目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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「今のところほのぼのしかしてないじゃないか」
「曇らせタグは飾りか?」

「うるせェ!!行こう!!!」曇!

どなたかページを追加する方法を教えてください何でもはしません


アル社長の為なら命なんか安いもんですよ

『そろそろ外出たいんですけどー!!』

 

いい加減ここの生活にも飽きてきたので、わざと年相応の子供のように頬を膨らませ抗議する。

 

「貴方がここに来てもう一か月は経ちましたか…」

 

ふむ…と顎に手を当て考える素振りを見せる黒服。この一か月ずっと研究に付き合ったんだからそろそろ女の子とキャッキャウフフしたい。ベアおば?あれを女にカウントしたらいけないってマエストロが言ってました。

 

「確かに心配するのも分かるが、私は許可すべきだと思うぞ。ずっとここに閉じ込めておいてはインスピレーションも生まれんだろう。」

 

手元のゲーム機を弄りながら黒服を諭すマエストロ。(対戦相手はベアおば)

顔(?)をこちらに向けているが、手は正確にコンボを刻んでいる。さっきからベアおばの操作キャラが一切動けてない。

 

『さっすがマエストロ!分かってる~!』

 

後ろから抱きつくと、少し照れたような、嬉しそうな笑みを浮かべる(ように見える)。

 

「あなた達は少々フーコに甘すぎる!何度も言っているでしょう。外は危険なのですよ、フーコ。」

 

遂に1%もマエストロにダメージを与えることなく敗北した哀れなベアおばが反対する。未だに俺が外出できてない理由の大部分はこいつのせいである。モンペがよぉ…愛してくれてありがとう、好き♡

実際、ヘイローが『まだ』無い俺が外を出歩くのは危険である。そりゃ、並の人間(先生)よりは頑丈だと思うけど…

またいつものパターンかと外出を諦めてうなだれていると、思わぬ助け舟が来航した。

 

「しかし、可愛い子には旅をさせよというでしょう。我らの小さな友人の門出をともに祝おうではありませんか、マダム?」

 

「そういうこったぁ!」

 

なんといつもは反対していたゴルコンダ&デカルコマニーがこちら側に付いてくれたのである。

これはいけると確信した俺は強硬手段に出る。

 

『ベアトリーチェお姉さま…お願い…』

 

上目遣いと涙は女の武器なのだ。目の前の女性はどちらも出来なさそうだが。

 

「ッ!…分かりました。身体には気を付けるのですよ」

 

『ありがとうお姉さま!…まあ怪我しても父さんが何とかするから大丈夫でしょ。』

 

「確かに死んでも何とかはなりますが…気を付けて下さいよ。貴方の魂は既に不安定なのですから。まず行きたい場所はありますか?」

 

うーん…正直どこでも良いけど、やっぱり推しをこの目で見たい感じはあるなぁ…

 

『じゃあゲヘナで。便利屋に会いたい』

 

「ゲヘナですって!?待ちなさいフーコ!」

 

ベアおばが慌てて制止する声を背に受けながら、黒服の発明品であるワープゲートに飛び込む。すまんなベアおば。お土産買ってくるから…

 

「…止めたほうが良かったかもな」

 

「まあ、あの黒服の娘ですから、そう簡単には死なないでしょう。しかし、寂しくなりますね。」

 

「そういうこったな…」

 

 

 

ーゲヘナ末端ー

 

『来たぜー!ゲヘナ!』

 

「少し西に向かえば便利屋のアジトがあるでしょう。それから…」

 

ポケットから何かを取り出す黒服。

 

「『疑似ヘイロー投影装置』です。貴方が目立ってしまうと、私としても少し不都合なので…」

 

ボタンを押すと、彼岸花を思わせる、ちょうどツルギのそれを逆さにしたようなヘイローが浮かび上がる。

 

『おおー!可愛い!』

 

「同様の理由で、こちらは回収させて頂きますね。」

 

そう言われててマスクを外す。なんだか久しぶりだ。

 

「いろいろ…ありがと…!」

 

やっぱ喋りにくいなこれ、言いたいことの半分も言えねぇ。

あと怖い。今すぐここから逃げ出したい。

 

「私はいつも貴方を見守っていますよ…それでは、よい旅を…ククッ」

 

相変わらずの胡散臭い笑みとともに消える黒服。

一時的に支配から逃れた安心感からか、腰が抜けてしまう。我ながら情けない身体だ…

 

しばらく経ち、身体を動かせるようになった頃、なんだか西の方が騒がしいのに気づく。

もしやと思い走って行くと、やはり便利屋絡みの事件が起きているようだ。やったぜ。

靴も履かずに走ったせいで足の裏がボロボロだが、そんなの関係ない。

 

「やっぱり大人しく言うこと聞いとけば良かったじゃん!」

迫りくる戦闘ロボット達を捌きつつ、社長に文句を垂れる室長、浅黄ムツキ。

 

「まあ、今回ばっかりは社長の判断が正しかったと思うよ。」

そもそもこんな依頼ハナから受けないのがベストだったけどね、と痛いところを突く課長、鬼方カヨコ。

 

「私がなりたいのはアウトローよ。ただの悪党に成り下がれなんて依頼、こっちからお断りよ!」

ここだけ見ればカッコイイ社長、陸八魔アル。

 

「あ…アル様…カッコ良いです…!」

うっとりとした顔のまま容赦なく相手に爆撃を浴びせる平社員、伊草ハルカ。

 

…

生便利屋、最高かよ!!!

生前攻略動画とか見てたから知ってたけど、やっぱこの娘らの空気感マジで好きだわ。

そんでちゃんと強いのも好き。

…と興奮していたのも束の間。向かいの建物に不自然な反射光を発見。

俺は詳しいんだ。創作のスナイパーは大体あんな感じなのである。

いくらヘイローがあるとはいえ、あれが当たったら痛いだろう。血が出てしまうかもしれない。

そう考えるより前に身体が動く。俺多分ヒーローとか向いてるわ。

 

おそらく標的にされているであろう社長を庇うように覆い被さったところで、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

確かに、油断していた面もあったかもしれない。私たちの敵ではない、もしダメでも逃げてしまえばいい。と、甘く見積もっていた。

第二の隠れ家のベッドに横たわる少女の腕を握りながら、己の不甲斐なさを痛感する。

何度も何度も魘されている少女の意識が早く戻って来ますようにと祈る。

 

例えどんなに幼かろうと、私たちキヴォトス人にはヘイローがある。故に、弾丸が頭に直撃しても死ぬほど痛い、くらいで済むはずなのだ。

こんな風に、直撃もしていないのに大量に出血することなど、無いはずなのだ。

 

ーー普通の弾丸、なら。

 

ヘイローを一撃で破壊できるという、悪魔のような兵器が存在するらしいという噂を耳にしたことがある。

考えすぎかもしれない。思い違いなら、それで良い。

気分が悪くなるほどの不安に身を包まれる。祈りが届いたのか、少女の目がうっすらと開く。

 

「ん…」

 

まずは感謝と謝罪を、なけなしの資金で何かお礼の品を買ったほうが良いかもしれないなどと楽観的なことを考える余裕は無かった。何も言葉が出てこず、嗚咽だけが口から零れていく。

 

「…ぁ…あぁ…」

 

私を庇ったその瞬間まで朱く輝いていたはずの少女のヘイローは、まるで初めからそこに無かったかのように消えていた。




初めから無かったんだよなぁ…
便利屋曇らせ編、開幕!!今回はちょびっとだけです。許してください。

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