とりあえず共テが終わったので活動再開します。まだ読んでくれてる人居るかな……居てくれ……
「流石はマエストロ謹製のバリアですね。」
「嫌味か?」
目の前の少女……とも形容しがたい、どこか神秘的な存在から放たれる光は、どんどんとその輝きを増していく。
「当然、巻き込まれれば……無事では済まないでしょうね。」
「そういうこった!」
「逃げます?」
「無理だろう。少なくとも私は光より早くは走れん。……まもなくキャパオーバーだな。衝撃に備えろよ?」
言い終わるが先か、光線は少女とその他を隔てていた壁を打ち破った。
と同時に、何か大柄な影が間に割り込む。
「うぎぎぎぎ……」
「ベアトリーチェ!?」
「あ゛っづい゛い!!!」
「驚きましたよ。貴女にそんな情があったとは」
「うるっさいですねえ!!あなた達のような軟弱者共であっても、居なくなればあの子が悲しむでしょう!?文句あります!?」
「いえいえ、とんでもない……感謝しかありませんよ。マダム。…お陰で、これが使える」
腕輪のような形をした機械のスイッチを入れる。
空間上の点から点へ、線を引くことなく移動することができる転送装置。
バリアが破られた今、そこにデメリットは存在しない。行き先はーーーーーー
「あ、危なかったですわ……」
アビドス砂漠の隅の隅、辺境中の辺境である。
「嘘を吐け嘘を。あれほど喋る余裕があったのだろう?」
呆れたように言い放つマエストロ。
「痛いものは痛いんですよ!!見なさいこの傷を!!というか、もっと感謝して欲しいものですわね!?」
「ちょっと火傷してるだけじゃないですか」
「そういうこった」
「その事についてなんですが……妙ではありませんか?」
「確かにな。私のバリアの強度がこやつのだらしない肉体に負けるとも思えんし……」
「あ゛?」
「生物には影響が薄いのでは?」
「ふむ……もしくは人…生物を殺すのを躊躇っているのかもしれん」
「しかし、あれにそのような理性は感じられませんでした。手にした力に翻弄されているような……やはり、『彼』はまだ消えてはいない?」
「しかし彼も、我々に特別恩があるわけでもないでしょうし……しかし今や、考えるだけ無駄なことでしょう。」
「そういうこったな」
「そうですね、今はとりあえず、安息のひと時といきましょう……」
柄にもなく、砂の上に寝転がる。
「たまには、悪くないですね。こういうのも」
「良い話風に締めようとするのは良いのですが、誰か私の傷を治療しようという者はいないのですか?」
「ああ、悪くない。」
「ねえ!!」
結局、あの場に倒れていた子達の中で、あそこで何が起こったか覚えている人は居なかった。みんな頭に靄がかかったように、ある一部分だけが思い出せない、気持ちが悪いと口を揃えて言っていた。
何人か擦り傷レベルの怪我を負っていた子もいたが、概ね問題なしということでお開きにした。(みんな腑に落ちた様子では無かったが。)
アロナにシッテムのデータを確認してもらっても、一部が黒塗りになったように、あるいは初めからそこに無かったようになっていた。
アロナ自身もこんな経験は初めてらしく、必死に解析を進めて貰っている。
『なんだか、とても嫌な予感がします……先生、どうかお気を付けて』
「うん、でも何にも分かんないから手の打ちようがね…んん?」
『どうかしましたか?』
「いや…私のスマホの写真が何枚か真っ黒になってて…なんだろこれ」
『こちらに送ってもらえれば、できるだけ復元しますよ!』
「ほんと?じゃあお願いしようかな」
何故あのメンバーで万魔殿に居たのか、何のために集まっていたかすら思い出せないまま、先生に促され事務所に戻る。ドアを開け、部屋の中を見回した時、違和感に襲われた。
今まで四人で慣れ親しんだはずの社屋に似つかわしくない、内臓を握りつぶすような悪寒の正体は、壁に貼られている一枚の絵だった。
「これは…私達、よね?」
「そうだねぇ…アルちゃん、ハルカちゃん、カヨコちゃん、私……この、アルちゃんの前の人?は誰だろ?」
「首から上が無いですね……不気味……」
「誰も心当たりがないの?」
返事は無かったが、答えは決まっていたようなものだった。
「ホントに…何なんだろうねこれ。新手の嫌がらせ?」
「にしてもここまで来て、こんな絵だけ置いていく?普通爆弾とか、盗聴器とか…もっとやりようあるでしょ。」
「ファンアートということは無いでしょうか?例えば、便利屋68に憧れる子供とかの……」
「いや、無いでしょ」
「小さい子が憧れる要素、無いよね~」
「そそっ!そうですよね、バカなことを言いました。死にます……」
「ねえアルちゃん。……アルちゃん!?」
『子供』というワードが、頭から離れない。
息が詰まる。心臓は唸りを上げ、次第に立っていられなくなる。
しかし、いくら考えてもこの違和感の正体が分からない。
『ーーーーー…ーーー、ーーーーーーーーーーー…っー。』
『まだそんなこと気にしてたの?私達、もう家族みたいなものじゃない!』
誰かと交わしたはずの言葉。相手の顔も、相手が何を言っていたかも思い出せない。
大切な記憶だったということだけは理解できる。
「アルちゃん!!」
握りしめていた絵を、ムツキに奪われる。
「だ、大丈夫ですかアル様!!?お体の具合が…?」
「え、ええ。大丈夫。その絵を見ていると、なんだか気分がね…」
「……捨てない?これ。本当に呪いの絵みたいになってるじゃん。」
「わ、私も賛成です……」
「ーーーー駄目よ。それは駄目。」
有無を言わさぬ迫力に、思わず皆息を呑む。
「…ッ!なんで?」
「何でも、よ。これは社長命令。あなた達が嫌なら、目の届かないところに仕舞っておくから。」
「わ、分かったよ…」
結局、靄は晴れないままだった。