プリキュアとおじさん 作:キュアオットセイ
「今日という今日こそは、お前を倒し自由と休日を手に入れる。行け!ザリガニ!」
「はぁぁぁっせいっ、スカイパンチ!……はい、私の勝ちです!今日は一日一緒にいてください」
「仕事とは言えもうヤダ。ゴミすぎ」
今日も今日とて上司のカバトンさんがカロリー不足で出勤不可能なため、俺が代わりに襲撃ノルマをこなす。
因みに本日は青いの単品である。ある実験の為、その辺の川で釣ったザリガニで作った怪物は正拳突きで粉砕、浄化されていった。相変わらず俺が即席で作った怪物はクソ雑魚である。3秒も持たないのだ。
「今日はショッピングモールに行きましょう!夏物の服を買いたいんです。あっ、心配しないで下さい。流石に服は自分で買いますよ」
「荷物持ちをさせられた上、飯代ぶんどられる事には何も変わりはないんだが?」
そしてこのザマである。ガキンチョ共に妙に懐かれた……否、これは舐められているだけだな。兎に角、最近はコイツらから俺が敵であるという認識が消えつつあるのだ。マジで俺が本腰入れたら破滅まっしぐらである(たぶん)。やる理由が無いからやんないけど。
俺は青いのに尋常じゃない力で引っ張られていきながらなんとなしにそう心配した。
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その後の顛末はまぁ、特筆するべき事は無い。いつものノリで一日中振り回された果てに、俺は虹ヶ丘家に行くためのクソみたいな坂を登っていた。あぁ、全身が重い。軽くなったのは財布だけである。
「あっ、ソラちゃんとおじさんだ、おかえり。おじさんもご夕飯食べていってね」
「……頻繁にタダ飯にありつけるのは有難いし感謝するが、その……親御さんの許可とかはちゃんと取ってるのか?俺はまだ捕まりたくないぞ」
俺は虹ヶ丘家に頻繁に来訪しているが、保護者のヨヨとかいう婆さんの認知能力が低いのだろうか?何故か一切お咎め無しなのである。俺がコイツらの親だったら俺みたいな奴は即通報するので正直、気が気じゃ無い。
「大丈夫!おばあちゃんの許可は毎回ちゃんととってるから」
……それじゃ信用できん!と喉元まで出た言葉を何とか引っ込める。他所の家庭のパワーバランスや人間関係に首を突っ込む程、野暮な事は無いのだ。
「……出来れば、お父さんとお母さんの許可も取れよ。きっと取れないと思うけど。異世界から来たとかいう青いのも何らかの交信手段があるならキチンと現状をご両親に伝えておけ。多分こっぴどく怒られるから」
端的に言って俺みたいな胡散臭い貧乏中年は思春期女子と一緒にいるだけでスリーアウトである。アウトの内訳は俺の年齢とガキ共の年齢、そして俺に社会的信用が無い点の三つだ。
「好きな人と仲良くなる事の何が悪いことなんですか!」
「そ、ソラちゃん……」
「……お前それ本当に人前で言うなよ?別にそういう意図であろうがなかろうがマジで俺が捕まるから」
特に未成年は判断能力が未発達だと決めつけられる事の多い世の中だ。しっかり見られる事なく騙されていると判断されるだろう。
というか青いのはまだ恋愛と友愛の境界線を理解してないだろ。殺し愛は知ってそうだが。
「いや、そんな横暴は絶対にさせないよ」
次はピンクいのがそう言った。
……マジでプリキュアやってるノリで否定しないで欲しい。こういう事柄に関しては正しそうな雰囲気が強くなるほど、狂気の度合いが上がっていくのである。親が見たら卒倒モノだ。
「だから、そもそも俺は敵なのよ。客観的に見たらお前らまじで取り入られてるだけだから」
「エルちゃんを抱きながら言っても説得力0ですよ」
「えるぅ〜♪」
「……コイツも物好きな赤子よな。揺籠ごとすっ飛んでくるとか」
虹ヶ丘家に来ると毎回いつのまにか腕に収まっているエルとかいう赤子をじっと観察してみる。俺を雇っているアンダーク帝国とかいう組織がどういう訳でコイツを狙っているのかは末端の俺には窺い知れない事だが……見るからに何か力を持っているのは素人目にも分かる。まぁ、異世界同士の対立など知った事では無いので現状は守ろうとも奪おうとも思わないが。
「悪い人じゃ無いもんねー、エルちゃん。あっ、今日の献立はカレーだよ」
「やったぁ!チンするだけであんな美味しい物が出来るなんて、本当に異世界は不思議で一杯です!」
……レトルトかよ。
「あなた、今日は泊まって行きなさい。少し話したい事があるの」
そんなこんなでガヤガヤしてると、今まで沈黙を保っていたヨヨさんが現れてこちらにそう告げた。
「はぁ、それは泊まるほど時間の掛かる話なのでしょうか?この子達の教育にも悪いでしょう」
「パトロン契約の話、と言えば分かるかしら?既にあちら側のパトロンがついているみたいだけど……この子達との様子を見るに貴方は創るだけで後は中立みたいだし。創作の可能性を広げるという意味でも悪い話では無いと思うけど」
……作風、スタンスまで察せられている辺り冗談じゃないっぽいな。だとすれば確かに夜通しの話になるだろう。
「……そうですね、スカイランド産の素材やそれを採取する機会なんかが有れば考えないでも無いです。大方、勢力の均衡を調整する意味合いもあるのでしょうが……まぁ、俺は創りたいものを創らせてくれるなら細かいことは気にしません。後の話は長くなりそうなので夜に詰めましょうか」
「パトロン?契約?」
「んぁ、ガキンチョには関係ない話だ。まぁ気にするな」
青いのがそう頭にハテナを浮かべるが、適当言って話を流す。
「それより今日ウチに泊まるんですか?やった!いっぱいお話しよ?」
「いや、今晩はヨヨさんとの話にかかりきりになるだろうから……というか夜におじさんに近づくもんじゃありません。……マジで将来変な男に引っかかりそうだな」
「大丈夫です。ましろさんに近づく悪い人は私が全員ぶっ飛ばします」
「俺を見落としてる時点で節穴なんだよなぁ」
……その点、ヨヨさんは本当に抜かりが無いな。中立を謳う俺の潜在的な危うさを正しく認識して契約で縛りにきた。パトロンにするならこういう相手が理想である。
まぁ、商談だと割り切って虹ヶ丘家にお邪魔する事になってからは話は早かった。レトルトカレー食わされてた後、ガキ共が寝静まるのをヨヨさんと共に待つ。ただまぁ、間が悪いというか何というか事件は起こってしまった。
「怪しい人を捕まえました!」
時計の短針が10に差し掛かかろうとした頃、庭から青いのの叫び声が聞こえた。……青いのの勘違いなだけの気もするが、タイミングがタイミングだ。そう考えて、一応意識を切り替えているとヨヨさんに止められた。……この人の言葉には妙な説得力があるな。雰囲気がある人というのはこういう人のことを言うのだろう。
少し気を緩ませながら、容疑者(笑)の顔でも拝みに行こうと庭に出る。どんなオチかと期待しながら彼女を探したが……奴が窓から飛び出してまでして捕まえ締め上げていたのはただの小鳥だった。
───r.i.p.駒鳥。イギリスの古い歌になぞらえるなら俺は死装束を作る甲虫になろうか。喪主のハトがヨヨさん。ピンクいのは蠅役。そして犯人の雀は無論、青いのである。残念ながら役が九人程足りないが。
……はぁ、あまりにもアホくさすぎて次の作品の構想が頭の中に降って来たな。そういう意味では青いのが絞め殺した駒鳥だか椋鳥だかに感謝してやっても良い。お礼はそうだな、フライドチキンとかどうだろうか。
「
「か、勝手に殺さないで下さい!」
あっ、鳥が喋った。B級映画かな?
追記 文章が不自然だった部分を修正しました。