プリキュアとおじさん 作:キュアオットセイ
「くたばれ!プリキュア!」
「はぁ、またあなたですか……」
今日も今日とていい年したおじさんが怪物を作り出し、少女達にけしかける。
事案ですね、というよりかはエロ同人のシチュエーションか。どちらにしろ我が身のことと思うと情けなさすぎて涙が出そうになる。
苦節四十年、俺はどこで人生を間違えたのだろうか。
「まぁいいです。今日はましろさんも居ませんし、丁度暇してたのですよ。あっ、終わったらなんかスイーツ奢ってくださいね?」
あの青髪女、完全に舐め腐ってる。くっそ、ここは大人の恐ろしさを……
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「ん〜!この新作のプラペチーノは絶品ですね!」
「クソが」
俺が徹夜して作り出した怪物(上司曰く、ランボーグと言うらしい。語呂こそ良いが俺みたいなファンシーさのカケラも無いおじさんが呼ぶにはちょっときつい)は現在進行形で俺の財布の中身を吸っている眼前の青髪女の正拳突きにより戦闘開始から3秒で粉砕された。
最早一対一の時は変身すらされないのは本格的に心が折れそうになる。
「あっ、ついでなんですけど良かったら宿題を教えてくれませんか?毎回ましろさんに教えを乞うのも少し忍びなくて……」
「やなこった。正直、お前と二人でいると周りの目が痛いんだよ。明らかに子供に手出してる悪い人を見る目で見られる俺の心労も考えろ」
「向けられる何も、悪い人なのはただの事実じゃないですか。いたいけな少女に日々怪物をけしかける趣味の悪いおじさんという事には変わりありません」
自分の体を抱きしめながら青いのはそう戯けた。
「利き手じゃない方の手で握力計破壊する女がいたいけな少女の訳あるかよ、普通にドン引きしたz……おい、謝るからその変身グッズをしまえ」
……即脅しとか、この青いのは騎士の誇りや魔法少女系ヒロインの矜持を投げ捨ててる気がしてならない。
「……プラペチーノもう一つ追加で手を打ちましょう。あと宿題も見て下さい」
「こんのクソアマ、それでもヒーローか」
ないない尽くしの中年の財布をこれ以上集るとか悪趣味が過ぎる。
「知ってますか、ヒーローは悪人になら多少無茶しても良いんですよ。そっちの方が多少反省しますし」
「お前のヒーロー観も随分と捻じ曲がったな」
「貴方のせいじゃないですか」
「それを言われると言い返せんからやめてくれ。……ほれ、とっとと参考書を出せ。ふむ、正の数と負の数ね」
渡されたのは中1の数学の参考書。社会人(笑)であり続ける為にもせめてこれくらいはバシッと教えたい。
「何でわざわざ数にマイナスをつけるのですか?引き算じゃダメな理由が分かりません」
「まぁ焦るな。取り敢えずおじさん今から三十年前にタイムスリップするから、このお金でもう一本プラペチーノ買ってこい。あぁ、ついでにアイスコーヒーも頼む、ミルク少量でお願い」
「任されました!ミルクもシロップも沢山入れてきますね!」
「滅びろ、プリキュア」
多分、逆立ちしても勝てない相手に俺はそう強がった。
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「やっぱりあなた、悪役向いてませんよ。転職とかしたらどうです?ほら、ベビーシッターとか」
「誰がお前んとこのクソガキの面倒なんか見るかよ。今の職場がやりたいことやるにはいい環境なんだ、金は無いがな。上の胡散臭い奴らとの折衝は上司のカバトンさんがやってくれるから楽なもんよ。少し、おならが臭過ぎるのが玉に瑕だが」
結局2時間ほどコイツの面倒を見た俺は、日が暮れ始めた為一応家まで送っている。……別に襲われたところで襲った相手がミンチになるだけの気もするが、こういう多感な時期に化け物、またはそれに準ずる扱いをされた子供が闇落ちするのは漫画でよく見る話である。形だけでも、皆を守るプリキュアとしてじゃなく守られるべき少女として扱う事にはきっと意味はあるのだ。これは立場云々ではなく大人として最低限守る一線である。
「むぅ。やりたい事って確か、自分の作った怪物を意のままに動かす事でしたよね。……正直、その理由はお手上げです。ただ単に作りたいだけなので悪い心を持ってる訳じゃ無い。だから更生の仕様が無いのです」
「自由な創作意欲を悪と断じる場合、後世では断じた側が悪と見做されるケースが多いからな。まぁ、ガキには難しい問題だよ」
「またよく分からない話を。……それはそれとしてお仕事でやってる事は明確な悪事なので、きっちりボッコボコにしますけどね」
青いのはそう言って拳を構えた。だから怖いって。
「まぁ、そっちは俺も給料貰ってる以上はそこはかとなくは頑張らないといけないからなぁ。ガキンチョ誘拐とその護衛の少女に粘着する事が仕事だなんて、俺も落ちるところまで落ちたもんだ。その末に空想の存在を現実にするという叶うはずもない夢が叶ったからどっこいどっこいだが」
「夢と聞くと少し尻込みしちゃいますね。あのランボーグ達も貴方の作品なのでしょう?」
「いつも君達にけしかけている奴らの事か。まぁあれは失敗作だとか実験体だとかだからあまり気にしなくていい。奴らもスペースの問題で壊されたりせずに華々しく戦って散れるんだ。オマケに浄化付きときた。怪物としては本望だろう」
かなり身勝手な美学だが、まぁゴミのように扱うよりはマジと割り切っている。命のようなモノを作る以上、綺麗事だけでは回らない。何処かに線引きが必要なのだ。
「あっ、あれ流石に本気じゃなかったんですね。というか純粋にあなたの作品が気になります。その、見せてもらう事とかって……」
「いや、一創作者としては作品を見たいと言われる事はこれ以上無く嬉しい事だが、俺は一応敵側だし情報機密の観点から言ってもまぁ招き入れる事は無理だろうな」
「イジワル」
「勘弁してくれ。大人は色々と面倒臭いんだ。……ほれ、着いたぞ。さぁ、帰った帰った。正直この家、立地が丘の上だからもう足腰がキツいんだ。とっとと俺も帰らせてく「あっ、ソラちゃんとおじさんだ。また負かされたんだね。……あっ、丁度良かった!今からご夕飯の買い出し行くんだけど、……おじさん荷物持ちやって欲しいな⭐︎」はぁ、クソ共め」
間が悪く家からピンクのが現れ、俺は再び人権を剥奪された。
「諦めてください。いや、報酬としてましろさん手製の夜ご飯が食べれる事を考えれば寧ろラッキーなくらいです」
「滅びろ、プリキュア(2回目)」
結局俺はプリキュアを送る為に登った坂道をプリキュアを増やして再び下り始めるとかいう、意味不明な行動をする羽目になったのだ。
「それでですね、今日飲んだ奢りの新作のプラペチーノが絶品で〜」
「いいなぁ、プラペチーノ。私も居合わせたかったな」
青いのがヒーローにあるまじきジャイアニズムの自慢をすると、ピンクののジトっとした視線がこちらに飛んできた。
「勘弁してくれ、財布が死ぬわ」
「じゃあ、アルバイトとかどうかな?ベビーシッターとか」
コイツらどんなけ俺にガキのお守りをさせたいんだ。
「だから、お前らんとこのガキの面倒は見ねえっつってんだよ」
「えぇ、勿体ないです。エルちゃん可愛いのに。エルちゃんもあなたには懐いてますし。それにプリンセスなんですよ?今のうちに恩とか売って置けばアンダーク帝国が倒産した時も再就職に困りません」
「まだ物心着いてねぇだろ、一才だぞ。アイツが今のお前らと同じ背丈になる前に俺がアイツより小さくなるわ。骨壺という形でな」
正直、メイトとゼリーとエナドリだけの食生活なので持ってあと10年と言った所だろう。創作者は大体不健康なもんである。
「いや、おじさんには長生きしてもらうよ。お金が無いからなんて言い訳はさせない。戦いに負ける度に私達が強制的に健康にするからね」
いつも通り、罵詈雑言を吐いて拒否しようとしたが、ただ飯が食えると考えると存外に悪くないのか?……いや、粘着してる中学生女子に手料理作らせるとか社会的に死にますね。夢が叶っている以上どんな死に方でも割り切るつもりでいるが、豚箱エンドだけは勘弁してほしい。
このクソガキ共と出会って一ヵ月、ある春の日の話であった。