セシリア・オルコットとイチャラブしたいッ!!   作:シシカバブP

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「最後は爆発オチかあ」?

何勘違いしてるんだ。まだ俺のバトルフェイズ(爆発オチ)は終了してないぜ!


第72話 宣戦布告

 悠人に突き飛ばされた時、セシリアは自分の身に何が起こったか分からなかった。

 それを理解する前に襲い掛かる爆音と閃光。そして悠人に向かって伸ばしていた右腕に感じる痛み。

 

 それを耐えて目を開いたセシリアの前にあったのは

 

 

 右腕が真っ黒に焼け焦げ、割れたガラスが至る所に突き刺さり血を流す悠人の姿だった。

 

 

「悠人、さん……?」

 

 よろよろと近寄り、座り込み、返り血が付くのも気にせず倒れている悠人を抱き起こす。

 いつもしている膝枕。けれどこの時ばかりは、悠人の目は開かない。

 

「悠人さんってば……冗談はやめてくださいまし……?」

 

 セシリアが優しく語りかけようと、答えが返ってくることは無い。

 それどころか、膝の上から感じる鼓動が、温もりが、どんどん小さくなっていく。

 

「そ、そんな……そんな……あ、ああ……」

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 通報を受けて救急隊員が駆けつけた時、そこには悠人を抱き抱えたまま、まるで獣のように泣き叫び慟哭するセシリアの姿があった。

 目を覆い耳を塞ぎたくなるような光景。しかしそんな状況でも、救急隊員は優秀だった。前後不覚になっているセシリアを引き剥がすと、悠人をストレッチャーに乗せる。

 そして悠人はドクターヘリに乗せられ、近郊の大学病院へ運ばれた。

 

 

 

 

「……」

 

 病院の待合室は、重苦しい空気に支配されていた。

 ベンチに座っている面子の間に言葉は無い。

 ヴィシュヌ、鈴、シャルロットと、悠人と比較的親交のあったメンバー。そして、制服に血が付いたまま、右腕に包帯を巻いて俯くセシリア。

 セシリアも爆発の影響で右腕に火傷を負っていた。幸い、数日で痕も残らない軽度のものであったが。

 

 そんな4人がこの待合室に集まって、何時間が経ったか。

 廊下の方からコツコツと二人分の足音が聞こえて来る。

 

「今、手術が終わった」

 

 足音の主、千冬と真耶の内、千冬がゆっくりと口を開いた。

 

「そ、それで、悠人は……」

「手術は成功した。だが、至近距離で爆発を受けたようでな。重度の火傷とガラス片による出血、爆風そのものによる内蔵破損。しばらくは絶対安静だ」

「そんなに……」

 

 手術の成功を喜ぼうとした鈴だったが、悠人が重傷だったことを知って気持ちが萎み、へたり込むようにベンチに座り込む。

 

「爆発って、一体どうして……」

 

 千冬にヴィシュヌが問うと、真耶が後を引き継ぐ。

 

「おそらく、爆弾によるものと思われます。どのようなものかは現在捜査中ですが――」

「紙袋、ですわ……」

 

 一人だけ顔を上げずに俯いたままだったセシリアの声に、全員がセシリアの方を向く。

 

「悠人さんがベンチの忘れ物に気付いて、それを届けようとして……悠人さんがわたくしを突き飛ばして……それで……それで……!」

「もういいわ、セシリア」

 

 説明するにつれて震えだすセシリアに、鈴がその震えを抑えるように抱き締める。

 

「なるほど。その紙袋に爆弾が入っていて、それに気付いた榊が……」

「……榊君以外で、この件の被害者はみな軽傷でした。それだけが、不幸中の幸いでしたが……」

「山田先生」

「あっ……」

 

 セシリアの前で不謹慎なことを口にした真耶が、ばつが悪そうに視線を逸らす。

 

「それで織斑先生、その爆弾を仕掛けた犯人は……」

「それなんだが、先ほど犯行声明があった」

「「「犯行声明!?」」」

「一体どこの誰なんですか!?」

 

 シャルロットの問いに、千冬も真耶も困ったような顔をして

 

「犯行声明を出したのは、統一コリアです」

「統一コリア……」

「それって、昔国連を追放された半島国家だっけ?」

「デュノアさん、それはサウス・コリアです」

「その国連を追い出された南の連中を北の連中が併合して出来たのが、統一コリアよ」

「その統一コリア曰く『我が国が国際社会から孤立した責任は、日本のIS操縦者『織斑一夏』にある。故にその排除は正当なものである』と」

 

 真耶の説明に、俯いたままのセシリアを除く3人が首を傾げた。

 どうしてそこで、一夏の名前が出て来るのか。そして気付いた。とんでもないことに。

 

「それってつまり……」

「統一コリアは、織斑さんを殺そうとして……」

「誤って悠人を殺そうとした……?」

 

 3人が気付いた通り、統一コリアは大きな勘違いをしていた。

 そもそも彼等は一夏の情報をほとんど持っていなかった。国際社会から爪弾きにされており、日本国内の潜伏組も名前の通り地下に潜っていたため、容姿等の情報すら得られなかったのである。

 知っていることは、IS学園の制服を着ている男ということだけ。故に、一夏と悠人の判別なんて付かずに計画を実行したのだ。

 

「そうですの……そんな理由で、悠人さんを……」

「せ、セシリア……?」

 

「許さない……」

 

「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ」

 

「ユルサナイ!!」

 

「「「「「ひぃっ!!」」」」」

 

 呪詛のようなセリフを吐き出しながら顔を上げたセシリアに、千冬すら悲鳴を上げそうになった。

 普段見せないような、殺意と憎悪に満ちた顔。まさしく、修羅の顔だった。

 そのセシリアはすっとベンチから立ち上がると、待合室から出て行こうとする。

 

「お、おい、オルコット……」

「織斑先生」

「な、何だ……?」

「わたくし、数日ほど授業を欠席させていただきます」

「何? 一体何をする気だ?」

「少々、やる事が出来ましたので……」

 

 そう言うと、セシリアは千冬の返事を聞く間もなく待合室を出て行くのだった。

 そんなセシリアを、誰も止めることが出来なかった。

 

「あわわわわ……!」

「山田先生、しっかりしてください!」

「あたし、セシリアのあんな顔、初めて見た……」

「私もです……」

 

 セシリアが出て行った後、千冬を除く全員が気が抜けたように待合室の床にへたり込んでいた。

 その千冬ですら、まさか生徒からの殺意で手が震えるとは思ってもみなかった。

 

ーーーーーーーーー

 

 病院を出てから、セシリアの対応は素早く、殺意と憎悪が渦巻きながらも冷静だった。

 

 まずは榊家、そしてオルコット家へ連絡。

 榊家は最初驚き、悲しみ、そして手術が成功したことを聞いて安堵していた。

 オルコット家ではセシリアの話を静かに聞いていたルイーザだったが、全てを聞き終わると

 

「セシリア、分かってるわね?」

「はい、お母様」

「よろしい。私達も動くわ。ね、フィリップ?」

「ああ。婿殿を殺そうとした罪、きっちり贖ってもらおう」

 

 今のフィリップを悠人が見たら、本当に本人か疑うほどキレていた。

 最後に本国の高官へ。

 

「分かった。根回しはこちらでしておく」

「お願いしますわ、首相閣下」

「無論だ。人違いとはいえ、我が国の代表候補生を暗殺しようとして、ただで済ますわけがあるまい」

 

 紳士然としてセシリアと通信している英国首相だが、心の中ではハラワタが煮えくり返っていた。

 セシリアとの通信が終わるとすぐに閣僚を緊急招集、女王陛下に報告するためにバッキンガム宮殿へ。

 

「そうですか……」

 

 首相から報告を聞いた英国女王は静かに、しかし顔には青筋がはっきりと立っていた。

 

「ヒューム卿」

「はっ!」

 

 女王に呼ばれ、首相は下げていた頭を上げる。

 

「連中がどこに喧嘩を売ったのか、分からせてあげなさい」

「承知いたしました」

 

 女王からの勅命を受けた首相が首相官邸に戻ると、会議室には召集をかけた閣僚たちが集まっていた。

 

「女王陛下は、蛮族共を完膚なきまでに叩くことをご所望だ」

「分かっています」

「ここで下手に出ては、誇りある連合王国の名折れだ」

「その通りだ。故に、我が連合王国は統一コリアに対して、宣戦を布告する」

「「「「異議なし」」」」

 

 かくして、物語は当初の主人公を置いて進んでいく。

 

 

 

 

 緊急で開かれた国連安全保障理事会において、英国は統一コリアへの軍事行動、多国籍軍による攻撃決議案を提出した。

 通常であれば、通るはずもない案。しかし今回はそうはならなかった。

 

「本決議案は賛成15、反対0で可決されました」

 

 これには、英国ご自慢の外交能力が遺憾なく発揮された。

 非常任理事国については根回しの必要は無かった。特に日本は自国内で爆弾テロを起こされ、遺憾の意だけでは済まなくなっていたからだ。

 拒否権を持つ常任理事5ヵ国の内、アメリカとフランスに対しては

 

「ここで統一コリアを討てば、軍内のガス抜きが出来ますよ」

 

 と諭した。

 ISが台頭してから、ISに乗れない所謂一般兵の出番は減り、彼らの間で不満が溜まっていた。その不満を吐き出すいい機会だと、2国の上層部は考えた。

 

 残りの中国とロシアに対しては

 

「ここで拒否権を行使した場合、貴国がかの国をどうにかしてくださるんですね?」

 

 と確認した。

 ロシアも中国も、かつて同じ共産主義仲間であった統一コリア(正確にはノース・コリア)を持て余していた。

 正直、これ以上連中のケツ持ちをしたくないのである。

 特に、今でも極秘裏にかの国とのホットラインを持っている中国は、これを機に子分格であった半島を見限ることを決めていた。

 

 さらにここで、英国がトドメとなる提案をした。

 

「かの半島に、参加国が一斉に核ミサイルを撃ち込みましょう」

 

 その提案に、全参加国が賛成した。

 この時代の核兵器は核分裂ではなく核融合型のため、放射性物質をばら撒く心配はない。しかし、だからと言ってそう簡単に使うわけにもいかない。国内の支持を得られないし、なにより『ISによって迎撃可能』だからだ。

 さらに困ったことに、核ミサイルは撃たなければ撃たないで維持費が異様にかかり、解体費用も凄まじい額になる。

 そのため、各国はこの不良債権化した兵器を消費する機会を望んでいたのである。

 そこに、降って湧いたような英国の提案。しかも悪いのは先に手を出したコリアなのだから、使用しても良心は痛まないし、国内の支持率も下がらない。コリアにミサイルを迎撃できるISが配備されていないのも、各国の気持ちを後押しした。

 

 

 

 そして、この件で一番コリアへの殺意を溜め込んでいるセシリアは、病院からIS学園に戻るとそのまま整備室へやって来た。

 セシリアが整備室に入ると、そこにはすでにヴィッカース社の人間が待っていた。

 

「お待たせしました」

「いえ。それではさっそくですが、ブルー・ティアーズの新武装を」

「お願いしますわ」

 

 ヴィッカース社から来た男は、未だセシリアが隠そうともしていない殺意に怯えることなく――正確には本社経由で受けた勅命を果たすため必死に耐えて――、背後に鎮座していたコンテナを開けた。

 本来3学期にテストするために学園へ運び込まれていた新武装を、今回の半島攻撃で使用することに決まったのである。

 そしてその作戦において、セシリアは一番槍を任されていた。彼女の攻撃を合図に、多国籍軍が核ミサイルによる半島全域への飽和攻撃を行う手筈になっているのだ。

 

「本国が緊急の国連安全保障理事会を招集し、先ほど統一コリアへの軍事行動決議案が可決されました。オルコット候補生にはこの武装を使用して、統一コリアの首都ソウルにある万寿台議事堂(元々はノース・コリアの平壌にあったが、統一後にソウルに移動した)を攻撃・消滅させてください」

「承りましたわ」

 

 男の説明に返事をしながらも、セシリアはブルー・ティアーズを展開、黙々と装備を量子変換(インストール)していく。

 それが終わると、普段なら装備を持って来た者にかける労いの言葉も無く、ISを展開したまま踵を返した。

 

「ご武運を」

「ええ」

 

 その言葉だけを交わし、ブルー・ティアーズは屋外に出ると、そのまま飛翔して学園から飛び去って行った。

 目的地は、統一コリアの首都・ソウル。

 

(分からせて差し上げますわ……自分達が何をしたのかを……何を傷付けたのかを……っ!)

 

 

 

 

 とある半島国家が消滅するまで、あと3時間23分




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……転生特典でアクシデント減少とは言ったけど、ゼロになるとは言ってないよばっちゃ。
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