直せないかな?と服を脱ごうとしてトーゴーに容赦なく殴られた。普通に心配もしてる。

〇カサンドラ
若干内反りしている金髪ショートボブ。中性的な顔立ちで男女ともに人気が高かかったりする。
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