「シロコちゃん、おかえりぃ…その子誰!?」
「ん、拾った。」
「え!?生きてるのよね!?」
「多分…」
ぐったりとしている少女を背中から下ろす。どうやらまだ目覚めていないようだ。
「と、取り敢えずベッドに!」
「脈は…ありますね。」
辛うじて生きてはいるようだ。しかし…
「この足…どうしたんでしょう…」
少女には、左足が無かった。それも、まるで最近切り落とされたかのように包帯が巻かれている。
「処置はきちんとされていますね…下手にほどくよりこのままにしておいた方が良いかもしれません。」
「とにもかくにも、この子が起きるのを待つしか無いかぁ…」
「ごめん…面倒事を持ち込んだかもしれない…」
「いやいや、見て見ぬふりしろって方が無理だよこんなの」
「そうですよ。シロコさんのおかげでこの子は今生きているんです。放っておいたら今頃熱中症か…野生動物に食べられているか…」
アヤネちゃんの話を聞き、少し違和感を覚える。そうだ、あの砂漠に捨てられておいて、何も起こってないのがおかしいのだ。
ただ単に捨てられた直後に運良くシロコちゃんが通りかかったと考えることもできるが、どれだけの低い確率を引き当てれば良い?
しかも、あの広大な砂漠でだ。
そもそも、どうしてあんなところにいたのか。少女が一人で来られる場所ではないし…
(なんだか、気持ちが悪いね~…)
どうしても人為的な何かを感じる。仕組まれた出会いのような、あるいは運命のような。
嫌な予感がする。また何かを失ってしまうような。
「ぅ…あ……?」
「あ、起きた。」
「おはよ~…自分が誰か分かる?」
「……っひ!?いやだ!いや!うぅううう!!ごめんなさい!やめて!やめて!」
起きたかと思えば、錯乱し、叫び出す少女。
「お、落ち着いてくださ…」
「ごめんなさい!ごめんなさい!…い゛っ!?」
少女を落ち着けようとノノミちゃんが手を伸ばす、しかしその手にすら怯え、ベッドから落ちる少女。
「あ゛あぁあ!!い゛だぁあ!!」
その衝撃が何かのトリガーになったのか、一際大きな声を上げる少女。それに呼応するかのように、ヘイローが点く。
ヘイローは意識と連動しているのだから、こんなタイミングで点くことに違和感を感じていると、少女のヘイローが『切り替わった』。
「な…何が起きてるんですか…?」
そのまま、多種多様に歪み、切り替わっていくヘイロー。色も形も質感も全く違うものが、浮かんでは消える。
そしてその中に、見覚えのある白いヘイローがあった。
(今のヘイロー…ユメ先輩の…)
最後に、色が抜け落ちた彼岸花のようなヘイローが点き、それ以降少女の頭に光輪が浮かぶことはなかった。
「…困ったね~……おじょうちゃん、おじさん達は悪い人じゃないよ~?」
「ん。その通り、悪事を働いたことなんてないし、まして銀行強盗を企てたこともない。」
「それは嘘ですよね。」
漫才のような会話をし、少女の緊張を和らげようとするが、やはり萎縮したままの少女。
叫ぶことは無くなったが、部屋の隅で怯え縮こまっている。
「先生に相談しましょうか…」
「それが良いかもね~…」
「せ、せんせい?せんせいの、せいとさん。ですか?」
「うん。そうだよ~…先生を知ってるんだ?」
「よばないで、ください。せんせいに、まためいわくをかけちゃう…」
落ち着いたのか、それとも先生の話になったからか、拙いながらも会話に参加する少女。
「どういうことですか?」
「わたし、いらないんだって。…かちがないから、むかえにきてくれなかったんだって…!いわ、れて…!」
「大丈夫だから、落ち着いて、ゆーっくり話して。私達は、なにもしないから、ね?」
嫌なことを思い出したのか、過呼吸気味に話す少女を落ち着け、話を聞く。
曰く、
・自分は元々捨て子であり、先生に拾われた。
・誘拐され、身体を切られた。1週間ほどそれが続いたが、先生も友達も迎えに来てくれなかった。
・自分に価値がないから、自分は必要の無い存在だから皆に見限られ、捨てられた。
話をしながら、傷だらけの身体を少し見せる少女。息を呑む音が後ろから聞こえる。
ヘイローがなく、戦闘力が無いも同然な少女を誘拐し、悪趣味な実験紛いのことをした輩がいる。その事実が、私達を憤らせた。
そういうことをしそうな大人に心当たりがあるが、それはまたの機会にでも聞き出すとしよう。今は、この子をどうするかだ。
「でも、先生はそんな人じゃ無いわ。確かにどうしようもない人だけど…そんな、子供を蔑ろにする人じゃない。」
「そうですよ!きっと何かすれ違いを…」
少女には悪いが、モモトークで先生に連絡をとることにする。少女に見えないようにスマホを操作し、メッセージを送る。
『先生、ちょっと良いかな?』
『うん。今は大丈夫だよ。どうしたの?』
『この子、知ってるよね?』
意識が戻っていない時に撮っておいた写真を送る。
少し時間を置き、メッセージを返す先生。
『今アビドス高校にいるんだよね?今すぐ行く』
『無事なんだよね?』
『うん。アビドスにいるし、今は意識も安定してるよ。』
『良かった』
「先生、今から来るってさ。」
少女を除く皆に、小さな声で伝える。
「さーて、暇だし自己紹介でもしよっか!」
「賛成です~☆」
「まずはお嬢ちゃんから、大丈夫かな?」
少し落ち着いた様子で床に座る少女に話しかける。
「は、はい…よこしまフーコです。よろしく…」
「フーコちゃんって言うんだ~。おじさんは小鳥遊ホシノだよ。よろしくね。」
「ホシノちゃん…?」
先程のヘイローの件も相まって、目の前の少女にユメ先輩の姿が重なって見えてしまう。
「っ!……ごめんね、おじさんのことはおじさんって呼んで欲しいな~…」
こんなことで心を乱される自分の弱さが嫌になる。きっと、過去の罪から目を背けたいのだろう。
(ユメ先輩は私が殺したんだ、もういない。)
「ホシノ先輩…?顔怖いですよ。大丈夫ですか?」
「おじさんは大丈夫だよ~…ごめんねフーコちゃん、怖がらせちゃったかな?」
「だいじょうぶです。よろしくおねがいします、おじさん。」
その後、つつがなく自己紹介が終わり、先生の迎えを待つ(フーコちゃんには秘密)ことになった。
「暇だねフーコちゃん。おじさんが肩車したげようか?」
「ん、ホシノ先輩が肩車したところで、ほとんど変わらない。それより、私とあっちむいてホイをするべき。」
「言うようになったじゃんシロコちゃん。お外出よっか?」
「ん、寂しんぼ。一人で行くべき。」
漫才のようなやりとりをしてみたが、少女は遠くを見つめ、黙りこくっている。
「うへぇ…気まずいよ~…」
「先生、早く来て…」
「あ、あの…」
小声で話していると、やっと自分から口を開くフーコちゃん。
「うん?どうしたの?」
「ごめんなさい、めいわくでしたよね…すぐにどこかにいきます、でぐちはどこですか?」
小声で話していたのが良くなかったのか、突然悲しいことを言い出すフーコちゃん。
ずっと邪魔者扱いされてきたんだろうか…
「いや迷惑なんかじゃないわよ!?」
「そうです、なんならずっと居てくれても構いませんから!」
「ずーっと居るにはちょっと危なすぎるかもだけどね~…」
「そ、そうですか、ありがとうございます。」
食い気味に答えたせいか、やや引き気味に感謝を述べる。
それとほぼ同時に、教室のドアが開いた。
疲れきった身体で、カタカタとパソコンを操作する。
フーコが居なくなって、もう一週間ほど経っただろうか。きちんと寝ていないのもあり、時間の感覚が曖昧になってきている。
フーコを探し回りたい気持ちは山々だが、先生という立場である以上、どうしてもやらなければならない仕事もある。
今日の捜索は皆に任せ、作業を進めていると、モモトークの通知音が鳴り響く。
隈だらけの目を擦りながらスマホを開く。
珍しく、ホシノからだった。
『先生、ちょっといいかな?』
あの子から送ってくるなんて珍しい。また何かトラブルでもあったのだろうか。
『うん、今は大丈夫だよ。どうしたの?』
『この子、知ってるよね?』
添付された写真に、目を見開く。
モモトークのやりとりもそこそこに、私はアビドスに向かった。
ヘイロー投影機君、最後の仕事を果たす。
Q.ヘイロー投影機ってどこに入れてたの?
A.身体の中です。意識の覚醒を感知して光るのでかなりハイテクなはずなんですが…衝撃に弱かったり叩けば直ったりするので良く分かんないですね、はい。
ほのぼの過去編よさようなら、こんにちは現実。
フーコの義眼は
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メカメカしいやつ
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パッと見では分からないやつ
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色が違うやつ