目が覚めたら黒服の娘だったんだが…   作:菱野 モチ

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前回あんなことを言っておきながらソフトな曇らせになってしまうことをお許しください。



フウカとユウカとフーコ

「せんせー、なにかおてつだい、ないですか?」

 

床掃除が終わったのか、てちてちとこちらに歩いてくるフーコ。やだなにこの子可愛い。

しかし、アルから聞いた話によるととんでもなく重い過去を背負っているらしい。

昨日アル達と別れた後、疲れからかすぐに寝てしまったのだが、ずいぶん魘されているようだった。

手を握ってやると落ち着いたのか安らかな寝息を立てていたので良かったが、こんな小さい子にそれほどまでのトラウマを植え付けた『大人』が確かに存在するという事実に怒りが隠せない。いつか絶対とっちめてやると心の中で誓う。

 

「あの…せんせー…?」

 

少し怯えたような様子を見せるフーコ。いけない、顔に出てしまっていたようだ。

 

「あぁごめん、怒ってるわけじゃないんだよ。痔が痛くて。そうだね、もう十分お手伝いしてもらったから大丈夫だよ。そろそろ今日の当番の子も来てくれるだろうし。」

 

ほっと胸をなでおろすフーコ。全部の動作が可愛いなこの子。

 

「そうだ!これ、フーコにと思って昨日買っといたんだー。」

 

いきつけのホビーショップの紙袋から、おもちゃやフィギュア、ゲーム機を引っ張り出す。

多少自分用のも買ったが、細かいことは言いっこなしである。

 

「おぉ…すごい…」ピコピコ

 

ゲーム機を手に取り、感嘆の息を漏らすフーコ。

ほほえましい光景に癒されていると、部屋のドアがノックされる。確か今日の当番は…

 

「先生?いらっしゃいますか?入りますよ?」

 

「まずいフーコ!それ隠しーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生との生活が始まって一日目、どうも俺です。

キヴォトスのゲーム機って案外レトロなんだな…てっきり進んだ技術で4DS!いや114514DSみたいな感じかと思っていたが、慣れ親しんだ形をしている。

電源を付けたちょうどのタイミングで、誰かがドアを叩く。

 

「先生?いらっしゃいますか?入りますよ?」

 

この声は俺でも知っている。先生の焦り具合からも、あの人で確定だろう。

冷酷な算術使い、ミレニアムデカフトモモの異名で知られるその人はーーーーー

 

「ごめん!ごめんってユウカ!これは浪費じゃないから!必要経費!」

 

早瀬ユウカ。その人である。

 

「何をふざけたことを…あら?先生、誰ですこの可愛らしい子は」

 

「…は、はじめまして」

 

「普通そっちが先じゃない?この子は横島フーコ。わけあって私が面倒見ることになったんだ。フーコ、この人は早瀬ユウカ。私に厳しいうえに太ももがえげつなく太いけどいい子だよ。」

 

「フーコちゃんって言うのね、これからよろしく。」ギリギリ

 

この人ロリコン疑惑あったけど思ったよりガチかもしれんな…というかクソデカ太ももで先生を締め上げながら日常会話しないで欲しい。反応に困る。

 

「ギブギブギブ!ユウカ!それ以上は死ぬ!!」

 

「まだ大丈夫です」ギチギチ

 

「がああああああ」

 

…何やってんだか

 

 

 

「ハアハア…やっと解放された…死ぬとこだった…」

 

紫がかった顔で息を荒くする先生。美人が息を切らしているというのに何なんだこの色気のなさは。

 

「そこまできつく締めてませんよ!…あと、先生が悪いです。」

 

「だから!昨日の買い物はフーコのためで…」

 

「『DXカイテンジャーロボ』、『カイテンジャーなりきりセット』、『超高級!ゴールドペロロジラフィギュア』……先生?」

 

「…ッスゥーーーッ…」

 

「この大きな喋るゴミは後で捨てておくとして、フーコちゃん、ゲームが好きなの?」

 

「ねえ酷くない?」

 

「…っはい!」

 

「そう。じゃあまた今度、ゲーム開発部のみんなに会いに行きましょうか。みんなフーコちゃんみたいに小さいし、きっとお友達になれるはずよ。」

 

バチコンとウインクを決めるユウカ。ロリハーレム強化という私欲が透けて見えるが、ゲーム開発部フラグを立ててくれたことには感謝しておこう。ありがとう大根足神。

 

「…先生、今失礼なことを考えましたか?」

 

「いや全く!?ホントだって!ちょ…」

 

固め技もほどほどに、業務に戻る二人。俺ここに居ても良いのかな…

二人が仕事してる中で一人ゲームはキツイって…文化祭準備の時教室の隅で音ゲーやってた悲しい記憶が蘇ってくるわ。打ち上げにも誘われなかったよなぁ…

やべ、涙出てきた。

 

「ちょ…フーコちゃん!?どうしたの!」

 

慌てた様子で俺に駆け寄るユウカ。仕事に集中しろ。

すかさず先生も駆け寄ってくる。やっべ、心配かけてもうた…

 

「っごめ、ごめんなさい。だいじょうぶ、です。だいじょうぶ…」

 

「ほんとに大丈夫?お願いだから無理しないでね…」

 

苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、先生が言う。いや、本当に大丈夫なんだよなぁ…

 

「先生…」

 

「……フーコは昔、色々あったみたいでね…」

 

一気に葬式みたいな空気になってしまった。申し訳ねえ…誰かこの雰囲気ぶち壊してくれないかな…

 

ドアバァン

 

「来たわよ!フーコ!」

 

「しゃちょう!」

 

流石俺たちのアル社長だ。専用bgmを引っ提げて雰囲気をぶっ壊すことには他の追随を許さない。

 

「私も「ムツキちゃんも」来たよ「~!」」

 

「あの、わ、私もっ…!」

 

「みなさん…」

 

体が勝手に社長に飛びついてしまう。思ったことがすぐに出てしまうところはこの身体の弱点だと思う、もっと弱点あるけど。何なんだろうねこの身体。黒服さんさぁ…やる気あるの?

 

 

「ん~~~フーコニウム補充!シャーレの住み心地はどう?昨日はよく眠れたかしら?」

 

俺の後頭部を吸いながらも気遣いの心を見せる社長。

 

「はい!もちろん…でも、みなさんがいないとちょっとさびしいです…」

 

「…やっぱり毎日会いに来ましょう、みんな」キリッ

 

「毎日は迷惑だって…」

 

「ちょ、ちょっと待って?フーコちゃん?その、便利屋とはどういう関係?」

 

この場でただ一人だけ事情を理解していない太もも。

 

 

「…えーと、いっしょにねました!」

 

「ブフォッ!!寝…えぇ!?」

 

勢いよく噴き出し、動揺した様子を見せるユウカ。それを見て悪魔的な笑みを浮かべるムツキ。

 

「お風呂も一緒に入るくらいの仲良しだよ!」

 

第二の爆弾投下である。

 

「あんた達…いたいけな少女になんてことを…このロリコン!」

 

お前がそれ言う?

 

「ごっ!誤解よーー!!」

 

お通夜ムードは完全に消え去り、便利屋メンツの支援もありあっという間に仕事が片付いた。何やかんや有能集団である。

 

「う~~ん!仕事、終わり!!」

 

大きく伸びをする先生。思い切りのけぞったせいでスーツの胸元が悲鳴を上げている。

女性しかいないからって恥じらいを捨てるのはどうかと思うぞ先生。

 

「ご飯食べるには早いから、皆でショッピングでもどう?」

 

「くっ…わ、私は遠慮しておきます…これから予定があるので…」

 

心底悔しそうにユウカが言う。あら残念、ゲーム開発部に行くのはまた今度だな…

 

「じゃあまたね、フーコちゃん。次はゲーム開発部の皆も連れてくるからね!」

 

「ユウカさん、またね。」

 

お互いに手を振り合い、別れを告げる。

 

「じゃあ、私達もそろそろ出発しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなでショッピングとは言ったものの、ほとんどフーコのものばかり買った。

まず服だ。聞くところによると、この子はずっとこのボロ切れのような服を身にまとっていたらしい。

各自フーコに似合いそうな服を持ち寄り、ちょっとしたファッションショーが始まった。フーコ自身が気に入った服はノーモーションでカゴに入れたが、そのセンスは良いとは言えなかった。

『枕がデカすぎる』とだけ書かれた白のロンTである。意味不明でダサいので、パジャマとして着てもらうことにする。

 

ファッションショーの結果は、満場一致でカヨコの優勝だった。ちょっと悪そうな印象も受けるが、儚げな雰囲気がフーコに良く似合っている。

 

私が持ってきたミニスカと半袖Tシャツは頑なに着てくれなかった。なんでやミニスカ可愛いやろ。

一度綺麗にしてから着替える方が良いという本人の希望もあり、今日一日はボロ布のまま過ごしてもらうことになった。全員不満げだったが、本人の希望だから仕方がない。

 

「そろそろお腹空かない?」

 

時計は既に12時を回っていた。

 

「そうだね~!せーんせ?どこ奢ってくれるの?」

 

「うーん、皆にとっては珍しくもないかもだけど、フーコにはいろんな人と交流してほしいからさ。」

 

「なるほど…ゲヘナの食堂ね」

 

「えぇ~!?危なくな~い?ムツキちゃんはんたーい!」

 

「だからちょっと早めに失礼することにしようと思って。」

 

「先生権限だね。」

 

「そっそれなら安心ですね!給食部のご飯も久々なので楽しみです…!」

 

 

 

 

~ゲヘナ学園 食堂~

 

「あ、すみません。まだ準備中で…って先生か。」

 

「ごめんね~」

 

「まあ、先生も忙しいでしょうし良いですけど…後ろのお客様は…?」

 

ゲヘナでは良く知られた名の小悪党集団を一瞥する。

 

「なっ何よ!」

 

「ちょっと事情があってね…お願いフウカ。」

 

「…分かりましたけど、くれぐれも暴れないでくださいよ…」

 

便利屋68はゲヘナにしてはおとなしい集団だが、例外ももちろんいる。社員、伊草ハルカである。

私の悪友である黒舘ハルナが率いる危険人物集団、美食研究会に引けを取らないほど、彼女は爆弾魔なのである。

しかも厄介なことに、そのトリガーが分からない。

美食研究会については、真っ当に食事を提供しておけば爆破されることは無いが、この娘については未知数である。

実際、サービスも良く食事の質も全く悪くなかったラーメン屋『柴関』は彼女の手によって爆破され、今は屋台を出しているそうだ。お気の毒に…

 

先生に続き、ゾロゾロと入ってくる便利屋。その最後尾に、見慣れない顔があった。

 

「先生?その子は…」

 

「この子はフーコ。横島フーコ…まあ、私の妹とでも思ってもらえれば良いよ。」

 

『妹とでも』ということは実の妹では無いのだろう。まじまじと謎の美幼女を眺めていると、恥ずかしそうに先生の影に隠れてしまった。

 

「フーコ。このお姉さんはフウカ。愛清フウカ。とっても料理が上手なんだよ~」

 

 

少し先生の影から顔を出し、こちらを覗うフーコちゃん。少し目線を下げ、笑顔を作って見せる。

 

「…なまえ、にてる。よろしくおねがいします…」

 

差し出された小さな手を握る。

 

「歓迎会ってことでさ、とっておきの作ってあげてくれる?」

 

「他の生徒の分の仕込みもあるので大したものは出せませんが…」

 

 

 

 

数分後、人数分の料理が出される。ごく普通の、おいしそうな給食、といった感じだ。

白ご飯にサバの味噌煮。結局こういうのが一番ありがたいのである。

 

「フーコちゃんにはデザートを用意してるから、食べ終わったら教えて?」

 

「でざーと…」パァア

 

希望に満ちた表情を浮かべ、箸を手にするフーコ。あまりの可愛さにここにいる全員がママになってしまった。フウカも完全に母親の顔をしている。

 

しかし、一口食べた途端に泣き出してしまった。また何かのトラウマを刺激してしまったのだろうか。

 

「フーコ。どうしたの?大丈夫?」

 

「ごめんね、お口に合わなかったかな…」シュン

 

「ちがっ、ちがいます…おいしくて、わっわたし、こんなにしあわせでいいのかなって…」

 

変わらず涙を流しながらも、しっかりと箸を進めながらフーコが言う。

きっと前の暮らしでは考えられないような幸せなのだろう。私たちにとっての日常は、この子にとって泣いてしまうほど幸せな、夢のような生活なのだろう。

 

家族の愛も、温かい食事も知らず、痛みを我慢することでこれまで生きてきたのだろう。

 

「フーコはさ、今まで辛いことばっかりだったんでしょ?だったらさ、これからはずっと幸せだよ、きっと。絶対。」

 

「おかわりもあるから、いっぱい食べてね。」

 

何かを察したのか、さっきよりも穏やかにフウカが続ける。

 

涙ながらにもっもっとご飯をほおばるフーコ。保護された野生動物感がすごい。可愛い。

しかし、そんな微笑ましい光景も束の間。

 

「ーーーーコプッう、うえぇ…」

 

さっきまで機嫌よさそうにご飯を食べていたフーコが、突然もどしてしまった。

 

「あっ、う。ご、ごめんなさっ、っぷ、おぇえ…」

 

「大丈夫だから、気にしないで。掃除道具取ってくるから。」

 

「それは私たちに任せてもらおうかしら!」

 

アルが席を立つ。私を含めたみんな食べ終わっていたのは不幸中の幸いだった。

テキパキと吐瀉物の処理をするアル達を横目に、フーコを落ち着かせる。

 

「ほんとに、ごめんなさい…みなさん。とくにフウカさん…」

 

「ちょっと胃がビックリしちゃったんだよきっと。フウカ、フーコも悪気があってやったわけじゃないから…」

 

しかし、どこまでも報われない子だ。美味しいご飯をお腹いっぱい食べる。そんな初歩的な幸せを味わうことすら満足にできないなんて。

 

「大丈夫ですよ、ほんとに気にしてませんから。片付けもやってくれたし。フーコちゃん、次はもっとお腹に優しいもの作ったげるからまた来てね。」

 

「…はい!」

 

「それじゃあそろそろお暇…って言おうとしたけどフーコ。それ着替えた方が良くない?」

 

「確かに。ちょっとさっきの付いちゃってるし…」

 

「せっかく服も買ったしねちょっと早めのお披露目だねー」

 

「わかりました。じゃあ…」ヌギヌギ

 

「ちょっ!フーコ、ここで着替えちゃダメよ!」

 

慌てた様子で止めようとするアル。いつもなら「良いじゃん女しかいないんだし」とでも軽口を叩いているところだが、目の前の光景に言葉を奪われる。

そりゃ確かに、「傷跡がたくさんある」「虐待を受けていた可能性がある」とは聞いていた。でもこれは、こんなのはその域を出ている。

腕には大量の注射痕、脚の一部は融けてケロイドのようになっている。

さらに目を引くのは、その夥しい数の縫合の跡である。

一体この小さな身体に何度メスを入れられたのだろう。私もここに来てそれなりに経つ。この世界では、度々人命がそういう風に扱われることも理解しているつもりだった。

しかしこんな小さな子まで悪い大人に利用されていたなんて考えもしなかった。

ミニスカートを履くのを嫌がったのはこの傷を見られたくなかったからだろう。

どこまでも浅慮な自分に怒りを覚える。

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ食堂を開けなければならないという理由で、食堂を後にする。

いやー貧弱すぎるだろこの身体。なんで飯食っただけでゲロらなきゃいけねぇんだ。確かにいつもよりたくさん食ってしまったがそれはフウカたんの料理が旨すぎるのが悪いのだ。ずるいぞゲヘナ生。

 

便利屋のみんなと別れた帰り道、先生は珍しく一言も話さなかった。疲れてんのかな…

 

気まずい沈黙まみむめもと言った具合に時は過ぎ、シャーレに到着する。

フウカたんに持たせてもらったデザートのカップケーキを冷蔵庫に入れた瞬間、あることに気付く。

 

俺あのボロ服捨てられたら黒服と通信できなくね…?

 

「せんせい…!」

 

帰り道の時からずっと神妙な面持ちの先生の膝に飛びつく。

 

「…あぁごめんフーコ。ちょっとボーっとしてた。どうしたの?」

 

「あの…わたしのふく、ありますか?」

 

「一応持って帰ってきたけど…もう捨てちゃった方が良いと思うよ…」

 

ゲロ臭い服を二重のポリ袋から取り出す先生。ワッペンは…良かった、軽傷だ。

 

「大事なの?その服」

 

「はい、このワッペンが…」

 

やっべ心の声漏れまくりじゃん。怪しまれて通信機能があるのがバレたらまずい…どうする…せや!

 

「おかあさんが、ぬってくれたんです…」

 

「っ!そ、そうだったんだね…じゃあこれだけ剥がして、服は捨てちゃっても大丈夫?」

 

「はい…ごめんなさい、ごめいわくを…」

 

「全然、迷惑なんかじゃないよ。これくらい」

 

もっと頼って良いんだよ。と続けた言葉は、少女の耳に届くことはなかった。




ぬわあぁん長文疲れたもおおん!!でもこれくらいが普通なんですよねハーメルンでは。みんなすげえよ…
しばらくこの程度の曇らせが続きそう。(生ぬるくて)ごめぇんね…
ダラダラ駄文を連ねてるわけじゃなく、色んなフラグ建てたり伏線張ったりしてます。
嘘ですダラダラ駄文連ねましたごめんなさい。
フウカメシうますぎ嘔吐祭りはコメントにてヒントを頂きました。ありがとうございました!
ワッペンを縫い付けたのはベアおばです、くまさんのワッペンです。
『ベア』でかけてるわけですね、座布団一枚。次回はゲーム部のみんなと遊べたらいいなあ…


ネタバレになっちゃうので詳しくは書けないんですが、自分の決意とか思いとか発言とかが最悪の形で自分に帰ってくる瞬間って最高ですよね。

いらないものなーに!?

  • 可愛いフーコアイ片方
  • ちっちゃなフーコハンド片方(非利き手)
  • ひかえめフーコ内臓死なない程度
  • 味覚
  • てちてちフーコ足片方
  • フーコハンド(利き手)
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