「弱いな、お前」
「……言ってはならんことを。」
デュエマに負けた結果、貰った一言に顔をしかめる。トリガーが来なかったんだからしょうがないじゃないか。
マナを殆ど消し飛ばされた以上、仮にニンジャストライクを持っていたとしても意味がなかっただろう。……しかし、このデッキの改善点は分かったし、次に挑む場合は…
「まぁ、あのデュエマの中でお前の人間性は大体わかった。取り敢えずは信用してやる。」
「……ありがとうございます。」
リベンジする時のデッキを考えていたら、あの女性にそう言われた。取り敢えず、信用は得られたようだ。
しかし、本当にデュエマで分かったのだろうか?だがここで余計な事を言う事もないだろうし、お礼だけ言って黙っておくか。
「それと……彼方シンだったか?お前の戸籍はこちらで用意しよう。」
「……良いんですか?」
「いつまでも身元不明なのは可哀想だからな。それに、この街で生きるなら戸籍は必要だ。それくらいはしてやる。」
「ありがとうございます。」
作ってくれるのなら有り難い。俺はこの世界じゃ戸籍がないから、自由に動けない。最悪、浮浪者みたいな生活をするかも知れないと覚悟していたが……てか、デッキ持ったら身元証明出来るんじゃなかったんか?
「シン君!」
と、ここで深雪さんがやって来た。心配そうな顔で見てくるもんだから、俺は大丈夫ですよって落ち着かせるために言ったらまだ心配そうに見つめてくる。
それを見た所長はため息を吐きつつも、深雪さんに近付いていく。
「初めて会った男に対して随分と熱心だな、深雪。そんなに気に入ったか?」
「そ、そういうわけじゃ…!」
「フッ…深雪、そいつのことは任せたぞ?」
「は、はい!」
女性は少し笑うと深雪にシンを任せることにしてその場を去っていく。そして深雪はシンに向き直って、手を伸ばす。
「これから宜しくね、シン君。」
「……宜しくって?」
「これからは私が護衛を引き受けるってこと!男性が一人でいるのは危ないからね!」
「なるほど。そういう事なら…お願いしますね。」
俺は深雪さんに送られてとある場所ヘと向かっている最中、この世界について詳しい事を教えてもらった。デッキがあれば身元証明が出来ると言うことはあのおっさんから聞いているが、それと戸籍はまた別らしい。
戸籍がなければ浮浪者のような扱いになると言われ、あの女性に益々感謝することになった。流石に見知らぬ場所でホームレス生活は嫌すぎる…。
「(いや、マジでありがとうございます…!)」
「さぁ、着いたよ!」
深雪さんと一緒に向かっていた先は……俺の仮住居だ。俺が住む住居はまだ決まっておらず、決まるまではこの仮住居で過ごすことになると言うのだが……見た目は普通の一軒家って感じだ。鍵をもらい、扉を開けて中を見てみると広さも十分ある、2階建ての家だった。深雪さんは狭くてごめんね?と謝っていたが、そんなに狭いか?と疑問に思った。
俺が前に居た世界にある一軒家となんら変わらない広さだし、寧ろこの広さで十分だった。これ以上広くても落ち着かないし…
「暫くはここで過ごしてもらって、準備が出来たら本当の住居に行くからね。」
「全部用意してもらってありがとう御座います、お陰で助かりました。」
「そりゃあ数少ない男性だからね!このくらいの待遇は当たり前だよ!」
当たり前……当たり前か。やっぱり元の世界の常識があるからか、この待遇が当たり前だと言われても違和感を覚えてしまう。
「当たり前って……なんだっけ?」
ここが貞操概念逆転世界だとしても、男ってだけでここまでしてもらうのはあまりにも可笑しいと思ってしまう自分がいる。この世界にとっては普通でも、自分からすれば普通じゃない。
色々と考え込んでしまうが、時間を見れば既に寝るには良い時間になってきた。俺は寝室に向かい、備え付けられていたベッドの上に寝転がると、布団をかぶって眠りについた。
明日になったらまた考えよう…そう思いながら。