プリキュアとおじさん    作:キュアオットセイ

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プリキュアVSシャークネード 勝手に戦え!

 

 

 

 サメ映画。

 

 

 それは『JAWS(ジョーズ)』の興行収入を超える事以外ならなんでも出来る可能性の塊。(最近遂に超えた作品が出たらしい。少し寂しい)

 

 空を飛んだって、頭が増えたって、蛸足が生えたって許されるのだ。

 

「なっ、さ、鮫が、飛んでる!航空力学的に、いや物理学的にあり得ない!」

 

「はっ、幻想の世界の住人なのに、物理に囚われるとかお笑い草だぞ」

 

 すごく真面目な突っ込みをする鳥人間に俺はそう煽り返す。サメ映画は考えたら負けなのだ。

 

 そう、今回使用した作品は俺が酒に酔った勢いで作った作品の『鮫竜巻(シャークネード)』……因みに制作経緯は全く憶えていない。ただ、ある日朝起きたらサメ映画のDVDと沢山のストゼロの空き缶と共に転がっていたのだ。

 

 無論、動作確認は済んでいるので事故とかは無い筈である。……まぁ、強さはカバトンさんが作るランボーグよりもちょい強め、群体といった性質を考えれば奴ら二人では少し苦戦するかもといった具合か。

 

「最後に一つ、条件だけ追加しておこう。お前らはエルちゃんを救出出来たらそれでいいから、コイツらを律儀に殲滅する必要は無い。で、そのエルちゃんは上空300m先から動かす事もないとも言っておこう。無論、安全は保証する」

 

「はい、分かりました!頑張ります!」

 

「うん、分かったよ。それと色々本当にありがとね?」

 

「は、はい!プリンセスに恥じない振る舞いをしてみせます!」

 

 

 全く、返事がよろしくて何よりだ。

 

 

 

「───この空を越える事が出来たならお前たちの勝ちにしてやろう」

 

 

 

 その言葉を皮切りに、人生初のプリキュアとのガチ戦闘が始まった。

 

 まず、青いのとピンクいのが仲良く上空にいる俺目掛けて突っ込んでくる。……お約束の行動と言えばそれまでだが、いざ彼女らの進行方向に立ってみるとその速度の速さに驚かされる。今までカバトンさんやランボーグ達はこんな子達の相手にしていたのか。

 

「くっ……」

 

「きゃっ」

 

 鮫を二匹、青いのとピンクいののそれぞれにタックルさせてなんとか弾き飛ばした。噛みつかせないあたりはゆとり極まれりだ。

 

「あーお前ら、帰ったらちゃんと肌のケアをしとけよ。何せコイツらは鮫肌だ、鮫だからな。早く終わらせないとガサガサ肌だぞ?」

 

「なっ……」

 

 ピンクいのが割とショックな感じなのはウケるな。青いのが特に気にして無いとこも含めると殊更に面白い。やはり煽ってみるものである。

 

「速攻で終わらせます。プリズム、さっきの連携を!」

 

「分かったよ、スカイ!」

 

 あぁ、円盤ランボーグに接近する為に使ったあの人力多段ブーストか。二人同時に飛び、速度が0になった段階で片方を踏み台にして更に高く飛翔する。成る程、これを考えたであろうあげはさんは存外に漫画脳だな。まぁ、一回は妨害せずに発動はさせてみようか。何事も経験である。

 

「「ジャンプ!!」」

 

 飛ぶときにジャンプと言う奴らのあまりの直感的な言動に少し笑ってしまいそうになりながらも、集中を切らさないように奴らを注視する。

 

「スカイ!」

 

「お願いします!はぁぁっ!」

 

 彼女らは無事、多段ジャンプを成功させた。

 

 青いのが、速度を取り戻してグングンとこちらに突っ込んでくる。

 

「おー、本当に曲芸じみてるな。が、それ故に……」

 

 

 スポッ。

 

 

 そんな擬音を幻聴するほどその出来事はあっさりおこった。

 

 青いのが進行方向にて口を開けて待機させていたサメの口内に突っ込んで消えたのだ。無論、わざとである。

 

「す、スカイが、スカイがサメに食べられちゃった!!」

 

「おー、ホールインワンとはまさにこういうことを言うんだろうな。南無三」

 

「おじさん、そんな事言ってないでスカイを!」

 

 ピンクいのが顔面を蒼白にしながら、そう焦るのをゲラゲラ笑いながら聞き流す。

 

「───それに、お前も人の心配してる場合か?」

 

「えっ、なn」

 

 空が、しん、と無音になる。

 

 ピンクいのも無事落下待ちしていたサメの口内に消えたのだ。地面を背にして落ちていた弊害である。

 

「さて、少年。間抜け二人はサメの餌になったがどうする?鳥人間コンテストをしたいというなら付き合うが」 

 

「僕の夢を馬鹿にしないでください!それによくもソラさんとましろさんを……!」

 

「うーん、やっぱ君真面目すぎるな。空を飛ぶなんて所業は頭のネジが外れてないと出来ないんだぞ?みろ、あのサメ達を。彼らの体に飛ぶ機能なんて一ミリも無い癖に自身が飛べる事を全く疑いもせず、アホ面晒して餌を探しているぞ」

 

 その辺の悪役よろしく、態々油断たっぷりに地面に降り立って鳥人間に近づく。割とお約束は守る方なんだ、俺は。

 

「真面目で何が悪い!貴方と違ってソラさんとましろさんは僕の夢を笑わなかった!貴方の言葉に耳を貸す事は無い!」

 

 そう言いながら鳥人間は拳を飛ばしてきた。無論、中年の体に避けられる訳がない。顔面クリーンヒットである。

 

「ぐぇっ、お前羽より拳の方が使い慣れてるしパワーもあるじゃねえか。はっ、いっそそっちで羽ばたいてみたらどうだ」

 

 そう言いながら、竜巻に乗って距離を取る。まぁ、俺が考えるヒントは与えた。あとは本人次第である。

 

「くっ、また空に……、僕が飛べれば、ソラさんやましろさんは……」

 

 まぁ、盛大に悩め。……むっ、何故か高度が上がらん。あぁ、エルちゃんか。大体意図は分かった。

 

「……高度を取れていない?エルちゃんが止めてくれているのか!」

 

「おのれおのれ!小癪なガキめ!」

 

 折角だしここぞとばかりに悪役ロールをかます。これは純粋に俺がやってみたいだけである。上空でやっても誰も聞いてくれないしね。聞いてくれそうな奴は二人とも胃袋である。

 

「チャンスは今しかない、目測10m、飛んでみせる!はぁぁぁぁっ!」

 

 すると鳥人間は律儀に鳥形態になって羽ばたき始めた。……だからそうじゃねえよ。よしんば10m飛んで俺のとこまで来れたとしてその後はどうするつもりなのだろうか。……まぁ、野暮が過ぎるか。

 

 ……そろそろ徹夜の疲れが限界なので、大出血サービスだ。

 

「なっ、クソガキの高度が下がってくる!おのれ小癪な!」

 

「エルちゃん!」

 

 揺籠がサメの群れを回避しながら真っ直ぐこっちに突っ込んでくる。下手なサメ映画なんかよりも良質なアクションシーンだな。エルちゃんは知ってか知らずかやたらとそれっぽい挙動してくれてるし。

 

 無論、高度下げは全て自演である。300m上空からの帰還を赤子に一人でやらせる程、俺は頭のネジが外れていないのだ。

 

「えるぅぅぅ」

 

「はっ、無駄な事を……!そのまま一人で逃げられただろうに、コイツを庇って詰みだな」

 

「やめろ……エルちゃんを、笑うな───!」

 

 暫し三文芝居を続けると、鳥人間が何やらカッコ良さげな事を言って発光しだした。

 

「僕に最期が訪れたとして、その時に思い浮かべるのはボクを笑った奴らの顔じゃない……プリンセス、僕を守ろうとしてくれたあなたの顔です」

 

 

 人が人に対して抱く、最も優しい心の具現化は

 

 透き通った宝石として眩く輝き

 

 世にかかる蜃気楼(ミラージュ)は晴れ渡るのだ

 

 

「だけど、それは今じゃない!だって、これからは僕がいってしまった彼女らの代わりにあなたを守るんだから!」

 

 少年は、遺志を継ぐようにこちらに向き直った。 

 

 その眼差しには強い意思が宿っている。

 

「そうか」

 

 普段なら罵詈雑言が反射的に浮かんでくる俺も野暮なことを言えず、ただその自分には無い輝きを直視する。

 

 あぁ、純粋な在り方とは何故、これ程までに眩いのだろうか。

 

「────」

 

 その儀式は、王権に委ねられた空の意志(スカイストーン)を戦士に託すことにより完成する。

 

 赤子の無垢な決断により、それは成った。

 

「プリンセス・エル。貴方の騎士(ナイト)が参ります!」

 

 輝きは最高潮に達して、彼はプリキュアに変じたたのだ。

 

「……良いものが見れたな、ホント。俺としてはもう戦う気分じゃ無いんだが困難を乗り越えて力を振るう先が居ないのも寂しいだろう。少し、相手をしようか」

 

「何をふざけたことを言ってるんです、貴方は二人を……!!」

 

 

 

 

「その、少年?ましろんとソラちゃんなら……」

 

 ふと、鳥人間にあげはさんが気まずそうに後ろからそう声をかけた。

 

「「あっ、なんかすいません」」

 

「えっ、ソラさん?!ましろさん?!」

 

 鳥人間は心底驚いた様子だ。本当に動物は純粋が過ぎるな。

 

「鳥頭め、そもそもこの戦い自体が半分サービスなのを忘れたのか。俺が人を殺す訳無いだろ。雰囲気に流されすぎなんだよ」

 

「じゃあ、さっきまでのワルっぽい言動は……!!」

 

「全部、おじさんの芝居だよ」

 

「口の悪さだけは若干素ですけど」

 

「えぇ……なんですか、それは」

 

 正に、梯子を外されたと言った感じである。

 

「───ただ、別に条件は何も変わっちゃいない。俺はお前らを害する気はさらさら無いが、お前たちが敗北した結果エルちゃんがアンダーク帝国に連れて行かれようとリスクこそあるが、まぁそれはそれで良い人間だからな」

 

 契約は契約、約束は約束である。俺はコイツらの事は別に嫌いじゃないが、それはそれとしてカバトンさんへの恩義やアンダーク帝国への義務もある。考慮した結果の今回の処置だ。これ以上の慈悲は無い。

 

「でも、ツバサくんが飛べるようになるのを……」

 

「あぁ、それは同じ夢追い人としてのお節介だ。お前も分かるだろ?"ソラ"」

 

 そう言うと青いのは、ハッとして押し黙ってしまった。

 

「じゃあ、試合再開といこうか。サメは空気を読めるんだ。死亡フラグ立てた奴を真っ先に殺すぐらいにはね。一人増えたからって油断してると、次は本当にお陀仏だぞ?」

 

 まぁ、覚醒とか言う勝ち確フラグがあるのは努めてスルーする。

 

 

 

 ───俺のそんな雑多な思考の隙を突いて、キュアウィングが飛翔した。

 

 青いのやピンクいのが見せた『跳ぶ』行為ではなく、完全な飛行、即ち『翔ぶ』という能力をプリキュアとなった彼は備えていたのだ。

 

 だがこちらも見ているだけでは無い。

 

 不遜にも、愚かにも、自分達の嵐の領域に侵入してきた鳥を食いちぎらんと言わんはわかりにサメが彼に群がる。

 

 しかしそこは生物として飛ぶ機能を有しているかどうかの違いが出た。流石にサメ対鳥では身体に刻まれた本能のレベル差により、後者に軍配が上がるのだ。

 

 間抜けな海産物共を振り切り、彼にしてみれば無力であろう俺をスルーしてそのままエルちゃんへと一直線。

 

 判断も非常に冴えている……が

 

「まだ若いな」

 

「なっ……!」

 

 俺は竜巻の風を纏いながらウィングの手首を掴み、そのまま進路をずらす。

 

 唐突だがプリキュアになっても、増幅されない致命的なモノがひとつだけあることが分かっている。

 

 それは"質量"

 

 どれほど力が強くなっても、どれほど身体が頑丈になってもこれだけは変わらない。……美少女戦士の体重が重い訳無いとでも言いたげなこの強化の指針性は、しかしてこういう場面で脆弱性を露呈させるのだ。

 

「航空力学を学んだ少年なら分かるだろう。質量という物理量は動かしにくさを定義するもの。そして残念な事にプリキュアに変身しても質量は強化されないんだ」

 

「……僕は簡単にプリンセスまでの航路を逸らされてしまう、という事ですね」

 

「その通r、……青いの、少しは空気を読め」

 

「ソラさん!?」

 

 俺の意識が鳥人間に向いている隙を突いて、エルちゃん目掛けて青いのが跳んできたのだ。作戦としては良いが不意を突くならもっとよく狙うべきだったな。気づいてから難なくサメで防げる程度じゃ、この先きついだろう。

 

 青いのをサメに咥えさせて地面に送り返す。ピンクいのも無事落下狩りに遭っていたのでこれでまた暫くは一体一だ。

 

「じゃあ続きだ。どうする、少年」

 

 その答えは既に行動で示されていた。

 

「成る程、速度か。それならば運動エネルギーを効率よく増幅させる事が出来る。こちらが進路を捻じ曲げる為のエネルギー量が増えてしまうな」

 

 運動エネルギーの導出は1/2mv^2、つまり速度が速くなれば指数関数的にエネルギーが増加していく。加えてここは三次元的な機動が可能な空の上、一度でも速度を持たれてしまったら減速させるのは至難の業だろう。

 

 つまり加速させない事が肝要か。

 

「ドッグファイトといこうじゃないか、少年。相手はサメだがな」

 

 ───決闘は最終盤、最後の航空戦へと縺れ込む

 

 

 

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