プリキュアとおじさん    作:キュアオットセイ

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名称不明焼き

 

 

「いーもん! いーもん! もういーもん! 今日は、このへーんで、許してやる!」

 

 カバトン氏の寒いを通り越して幼稚なギャグと共に焼き「芋」型のランボーグが撃破された。相変わらず、この人?は強さに波があるな。この前の飛行型ランボーグを作った腕前は何処にいってしまったのだろう。

 

 そう、我々は今日も今日とて日課のプリキュア襲撃中。まぁカバトン氏のランボーグがやられたのでそろそろ店仕舞いである。

 

「いいや、まだだ!大判焼き、プリキュア共を叩き潰せ!」

 

「せいっ、スカイパンチ!」

 

「あぁ、俺の回転焼きが!」

 

 鮫竜巻で上がってしまった警戒度を下げるために今日も今日とてふざけ倒す。本日の俺のランボーグは呼称の数が多すぎて最早名称不明である例の焼き菓子である。

 

「もう、おじさん!さっきから何なんです!おやきだとか御座候だとか今川焼きだとか、呼ぶたびに名前が変わってます!結局今やっつけた奴の名前はなんて言うんですか!」

 

「それを言っちゃ戦争だよ、青いの。因みにピンクいのはなんて呼んでるんだ?」

 

「……えっと、私はあじまんって呼んでるよ」

 

「ぶはっ、くくっ、あじまん、あじまんかぁ。レアだな、お前。まぁいいや、いけ、あじまん!プリキュア共を叩き潰せ!」

 

「あぁ、また蘇りました!これで何回目ですか!」

 

 鳥人間がそう紛糾する。まぁ、コイツは名前の数だけ蘇るからな。それ以外の機能は何も無いけど。

 

 似たようなやり取りを後2、3回繰り返したのちにとうとう俺の語彙が尽きて───

 

「せいっ、スカイパンチ!」

 

「あぁっ、俺の焼き一番が!……何だ、お前ら?そんな疑うような目付きを向けて。どうしたか?」

 

「今度こそ、もう、ありませんよね?」

 

「終わった、の?」

 

「僕たちは、やり切ったのか?」

 

「んぁ、そうだとも。いつも通りなんか要求するならしたまえ。……このびっくり焼きを倒した後でn「スカイパンチ!」」

 

 こうしてキュアスカイの正義の鉄拳により、俺という悪は滅んだのだ。

 

 残った二重焼きは三人に惨殺されたらしい。

 

 

 

 ▲

 

 

 

「で、結局この前の分の要求は山登りか。年寄りにハードな要求すんな、お前ら」

 

「おっ、ましろん誑かしたおじさんも居るじゃん。今日はもう一台車出してくれてありがと〜」

 

「いや、まぁあげはさんの車に比べたらしょぼくれてるがな。レンタカーだし。乗員はまぁ、性別で分けるのが良いだろう。……おい、鳥人間、残念ながらお前は中年とランデブーだ」

 

 明くる日の朝、俺はクソガキ共に呼びつけられ俺は山登りに同行する事になった。

 

 聖あげはとの関係値は正直よく分からない。クソガキ扱いする訳にもいかず、かと言って大人として扱うというのも何か違う。大学生(厳密には彼女は専門学校生だが)とはそんな年齢なのだ。

 

 これが出会った時はクソガキだったとかならまだやりようがあるのだが、……生憎、俺はそんな物語の主人公のような良質な人間関係など持ち合わせて居ない。普通にプリキュアに敵対する変質者として出会っている。一時期はピンクいのを誑かした云々言っていたが、やっても無い事案で捕まりたく無いと説得したらなんとか言動を収めてくれた。

 

「殊更に面倒臭そうな顔してるな、山は嫌いか?鳥人間」

 

 ペーパードライバー(最近やっと免許取れた)の俺は、覚束ない動作でエンジンをかけつつ鳥の搭乗を確認した。

 

「いや、山じゃなくてあげはさんが……、朝から勢いが凄くて困ってるんです。というのも───」

 

 その後聞いた話によると、距離間の詰め方や会話のトーン、内容で年下男子に対する年上女性特有の何処か過剰に子供扱いするような接され方に彼は憤っていた。これで喜ぶ感性が無いから、コイツは女性からのウケが良いのだろう。……俺は中一くらいの時は既に性欲に塗れていたからな。こういう経験は実感として理解し難い。

 

「なんだ、あの程度でか?俺はピンクいのに懐かれた、というか舐められた後にエゲツない勢いで敵対されたから好意的な反応を貰えるだけ羨ましいというものだよ」

 

 幼馴染が変な男(俺)に騙されていたのだ。当然の反応である。残念な事に今はもう警戒を解かれてしまった所か、ピンクいのとセットで飯を奢らされたりする。

 

「敵対?おじさんはいい人じゃないですか!」

 

「あのな、お前らが真面目にそう反応すればする程、俺の立場が悪くなるんだ。独身中年なんて、馬鹿にするくらいが丁度いいのさ」

 

 まぁ、側から見れば美少女と美少年を騙すなり洗脳するなりして連れ回している変態だからな。

 

「それでも、納得いきません。おじさんは僕の夢を応援してくれた恩人で、尊敬すべき人なのに、誰も気付いてくれないなんで……」

 

 夢を応援するとかいう表現が、俺の胡散臭さをMAXにする要因なのだが言っても理解できないだろうし、努めて黙っておく。

 

「まぁ、その内分かるようになるさ。今は自由に怒り、喜び、悲しむといい。それは若者だけの特権だ」

 

 それから暫くは、彼の話に耳を傾けながら安全運転で山を目指す。

 

 しかし、異世界の異種族の話はやはり興味深いな。鳥としての価値観と人間としての価値観が違和感なく地続きになっているとは不思議な物である。

 

 暫くすると、車は山間の道に入り、目的地が近づいてきたのが景色で分かるようになってきた。

 

 季節は春の終わり、陽春と言った具合に暖かいというより暑い気候は夏がもう見え隠れしている様である。

 

 最も、標高が上がるにつれ車に付いている温度計の数字は少しずつ下がっていったので暑すぎるという事は無いだろう。

 

「という訳で到着だ。クソガキ共、じゃあ俺は麓で待ってるから勝手に登「行きますよ、おじさん!」おい待て、ふざけんな、青いの!」

 

 ズルズルと引っ張られて登山道に引っ張られていく。いつもは運動なんてしたがらないピンクいのにも背中を押されてる辺り、コイツら余程俺の足腰を破壊したいのだろうか。……帰りの運転が億劫である。あっ、鳥人間とあげはさんはエルを連れて別方向の傾斜が緩やかな登山道に行った。俺もそっちが良かった。

 

 とは言え、コイツらに今日は手持ちが居ない俺が勝てる訳も無いので(別に居ても勝てない)従わざるを得ない。プリキュアとクソ雑魚おじさんの力の差は絶対的なのだ。

 

 なけなしの力を振り絞り、山を登り始める。

 

「おじさん!この一面に広がる花はなんていうんですか?」

 

「雛菊。花言葉はいい意味ばかりだが、『ハムレット』というイギリスの有名著作においては不吉の象徴になっていたりもする」

 

「おじさん!こっちの黄色い花は?」

 

「菜の花。この花の種は油の原料になったりする。油を売るという慣用句の語源となった江戸時代の油商人が売っていたのも菜種油だ」

 

「……じゃあ、おじさん。この隅っこに生えてる草はなんていうの?」

 

「トリカブト。食ったら死ぬぞ。サスペンスでは定番の毒草だな。似たような植物で食用のヨモギとの見分け方は葉の手触りと花の色だ」

 

「じゃあ、この木は……」

 

「このキノコは……」

 

「あっ、あの蝶は……」

 

 ───────────

 

 ─────

 

 ──

 

「ぜぇ、ぜぇ、オメーら、いい加減にしろ。俺は女児が使うようなお喋り用のオモチャじゃねぇぞ」

 

 頭をぶん回しながら、口を回して、足も動かし続けた俺は疲れ果てたのだ。

 

「いや、つい……聞いたら何でもエピソード付きで帰ってくるから面白くなっちゃって」

 

「というか話してて楽しすぎる相手なのが悪いんですよ。……しょうがないですね。少し、休みましょうか。はい、おじさんお茶です!」

 

 そう言いながら自分の水筒を差し出してくる青いの。ううむ、これは少し言っとかなければ。

 

「いや、自前で用意してるからいい。というかこれは純粋なアドバイスだがな、青いのは日本人男性との距離感をキチンと覚えた方がいい。特に中学生男子なんて消しゴム拾っただけで惚れられるからな、水筒なんか差し出したら100%勘違いされるぞ」

 

 まぁ、見た目も良いしな。俺だけのラブコメが始まったと勘違いするアホもダース単位で湧きそうなものだ。

 

「えっと、勘違いというのは、その……」

 

「あぁ、惚れてラブレターや告白だったらまだ良いほうだ。下手したら拗らせたストーカーだとかになったりするからマジで好感度管理はしっかりしておけ。まぁ、文化圏が違うから人との距離感が違うのは理解するが郷に入っては郷に従えともいうだろう?アレは周りに強制する為の諺ではなく自衛の為の諺だと俺は考えている」

 

「ちょっと、分かるかも。私も結構知らない男の子から告白されたり、お手紙貰ったりしたし」

 

「ましろさん?!初めて聞きましたよ、その話!」

 

 ピンクいのは(俺に以外)性格が良すぎるので大体イメージ通りである。コイツはそのリスク分かった上でそれでも助けちゃうから、まぁ救いようが無いが。

 

「まぁ兎に角、二人ともあんなド派手なプリキュア衣装を着こなせるくらいには見てくれだけは良いんだから、キチンと自衛しとけ。プリキュアが男性関係で不祥事なんて俺聞きたくないぞ。一気に夢が無くなる」

 

 コイツら、今は親と暮らしてないから微妙に知識が欠落してる部分が多々あるのだ。やはり親は偉大である。

 

「……じゃあ、はい、おじさん、お茶です!」

 

「それじゃあ、私はお弁当分けてあげるね、おじさん」

 

「……オメーら今の話聞いてたか?」

  

「"聞いてましたよ?"その上で改めて、です」

 

「うん。キチンと聞いて、"それに則って"行動してるよ」

 

 ……豚箱行きはもう近いな。

 

 

 

 

 





追記・登山開始地点にて原作通り登山道を二手に別れた事を描写し忘れていたので軽く修正しました。主人公はソラとましろに引っ張られて言ったのでツバサとあげはとエルは概ね原作通り動いています(これは次話にて描写予定)
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