嬉しくなった作者は絵が下手であるにも関わらずイラストを描きました、フーコちゃんの。
作品説明ページから飛べると思いますので良ければ…
そしてもし絵が描ける曇らせ好きの先生方がいらっしゃるのならフーコちゃんの絵を描いてくだされば嬉しさから投稿頻度が上がります。どうかよろしくお願いします!!
いつの間にか寝てしまっていた。ずきずきと鈍く痛む頭を抑えながら目覚める。
誰かが運んでくれたのか、よりにもよって宿直室のベッドで朝を迎えることになってしまった。
隣に小さな温もりが感じられなくなって、もう何日経っただろう。
ずっと、あの子の声がする。暗くて寒いどこかの地下で、私に助けを求める声が。
私は先生なのに、あの子を何があっても守ると誓ったのに助けることはおろか、居場所を突き止めることすらできないでいる。
勿論アロナにも全力で捜索して貰っているが、未だに見つからない。
ひどく泣き腫らした目を擦り、顔を洗おうと立ち上がる。
そして、机の上の異物に気付く。
もう解放して欲しい。なんて、彼女を差し置いて言えたことではないことは分かっている。
見覚えのある黒い封筒を開け、中身を出すとやはりUSBメモリがコトリと音を立て、机の上に落ちる。
内臓を弄ばれ、眼球を抉り取られ。
あの少女に、これ以上何を背負わせるつもりなのだろう。
これ以上、何を奪うというのだろう。
フーコと特に仲良くしてくれていた、半ば保護者のようになっていた子達を呼び出そうとスマホを手に取り、やめた。
あの子達ももう限界だ。
マコトもアルもカヤも、各々が持っていた誇りというか矜持が揺らいでいるのが分かる。
マコトは虚勢を張っているが常に何かに怯えているように見える。
アルはこの三人の中では一番マシだが、あともう一つ何か心を揺るがすことがあれば完全に壊れてしまうだろう。
カヤは『超人』への憧れも捨て、真摯に、淡々と業務をこなすだけのロボットのようになってしまった。もう何日も寝ないでひたすらに仕事に取り組んでいると、リンちゃんやアオイから心配する声があった。
彼女らが止めるように言っても聞かず、無理に引き剥がそうとしたら暴れたらしい。
とはいっても、元々インドア派だった上に心身ともに弱っているカヤが暴れたところで、その場にいた者だけで鎮圧できたそうだが。
きっと私と同じで、何をするにも彼女のことを思い出してしまうのだろう。彼女の声が耳に焼き付いて離れないのだろう。とても悲痛な、助けを求める声が。
震える手でUSBをパソコンに挿し、動画を再生する。
圧し殺したような叫び声を上げ、痛みに耐えるフーコ。目を凝らすと、左足から夥しい血が流れ出ている。
吐きそうなのを堪えながらも、なんとか動画を見続ける。
しばらく見ていると、動画に変化が訪れる。
前回の『目』の動画に入り込んでいた声と同じ、甲高い女の声が聞こえる。
『だーれも来てくれませんでしたねぇ。頼れる先生も、優しい友人も…』
その通りだ。私は結局彼女に何もしてあげられなかった。
『残念ですが、あなたにそれだけの価値はなかったということですよ。』
それは違う。私は、私達はフーコを必要としている。あの子より優先するものなど無い。
『ですが安心してください。私達ならあなたに価値を見出だせる。あなたを有効活用してあげられるのです!』
黙れ。人間を、子供をそんな目でしか見られない、子供を食い物にするクズめ。
ギリギリと歯が削れるほどの力で歯ぎしりする。
その言葉を合図に、フーコが一際大きな叫び声を上げた。
暗くて良く見えないが、おそらく本格的に切断が始まったのだろう。
耳を塞ぎたくなるほど痛々しい叫びに、必死に堪えていた何かが溢れそうになる。
『いいこにします!わがままいいません!おかねも、がんばってかせぎます!』
悪いことなんて一つもしなかったじゃないか。
我儘だって。もっと言って欲しかったくらいに。
お金。また、あの子は春を売ってしまうんだろうか。一生を誓うような相手のために取っておくべき大切な春を。
他人の私達のために、軽々しく。
『せんせい!すてないで!』
「あぁ……」
自然と声にならない声が漏れる。
やっぱりこの子は、『そう』思ってしまったのだ。
自分に価値は無い、私達はもう迎えに来ないと。
あまりにも悲しすぎる要望を、叶えてあげられない。
たった一つの願いを、我儘を。聞いてあげられない。
「……がう…」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」
ブツブツと勝手に声が漏れる。
捨ててなんかいない。
今すぐあの小さな手を握って、抱き締めて。
「ここに、私の側に居て欲しい」って言ってあげないと。
「フーコに価値はある」って、教えてあげないと。
自分にそんなことをする権利は無いことも、彼女がそれを求めていないかもしれないことも分かっている。
それでも私は先生として、あの子の保護者として、伝えなくてはいけない。抱き締めてあげなければならない。
『せんせい!!たすけてください!!おねがい!おねがいぃい!!!!!』
一際大きな声がまた部屋中に響く。
まだ彼女は、私を頼ってくれている。
絶対に救い出す。キヴォトスの外にいるというのなら、私一人でも探しに行けば良い。
何日、何年かかろうと構わない。
生徒会長との約束を反古にするのは心が痛むが、それ以上に大切なものができてしまったのだ。
だから祈る。どうか、どうか私が辿り着くまで、生きていて欲しい。生きることを、諦めないでいて欲しい。
『…っぐ!い゛…ころ、して。ころしてください!もういたいのいやなんです!ころして、ころしてぇえ!!!』
ぷつりと、自分の中の何かが切れてしまったような気がした。
「……うっぐ…ひっ…ぁ…フーコ…フーコ!!」
画面にすがり付く。しかし画面の中の少女に声は届かない。
生まれた時から何もかもを諦めて、血反吐を吐く思いでここまで生きてきたのだろう。
そんな少女から、身体では飽き足らず心まで、生きることへの希望まで奪おうというのか。
頭が痛む。呼吸がうまくできず、口呼吸に切り替えようとするが喉が張り付き、咳き込んでしまう。
吐き気がするのに何も吐き出せない。苦しさから、喉を掻きむしる。
立っていることができず、その場にしゃがみ込む。
死んでしまう、私の日常の一部になっていたあの子が。
生徒に託された、大切なあの子が。
「う゛ぁあ!!ぁ…ああぁ!!」
嗚咽を漏らしながら、頭を壁にガンガンと打ち付けるが、声は消えない。むしろ打ち付ける度に頭の中で大きく響く。
声が小さくなったのは、私の頭から血が流れ始めた頃だった。
あの子の苦しみに、痛みに比べればこんなものなんでもない。
ゆっくりと立ち上がり、パソコンの電源を落とす。USBを抜き、ポケットにしまう。USBが入っていた黒い封筒をシュレッダーにかける。
間違っても、これを見てしまう生徒がいないように。
彼女達に勘づかれることのないように。
地獄に落ちるのは、私だけで良い。
嘔吐以外の描写も頑張ってみましたが…先生案外丈夫ですね…残念。
日常回…どれくらいの頻度が良いんでしょうか…(今のところ曇らせ10:日常1くらいの気がする…)
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