目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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数学2って正直必要ないですよね。マコトちゃん限界回です。


お届け物です

~社長に電話がかかってくるちょっと前~

 

 

「何だ、今日は便利屋は来ていないのか」

 

「あんなことがあった後だしね…何の手掛かりも見つからないし。一応連絡はしたんだけど…」

 

モモトークの画面を見てみるが、未だに既読すらつかない。

 

「そういうあなたの方こそ、もう自由に出入りできるようになったのですか?以前は『出るにも面倒』などと言っておりましたが。」

 

いつも怪しく細められていた眼は、今や見る影もない。

それ程、カヤにとってフーコは、フーコとの思い出は大切なものだったのだろう。

私もそうだ。あれ以来、ロクに飯が喉を通らない。肉料理は尚更だ。見ただけで気分が悪くなる。

 

「あー…フーコが見つかるまで休暇を取った。なぁに、非常に不本意だが、空崎ヒナに万魔殿の運営を任せてある。滅多なことは起きんだろ。」

 

ヒナが今日初めからいないのはそういうことだったのか。過労死してしまわないか心配だ…

 

「では、私から報告…といっても大したことではないが。ゲヘナ自治区の、『そういった』噂がある場所、組織を洗いざらい潰してみたのだが、フーコはおろか目撃情報すら手に入らなかった。」

 

「は、はい?このたった2,3日でですか?」

 

「ああ。勿論捜索を続けるが…なにぶんあの男の目的も分からんとなると手がかりも集まりにくくてな…情けないことだ、情報戦は私の十八番であろうに。」

 

「臓器を売る…とかではないの?」

 

「勿論私達もその可能性は考慮しました。しかし、わざわざ先生のところから盗み出す。それもドアにも窓にも証拠を残さず盗み出す意味が分からないのです。」

 

「そう、それだけならいくらでも孤児をさらってしまえば良い。実際、潰した組織の中にはそういったことをする奴らも大勢居た。」

 

「私の方からは特に報告できることはありません。強いて言えば『友人』に協力してもらいキヴォトス中の監視カメラを覗いてみましたが、それらしい情報は得られませんでした。」

 

「ちょっと待って先生としては聞き捨てならない…けどナイス!ありがとねカヤ!」

 

少し微笑むカヤ。フーコが戻ってきた暁には、この子の心も解き放ってあげなくてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

『すみ゛まゼん、せんぜイ゛はいいらっしゃい゛ま゛すカ?』

 

いつものようにシャーレの受付業務に励んでいると、見覚えのある少女がボロ切れに身を包んでやって来た。風邪でも引いてしまったのか、やけにしゃがれたような…何人もの声が重なったような声だったが。

 

「あなたは確か…先生に保護されてた子ですね?今までどこに行ってたんですか!?先生は勿論、ゲヘナのトップやら連邦生徒会やらが毎日のようにやってきてこっちはもうてんやわんやだったんですよ!?」

 

早口でまくし立てるが、目の前の少女は上の空だ。

 

「はぁ…先生はこの部屋にいらっしゃると思います。早く行って、安心させてあげてください。」

 

頭に手を置き、ため息を一つ。先生の部屋の場所が書かれたメモを手渡し、エレベーターに乗る少女を見送る。

 

「これで、一件落着ですね!私も肩の荷が下りるってもんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、部屋のドアが開かれる。ノックもしないで失礼な子だなと振り返ると、そこにはずっと会いたかった少女の姿があった。

 

「フーコ!?フーコ!!よかった!帰ってきてくれた!」

 

他の者が口を開くより先に、少女を抱きしめる。と同時に違和感に襲われる。

 

『…お゛とどケ、ものでず…』

 

フーコじゃない。今自分が抱いているこの少女は、フーコじゃない。

 

「先生…」

 

「分かってる。で、お届物って何かな?」

 

服(?)のポケットから何かを取り出す少女。見た目だけでなく、細かな動作に至るまでフーコとそっくりで、妙な気持ちになる。

 

しかし、そんな気持ちも吹き飛んだ。

少女の手に握られていたのは、小さなカプセルと、ーーーー

 

あの、忌々しい黒い封筒だった。

 

『でハ。』

 

用は済んだとばかりに去ろうとする少女。

 

「ちょっ!ちょっと待って!!君は誰なの?どこから来たの!?」

 

『…』

 

無視して部屋を出ていく少女。

 

「チッ!せっかく手がかりが自ら出向いてくれたんだ!逃がしてたまるか!」

 

逃げ出す少女を追うカヤとマコト。少女も私と同じヘイローのない身にしてはすばしっこかったが、キヴォトス人には敵わない。

 

「ハァハァ…手こずらせてくれたな、だがここまでだ!」

 

少女を傷つけないよう、しかし確実に逃がさないよう弱めに腕をキメるマコト。少女はしばらく放心状態だったが、突然叫び出し、暴れ出した。

 

『あ゛ッ!!あっ!いや゛ダ…!たすけてたすけてたすけdて!!!』

 

「くっ!やめろ!暴れるんじゃない!腕が折れるぞ!」

 

『ごっぎ…あっ!…せんぜイ゛。たすけて!たすけ』

 

バツン!!

 

少女の叫び声は、そこで途切れた。

飛び散る赤が廊下を、マコトを、そして私の靴を汚す。

 

「……あ゛?」

 

先ほどまで必死に抵抗し、こちらに助けを求めていた少女は、首から上が消失していた。

 

「っ!なんっで!なんでこんなことを平気で…」

 

怒りに震えるカヤ。握りこぶしからは血が滲み、彼女のトレードマークでもある純白の手袋を紅く染めた。

 

「ぅあ…あああ!!私はやってない!私がやったんじゃない!!!違う違う、断じて違う!!この私がフーコを殺すわけないじゃないかなあフーコ!!なぜ黙っているんだ!?」

 

己の頭を掻きむしりながら、虚空に向かって話しかけ続けるマコト。切れ長の三白眼に光は失われ、その顔にはあの少女の血と脳漿がべったりと付着し、狂気の様相を醸し出している。

私はまた間違えた。いくら組織のトップだからと言って、いくら彼女が頼れる人物であるからと言って、傷つかないわけが無いのだ。人の命が、それも大切な存在に見た目にそっくりな小さい命が目の前で失われて、正気を保てるわけが無いのだ。

彼女はまだ、学生だ。青春を謳歌すべき、女子高生だ。

学生である皆が青春を歩めるように、その道を均すのが私の、『先生』の役目だっただろうに。

 

ことごとく、私は先生には向いてなかったようだ。

目の前の惨状に対し、生徒を集め事態の収拾を図るカヤ。ショッキングな光景に気分を害する生徒が一人でも減るようにするためだろう。そして自分自身も率先して動いている。

マコトは落ち着いたのか、三角座りで顔を伏せ、ぴくりとも動かなくなった。

 

 

私?私はただ、それを見ているしかできなかった。

手には何だか分からないカプセルと、あの封筒を携えて。




やっと執筆できました…ちょっとしんどかった…

タイムリミットを設定してしまったせいで大変でした。時系列としては

1日目 一時帰宅
2日目 ホームビデオ
3日目 フーコ起きる(丸一日寝てた)
4日目 眼球摘出
5日目 おとどけもの&アルちゃんブチギレ
6日目 足切断
7日目 ???
8日目 ???

を予定してます。何もおかしいところは…無いはず…
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