――マチカネフクキタル。
夜になって、白装束でびしょ濡れになったマチカネフクキタルがトレーナー室に入ってきた。
話を聞けば、明日のトレーナーを集めて行われるパーティーで良き出会いがあるようにと滝行をしてきたらしい。
俺のためにとトレーナーが感動していると、せきや体に怠さを感じるらしく、慌ててフクキタルをベッドに寝かせた。
「トレーナーさん。私のことはかまわず、どうかパーティーに行ってきてください」
「バ鹿を言うな。熱はないみたいだが、フクキタルがこんなことになったのは俺のせいだ。
だから、パーティーに行くのはやめて君の看病をするさ」
そう言って献身的にフクキタルを看病してくれるトレーナーの後姿を見て、フクキタルは邪悪な笑みを浮かべるのだった。
なお、トレーナーを集めて行われる予定だったパーティーは、その全員が担当ウマ娘の妨害により不参加となりあえなく中止となった。
――ゴールドシップ。
「んじゃあアタシもついてってやるよ」
「しょうがないな」
当日二人でお見合い会場の高級ホテルに行くことに。
和服を着こなしたお見合い相手の女性は、なぜか女性同伴で来たトレーナーに驚いていた。
「俺の担当ウマ娘のゴールドシップです」
「ゴルシちゃんでーす!」
「まあ」
その後、食事中でも好き勝手に騒ぐゴールドシップにトレーナーが止めるよりも助長させるような行動ばかりをとるので、ホテルの従業員の胃には見事な穴が開いた。
「ふふっ。面白い人たち」
それを見ていたお見合い相手は終始楽しげだった
それ以降も、当初の予定を崩してスイーツを食べに行くわゲーセンに行くわ、あげくの果てにはなぜか海で釣りをしてサメと戦うことになった。
「ぎゃー!ゴルシちゃんの可愛い頭にサメが食いついてきたー!」
「待ってろゴールドシップ!今チェーンソーでぶった切ってやるからな!」(ドゥルルン!)
「あっぶねえ!あと数ミリずれてたら頸動脈がぶった切られてたぞ!」
「えっ…ごめん」
船の上で唐突にチープなCGのようなサメとの戦いが始まった。
そんなことをしていたにも関わらず、彼女は終始ずいぶんと楽しそうに笑っていた。
「今日は本当にありがとうございました。私、こんなお見合いは初めてでとても楽しかったです」
「僕もあれだけ好き勝手連れまわしたのに、楽しそうだったのは驚きでした」
もうすぐお見合いが終わる。
海の向こうに沈んでいく夕日を眺めながら、二人は公園に来ていた。
遠くでゴルシがふかひれスープを売っていたが、とりあえず関係がないので放っておく。
「あら、ひょっとして私は意地悪をされていたんですか?」
「うーん。そんなつもりはなかったんですけど、あいつが好き勝手するのに振り回されるのを大抵の人は嫌がるんです。本人に悪気はないんですが」
「じゃあ私たち気が合うのかもしれませんね」
風が吹いた。
舞い上がる彼女の黒髪が、夕日と合わさって瞬いているのがとても綺麗だと思った。
「私とお付き合いしませんか?」
まさか、こんなことになるとは。
トレーナーは驚いた後、少しだけ悩んで言った。
「すみません。あなたは非常に魅力的だと思うのですが、僕はあなたとお付き合いできません」
「あら、どうしてなんですか?」
「あいつが好きだからです」
トレーナーはゴールドシップの方向を見た。
その横顔はとても優し気で、女性の胸が少しだけ痛んだ。
「あいつは破天荒で面倒くさくて、そしてバ鹿みたいに魅力的なところが好きなんです。
本当は好きな相手がいるのにお見合いなんて不誠実なので断っていたんですが、普段お世話になっている方が来てくれさえすれば良いと頼み込んできたので無礼を承知で来てしまいました」
「ああ。それは私の父です」
トレーナーが驚いて女性を見た。
女性はいたずらっぽく笑った。
「あーあ。でも残念です!ずっとあなたのファンだったから父に無理を言ってあなたと会うことができたのに、もう心に決めた人がいるなんて。
……わかりきっていたことですけどね」
トレーナーが寂し気な女性に何かを言おうとしたとき、遠くからゴールドシップが手を振りながら呼んできた。
「トレーナー!サメ売れたからその金でラーメンでも食いに行こうぜー!」
「ああ、わかった!今行く!」
トレーナーは最後に女性に向き合うと、別れの言葉を言った。
「それでは、僕はあいつと行かないといけないので、ここで別れましょう」
「はい。今日は一日ありがとうございました。さようなら」
「さようなら」
トレーナーは足早にゴールドシップのところまで歩いていく。
女性とゴールドシップの目線が最後に交差したが、ゴールドシップは笑って謎のサムズアップをした。
二人がそのままゆっくりと遠ざかっていくのを見送って、女性はため息をついた。
「いいなぁ」
あの人の隣で、あんなに信頼しきった笑顔を見せることのできるゴールドシップが女性にはとてもうらやましかった。
――トウカイテイオー。
「というわけで、俺と一目会いたいっていう人たちとのパーティーに行ってくるから」
「やだやだやだやだ!!」
「パーティーが終わり次第すぐに帰ってくるから」
「やだやだやだやだ!!!」
「……最近俺も人気が出てきているせいで、ぜひ出てくれと言われて断れなかったんだ。
付き合いで行くだけだから」
「そう言って僕を捨てるんだ!僕のこと愛バだって言ってくれたのに!!」
「……俺がお前を捨てるわけないだろ」
「じゃあ、なおさらトレーナーを行かせるもんか!!」
そういうと、トウカイテイオーが正面からがっちりとコアラのように抱き着いてきた。
「こら。テイオー」
「ふぐうぅぅぅ…」
胸に顔を押し当てながら、解読不能な唸り声をあげられる。
まいった。
そんなに重くはないが、なんとしてでも行かせまいとするテイオーの鋼の意思が伝わってくる。
おまけに、胸のあたりがテイオーの涙かよだれかのせいでしっとりと濡れてきた。
「お前そんなに嫉妬深かったっけ?」
「トレーナーのせいじゃないか……。
僕をこんな夢中にしたくせに、知らんぷりをするなんてひどいよ……」
「そんなことしたっけ?」
「この唐変木!!」
ドコドコ!と胸を叩かれる。
まるでヘビー級ボクサーのボディーブローのような衝撃にあばらがへし折れそうだ。
痛いがおそらくここでテイオーを無理に引きはがしたら、背骨が折れるくらいのキャラメルクラッチをくらいそうだ。
「仕方ない。ならこうしよう」
トレーナーが会場に現れたとき、どよめきがさざ波のように広がった。
「どうも。トウカイテイオーのトレーナーです」
「むうむう!もふばむへきもほうふぁいへいほーふぁよ!(やあやあ!僕が無敵のトウカイテイオーだよ!)」
なんとトレーナーはトウカイテイオーが胸にしがみついたままの状態でパーティー会場にやってきた。
全員が理解不能なものを見る目でトレーナーとトウカイテイオーを二度見三度見する。
「すみません。こいつがどうしてもついてくるって聞かなくて」
「ふぉえーなーはほふのももなんばから、ほそんほほろひょろひふね!(トレーナーはボクのものなんだから、そこんとこよろしくね!)」
全員何を言われているのかわからなったが、子連れで来るヤバいやつということは伝わった。
しかし、彼女を連れてきたと誰にも思われてないあたり、テイオーの意図は正確に伝わらなかったようだった。
「テイオー。こっちの料理はけっこう美味しいぞ」
「むうむう。ふむひゅうむふぁいほよ!(ふむふむ。苦しゅうないぞよ!)」
「あ、あのー。テイオーのトレーナーさん……」
「ひひひーん!」
「ひえぇ……」
話しかけようとした女性に、テイオーは歯をむいて威嚇した。
この時になってようやく、全員がトレセン学園のトレーナーの9割が担当ウマ娘と結婚しているという話が、嘘ではなく本当だということに気づいた。
もうトレーナーを招待するのはやめよう。
誰だって、ウマに蹴られたくはないのだから。
――テイエムオペラオー。
「フジキセキ!」
「力こそが正義。いい時代になったものだね」
フジキセキがボロボロになって倒れ伏しているテイエムオペラオーを見下しながら言った。
もはや決着はついた。
「テイエムオペラオー!」
「おおっと、行かせないぜ」
心配して駆け寄ろうとしたトレーナーはウマ娘たちに押さえつけられてしまった。
「離してくれ!」
「僕は君に勝った。トレーナー君はいただいていくよ」
「くっ!彼はボクと対となることで輝く太陽。誰が渡すものか!」
「オペラオー…」
フジキセキはトレーナーの、テイエムオペラオーを信頼しきった態度が気に食わなかった。
だから、その信頼を利用することにした。
「よし。起こせ」
周りの者がフジキセキの言葉に従って、倒れていたテイエムオペラオーを抱えて起こした。
「トレーナー君。僕を育成すると言ってみるんだ」
「誰が君なんかを…!」
「言えないのかい?なら、こうするしかないな!」
フジキセキはテイエムオペラオーの胸に、安全ピンで何かが書かれた紙を服にとめた。
その紙にはこう書かれていた。
『ろくでなし』
「うおぁああああ!!」
「ああっ、オペラオー!」
オペラオーが血を吐いた。
どうやら、屈辱に体が耐えられなかったようだ。
「これがウマ娘の処刑だ。普通のウマ娘であれば、この一枚目で死んでいる。
さあ、オペラオーは何枚目まで耐えられるかな?」
『ポンコツ』
「うああああ!!」
「やめろ!オペラオーが死んだら、俺も死ぬぞ!」
「この処刑を止められるのは、トレーナー君だけだよ。
トレーナー君のたった一つの言葉でいいんだよ」
『のろま』
「ぐああああ!!」
「強制はしないよ。さあどうするかね、トレーナー君?」
あまりにも凄惨な光景に、トレーナーの眼から涙がこぼれる。
だが、それでもテイエムオペラオーは絶体絶命の状況にも関わらず、いつもの不敵な笑みを浮かべた。
「トレーナー君…、ボクは大丈夫さ。
たとえボクが倒れようとも、君はボクとの愛を胸に生きてくれ…」
「オペラオー…」
「さあ、殺すなら殺すがいい!
ボクという存在が滅んだとしても、トレーナー君が生き続けている限りボクの栄光は永遠に生き続ける!」
強気なテイエムオペラオーの言葉に、フジキセキの顔が明確な憎しみに歪んだ。
「いいだろう。君という存在は前から僕と被りすぎていて許せなかった。
望み通り殺してあげようじゃないか!」
『オペラマニア』
『ビビリ』
『賢さG+』
『世界最低』
「うわああああー!!」
一気に四枚の紙を服につけられたテイエムオペラオーが、屈辱で死にそうになっている。
そして、先に折れたのはトレーナーの方だった。
「い、育成…します…」
「聞こえない。その程度で僕の心が動くと思っているのかい?」
「や、やめるんだトレーナー君…」
テイエムオペラオーが必死に止めようとする。
しかし、トレーナーはもう黙っていることができなかった。
「フジキセキ…あなたを…育成します!
一生、函館でも凱旋門でもどこへでもついていきます!」
「ふふふっ。はーっはっはっはー!!聞いたかいテイエムオペラオー。
僕を嫌っていたトレーナー君が、僕を育成する。一生函館でも凱旋門でもついてくるだと!」
「ぐっ…。フジキセキ…!」
「トレーナー君の心変わりとは恐ろしいものだね!」
テイエムオペラオーを支えていたウマ娘たちが離れていくと、もはや立っているだけの力も残っていないテイエムオペラオーは倒れて動かなくなった。
「さあ行こうか、トレーナー君」
「一体どこへ?」
「ふっ。享楽のターフへ行くのさ」
テイエムオペラオーの霞む視界に、遠ざかっていく二人と取り巻きのウマ娘たちが見える。
「トレーナーくーん!」
力の限り叫んだ声にトレーナーが振り返った。
彼は泣きながら名前を呼んだ。
「テイエムオペラオー!」
テイエムオペラオーの眼からとめどなく涙が流れた。
「トレーナー君。ボクは必ず君を取り戻して見せる!
今この時より、神々の闘争。終末のラグナロクが幕を上げるのだ!」
胸に七つのダサい名札を付けたテイエムオペラオーが、愛を取り戻さんと強敵たちと死闘を繰り広げる。
人々はそれを世紀末覇王伝と呼んだ!
ユアショック!
「………」
「どうですか秋川理事長。俺が主体となって作ってみた学園案内の動画は?
こういうのは初めての経験でしたけど、なかなかいいものに仕上がったんではないでしょうか?」
「トレーナー君!あのダサい名札はやめてくれよ!
せめてナポレオンの勲章のような華やかな飾りにしておくれよ!」
テイエムオペラオーが涙目でトレーナーに抗議をしている。
いやに自信満々なトレーナーに向き直って、秋川理事長はにっこりと笑ってこう言った。
「却下!この動画はお蔵入りとする!」
「なぜですか!?」
オペラオーのトレーナーはほとんどのことで他に並ぶものがいないほどの優秀さを発揮するのに、学園案内の作成を依頼してなぜこんなものが出来上がってきたのか理事長には全く理解できなかった。
後日非公式でウマチューブにアップされたこの動画は、割と多くのウマいねを獲得し、ダサい名札を見られたテイエムオペラオーは泣いた。
――ライスシャワー。
ライスシャワーのトレーナーは知り合いからの頼みで女性と会ったことを、今になって後悔し始めた。
日々忙しい業務の中で、たまには仕事から外れてみるのもありだと説得されてしまったのが間違いだった。
もちろん誓って、会った後に何かあったわけではなかったし、その女性とも連絡先を交換して今度また一緒に食事でも行こうという誘いが来る程度だ。
問題は目の前のウマ娘である。
「……あの、ライスシャワー……」
「………」
ライスシャワーの眼に鬼火が燃えている。
怖い。
気づかれてしまったのかもしれない。
「ねえお兄様」
「ひい!」
はいと返事したつもりが裏返って変な声になっていた。
落ち着け、落ち着くんだ。
「お兄様はこの前の休みにどこに行っていたの?」
いつも通りの笑顔と、いつも通りの明るい声。
違うのは、かつてないほどに目から炎が燃え盛っているってことぐらいかな。
ふえぇ、精神が肉体からはみ出てるよぉ…。
「あ、ああ…。先日は友達と一緒に食事に行っていたな。久しぶりに男友達とお酒を飲んだから、うっかりとはしゃぎすぎてしまったよ」
「本当に?女の人とかはいなかったの、お兄様……?」
軽い衝撃と共に、ライスシャワーが体に抱き着いてきた。
ちょっとだけ逃げれないか試しに体をよじってみたが、とてもじゃないけど力が強すぎて無理だわ。
ならば、言葉でどうにかごまかすしかあるまい。
俺だってプロのトレーナーだ。
ウマ娘に知られずに女の子と会うことくらい容易いことだ。
「もちろんだよライス」
「じゃあこの携帯の女の人とのメッセージのやり取りは何なのかな?」
「………」
携帯のパスワードは簡単に突破されていた。
やはり、ライスシャワーの誕生日をパスワードにしたのがダメだったのだろうか?
俺はブルーローズチェイサーされた。
――メジロマックイーン。
「あらそうですの…。さぞや美しい人が来られるのでしょうね…」
ごしゃ!
マックイーンの手に握られていた瓦が砂のように砕け散った!
マックイーンの笑顔は引きつりながら青筋を立てるという、正面から見たら悲鳴を上げそうなほどの迫力があった。
「ああ。とても可愛い子が来てくれるって聞いてるんだ」
それをものともせず笑うトレーナーはおそらく恐怖心をママのお腹に忘れてきたのだろう。
その日のマックイーンは吹き荒れる台風のように荒れた。
トレーニングの最中でもあふれ出る威圧感で周囲のウマ娘たちを怯えさせ、ついでにゴルシが珍しく何もしてないのに目の前を横切っただけでぶっ飛ばされた。
「なんで!?」
そして、お見合い当日。
「お嬢様、さすがにこれは…」
「ちっ、違いますわじいや!これは前々から行こうと思っていたレストランにたまたま食べに来ているだけですわ!」
「……さようでございますか」
「もうっ!何ですの、その顔は!信じていませんわね!?
本当に、本当なんですからね!」
マックイーンはなるべく目立たないようにと、フードをかぶってサングラスとマスクをつけている。
不審者そのものである。
このレストランのオーナーとメジロ家が知り合いでなければ入店拒否されてもおかしくないほどである。
「お嬢様。思うことがあるのなら、相手に言わなければ何も伝わりませんよ。
もしもお嬢様が何も言わずともトレーナー様が思い通りになってくれることを期待するのでしたら、遠からずその関係は崩れてしまうでしょう」
「……わかっていますは、そんなこと…」
いつになく強く自分をいさめるじいやに、マックイーンがしょんぼりとうなだれた。
今になってこんな回りくどいことをするくらいなら、あの時に一言行かないでと言えばいいだけのことだったのだ。
メジロ家の令嬢として、あるまじき弱気である。
でも、レースで負けることよりも、大切なあの人に拒絶されるとことの方が怖かったのだ。
「そこまでわかっているのでは何も言うことはありません。
私がここにいては邪魔になるでしょうから、お見合いが終わりましたらお呼びください」
そう言ってじいやはどこかへ行ってしまった。
一人取り残されたマックイーンはとても寂しげであった。
その時、軽い足取りが聞こえると、対面の椅子に誰かが座った。
「初めまして。トレセン学園でトレーナーをしている者です。
お嬢さんのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
マックイーンが顔を上げると、そこには心の中で想っていたトレーナーがフォーマルな格好をして座っていた。
「ト、トレーナーさん!?」
「その声、マックイーン?」
マックイーンが慌てて変装道具を取り外した。
「やっぱりマックイーンだ。そんな変な格好してどうしたの?」
「そ、それは、トレーナーさんが…」
「俺がどうしたの?」
「な、なんでもありません!
それよりも、どうしてトレーナーさんがここにいらっしゃるんですか?」
「えっ?だって、俺にこのお見合いの話を持ってきたのて君のおばあさんじゃないか。
おばあさんが、このレストランに怪しげな格好をしたウマ娘がいるから、その子と会ってほしいって言われたからここに来たんだけど」
「お祖母様!!?」
ここまで来て、ようやくマックイーンは自分の祖母にはめられたことに気づいた。
全員グルだったのだ。
トレーナーさんが当たり前のようにお見合いに行くと言ってきたのも、自分の親族に頼まれたことならそりゃあマックイーンも知っていると思ってもおかしくないだろう。
お祖母様もじいやも、全てを知っていたにも関わらず自分があたふたとしているのを、心の中では笑いをこらえるのに必死だったのではないかとすら思う。
腹をくくりなさい。
そうお祖母様に言われた気がした。
「それで、お見合い相手はマックイーンということで良いのかな?
それとも他に誰かお見合い相手がいるの?」
「他になんているわけありませんわ!私こそがお見合い相手です!」
ムキになってつい言ってしまった。もう取り消せない。
「そっか。マックイーンが相手なら、俺も嬉しいよ」
そう言ってトレーナーが笑ったから、マックイーンは否定することもできずただ赤くなってうつむいた。
「それで、こういう時って何から始めればいいんだろう?
好きなことが何か聞いたりすればいいのかな?」
「好きなことですか……走ることですわ」
「俺は走っている君を見ることが好きだな」
臆面もなく言ってくるトレーナーにマックイーンは少しむっとした。
「もう!なんでそんなこと恥ずかしげもなく言えるんですの!」
「仕方ないさ。俺はずっと前から、君の走りに夢中なんだから」
「ぐっ!あなたという人は…。
私だって、トレーナーさんが私の走りを見てくれるのはとても好きなんですのよ!」
その時マックイーンは、答えを見つけた気がしてつい笑ってしまった。
「急に笑い出して、どうしたのマックイーン?」
「いいえ。私それがどういうことかわかってしまいましたわ」
マックイーンは見惚れるほどの笑顔で、トレーナーにこう言った。
「どうやら私たち、相思相愛のようですわ」
昔書いたものを切って貼ってるだけだから、いつかストックがなくなりそうだねえ。