戦国のジークフリート ~牢人と龍神~   作:第616特別情報大隊

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赤鬼城奇襲

……………………

 

 ──赤鬼城奇襲

 

 

 太陽が沈んだ赤鬼城付近の森の中で橘たちが動き始めた。

 

「行くぞ、黒姫」

 

「大暴れしてやろう」

 

 橘と黒姫は大手門へ。

 

「我々は密かに忍び込む。紅葉、先行してくれ」

 

「了解」

 

 物の怪たちと火竜衆、そして椎葉と紅葉たちは赤鬼城へと密かに丘を登る。

 

 先に敵と接触したのは当然ながら橘たちであった。

 

「いたぞ、亡者どもだ」

 

「残らず殺すぞ。ついて来い、橘」

 

「ああ」

 

 黒姫と橘は赤鬼城の大手門へと向かって駆け、そこにいた亡者どもを見る。

 

「あれは僵尸という亡者だな。椎葉殿には因縁の相手がおるようだ」

 

「わしの知ったことか。やぶ医者の敵などどうでもいい。暴れるぞ!」

 

 大手門を守っている亡者の軍勢──僵尸たちと橘たちが接触。

 

「ふん!」

 

「燃えい!」

 

 橘が肉薄して刀を振るい、黒姫も“怨熱”を振るって炎を舞わせる。

 

 斬り倒された僵尸が倒れ、炎で燃え上がった僵尸がそのまま抵抗してきた。

 

「黒姫! 抵抗できぬよう手足を斬れ! それが確実だ!」

 

「承知した! 刻んでくれるわ!」

 

 ふたりによる大手門強襲は見事にその役割を果たし、赤鬼城にいた亡者たちが残らず大手門へと向かって来る。

 

 大手門への攻撃の規模をこの赤鬼城を守る勅使河原が見誤ったということもあった。彼は大手門への攻撃こそ大規模なそれだと思い込んでしまったのだ。

 

 そのため大手門を守らなければと配下の亡者たちを向かわせてしまった。

 

「ははっ! 斬り刻んでくれる!」

 

「死にたい奴から列に並べ!」

 

 しかし、実際に大手門を襲撃しているのは橘と黒姫のみ。

 

 竜の血を浴びた男と龍神とは言え2名しかいないものに大勢の亡者が向かって来る。しかし、ふたりという規模に大軍を消しかけても同時に交戦できるのは僅かだ。

 

 そういう意味において勅使河原は完全に判断を誤ってしまっていた。

 

「登れるな。橘殿の話通りだ」

 

 その頃、椎葉たちは丘を登り、赤鬼城へと侵入しようとしていた。

 

「この先に敵はおりません。どうぞ早く」

 

「分かった。続け」

 

 静かに丘を登った火竜衆が先行して城に入り込み、油断なく周囲に向けて鉄砲を構える。それから物の怪たちと椎葉が城に入った。

 

「大手門の方が凄い騒ぎになっているな。流石は橘殿と黒姫様だ」

 

「ええ。おふたりが頑張っておられる間に我らも」

 

「もちろんだ」

 

 絹御前が言い、又坐衛門も頷く。

 

 物の怪たちと火竜衆は赤鬼城城内に侵入。城を落とし始めた。

 

「亡者ども城から一掃して赤鬼城を落とすぞ! ここからは派手にゆく!」

 

「おお!」

 

 杉山が声を上げ、火竜衆が応じる。

 

「我らも戦うぞ!」

 

「おう!」

 

 物の怪たちも雄たけびを上げ、その声を赤鬼城に響かせた。

 

「進め! 城を押さえるのだ!」

 

 火竜衆と物の怪たちが一斉に赤鬼城の要衝を押さえ始める。

 

「亡者だ! 全て討ち取れ!」

 

 そして、城内で少数の僵尸と交戦を開始した。

 

 火竜衆は鉄砲と刀で戦い、物の怪たちは槍で戦う。

 

「亡者を一掃するぞ! ものども、進めえっ!」

 

「敵を倒すのです!」

 

 又坐衛門と絹御前も物の怪たちを鼓舞して亡者と戦った。

 

「ぐわっ!」

 

「怯むな! 進め!」

 

 僵尸たちは明の剣と鉄砲で又坐衛門たちを攻撃してくるのに物の怪たちは出血しながらも立ち向かう。

 

「構え!」

 

 火竜衆も鉄砲を構えて僵尸たちを撃つ。椎葉の呪いが込められた銃弾は確実に僵尸たちを屠り、撃破していった。

 

「いいぞ。この調子ならば城は落とせる!」

 

 物の怪と火竜衆の働きにより赤鬼城が陥落向かう中、勅使河原も大手門が陽動だと気づいた。彼はすぐさま兵力を城内へと戻そうとする。

 

 しかし、橘と黒姫がこの機会を逃すはずもない。

 

「敵が退くぞ。追撃だ」

 

「おう!」

 

 橘と黒姫は城内に向かう僵尸たちを背後から襲撃し、撃破していく。

 

 僵尸を含めた亡者たちの弱点は生への渇望の希薄さだ。生き残ろうとしないため、戦力を瞬く間に消耗してしまう。攻撃に対して必死に抗うことがなく、命令された攻撃を行うのみなであるのは弱点である。

 

「ほれほれ! 全滅するぞ!」

 

 そのため黒姫と橘に追撃された僵尸たちは再展開前に多大な犠牲を出した。

 

 それでも城の中に一定数の僵尸が展開。

 

「奴らを物の怪と火竜衆に向かわせるわけにはいかん。足止めするぞ」

 

 僵尸を追って橘たちが駆ける。

 

「橘殿!」

 

「杉山殿! 物の怪たちはどうした!?」

 

 橘たちが赤鬼城内を駆けて進むと火竜衆が僵尸を足止めしている場面に遭遇した。火竜衆は半数が鉄砲を、残りが刀を持って僵尸と交戦中だ。

 

「物の怪たちは城の主を討ちに向かった。椎葉殿に寄ればこの亡者たちを操っているものはこの城にいるそうだ。討ち取れば亡者たちはただの死体に戻ると」

 

「そうか。では、亡者たちをここで食い止め、椎葉殿が敵を討てるようにせねば」

 

「ああ。協力してくれ」

 

「合点」

 

 橘たちはそのまま大手門から移動しようとする僵尸たちの足止めを行う。

 

 その間に椎葉と物の怪たちは城の主──勅使河原を狙って進んでいた。

 

「椎葉殿! 間違いなくこっちなのか!?」

 

「ああ。こちらだ。僵尸たちに札に込められたものと同じ力を感じる。それも強力なそれだ。間違いなく勅使河原がここにいるだろう」

 

 又坐衛門が尋ねるのに椎葉がそう答えながら足早に赤鬼城内を進む。

 

 椎葉は僵尸たちの札に込められた道教の力──仙術のそれと同じ力をこの城の内部から感じ取っていたのだった。

 

「その力の主を倒せば亡者たちは死体に戻るのですね?」

 

「そうだ。全ての力は時間とともに減少するのがこの世の常。それは僵尸の札に込められた力とて同様だ。力を注ぎ続けなければ僵尸たちを動かしている力は失われる」

 

 絹御前が確認するのに椎葉はそう解説し城の中を見渡した。

 

「こっちだ。近いぞ」

 

 椎葉がそう言い前進。

 

「椎葉殿。仮にその術者に辿り着いたとして敵はどのような抵抗をしてくるのでしょうか? 倒せる相手なのですか?」

 

「当然倒せる。あの男──勅使河原は不老不死には至っていない。不死であったとしても不死の呪いを解くことはできる。そして、殺すことも。斬るのであれば私が斬ろう。友だったものとしての役割だ」

 

「分かりました」

 

 椎葉は絹御前にそう言い、城の中を慎重に進む。

 

「おおおおお!」

 

 そこで巨大な声が響き、それと同時に巨大な僵尸が姿を見せた。その大きさは2メートル以上はある巨体だ。そして、その手には巨大な槌を握っている。

 

「どうやらそう簡単には進めさせてくれないらしい。叩き潰して進むぞ」

 

「承知」

 

 そして、椎葉が刀を抜き、物の怪たちが槍を構えた。

 

「おおおおお!」

 

「いざ」

 

 戦闘が始まる。

 

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