「来てくれてありがとう、皆。私も力を貸すから、皆の力を貸してほしい。」
「べ、便利屋と……誰?」
『大人のカード』の光が消えるとそこには、見知った顔である便利屋68の面々と、見知らぬ少女三人がいた。
「彼女達はミレニアムの……」
「せ、先生の頼みだから来たけどさぁ?ま、まさかアレの気を引けっていうんじゃないよねぇ……?」
「アリスだけに辛い思いさせるのは嫌だって言ったのはお姉ちゃんじゃん。」
「だってぇえ~~!!」
「だ、だいじょうぶ!みんなで一緒に、頑張ろう……?」
「そうね。私たちは一つの目的のために集まった、同志ですもの。言葉は不要よ!!」
「なんでアンタが仕切ってんのよ。」
「説明したと思うけど、皆にはあいつらの気を引き付けてほしい。」
「ぶっ壊しちゃわなくて良いのー?」
「うん、倒す必要はないよ。本体さえ叩けば、多分あとは何とかなる。」
「ちょうど3体居るから3グループってことね。なるほど。」
「そういうこと。」
「で、どのくらい引き付けたら良いの?」
「そうだね、5分は稼いで欲しい。その間、本体に近づけないように。」
「結構無茶言うねぇ……よーし、おじさん頑張っちゃうよぉ。」
「皆くれぐれも無茶はしないで!自分の身の安全を最優先に!!」
先生の号令を皮切りに、各々がそれぞれの標的へと立ち向かう。
不安は消えない。だが先生が到着したことにより、確かに風向きが変わった。このままいけばきっと勝てる。私達のアビドス……ひいてはキヴォトスを守れる。
しかしいざ銃を構えようとした時、微かな違和感。いや、悪寒が頭によぎった。
大切な何かが、頭から抜け落ちているような気がする。このまま進んでしまえば、また何か失ってしまいそうな。
「ちょっと先輩!?こんな大事な時に何ボーっとしてんのよ!早く行くわよ!!」
セリカちゃんに乱暴に手を引かれ、敵の方へ向かって走る。
「う、うん。ごめん。」
(気のせい、だよね……)
一抹の不安を噛み潰し、武器を持つ手に力を込め直した。
「テメェで、最後だァ!!!」
凄まじい轟音とともに、大穴に叩き込まれる少女。
「よーし!穴埋め部隊、出動せよ!!」
ゲヘナ学園の情報提供により攻略法が確立された今、タイマン最強人間兵器とキヴォトス屈指の科学力を保有するミレニアムサイエンススクールにとって、大規模破壊を繰り返すだけの少女を片付けることなど容易かった。
「あ゛~~~~、クッソ疲れた……」
「お疲れ様です、先輩。電気も銃も打撃も効かない相手に一心不乱に立ち向かう先輩の姿はまるで猪のようでした……いえ、子猪…瓜坊のようでした。」
「オウ、良い度胸じゃねえか。後輩を可愛がるくらいの余力はあるつもりだぜ?」
『ご苦労様、ネル。そちらは片付いたようね。』
「ったりめーだ。で?そっちはどうなんだよ。」
『こちらの準備も整いつつあるわ。アビドスの面々が隙を作ってくれれば……あとはアリスのコンディションと……』
『大丈夫大丈夫大丈夫……理論上はこれで可能なはずなんだ、ワープ技術……計算も合ってる、問題ない。あとは大規模な空間の歪みによるエネルギーの……』ブツブツ
『アリスはバッチリです!この光の剣で、魔王をやっつけてみせます!』
「そいつは結構……オイ待て、今大丈夫じゃなさそうな奴居たぞ。」
『ウタハ先輩、こんなにプレッシャーかかる仕事初めてだから……』
『それだけじゃないよぉ!あくまで理論上可能なだけで実践はしてないし!先生や他校のトップの手前かっこつけてしまったが、成功するかも分からないし……』
「らしくねえこと言ってんじゃねぇよ。お前ならなんとかするだろ。……まあ失敗しても先生がどうにかしてくれるさ。だろ?」
『……そうだね、私としたことが、取り乱してしまったみたいだ。ありがとう、ネル。』
『ヒマリ、リオ!こっちはもう大丈夫!いつでもいけるよ!!』
和みかけた雰囲気が引き締まる。各々に緊張が走る。
「……頑張れよ、アリス。」
聞こえるか聞こえないか分からないほどの声で、運命を託した後輩にエールを送る。その表情は穏やかで、慈愛に満ちていた。
『エネルギー転送装置起動!光の剣:スーパーノヴァ・改、充電MAX!!』
『アリス、MP満タン、です!』
キヴォトスの未来をその小さな体に背負った少女の表情は、決意に満ちていた。
『ーーーーー光よ!』
「先生が到着しましたか。」
「あぁ。……そろそろ幕引きだな。」
「ちょっと!?何諦めムード晒してるんですか!?あの子はまだ負けていないでしょう!?」
「……どうでしょう。ただでさえ『彼』を引き離し、神秘のコントロールを失っている。おまけに彼女の神秘を底上げしていた魂も今や信徒に宿っており、最初に使った奥の手も使えない。抗戦するだけでも彼女は不利な立場にあるのです。」
「そして今、『先生』というライターによって、停滞していた物語が本格的にエンディングを迎えている。それはきっと、我々……彼女にとって、望ましいものではない。」
「そういうこった!」
「……まあ、存分に楽しませてもらったさ。長く生きてきたつもりだったが、新たな発見は大いにあった。それだけでも……」
「だっからぁ!まだ終わってない……分かんないでしょうがっ!!いけフーコ!!そんな奴ら蹴散らしてしまうのです!」
「……貴女にしては良いことを言う。ククッ……」
「どういう意味だ?」
「彼女の暴走に加え、生徒達による膨大な神秘が満ちている。そして、アビドスという地理。……『奇跡』が起こる基盤は、十分に整っているということですよ。」
「奇跡でもなんでも良いです!勝て!フーコ、勝てぇい!!」
「マダム、もう黙っていた方がよろしいかと。」
「そういうこったな。」
「先生!今だよ!」
「こっちも問題ないわ!」
「これだけ離せば大丈夫でしょ!」
思惑通り、信徒を引き剝がすことに成功した。後はーーーーー
『頼んだよ、アリス。』
その一言を皮切りに、空間が裂け、そこから光が満ちてゆく。
暴力的なまでの眩い光が辺りを包む。
「うわっ!まぶしっ!」
「みんな、その場に伏せて!」
「あ゛つい……」
「くるしい……
いた……い……
わたし、が、きえていく……
い、や……
あつい、つめたい。まぶしい、くらい。
さびしい
こわい。
だれか、だれか。
たすけて
「……フー、コ……?」