目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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カヤちゃんがとってもかわいいのでカヤちゃん回です。ちょっと短いですができるだけ頻繁に投稿したいので…
曇らせネタBOXの方にも律儀にコメントしてくださる皆様、非常に助かっております!
いつもありがとうございます…!ただ皆様勘が良ろしすぎてネタ被りしまくりそうなのがちょっと怖いですね。展開被っても怒らないで♡


苦悩

眠れない。

あの子の、私を唯一認めてくれたあの子の助けを求める声が、耳にこびりついて離れない。

眼を瞑れば、あの忌まわしい光景がありありと思い出される。

まるで私もそこに居たような錯覚に襲われる。

不安、後悔、恐怖。少しでも気を抜くと沸々と湧き上がってくるそれらに、気が狂いそうになる。

手首に一筋、また一筋と赤い線が走る。流れ出る血を見て、安心する。

「ああ、私はまだ人間だ。」と。

鋭い痛みはなく、むしろ心地よさすら感じる。

 

「そろそろ、お仕事の時間ですね。」

 

まだ新しい傷を、包帯で塗りつぶす。今日ほど自分の制服が長袖であることに感謝する日は来ないだろうな、と思いながら支度する。

 

「やあカヤ室長。随分顔色が悪いぞ?寝ていないのかい?」

 

防衛室にたどり着く前に、お節介な体育室長に声をかけられる。

寝ていないのはいつものことだ。今更そんなことを言われる程度には、今の自分は余裕が無さそうに見えるのだろうか。

 

「睡眠不足はいつものことです。心配するくらいなら貴方が手伝ってくれても良いんですよ?」

 

普段の自分に見えるように、精一杯の演技を見せる。

大丈夫、何もおかしいところは無いはずだ。

 

「…本当に大丈夫か?もしも何かあったのなら、僕でよければ相談に…」

 

「本当に何にもないですよ。お気遣いありがとうございます。」

 

にっこりと目を細めて答える。

 

「…そうかい、でも気を付けなよ?『超人』にも休息は必要だからさ。」

 

それだけ言うと背を向け、ひらひらと手を振るハイネ。こみ上げてくる感情を必死に嚥下しながら、彼女の姿が消えるのを待つ。

どうか振り向かないでほしい。私は今、きっととても醜い顔をしているだろうから。

 

誰もいない防衛室のドアをゆっくりと開き、閉じる。

 

『ちょーじん!』

 

いつもの席に着いたとき、見知った少女の声が聞こえた。もちろんその姿は無い。

弱い私が作り出した、都合のいい虚像。幻聴。

 

「……ぁあっ」

 

声が漏れる。もう、限界だ。

 

「何が『超人』ですか!!馬鹿馬鹿しい!」

 

『超人』ロゴが刻まれたマグカップが、音を立てて砕ける。

 

「自分を慕ってくれた子供一人守れないで!!調子に乗るな!!」

 

引き出しを乱暴に開け、中の悪趣味なデザインのグッズを次々床に叩きつける。

落としたそばから踏みつけ、その忌々しい二文字が目に入らないようにする。

かつて『超人』と呼ばれた連邦生徒会長、彼女ならこんな事態にならなかったのだろうか。

少女を護れたのだろうか。

 

結局のところ、私は哀れにもただの凡人だったのだろう。

汚い手を使ってのし上がったところで、何も変われない。

玩具のナイフを振り回す子供のように。さぞかし滑稽だっただろう。

 

「う゛あぁああ゛あぁあ!!!」

 

勢いに身を任せたままクローゼットを開け、お気に入りだった服を破り捨てる。

引き裂いて、引き裂いて。ただのボロ布と化したそれを、息を切らしながら見下ろす。

 

『えへへ…おそろいだね、ちょーじん!』

 

「あ……」

 

突如として湧き上がる後悔。もはや何か分からなくなってしまったそれは、少なくとも感情の赴くままに破り捨ててはならないものだった。

無様にも這いつくばり、欠片を拾い集める。

 

「うぁ…あぁ!!ごめんなさい!ごめんなさい…!フーコ…フーコォ!」

 

汚れた布を胸に抱き、声をあげて泣く。

彼女とのつながりを、思い出を自らの手で完全に絶ってしまったような後悔に襲われる。

 

 

 

ひとしきり泣いた後、ゴミを纏める。

業務をこなさねば。私は超人では無くとも、連邦生徒会を担う存在の一人なのだから。

 

「財務室長。依頼された書類ですが…」

 

「っ!?早いわね…どうせまた誤字を…大丈夫そうね。あと、どうしたの?その目。いつもと随分違うようだけど…」

 

そう言うなり私に手鏡を向ける。

そこにいつもの胡散臭い笑顔はなく、ヤギのような眼は責めるように私を睨みつけていた。

 

「イメチェンですよ、お気になさらず。」

 

「…そ、そうなの?まあ、前より感じがいいわ。この調子で頑張ってね、『超人』さん?」

 

少し茶化すように言葉をかける財務室長。彼女は本心から人を褒めるとき、こんな風な言い回しを好んでする。そんなことは分かっている。

 

堪えられず、机を強くたたく。鉄製の机は歪に凹み、拳からは血が流れる。

 

「ひっ!?な…何?」

 

想定外の出来事に、柄にもなく怯えるアオイ。

 

「今後一切、私をその名前で呼ばないでください。追加の業務が無いようでしたら、私は防衛室に戻ります。」

 

くるりと背を向け、財務室を後にしようとする。と、背後から声をかけられる。

 

「待ちなさい!あなた、どうしてしまったの?本当に大丈夫なの?」

 

私の醜い自尊心から形成された色眼鏡のせいで、ずっとこの人は私を見下しているものだと思っていた。しかし内情は、仲間として尊重してくれていた部分はあったのかもしれない。ずっと。

私はどこまでも愚かな、ただの人間だった。みじめで矮小な存在でしかなかったのだ。

 

「ええ、ご心配なく。ああそうそう、机の方は私の給料から充てて下さい。では。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数少ない友人が、同じ部活の仲間が部屋を出ていく。

手はかかるし、仕事はできないし、プライドだけは一人前。だけどその貼り付けたような笑顔の裏で、必死に上を目指していた。

才能が何よりも重視されるこのキヴォトスでその細い眼をギラつかせ、必死にもがいていた。

それは私には無い才能。生まれ持った才に胡坐をかき、ここが自分の限界だと定め、それ以上のことをしなかった私にとって、彼女は揶揄なしに『超人』の器であるように映った。

 

もう、その姿はない。

かつての胡散臭い笑みはもうない。連邦生徒会長への憧れも捨て去り、アイデンティティをいくつも消し去った彼女は、この部屋を出てどこへ行ってしまうと言うんだろう。

 

嫌な未来ばかり想像してしまう頭を小さく横に振り、ようやく出た声で去り行く彼女を呼び止める。

 

しかし、一瞬呼び止めることはできても、相談に乗ることも、ここに留めおくことも、結局私にはできなかった。

 

 

ねえ、あなた。私はそんなに頼りないのかしら。あなたの荷物を少し分けてくれるだけで良いのよ?

胸に秘めたそんな言葉たちは形になることは無く、ただ私の胸を痛めるだけだった。




後書きに書くことも無くなってきたな…実は明日テストあります(^^♪

ひとえに曇らせといっても色々種類があると思うんですよね。
傷になりたい、目の前で死にたい、自己犠牲、病弱、遺書、好感度反転、勘違いetc...
結局、どこがスタートなんでしょうね?

ちなみに僕のオリジンは5,6歳の頃でした。歪んだヒーロー思考と言いますか、ヒロインを庇ったり、命を削る系の技とかがすっごく好きだったんですよね。
今思えば、自分の命が無くなる理由が欲しいだったり、人に感謝されながら死にたいとか、とにかく自分の生に意味が欲しかったのかも知れません。
そういった点では、曇らせは人間の本懐みたいなところもあるのかもしれませんね。(ない)

長らくこの感情を言語化できず、ずっと「〇〇 自己犠牲」とかで調べては、その数の少なさにガッカリしていた中学生時代。
大きなターニングポイントになったのは、ウマ娘が流行り出したことでした。
エロを禁止したことにより人々の欲望はあらぬ方向へ…
初期のころとか特に凄かったです。「ゴルシは笑って送ってくれそう」とか「テイオーの傷になりたい」とか。トラックから庇うやつも多かったですね。ごちそうさまです。

「君のせいじゃない」とか「俺の分まで生きて」って残酷なほどに優しくて最高の言葉ですよね。言われた側はたまったもんじゃ無いでしょうが。

僕はシンプルに女の子をいじめて泣かせるのはあまり好みじゃないです(隙自語)
自己犠牲モノが好きですね。覚悟決まりまくってて女の子のためなら傷だらけになっても気にしないやつが好きです。

「ああ、大丈夫だこれくらい。それより、怪我はないか?」

くぅ~言いてえ!めっちゃ血ぃ流しながら言いてえ!

ウマ娘曇らせも一時期書いてたんですが、何か一緒に夢を追ってるときに、俺が持病こじらせるの最高じゃないですか?あとみんな血を吐きすぎです。あれ何の病気なんでしょうね?

曇らせ談義は楽しいですね。次の後書きはまた誰かを曇らせたいな…

どーっちだ!?

  • 多少まとめて週一投稿
  • 今回くらいで(ほぼ)毎日投稿
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