プリキュアとおじさん    作:キュアオットセイ

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決闘

 

 

「来たか……なのネン」

 

「約束は守ります。カバトンとおじさんこそ、約束は覚えていますよね?」

 

「あぁ、反故になんてしないさ。君ら全員と我々が決闘し、我々が勝てばプリンセスをこちらに引き渡す、負ければカバトンには不可侵、俺には隷属という要求だな」

 

「隷属なんかじゃなくて味方になって欲しいだけだよ、おじさん。決闘に負けたら絶対に屁理屈こねないでね」

 

「そうですよ、こっちはあげはさんに船まで手配してもらったんです。いつもの適当さは無しですよ」

 

「そっちこそ、プリンセスを引き渡す時にあまりみっともないことしてくれるなよ。何せお前ら、負けるのは初めてなんだ。普段負けない相手に対して負けを受け入れるというのは、存外に難しいぞ?」

 

 ある無人島にて、俺はカバトンと共に到着したプリキュア達と相対する。

 

 さながら巌流島と言ったところか、この場合負けてしまうのは待っている我々の方になってしまうがそこはそれ、"物語には物語"だ。きちんと対策をこうじてある。

 

 無人島を選んだ理由は単に戦闘の規模が尋常じゃないものになるという予想と、……可能性はまず無いし、性質上出来ないとは思うが、万が一プリキュアが逃亡しようとした時の対策を打ち易くする為である。

 

 時は逢魔時、黄金色の海が眩い程美しく黄泉へ誘われているような錯覚を感じるくらいだ。死に場所としてはこれ以上無いと世界に言われているようだが俺はここでくたばる気も無いし、相手を殺す気もさらさら無い。

 

 "万全なプリキュアを倒し切ることなく、負けを認めさせる"

 

 至上の難題だが、乗り越えねば我々に後は無い。

 

「では、カバトンさん」

 

「───分かったのネン。始めるぞ、プリキュア!」

 

 

 

 ▲

 

 

 

 決闘を始める前に、少し事のあらましを語っておこう。

 

 それは今から時を3日ほど遡った日のこと、俺はカバトンさんの危機的状況をおでん屋の屋台にて聞いていた。

 

「そうですか、やはりもう後がないと」

 

「そうなのネン。アンダーク帝国ではヨエエ奴は要らない扱いされるのネン。次しくじったら……まぁ、消されるのネン」

 

 俺の直属の上司、カバトンは追い詰められていた。

 

 度重なるプリキュアへの敗北により、気の短い上層部にリストラされそうになっていたのだ。無論、この世からである。

 

「それで、青いのと単身決闘を?」

 

「そうなのネン、一対一ならパワーがある俺様に分があるのネン。負ける訳が無い」

 

「……俺は貴方に恩がある、貴方にそんな気は無かったかもしれないが俺の夢を叶えられた一因は他ならぬ貴方だ。決闘、俺が手伝います」

 

「……いや、悪いがオマエ、ヨエエのネン。気遣いは嬉しいけど命がかかってる時に気を遣ってる余裕ねえのネン。それにオマエが入ると向こうも数が増えるのネン」

 

 カバトンさんは、存外に冷静な判断能力を持っていた。調子に乗ったり、追い詰められている時以外はこの人は冷静でそこそこ理知的なのだ。まぁ、プリキュアとの戦闘時は極度の優勢か劣勢しか無いのでガキ共は詰めの甘いヤツと認識しているだろうが。

 

「……仰る通り、俺本体や"仕事用"のランボーグ達はクソ雑魚です。ですが俺の心根はあくまで創作者、今回個人として手を貸すのはこの創作者の側面です。俺としては自分で力を行使してあまり自身の力をひけらかす様な事はしたくないのですが、命がかかっているとなれば話は別。ある情報提供者により俺にもあの赤子の機能の一つが分かりましたし、それが厄ネタ臭かったのでいい機会です」

 

 新しく出来たパトロンの話を思い出しながら俺はそう答えた。

 

「……オメェが強かったとしても、それで評価されるのはオマエだけなのネン。結局、俺の失敗は消えないから……ヤバイまんまなのネン」

 

「いや、俺はあくまでも力を貸すだけ。メインは貴方ですからその心配は杞憂ですよ。ここはどうか俺に恩を返させてください。無論、方針には口出しはしません。正々堂々がお望みならそのようにしますし、推奨はしませんが闇討ちしたいならそっちのプランも出せます。では、決戦の詳細を詰めましょうか」

 

 

 

 ▲

 

 

「ルールは私達3人と貴方達二人の集団戦。どちらかが負けを認めるか意識が無くなったらあげはさんが判定を下す。……私達にかなり有利なような気がするんですけど本当にいいんですね?」

 

 青いのが律儀に再三そう確認してくる。他の三人も何処か申し訳なさそうだ。ピンクいのはほんのりだが、これが罠である可能性を疑ってるな。まぁ、猜疑心溢れる現代人と素朴な異世界人の差だな。

 

「あぁ、頭数はランボーグで増やせるからな。あと、睡眠効果のある何かしらで意識を断つ様な事もしないから安心してくれ。さぁ、日が暮れる前にちゃっちゃと始めよう」

 

 そう言って俺は彼女らに変身を促す。迷っていたのも数瞬だったようで、彼女らは光を発し、覚悟と共にプリキュア装束に身を包んだ。

 

「───行くのネン!」 

 

 カバトンの力強い叫び声と共に、互いの未来を賭けた決闘が幕を開けた。

 

 迷いなく真っ直ぐに、カバトンはプリキュアに突っ込んでいく。

 

 俺も雑魚を数体召喚し、カバトンを援護する。

 

 序盤はアンダークエネルギーをほぼ用いない肉弾戦になるだろう。

 

 勿論、アンダークエネルギーを用いない、即ち手を抜いて戦う事には理由がある。

 

 ……対プリキュア戦に置いて最も注意すべき事は、序盤に全力を出さない事、切り札を一気に切らない事の2点であると俺は結論付けた。

 

 彼女らの戦闘サイクルは苦戦→気付きや助け→覚醒・大技の流れであり、逆に言えば最初の戦闘においては強さに関係なく彼女らは苦戦する。つまり最初から切り札を使う意味が全く無いのだ。

 

「ぐっ、強い……覚悟が伝わって来ます。でも、私には応援してくれる人何いる。この声援がある限り、ヒーローは負けません!」

 

 ……フェイズが二段階目に切り替わったな。一転してカバトン氏が押され始めた。あと30秒ほどで大技が飛んでくるだろう。予定通り、このタイミングで一度目の切り札を使う事にしよう。

 

「プリキュア!アップドラフトシャイニング!」

 

 おお、最初から合体技が飛んできた。これはこっちに益々運が回っているな。

 

 カバトンさんに合図を送り、此方も作品を用意した。

 

 さぁ、ここからが本番だ。

 

「カモン!アンダークエナジー!」

 

 ───知っての通り、アンダークエナジーは形ある物に吹き込むとその物質に即した怪物を生み出す驚異的な代物だ。

 

 ただ、その強さは注入者の強さに左右される。それ故に生命として貧弱な俺が作るランボーグは弱く、見るからにタフネスに溢れ生命力が強いカバトン氏が作るランボーグは強力なのだ。

 

 しかし、抜け穴は多くある。

 

 まず単純な策としてエナジーを注入する触媒の殺傷力を高める方法だ。

 

 概算としては、カバトン氏が車のおもちゃから作るランボーグが俺が戦車にエナジーを注いで作るランボーグと同じ位の強さとなる。……俺の生命力が弱過ぎる事からは目を逸らしておこう。

 

 もう一つの方法として逸話を被せると言う物がある。こっちが主に俺が使っている方法だな。触媒ではなく、エナジーの方に概念を刻み、形成される怪物をより強力にするのだ。

 

 先日の『鮫竜巻』で説明すると分かりやすいか。

 

 アレの素となった触媒は、安い鮫のフィギュアと型落ちのドラム式洗濯機だ。無論、これらの触媒にそのままエナジーを注いでも瞬殺される雑魚が出来上がるだけだ。

 

 そこで俺はエナジーに映画「シャークネード」の情報を刻んだ。

 

 B級サメ映画と型落ち、安物の物質の相性は抜群に良く、結果としてそれは覚醒直後のプリキュアともそこそこ戦える程の強さの怪物となったのだ。

 

 それにこちらの方法の方が圧倒的にコスパが良い。底辺中年の財布の底は驚く程浅いのだ。

 

 

 

 さて、今から行う事も本質的にはこの逸話を被せる手段で変わりは無い。

 

 ただし今回は触媒も最上位だ。

 

「"妖仙"、"大喰らい"、"コメディリリーフ"、"浄壇使者"」

 

 それは釘鈀(ていは)を持ち、雲に乗り、天竺を目指した大妖であり、誰もが知る童話の怪物。

 

 

 

「───"猪八戒"」

 

 

 

 悪役では、正義の味方に勝つ事は叶わない。ならば、配役からやり直すのが最も安直な手段じゃないだろうか?

 

 

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