シエン   作:ブラック

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シエン

 自分の居場所はどこなのか? 

 それだけを探す人生だった。

 小さな頃から自分を蔑ろにして、誰かの為に生きるんだ。

 勉学を重ねて、犠牲を重ねて、辿り着いた先が、結局は自分のエゴを満たす環境で。

 自分は異常と烙印を押され、滑り落ちるようにレールを外れた。

 誰かのため、を褒めた人は不意に消えて。自分の依代はいつしか別の依代になって1つの形になって。

 塞ぎ込んだ自分を掬いあげた誰かは、いつしか本当に『だれか』の一部となって。

 救われた僕はひた走るしか無くて。

 ネオンに入り浸っては紫煙を吐いて。

 歪んだ同調と共に私怨を吐いて吐かれて。

 泥のように溶けて、泥と共に沈むような人生が、待っていた。

 

 いつしか自分の居場所は決められていて。

 定位置に置かれてはキツい泥をいつものように差し出される。

 嬉々として仮面の上から煽っては、いつものように紫煙を吐き出していく。

 泥を吸い寄せては、泥が消え失せるように。プラスもマイナスもない虚無のような行動を繰り返して、時間だけが無為に過ぎていく。

 時には興が乗って正常な者たちが街へ繰り出す事もある。

 自分の仮面を見た者が、良かれと掬いだそうとする。仮面に踊らされて向かう自分は、いつも後悔を繰り返す。

 正しい調律に巻き込まれて、歪んだ自分が見え隠れする。そんな自分が情けなくてシエンを吐き戻す。

 葛藤悔恨自己嫌悪。全てを上へ上へと吐き戻す。それでも、歪んだ同調は仮面の下を覗いてくる。

 まるで正しい同調へ引き寄せるように、本当の私を連れ出そうとする。

 居場所はここでいいのかい? 誰かの為に動いてもいいのかい? 

 そんな言葉を呑み込んで、偽って、紫煙と共に言霊を逃がしていく。

 

 そんな暗く淀んだ自分でも、眩しいものには惹かれる。誘蛾灯と呼ぶには綺麗すぎて、太陽と呼ぶには濁りすぎている。

 禍々しく光っては、美しく消えていく。そんな表情に僕は引き寄せられるしか無かった。

 半月、が正しいのだろうか。その歪な光に僕は吸い寄せられるしか無かった。

 誰もに分け隔て無く、されど誰よりも寄り添ってくれて。そして誰よりも遠く寄り添って。

 

 霞のような存在を追いかける事こそが、自分の本懐なのかもしれない。

 居場所なんてものを求めているような自分には、唯一垂らされた蜘蛛の糸にも等しい光明だった。

 

 どうか、自分の伸ばす手が月まで届くように。灰を燃やした紫煙とならぬように。何もかも失った末の私怨とならぬように。

 

 この言葉の羅列がどうか、自分へのシエンとならぬように。

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