「エアグルーヴ、これを受け取ってほしい」
夜景の綺麗なホテルのレストランで、トレーナーからバラの花束を贈られたとき、エアグルーヴはついにこの日が来たことを悟って体を硬くした。
「誕生日おめでとう、エアグルーヴ」
「…驚いた。貴様にこのようなことができたとはな…」
「はははっ。似合わなかったかな?」
「…いや。そんなことはない。
常々思っていたが、貴様はよくやってくれている。…その、ありがとう。
もちろん、私の答えは決まっている」
「そうか。受け取ってもらえてほっとしたよ。
じゃあ、デザートを食べようか」
「………ん?」
続きを待ち望んでいたエアグルーヴは、そう言って本当にデザートを食べ始めたトレーナーにいぶかしげな目を向けた。
「待てトレーナー…。続きはないのか?」
「続きって…、このコースはこのデザートで終わりだよ。
それとも、これだけの食事じゃ足りなかったかい?」
「たわけ!そんなわけあるか!
わ、私が言いたいことはだな、こんなところで花を渡したのならば、何かもう一つ贈る物があるのだろう?」
「もう一つ…?
何か他に欲しい物があったのかい?」
「…貴様、なぜ花を持ってきた?」
「なぜって、メジロドーベルに今度エアグルーヴと誕生日祝いにホテルのディナーに行くけど、何をプレゼントしたらいいのかきいたら、そんな時は絶対にバラの花束が良いっ!って言われたからだよ。
ほら、言われてみれば確かにエアグルーヴは、花が好きだからね」
それを聞いたエアグルーヴが、それはそれは深いため息をついた。
しかし、思い返してみたとき、この男が出会ったときから変わってないことを喜べばいいのか、嘆くべきかエアグルーヴは真剣に悩んだ。
「すまんなドーベル…。この男の朴念仁ぶりを、私が教えていなかったばかりに…」
「えっ、ええっと…。ひょっとしてバラの花束はそんなに欲しくなかったかい?」
「まったく…、貴様というやつは…。
仕方ない、手を出せ、トレーナー」
伸ばされたトレーナーの手に、エアグルーヴが自分の両手をそっと重ねて、その手の上にリングケースを置いた。
「ん?……っ!?
エ、エアグルーヴ!?こ、これって…!」
「なんというか、これが無駄にならなかったことを喜べばいいのか、それとも嘆くべきなのか複雑な気分だ。
…それで、貴様は私からのプレゼントをもちろん受け取ってくれるのだろ?」
トレーナーは言葉もなく、首を縦に何度も振った。
「よろしい。
プレゼントとは、このように贈るのだ。
それをこれから長い時間をかけて、ゆっくりと教えていってやろう」