しばらく便利屋曇らせが続きそう。次回は便利屋視点の予定です
頭の鈍い痛みと共に目覚める。知らない天井だ…
「んぅ…こ…こは…?」
「目が覚めたのね!良かった…本当に良かった…!」
涙を目にいっぱい溜めながら、俺の手を両手で握るアルちゃん。俺が頭以外に痛いところがないのを見ると、あの後すぐに撤退して俺を手当てしてくれたのだろう。
あまりにも善人が過ぎるだろ…ホントにアウトローか?
「あの…いろいろありがとうございます…」
取り敢えず感謝を述べると、顔を歪ませるアルちゃん。
てっきり「当然よ!私はいずれカッコいいアウトローになる女だもの!」とか言ってふんぞり返るものだと思っていたので衝撃だ。
「…お礼を、いえ、謝らなければならないのはこっちの方よ。私を守ってくれてありがとう。
それと…ごめんなさい、私が、私がもっとしっかりしていれば…あなたはッ…あなたのヘイローは…」
顔を真っ赤にし涙をボロボロ流しながら謝り続ける。俺のヘイローがどうかしたのか…?
部屋の隅に置かれた姿見に自分を映す。
「ぁ…こわれ…ちゃった」
声に出てしまう。あのデザイン気に入ってたのになぁ…
というか、今の俺ヘイロー無いのに生きてるってことじゃん。
めちゃくちゃ不審じゃねぇか!というか目立つ!
「うぐ…ぅ…」
黒服に怒られるかもなぁ…と迂闊に『黒服』をイメージしたのが良くなかったのだろう。
立っていられない程の吐き気と共に、もう一つの人格が目を覚ます。
「はっ…はっ…嫌…いやぁ!」
過呼吸を起こし、口が勝手に動く。イメージするだけでこれとかどんだけトラウマ刻んでんだよ黒服。
自分の身を抱き、両腕に爪を食い込ませる。
すぐに血が滲み、爪を紅く染める。痛い痛い
シンプル故に鋭い痛みに顔を歪ませていると、背後から優しく抱き締められる。
「…ごめん…なさい…ごめんなさい…」
また口が勝手に動く。過呼吸が治ったのは良いけど何に謝ってんのか自分でもわかんねぇ…
何も言わず、ただ抱きしめる力を強めるアル。今俺の身体がそれどころじゃないけど、めっちゃ柔らかい。立ち絵から察するものはあったが、やはり張りのある良いおっぱいをしている。
そんな下劣極まりないことを考えていると、部屋のドアが開く音がした。
「ただいまー…ってどうしたの二人とも!?っていうか血!血出てる!」
いつもの余裕はどこへやら、慌てる様子を見せるムツキ。
「とりあえず、話は後で聞くから。今はその子の手当てしなきゃ」
落ち着いた様子のカヨコ。便利屋のブレインは伊達ではない。
「わ…私!救急箱取ってきます!」
ドタドタと慌ただしく部屋を後にするハルカ。あ、転んだ。
それからしばらくして、俺の身体もようやく落ち着き始めたようだ。
自己紹介も程々に、俺への質問タイムが始まる。
「まずは謝らせてちょうだい、謝っても許されることでは無いのは分かっているけど…」
一生をかけてでも償うわ、とシリアス顔で告げる社長。惚れちゃいそう…
というか、謝るって何のことだ…?あぁ、
「あの…きにしないでください。わたしが…かってにやったことなので…」
遠慮がちに答えると、全員苦虫を噛み潰したような顔をする。怪しさ満点幼女にも優しいなこの人達。
「ンヴッフ!」という嗚咽(?)を皮切りに、ハルカに付き添われた社長が部屋を後にする。
別室に移動したのだろうが、泣き声がこちらまで聞こえてくる。すっごい懺悔してる…気まず…
「年はいくつ?お父さん、お母さんは?」
つとめて明るく振る舞うムツキ。俺のせいで気まずい雰囲気にしてしまって申し訳ない…
「…どっちも、わからないです…ごめんなさい…」
年は本当に分からんし、黒服の存在を匂わせるわけにもいかないので、俯いたままそう告げる。
二人とも「ッッ!!」みたいなリアクションしないで、こっちまで辛くなる(他人事)
「今まで、どうやって生きてきたの。食べ物とかは?」
さっきまで聞きに徹していたカヨコが口を挟む。さっきから俺の服をチラチラ見ていることから何か勘違いしてそうだが、その方が都合が良いし合わせるか(←愚断)
「…ぇと…おみせのそとにある、ごみばことかから…(大嘘)」
俯いたまま、くぐもった声で話す。何も言わない二人の表情を伺おうと目線を上げると、二人とも人殺しの目をしている。怖い。
流石にゴミ箱はリアリティが無さすぎたか…?やっべぇ殺される…
無言のままこちらに手を伸ばすカヨコ。咄嗟に目を閉じ、痛みに備える。
…
…
…?
いつまで経っても痛みが来ないことに疑問を覚え、恐る恐る目を開ける。
手を伸ばしたポーズのまま固まっているカヨコと目が合う。
「よしよーし、怖くないよー。大丈夫だよー。」
いつの間にか背後に移動していたムツキに背中を撫でられる。ムチュキママ…
「ほらカヨコちゃん、頭撫でてあげて?」
「…私がやったら、怖がらせちゃうから…」
そう言って寂しげな表情を浮かべるカヨコ。そういうことだったのか…
「さっきはいきなりだったからビックリしちゃっただけだもんね、フーコちゃん?」
勢いよく首を縦に振る。ね?とムツキ。
「じゃ…じゃあ、ちょっとだけ…」
柔らかな指の感触が髪を刺激する。頭と背中から周期的に訪れる心地よさに、瞼が自然と降りてくる。
この身体になってから、すぐ眠くなってしまう。子供だから仕方ないね。
「あ…あの…わたし、きたないので…あんまりさわらないほうが…」
このまま寝てしまうとまた迷惑をかけてしまうので、そろそろ切り上げて欲しい旨を伝える。
「汚くなんかない。」「そうそう!お日さまの良い匂いだよ!」
どうやら伝わらなかったようだ。
次の言葉を探している内に、俺はまた意識を手放してしまうのだった。
横島フーコ
運よく最推しの組織に保護されるルートに入った。無自覚に周りを曇らせる悪女。
陸八魔アル
自分の油断のせいで無関係の子供の未来を大きく歪めてしまったこと(勘違い)を酷く悔やんでいる。一生をかけて償う発言はガチ。取り敢えず養子縁組について勉強することを決意。
鬼方カヨコ
怖がられるのには慣れているつもりだったが、流石に今回のは応えたらしい。保護には当然賛成している。
浅黄ムツキ
完全に母性が覚醒した。私がママになるんだよ。
フーコの様子や態度、口調の丁寧さなどから虐待の可能性まで導き出している。(ほぼ正解)勿論犯人を許すつもりは無いし、フーコには死ぬほど幸せになって欲しいと思っている。
伊草ハルカ
別室にて顔をグシャグシャにして泣きじゃくるアルをずっと慰めていた。
アル様を命を賭して守ってくれたということで、フーコに対しては畏敬に近い感謝を抱いている。仲間として迎え入れるのには何の抵抗もないが、自分の居場所が消えてしまわないか少し不安。
尚、あと二つくらいクソデカ地雷が埋まっているが、当然この時の四人はそんなこと知る由もない。