シエン   作:ブラック

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シエン

結論から言えば、濁った太陽は光を取り戻した。

蜘蛛の糸は何者にも切れぬ頑丈さを取り戻した。

霞は現実となり、半月は満月へと移り変わった。

 

変わらなかったのは、自分だけだった。

 

光はこちらに向くことはなく、垂らされた糸は自分に向けられることはなく。

 

いつも自分の手のひらから、自分の視界から。

零れ落ちてゆき、姿を消してゆく。

 

いつも身近な存在に向けられる。

何故自分がこんな目に?何故自分に向けられない?

 

答えなんてのはとうの昔に分かっている。

それでも受け入れられない。シエンが、胸の内側から吐き出されていく。

 

枯れたものが潤いを取り戻していく。

決して綺麗な色では無い。自分の人生を表すかのようにドス黒い液体で満たされていく。

 

濁りすら飲み込めない。シエンすら取り込めない。

なのに、誰かのために自分を磨り潰す。

 

消耗品は、捨てられるだけなのだろう。

いや、捨てて貰える存在すらいないのだから、見て見ぬふり、が正しいか。

 

意志を持った以上は、自分から進んで処分すべきなのだろう。

仮面の上からでも本当の自分に届く光は、容赦なく精神を削り取る。

細かなヤスリで丁寧に磨くように、歯の荒いノコギリでブツ切りにするように。

 

無自覚という名の、確信という名の鋭利なソレが突き刺さる。

 

これ以上、何を飲み込めばいいのか。

これ以上、何を吐き出せばいいのか。

 

分からない。何も分からない。どんな仮面を被れば、今の自分を納得させられる?

理不尽に理不尽を重ねられたこの人生は、一体何があれば報われるのだろうか?

 

 

死ぬのが勿体ないから生きる。

太陽が、満月がそう呟く。

 

あなたを前に向かせたのは紛れもなく自分なのだろう。

自分なぞどうでもいい。あと3年で何もかも終わるのだから。

 

ならばせめて、傷跡は残そう。立つ時は濁さず、綺麗に終わろう。

仮面をつけて、前に向く振りだけでもして。誰かの幸せを全力で願うことにしよう。

 

その光が本当に届くべき存在に届いて。

蜘蛛の糸が赤に染まって結ばれて。

人生の終着点に辿り着いた時に。

 

華々しく、祝福しよう。

濁ったものですら何もかもが透明になるのだから、今の自分でも、素直になれるだろう。

仮面を付けた自分が、本当の自分を取り戻せる瞬間なのだろう。

 

 

それが終われば、自分自身も幕を引くことにする。

目的が果たされたのなら、そこにいる必要は無い。

 

敗者は死に逝くのが運命。

真っ白な花を自分の血で真っ赤に染めて、彼岸花のように美しい深紅の華を、手向けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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