「…なさい…」
遠くから男性の声が聞こえる。
誰の声だっけ…たしかに聞いたことがある声のはずなんだが…
「目覚めなさい」
今度ははっきりと聞こえた声に、条件反射のように起き上がり、声の主と目が合う。と同時に大声を上げる。
「くろふく!?」
状況を整理しよう。俺はしがない男子高校生だったはずだ、なぜか名前は思い出せないが。
トラックに轢かれそうになってた同級生を庇って死んだと思ったら幼女になってた。
いや、どういう状況だよ。
しかも目の前にいるこの奇妙な男は、たぶん俺が元々いた世界で流行っていたゲーム『ブルーアーカイブ』の敵キャラ、『黒服』だろう。というのも、俺自身はブルアカをやったことがないのだ。オタク仲間の話をもっとちゃんと聞いておけばよかったと後悔していると、何故か満足げな黒服が口を開く。
「その名を知っているとは…どうやら実験は成功のようですね…ククッ」
「どういうことだ…ってなんだこれ?しゃべりにくっ!」
「あぁ、配慮が足らず申し訳ございません。今のあなたは子供の身体なのです…このマスクを付けて喋ってみてください」
『おっ!普通に喋れる!』
「では気を取り直して、自己紹介といきましょうか。といっても、あなたは御存じかもしれませんが…」
「私の名は『黒服』。恐らくあなたが居たであろう世界とも、この世界とも少し異なる領域の存在です。そして、神秘の探究者でもあります。」
『俺は…えっと…名前が思い出せん…』
「おそらくは実験の影響でしょうか」
『どんな実験だよ…』
「人間は、肉体という一つの器に一つの魂で構成されていると私は考えています。では二つの器に一つの魂なら何が起こるか?空の器は魂を求め続け、別世界の魂をも取り込むのではないか?非常に興味深いとは思いませんか?」
つまり、二人の身体を合成して一つの体にしてから片方の人格を壊す➡どうなるの?ってことか…倫理観どうなってんだよ…
『アンタ…結構えげつねぇな…』
「失礼。少し興奮してしまいました。では早速、あなたの知っていることを教えてください。この世界のこと、未来のこと、あなたが住む世界のこと。どんな些細なことでも構いませんし、どれほど時間がかかっても構いません」
正直、黒服のことは別に嫌ってはないから教えることについてはやぶさかではないのだが、子供を平気で実験に使うような奴だしなぁ…
こいつは俺が持ってる情報が欲しいわけだから、吐き出しきったら殺されても全然おかしくないんだよなぁ…
『なぁ、取引しないか?俺はアンタが欲しい情報を小分けにして提供するし、実験には協力する。』
「ほう…こちらからは何を提供すれば良いですか?」
『衣食住の提供と、色々落ち着いてきたら外に出して欲しい。逃げたいワケじゃなくて、ここの人達と交流がしたい』
「ふむ…まぁ良いでしょう。元々自由以外なら差し上げるつもりでしたし。」
『意外だな。暴力なりなんなりで言うこと聞かすこともできるだろうに』
「それは私の…大人のやり方ではありません。例えどのような取引であっても、そこに公平さは必要でしょう。」
『ちょっと見直したわ。アンタのこと』
「クク…それも計算の内です。では小分けにでも構いませんので、情報を頂きましょうか」
『おっけ。ジャンルは?』
「そうですね…」
ー数時間後ー
『ひっさしぶりに人とこんなに話したわ。疲れた…』
「お疲れさまでした。有益な情報をありがとうございました。」
『あ、そうだ。俺の名前ってなんなの?こっちの世界では』
「名前…考えたこともなかったですね…黒…服…」
しれっと自分の名前から取ろうとしてる…変なところで可愛いなこの人。
『決まってないなら前の世界でやってたゲームのキャラの名前使ってもいい?』
「構いませんよ。私のこの名前も、元は人から貰ったものですし。」
『「横島 フーコ」だ。よろしくな、お父さん』
「お父さん…ですか。まぁ確かに生みの親ではありますが…何かむず痒いですね…」
『父性ってやつじゃない?』
「なるほど…ではお兄さんお姉さんにも挨拶しましょうか。」
そう言って手元のボタンを押すと、俺の背後で部屋を区切っていた壁が音を立てて開く。
振り返ってみるとそこには、地獄絵図とも呼べる光景が広がっていた。
不完全な人間の手足ようなものが数か所から伸びている肉塊や、廃人のように何かを呟く辛うじて人間の形を保っているもの達が、所狭しとひしめき合っていた。
いくつかは壊れてしまったのか、血のような、食べ物が腐ったような匂いが立ち込めており、思わず顔をしかめてしまう。
『悪趣味だなぁ…私のお父さんは…』
「一人称を変えたのですね。女の子らしくて良いと思いますよ。」
『そこじゃなくてさ…やっぱ狂ってるよアンタ…』
「ククッ…これを見てその程度で済んでいるあなたも大概だと思うのですがね。」
確かにグロいし人の心無いとは思うけど、正直向こうの世界のグロゲーのほうがよっぽどキツかったからなぁ…
『アンタに似たんじゃない?てか長い間喋って腹減ったわ。ラーメンかなんか奢ってよ。食は確保してくれるんだろ?』
「クク…クックック!やはり良いですねあなたは!益々気に入りました!いずれ私の仲間にも紹介したい程ですよ!」
大興奮する黒服。こわい。
『チャーシュー丼付けても良い?』
「勿論ですとも!好きなだけ食べて来て下さい、お金は…」
『アンタも来るんだよ。お父さんなんだろ?』
気に入られた方がこの後動きやすいだろうし、何よりこいつがどうやって飯を食うのか気になる。凄く。
「人と何かを食べるなど久しぶりですね…マエストロと行ったきりでしたか…」
あいつこそどうやって飯食ってんだよ。今度ゲマトリアでタコパするか。
『家族って、良いよね!』
ーキャラ紹介ー
横島 フーコ
見た目:小4くらいの女の子。髪はセミロングで、黒と白の二色が頭の真ん中で分かれている(合体の名残)
『俺』じゃない、本来の人格は残っているがお休み中。復活するかは謎。
割と倫理観とかはイカれている。転生(憑依?)理由からも分かる通り自己犠牲バンザイ精神なところがある。
当然周りは曇る。
様々な実験(これからもされる)のせいで全身手術痕だらけ。激しい運動もできなくなってしまっている。
本人は全然気にしていないが、当然周りは曇る。
黒服
思考が近い娘ができた良い(?)パパ。愛情のようなものは沸きつつあるが、それはそれとして酷い実験はいっぱいやる。
曇らせまで、あと2話くらいかなぁ…評価して頂ければその分投稿頻度が上がります(現金)よろしくお願いします!
無自覚に周りを曇らせるやつか主が意図して曇らせるやつどっちが好みですか?(後者の方が動かしやすいのでえげつない曇らせが可能です)
-
無自覚にやるやつ
-
意図してやるやつ