セシリア・オルコットとイチャラブしたいッ!! 作:シシカバブP
学園祭当日。色々あり過ぎて、この日があっという間に来た気がする。
1組の『ご奉仕喫茶』をやるにあたり、メイド服や執事用の燕尾服についてはシャルロットが調達出来たから良かった。だが、それ以外が意外と大変だった。
まず食材の調達だが、一般開放されてないとはいえ、それなりの人数が入ると予想されているから結構な量になる。で、当日の調理時間を短くするために予め下ごしらえをするわけだが、これがきつかったんよ。
「私、人参の皮包丁で剥いたことないよ~!」
「じゃがいも、ゴツゴツしてて剥きづらい……」
「やっぱり生クリーム、泡立ててあるやつ買った方が良かったんじゃない!?」
「そうだよ~! 腕疲れた~!」
「いったぁぁぁ! 指切ったぁ!」
原作セシリアよりはマシとは言え、台所に立ったことがある生徒が全体の3割しかいなかったのは想定外だった。なにせ、当初は肉体労働だけだと思ってた俺が、きちんと戦力に数えられてるんだから。
次に、ワンサマーに執事の所作を覚えさせるのが、大変だった。
正確には、シャルロットがワンサマーに色々教えることになったのだが、
「そこは胸元に手を置いて、少しだけ頭を下げるんだよ」
「こ、こうか?」
「そうそう!」
「ぐぬぬぬ……!」
「シャルロットめ、嫁にくっ付き過ぎではないのか……?」
「篠ノ之さんもボーデヴィッヒさんも、ちゃんと仕事してください」
目のハイライトが消えた篠ノ之とボーデヴィッヒが、役に立たないこと立たないこと。ヴィシュヌがその度に注意しているものの、大して効果が無いようだ。
さらに、そのワンサマー自体が
「一夏く~ん、箒ちゃ~ん。特訓の時間よ~」
「た、楯無さん、今学園祭の練習中で……」
「よし一夏! 楯無さんを待たせるわけにはいかないな!」
「ちょっと、箒!?」
「あ、一夏! まだ今日の分が……!」
生徒会長がワンサマーと篠ノ之を、特訓の名目で連れて行ってしまうのだ。これで当日までに覚えられるのか、1組一同不安になったもんだ。
ただそこはそこ、シャルロットとの補習が夜の学生寮で開催されて、ワンサマーの頭から蒸気が上がってたな。
と、そんなこんながありつつも、なんとか今日という日を迎えることが出来たわけだ。
「うそ!? 1組であの織斑君の接客が受けられるの!?」
「しかも執事服姿!」
「それだけじゃなくてゲームもあって、勝ったら写真を撮ってくれるんだって! しかもツーショットよ! これは行かない手はないわね!」
廊下から聞こえてる声と長蛇の列から分かるように、1年1組の『ご奉仕喫茶』は開会式が終わってからずっと大盛況だ。ぶっちゃけ、滅茶苦茶忙しい。
「榊君! サンドイッチ用のハムがあと少しで切れそう!」
「あいよー!」
ワンサマーが表に出ている以上、裏方の力仕事は全部俺がやる事になっている。と言っても、主に食材が切れたら冷蔵庫のある調理室まで取りに行くだけの簡単なお仕事だが。
「他に切れそうな食材はあるかー?」
「お米も切れそうかもー!」
それならまとめて持ってくるか。
「セシリア、食材取って来るからここよろしくな」
「分かりましたわ」
セシリアに一声かけると、俺は教室から出た。
「はーい、こちら2時間待ちでーす」
「大丈夫ですよー、学園祭が終わるまでは開店してますから」
すぐそこで、列対応のクラスメイトが忙しそうにしている声が聞こえて来る。これが織斑効果か……2時間待ちって。
そんなことを考えながら、調理室で冷蔵庫の中身を取り出すと、急いで教室まで戻る。ちなみにこれ、朝から3回目なんだが。客多過ぎぃ!
「待たせた、って」
「あ、悠人さん」
「そうか、これがあったな」
「か、可愛い?」
「ああ、可愛いぞ――リスみたいで」
「バカァ!」
――ずどむ!
食材を持って戻った俺が見たのは、ワンサマーがチャイナドレス姿の鈴に脳天チョップされている場面だった。
確かこれ、『執事にご褒美セット』っていう、ワンサマーにポッキーを『食べさせる』メニューだったか。あくまで客がワンサマーに『食べさせる』のであって、『食べさせてもらえる』わけではない。
で、どうせワンサマーのことだから、鈴に余計なことを言ったんだろう。
「何すんだよ!」
「こっちのセリフよ!」
「はいはい、騒ぎ立てないの。他のお客さんがビックリするでしょう?」
「せ、先輩!? その恰好は――」
二人の間に割って入ったのは、なぜかメイド服を着た生徒会長だった。
声を出したワンサマーだけでなく、教室内の全員が驚いている。というか、どっからそのメイド服持ってきたんだよ。
「楯無」
「へ?」
「名前で呼んでって言ったでしょ」
「た、楯無さん」
「よろしい」
何だこの茶番は。鈴もそうだが、篠ノ之やシャルロット達もジト目になって二人を見ている。
「セシリア」
「もう連絡済みですわ」
セシリアに声を掛けると、すでに対応したとのこと。素晴らしい。
そして――
「お姉ちゃん!」
「か、簪ちゃん!?」
血相を変えた更識さんが、1組の教室にリフトオフ。それを見て驚く生徒会長。
以前、俺と更識さんとのほほんさんがセシリアに謝った時、連絡先を交換していたのだ。
「また人様に迷惑かけて! どういうつもりなの!?」
「べ、別に迷惑かけてるわけじゃなくて、ちょっと一夏君達の様子を見に、ね?」
「また言い訳して! ちょっとこっち来て!」
「い、痛たたたたっ! 簪ちゃん、放してぇぇ!」
「みなさん、姉がお騒がせして失礼しました」
言い訳されてお冠だったのか、更識さんは会長の耳を引っ張って教室を出て行く。
「……」「……」
教室内の誰もが唖然とした顔で、更識姉妹を見送ることしか出来なかった。
ーーーーーーーーーーーーー
その後も、ワンサマー目当ての女子生徒達が押し寄せて来たり、ワンサマー目当てのIS関連企業の人達がやって来たり、クソ忙しいこと数時間。ようやっとまともな休憩時間を取ることが出来た。
当然、セシリアも同じタイミングで休憩を取り、
「悠人さん、どこから巡りましょう?」
「そうだなぁ、部活の出し物をグルっと回ってみるか」
「分かりましたわ❤」
恋人繋ぎで校舎内を巡っていた。
「あれが1年1組の悠セシ……」
「なんでもあまりの激甘っぷりに、合同実習の時間に2組を壊滅させたって話よ」
「怖いわぁ……」
なーんか変な噂も聞こえて来るが、今は無視だ。それよりセシリアとの学園祭デートの方が大事だ。
そうしてまず最初に来たのは
「あ、榊君。今は休憩かしら?」
「はい。今回は食材調達じゃなくって、料理部を覗きに来ました」
「そうなんだ。なら入って入って」
料理部が使っている調理室だ。何度も往復してたから、表で呼び込みをしている料理部の部長さんと自動的に知り合いになってたという。
「料理部、ですの?」
「なんでも、日本の伝統料理を作るんだってさ」
「なるほど……これはすごいですわね」
セシリアと二人で調理室に入ると、そこにはずらっと並べられた大皿に盛られた料理の数々が。
客はその中から、好きな料理と量を買うことが出来る。デパ地下とかにある総菜の量り売りみたいな感じと言えば伝わるだろうか。
「あ、これは知ってますわ。確か肉じゃが、ですわよね?」
「そうそう。イギリスでも有名なんだな、肉じゃが」
セシリアが指さす肉じゃがは、しっかり味が染みてるのが見て分かるぐらい、じゃがいもが良い色をしてる。うわぁ、生唾出そう。
「よし、じゃあ肉じゃがと生麩煮下さい」
「は~い、どうぞ~」
大皿からプラスチック容器に移された料理を受け取ると、同じ調理室内にあるイートインコーナーでさっそく食べてみた。
「おっ、やっぱ味が染みてるな」
「美味しいですわ。優しい味ですのね」
どうやら英国人のセシリアにも、肉じゃがは好評のようだ。ああ、原作のワンサマーじゃないけど、白米が欲しくなる。
「それで悠人さん、こっちは何ですの?」
セシリアが不思議そうに見ているのは、一緒に買った生麩煮だ。
よく正月の雑煮に入ってる、毬みたいな形のモチモチしてる、あれが生麩だ。ただし今回買ったのは球体じゃなく、平べったい形をしている。
その生麩の表面を焼いて餡を絡めて軽く煮たのが、この生麩煮だ。
「麩、ですか。初めて見る料理ですわ」
「だろうな。そんじゃ、ほい」
3色入った生麩の内、黄色の物を箸で掴み、セシリアの口元へ。
「えぇ? あ、あの……あ~ん……」
一瞬驚いたセシリアだったが、意を決して生麩を口に含む。
「んん……も、モッチモチですわ!」
「美味いか?」
「はい、美味しいですわ! 甘くない
いや、生麩と餅は別なんだが……まあいいか。生麩をもっきゅもっきゅ食べてるセシリア可愛いし。
肉じゃがと生麩を食べ終わった(お互いに食べさせ合った)後は、吹奏楽部のところで楽器体験を(セシリアとホルンを吹いたら、部員さんに『それ、間接キスだよね』って言われてセシリアが顔を真っ赤に)したり、2組の中華喫茶に入って、鈴を揶揄ったり。
そうこうしている内に休憩時間も終わりに近づき、1組に戻ってきたら
「人、いなくなってますわね……」
「ああ……」
朝は長蛇の列だった1年1組の前は、完全に閑古鳥が鳴いていた。
おっかしいな、俺達が休憩に入った時にも、そこそこ人が並んでたはずなのに。
「あっ、二人ともおかえり」
「相川さん、一体何がありましたの?」
「それがねぇ……」
セシリアの問いに、相川さんが腰に手を当て『やれやれ』みたいなポーズを取った。
「二人の前に、織斑君達が休憩に入ってたでしょ?」
「ああ」
「そうでしたわね」
その際ワンサマーが、ハーレム連中とそれぞれ二人きりになるようにしたんだよな。1人10分の持ち時間で。
それで順番決めのじゃんけんを始めて、シャルロットがトップバッターになって休憩に入ったところまではみた覚えがある。
「その後、ボーデヴィッヒさんと篠ノ之さんとも順番に回って戻って来たんだけど……」
(回想開始)
『じゃじゃーん! 楯無お姉さんの登場でーす!』
『……』
『無視しないでよぉ!』
『だあっ! 一体何ですか! こっちはクラスの出し物に戻らないといけないんですよ!』
『生徒会の出し物で演劇をするのだけど、織斑君、出演決定ね』
『疑問形じゃない!?』
『うん、決定だもの』
『俺の意志は……』
『勝手に決めてもいいじゃない、生徒会長だもの』
『なんでじゃい!』
『あのー先輩? 一夏を連れて行かれると、クラスの出し物的に困るんですが……』
『シャルロットちゃんも参加ね』
『ええっ!?』
『お姉さんが、綺麗なドレスを着せてあげるわよ~』
『ど、ドレス……じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……』
『シャル!?』
(回想終了)
「それで、そのまま篠ノ之さんとボーデヴィッヒさん、さらにヴィシュヌさんも連れて行かれちゃって……」
「主力を失ったご奉仕喫茶は休業せざるを得なくなったと」
「うん……」
返事をする相川さんは、呆れを通り越して疲れた声を出していた。
本当にあの自由人は……この世界線でも、周囲を引っ掻き回すなぁ……。
そもそも会長権限だろうと、人権侵害するのはダメじゃね? 普通に訴えられたら負けるぞ。
つーか、ヴィシュヌすら連れてったのかよ。
「それで、その演劇の演目は何ですの?」
「えーっと、確か会長さんが言ってたのは……」
「シンデレラ、だったかな?」
もし本作が面白いと感じていただけましたら、高評価や感想、お気に入り登録をよろしくお願いいたします。
……楯無さん、完全にマダオ(まるで・ダメな・お姉ちゃん)だよばっちゃ。