目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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独自設定、ガバ多め注意


機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)

深い海の底にいるような、それでいて安心感があるような。

そんな奇妙な心地と、どうもはっきりしない意識の中で、夢を見た。

夢と言うにはあまりにも具体的で、それでいて絶望的な少女の一生。

あまりにも深い暗闇の中、必死に縋りついた光もすぐに消える、その繰り返し。

 

ここではない平和な世界でぬくぬく暮らしていた俺にはきっと想像もできない苦痛だろう。

齢10にも満たないであろう女児なら尚更だ。

 

俺はごく普通の家庭で育って、そこそこ勉強して、そこそこ遊んで……まぁ、一般的で空虚な、大人になってから「あれ?俺学生時代何して過ごしたっけ?」ってなるような人生を歩んできた。(受験を目前に死んでしまったが)

そんな俺でもガチった事が一つだけある。そう、ブルアカだ。

涙あり笑いありの透き通るような青春RPGは、俺の人生を大いに彩ってくれた。体操服ハルナに狂って課金しまくったし、ブルアカ宣言で枕をべちょべちょに濡らした。

絶望に立ち向かってハッピーエンドを掴み取る少女達は、とても魅力的に映った。そう、俺はハッピーエンドが大好きなのだ。

 

とまあ、長々と語ったわけだけども。

結局何が言いたいかというと、『知らねぇ』だ。

不運な境遇に生まれたこと、唯一の支えだった姉が自分の身体の部品にされたこと、落ちた先で出会えた新しい家族すら奪われたこと。

そのどれもに同情こそすれど、この青春の物語の邪魔をすることは許さない。俺はハピエン厨の厄介オタクなのだ。

 

『うお゛お゛ぉおおっ!!!!!ら゛あ゛ぁあ!!』

 

クリアになってきた意識で重い腕をなんとか動かし、光線の弾道を上にねじ曲げる。

 

「なんで……なんでまた……やめて!じゃま、しないでよぉっ!!」

 

 

「……ッ!?私、死んで…ない?」

 

「い、今空が割れましたよ……あんなもの直撃してたら…」

 

その場の誰もに死を連想させた光線は、誰の命も奪うことなく、空を裂くに留まった。

 

「威嚇のつもりか……?」

 

意図の分からぬ行動に頭を悩ませる暇もなく次の攻撃が来る…かと思いきや、突如苦しみ始める少女。

 

『溜め技スカせた時が一番気持ち良いんだよなぁ!!』

 

「そこはおねえちゃんのばしょ!!でてって!!」

 

『でもさぁ、俺が出てったら死ぬぜ?妹ちゃん。…まず出方分からんし……』

 

「うるさい!!うるさいっ!!でていけ!!おねえちゃんを、かえしてよぉっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、ゲヘナ自治区ーーーー

未曾有の敵襲、さらにその治安の悪さから甚大な被害を被るかに思えたゲヘナだったが、存外他のどの地区よりも被害が少なかった。

その理由の一つは所属生徒のほとんどが独断ですぐに動き出せたこと(自由気ままに振る舞っただけとも言える)。

そしてもう一つの理由は、ゲヘナの治安維持を担っていたツートップの協力である。

 

『空崎ヒナ、首尾はどうだ?』

 

「悪いわね。相変わらずダメージが通ってるように見えないし、むしろ攻撃の勢いが強まってきてる。…住民や怪我人の避難は大丈夫?」

 

『主な戦闘はお前達に任せきりだからな…それくらいはやってやるさ。万魔殿の本拠地を避難所として解放している。…ゲヘナにこれ以上安全な場所は無いだろう?キッキッキ…』

 

「そう、なら安心かもね。……で?目の前のこの子はどうすれば良いのかしら?勿論良い案を思い付いたんでしょう、生徒会長殿?」

 

自分と同じくらいの背丈の癖に空を自由に飛び回り、破壊の限りを尽くさんとする少女(?)を牽制しながら話を続ける。

 

『……あー、あー?ふむ、電波が悪いのか良く聞こえんなぁ…』

 

「呆れた…『作戦立案はこのマコト様に任せておけ!…これで私の支持層もより厚く…!キーッキッキッ!!』って言ってたのは誰かしら?」

 

『器用に声真似しおって…しかし、お前でも太刀打ちできないとなると…うむむ……』

 

「もう…普段から温泉やら美食やらを風紀委員会に丸投げしてるんだから、こんな時くらいしっかりして。」

 

『それだ……!!』

 

「え?」

 

『空崎ヒナ、及び交戦中の風紀委員会に告ぐ!!そいつをどうにか誘導しろ!お前達がいる場所から北東に2kmだ、分かったな!!』

 

「ちょっと、どういう……切れた…」

 

「猿山の大将に期待など初めからしていませんでしたが、報連相すらまともにできないとは……」

 

「アコ、言い過ぎ。…他に策も無いし、やるわよ。皆」

 

 

「「「「おぉーーーっ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ……はあっ……う゛…ぐぅ…」

 

もう、だれのこえもしない。このからだは、わたしにもどった。もどった、はずなのに。

 

「あ゛つい……あたまが、いたい……ひやさ、ないと……」

 

「ピンクちゃん、トラくんも、でて、いかないで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒服。」

 

少し落胆したように、木人形が体を軋ませる。

 

「ええ、あの子と関わり、想定外の出来事はこれまで幾度となく見てきましたが……これは悪い想定外ですね……あの子の魂が、完全に彼を追い出してしまった。」

 

「これではそう長く保たないのでは……彼女だけでは、その神秘で己を灼いてしまうのでしょう?」

 

「そういうこったろ?」

 

「……いや、これは…まだ分からないかもしれませんよ。」

 

「……あれは…『模倣』を繰り返し、神秘を消費…いや、『浪費』しているのでしょうか?」

 

「そういうこった!」

 

「なるほど、それらを動かすにも神秘を要する…このままにしておくより、少しばかり長く活動できる可能性はありますね。……マエストロ?」

 

見覚えのある機械や教義、デカグラマトンの信徒を思わせる部品の数々を不完全なままその身に纏い、必死に消滅を避けようと、生きようと足掻く少女の姿はーーーーーー

 

「……なんと、なんと美しい…あれこそ神の完成形だ!我等の最高傑作だ!!」

 

まさしく機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)の名に相応しい、以前の姿より残酷な美しさを思わせた。

 

「……そうですね、後にも先にも我々があれを超えるものを生み出すことはないでしょう。」

 

「御都合主義の化身、時に暴力的に物語を終焉へと導く存在……終焉へと導かれるのは、どちらの(・・・・)物語なのでしょうね?」

 

「フレーッ!フレーッ!フーコ!!足元です!足元を狙うのです!!」

 

「戦場のど真ん中にワープさせてやろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし!もしもし!!」

 

『ん…空崎ヒナか。手筈通り行っているか?』

 

「もうすぐ言われてた場所に着く。それで、次の指示、は、……」

 

 

羽沼マコト。政治に疎いゲヘナ生徒のトップである彼女が何故他地区のトップと渡り合えているのか。

貫禄、もとい威厳があるから?そんなハッタリだけで乗り切れる場面はそう多くない。

戦闘能力が高いから?否、個人の戦闘能力はそこまでではない。

他の誰も知り得ない情報を真っ先に仕入れるパイプを何本も持っているから?それも勿論あるだろうが、大部分を占めているのはそこではない。

 

その莫大な情報を処理、記憶する能力。

清濁併せ呑み、己の野望のため人を動かすような取引ができる交渉力。

それらを駆使し、彼女はゲヘナのトップへと躍り出たのである。

 

「温泉開発部!?……なんでここに…」

 

「おおっと、今はしょっぴかないでもらおうか風紀委員会……もとい、イオリちゃん。(それ)を向ける相手は私では無いだろう?」

 

大船に乗ったようにヘラヘラと笑うのは、温泉開発部部長、鬼怒川カスミ。

 

「それで、どうしてこんなところに?」

 

「ひえっ……ど、どうしてもこうしても、ここは我々温泉開発部の開発区域だ!この度の作戦のためにどうしても必要だと議長が仰せになったから、仕方なく提供することにしたのさ。ここはまだ開発中だが、ゲヘナ地区…いや、キヴォトスの未来のために涙を飲んで……」

 

「なるほどね、本当は?」

 

「あのねぇ、ここを明け渡せば、ゲヘナどこでも1ヶ月掘り放題にしてくれるってマコト議長が」

 

「メグゥッ!!!」

 

「それで、どういう作戦なんだ?」

 

「我々も詳しくは聞いていないんだが…この掘削中の穴にあれを放り込まないといけないらしい。」

 

開発スポットの300m程後方で廃墟を破壊しながらこちらに向かって来る少女を指差し、そう告げるカスミ。

 

「それと、可能な者はこれを装備しておけとのお達しだ。」

 

「なんだこれ…耳栓?なんでこんなものを……」

 

「飛べるヤツが穴に落ちるとも思えないけど…マコト?」

 

『あぁ…次の指示だったか。総員、その場に伏せて』

 

 

 

「全員、耳を塞いで伏せてください!!」

 

 

マコトの言葉が終わるより先にアコの絹を裂くような叫び声が後方から聞こえ、その直後轟音と衝撃波がその場を包んだ。

 

「ケホ……みんな、無事?」

 

「な、何とか……」

 

「何なんですかあの人は!もっとスマートな方法が取れないんですかね!?あぁあイライラする!まさかーーー」

 

「ーーミサイルをぶち込むだなんて!」

 

『クキキ…聞こえているぞ、アコ行政官。』

 

「今回ばかりは聞こえていても構いません、なんならもっと言わせてもらいますよ!!!」

 

『お前達が引き付けていてくれたお陰で、上手くヤツの身体を巻き込めた。いかにダメージが通らないと言えど、衝撃までは殺せまい?』

 

「私達まで巻き込む可能性は考えなかったのですか!?」

 

『ああ、爆発物は抜いてあるし、何より私は万魔殿(うち)の戦車長の腕を信用している。』

 

『ここまで自由が利く遠隔操縦ミサイルなんて初めて見ましたよ…二度と操縦したくありませんね。』

 

「でも、またすぐ起き上がってくる。あれでやられる程、アイツはヤワじゃない。」

 

『だからこそ、開発地域(ここ)に誘い込んだ!温泉開発部!ありったけのセメントをプレゼントしろ!!』

 

「承知した!」

 

カスミの鶴の一声で、次々にセメントが噴射され、見る間に穴が塞がれてゆく。

 

「生き埋めか…確かに最善手かもしれないけど、なんか残酷だな……」

 

気分が悪くなったのか、その場に座り込むイオリ。

 

『キキキ!どんなに強い生物だろうが、呼吸できず身動きも取れないとなれば死ぬしかあるまい?』

 

「そう、ね……」

 

(だと良いのだけれど……)




まだだ…まだ曇らせるな、堪えるんだ…
切実に文才が欲しい。前回評価下さった方、コメントくれた方、お気に入り登録してくださった皆様ホントにありがとうございます!!!あったかくてビックリしちゃった。
まだ評価とかお気に入りとかめんどくさくてしてないよって方、よければお願いします。評価があればモチベが湧く!モチベがあればフー虐ができる!!!よろしくおねがいします!!!

フーコのエロ、竿役は

  • 汚いおっさん(人間)
  • 汚いおっさん(ロボット)
  • 触手生物
  • 触手メカ
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