目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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──月──日
先生と共に過ごす日々を通し恐怖が鳴りを潜めたのか、本来の人格が以前より活発になった。
器を、より神に近しい姿にするため、右目を摘出および左足を切除した。
本人の神秘によるものなのか、痛みに対し非常に強い耐性を示した。
麻酔をせず施術を行ったが精神に大きな問題は無し。むしろ、より高純度の恐怖を与えることに成功した。

──月──日
彼女の暴走から数日、世界がおかしな変化を遂げている。
先の騒動に伴い、すぐにでも先生が動かないのでおかしいと思い調べると、とても興味深いことが分かった。フーコ周りの記憶や記録が、その痕跡を残したまま、抉り取られたように消されているのだ。
本来ここにあるべきではない魂を世界が拒絶しているのか、あまりに大きすぎる力を持った存在を消し去ろうとしているのか。
どちらにせよ、彼女はこの世界の敵、解決すべき課題と化したわけである。

(日付無し)
かつての昔にも、神に近づこうと目論んだ者は幾人も居た。あるものは敬意を持って、あるものは悪意を持って。
しかし彼らは例外なく、四肢や五感、おおよそ人間を構成する要素を失った。
それが『人ならざるもの』への第一歩…神の領域へ足を踏み入れるための条件なのか、神の領域を穢そうとした罰なのかは判断しかねるが、とても興味深い話である。
しかし、全ての神がそれらを欠いているとも思えない。ならば結局、人の手で神を顕現させることは不可能…仮に全てが上手く行っても、できあがったそれは神を似せた紛い物にすぎないのかもしれない。


へっくち!

アビドス某所、砂に覆われ、人の往来などほとんどない僻地に、その無機質な研究施設は佇んでいた。

その地下深くで行われていた怪しげな実験。その内容は『人為的に神を顕現させること』という、なんとも馬鹿げた絵空事であった。

そしてその成果は今────

 

『へっくち!」

 

卵の殻のようにも、繭のようにも見えるそれを破り、災厄が産声を上げる。

キヴォトスを破滅に導く紛い物の神は、ゆっくりと飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

『先生!緊急事態です!』

 

アロナの叫び声で目を覚ます。時計は朝の4時を指していた。

 

「おはようアロナ。何があったの?」

 

『キヴォトスの各地でほぼ同時に高エネルギー反応が検出されました!少しデカグラマトンの反応に似ていますが…少し妙です。』

 

「被害状況はどんな感じ?」

 

『まだ観測して間もないので詳しいことは分かりませんが…各地で同じような(・・・・・)ペースで破壊活動を続けています。人命に関わる被害はまだ確認されていませんが…』

 

「了解。ありがとう…いやぁ…ヤバそうだねぇ…」

 

『どうしましょう!?』

 

「取り敢えず私はアビドスに向かうよ。色んな所で同じくらいの被害が出てるんなら、人員的にも物資的にもあそこが一番不味い。…アロナ、各学園のトップに通信を繋いでくれる?」

 

『了解です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ……なんだありゃあ…」

 

爆発音と共に押し寄せた嫌な予感に釣られて外に出てすぐに、騒動の原因と目が合う。

 

「子供…でしょうか?」

 

驚いたことに、一瞬でこれだけの破壊活動を行った黒幕は小さな存在だった。宙を舞い、巨大な時計の文字盤と歯車が組み合わさったようなヘイローをバックに、両の腕から赤黒い光線を放っていることに目を瞑れば、至って普通の女の子のように見えた。

 

「これおじさんの勘なんだけど…あの時計の針さ…12になったら不味そうじゃない?今は動いて無いけど…」

 

「ん、ゲームなら即死ギミック…残り時間のタイマー?」

 

「言ってる場合!?さっさとやっつけるわよ!あの浮遊幼女!」

 

「うへ…めっちゃ強そうなんだけどぉ?…まぁ、このまま暴れられると校舎ごと無くなりそうだし…仕方ないかぁ。対策委員会!行くよぉ!」

 

ホシノの掛け声と共に、攻撃を始めようとしたところで、彼女らは異様な光景を目にする。

 

『じゃま…」

 

ぎちぎちと不愉快な音を立て、少女の腹部が二つに割れる。

赤黒い空間の奥から、見覚えのある信徒が大地に降り立つ。

 

「ビナー!?」

 

「なっな…物理的におかしいでしょ!?どうなってんのよ!」

 

「あの手のにそういうのは野暮かもねぇ…待って、なんかいつもと違くない?」

 

砂埃を巻き上げ、狂ったようにのたうち回るビナー。

 

「巻き込まれないように、気を付けてください!」

 

『オ゛ォ…オ゛ネ゛ェ…ヂャ…』

 

普段とは色の異なるヘイローを輝かせ、砂漠の怪獣はどこか哀しげに咆哮する。

 

『…うん。キリンちゃん、がんばって。」

 

『オ゛オ゛ォオ゛オ!!!』

 

宙を舞う少女の一声で、暴走は勢いを増す。

 

「うへぇ…こりゃ、骨が折れるぞ~…」

 

「今だ!総員!撃てぇ!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに目覚めたようですね、私の娘が。」

 

「あぁ…やはり想像以上だ…素晴らしい、美しい…!今すぐにでもこの熱意をキャンバスにぶつけたい気分だ!」

 

「……しかし驚きましたね、まさかデカグラマトンの信徒まで操るとは…」

 

「そういうこった!」

 

「………『操る』というのは、少し事実と異なっているかもしれませんね…アレは『再現』、あるいは…『模倣』?各地に同時に現れることができたのもゴズの能力の模倣か、あるいはミメシスの技術の応用か…?いやしかし、分身はそれらの権能を行使できないということは単純に数を増やせるわけではないのか…?」ブツブツ

 

「何にせよ、うちのこが一番強くて凄いと言うことですね!!!!」

 

「お前は相変わらずだな……まぁ、間違ってはいない。」

 

「さあ、見届けるとしましょうか。この物語の行く末を。」

 

「そういうこった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

威勢の良い掛け声と共に、数多の銃弾が少女とビナーに浴びせられる。

どこに隠れていたのか、重装備に身を包んだロボット兵達が次々にポジションに付く。

 

「アビドス高校!今だけ手を貸してやるぞ、ありがたく思え!まずは救援物資を受け取るが良い!」

 

「あ、あなた達は…カイザーの!?」

 

「いかにも。カイザーグループ、対デカグラマトン大隊だ。」

 

「ちょっと!?私はこんな奴らと手を組むなんてむぐぐ…」

 

「まーまー、助けてくれるって言うなら遠慮なく手を借りとこうよぉ。……おじさん達だけで相手するの厳しそうだしさ~…」

 

「フハハ!対デカグラマトン専用の兵器だ!感謝して、存分に食らうが良い!!」ドカーン

 

憤慨するセリカを諌めつつ、弾をリロードする。

…と、そこで違和感を覚える。先程まで景気良く続いていた銃撃が、ぴたりと止んだのだ。

 

「おい!?何をしている!攻撃を続けろっ!」

 

違和感を覚えたのは大隊長も同じようだった。少し焦ったように、声を荒げる。

 

「ほ、ホシノ先輩。上……」

 

「うぇ……?」

 

シロコに言われるがまま顔を上げると、黄色っぽい液体と固体の中間のような物質が少女を覆い、銃弾や爆弾、ミサイルなどを吸着させていた。

 

「え…?ノーダメージってこと?そんなのありぃ?」

 

「いや違う!はじめの内は確かに効いていたはずだ!?一体どうなってる!?」

 

攻撃が収まったことを察したのか、黄色い膜は少女の体内にずるりと吸い込まれていった。

 

「うっわ…キモ…」

 

少女はこちらを気にも留めず、ただ誰かと会話をしているようだった。

 

 

『うん、そうだね……」

 

『いたいのも、つらいのも。もう、おしまい。」

 

 

瞬間、時計の針が12を指した。

空間を裂くほどのエネルギーが少女の周りに集まっていることを肌で感じる。

暴力的に、強引に。この世界、いや、自分の命の終わりが迫っているという恐怖が、絶望が、一瞬にして私の体を支配する。

と同時に、どこか晴れやかな気持ちも芽生えた。

それだけの神々しさを、残酷なまでの美しさを、その少女は孕んでいた。

 

 

(ここまで、かぁ……)




更新遅れて誠に申し訳ない…
色々落ち着いたので、以前のペースに戻せそうです。黒服娘を、もうちょっとよろしくお願いします…!
あと、ついにブルアカを始めました!もうエアプとは呼ばせんぜ…
恥のかきついでに、拙作の宣伝をば…(https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=336564)
フウカたんのラブコメが書きたかった…オリ主ちゃんの過去編はちょい曇らせの予定です。

■教えて!黒服先生!のコーナー

・フーコの『吸収』について
①ゲマの研究施設で見せた、知識や技術の吸収、②ベアおばに対してやったみたいな物理的な吸収、③ダメージ吸収の三種類があります。
①は時間をかけ知識を吸収、機械なんかは仕組みを理解すればそのまま吸収して使うこともできますし、模倣なり応用なりして自由に使うこともできます。(ゴズ由来の分身、ビナーのパチモン、グレゴリオ由来の即死攻撃など)
②は生物、機械を問わず吸収し、その特異性などを模倣します。人間に対しても勿論使えますがよっぽど油断してないと吸収されませんし、フーコ自身隙をさらすことになる上、今のフーコの目標は現状の破壊なので多分人に対しては使いません。
③はデカグラマトン大隊の攻撃に対してやったやつです。人間で言う獲得免疫のように、一度慣れた攻撃は以降効かなくなります。(呪術読んでる人はイメージしやすいかも…)
とはいえ、多少の攻撃なら持ち前のタフさと再生能力でどうにかなるので、初見かつ大きいダメージを与え、ワンパン撃破しないと厄介だと思います。

・うわぁ!フーコの腹から!について
ビナーの情報から再現したパチモンを、ワープゲート的なところから引っ張り出しただけです。『摸倣』の都合上、自分の体を触媒にした方が良いんですね。

・『キリンちゃん』について
フーコに臓器提供(強制)した孤児のうちの一人です。腹の中で眠っていましたが、これを機に起きたみたいですね。
人格の一つとして現れるほど強くはありませんでしたが(内蔵しか残ってないし当たり前)、お姉ちゃんにビナーっぽい体をもらって嬉しそうですね。
理不尽に命を奪われた鬱憤晴らしのためにフーコが体を用意してあげたのか、ただそうしないとビナー(偽)を扱えなかったから仕方なくそうしたのかは不明。各自好きに妄想してください。

・フーコの分身について
かつてのクローンは暴走に合わせて一気に繭化し(暴走の時点で成体だったものに限る)、やがて本体に吸収されました。
今暴れてる分身はゴズ由来のものです、オリジナルの7割くらいの力で暴れまわり、ダメージを知らない(HPが減らない)という悪魔的幼女です。しかし、オリジナルと異なり吸収も摸倣もできません。
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