「トレーナー、お代わり」
「まだ食うのかオグリキャップ?」
俺はオグリキャップを自宅に招いて晩御飯を作ってやっている。
現在進行形なのは、こいつがすでにお代わり13回目ということで、作り置きしておいた分がなくなったせいだ。
「やばい。お前が食うことを予想して冷蔵庫に入るだけ入れておいた食材が尽きかけてる」
「すまない。自分でも食べ過ぎていることはわかるんだが、トレーナーの作ってくる料理がおいしすぎて箸が止まらないんだ」
オグリキャップは至福の表情を浮かべて、まるで掃除機のように料理を食べていく。
普段から大食いではあったが、今日の量は異常といってもいい。
「なんか今日はいつもより食べるな。そんなにお腹がすいてたのか?」
「むっ。お腹はいつもすいてる」
「あっそう」
出てる腹を自慢げに突き出して言われた。
大食いに何を誇るところがあるんだろうか?
こんなんで将来、嫁の貰い手があるのか心配になってくる。
「というよりも、いつもはこれくらいの量で満足するんだが、なぜだか今日は食べても食べてもまだまだ食べれそうなんだ」
「怖えこと言うな。なんでそんなに食べれるんだよ?」
「わからない。けど、トレーナーの料理は美味しいだけじゃなく、食べてると胸がポカポカしてくるよ。まるでお母さんが作ってくれた料理のようだ」
そう言って嬉しそうに微笑むオグリキャップはとても可愛かった。
これは嫁の貰い手なんて心配しなくても大丈夫かな?
将来結婚するであろう相手の男を少しだけうらやましく思った。
「だから無限に食べられそうだ」
「怖いこというんじゃねぇ」
俺は無限に作ってやる気はさらさらねえぞ。
「ええい!もうあと作れるのは余った野菜と小麦粉でお好み焼きを作ってやることぐらいしかできん。
それで満足しろよ!」
「ああ。いつまでも食べていたかったが、健康のことも考えて腹八分目で抑えておこう」
「何言ってんだお前?」
底のない胃袋に恐怖するが、もうこれ以上は無理だ。
机の上にホットプレートを出して、作ったお好み焼きの種を流し込んでいく。
後は焼けるまで少しの我慢だ。
「トレーナーまだ焼けないのか?」
「気が早すぎるわ。まだ焼き始めたばかりだぞ」
オグリキャップがそわそわした様子で待っている。
それが子供っぽくてなんだか微笑ましかった。
「どうして笑うんだトレーナー?」
「いや、そうやって待ってる姿が子供みたいだと思っただけだ」
オグリキャップが少し不満げな顔をした。
「確かに食べることは楽しみだが、私は子供じゃないぞ」
「はいはい。子供はみんなそう言うんだ」
「むー」
ついついからかってしまった。
しかし、オグリキャップは不満げな顔から一転して、何か悪いことを思いついたかのような笑みを浮かべた。
オグリキャップは椅子から立ち上がると、料理をしている俺の背後に回ってそっと抱き着いてきた。
「おい。何やってんだ?」
突然の行動に少し焦った。
お好み焼きの焼ける匂いに混じって、オグリキャップの髪の香りを感じる。
「私は子供だ。だからこうして好きな人に甘えるくらいしてもいいだろ?」
声の調子から喜んでいることがわかる。
ぐりぐりと顔を背中に押し付けられて、なんだか本当に子供みたいな行動をとりだした。
「まったく、大食いで子供っぽくて、これから先苦労しそうだな」
「心配ない。だってトレーナーがこれから先も一緒にいてくれるからな。
こんな大食いで子供っぽい私をずっと支えてくれるだろ」
「いつ決まったんだよ」
とか口では言いつつ、内心では喜んでいた。
オグリキャップが背中にいてくれてよかった。
じゃないと、赤くなっている顔を見られていたかもしれない。
「トレーナー。耳が赤くなっているぞ」
「お好み焼きがいい出来で興奮してるだけだ」
オグリキャップが嬉しそうに笑っている。
こうしてオグリキャップが甘えてくれていることがまだ続いてくれればいいと、俺は今焼いているお好み焼きをもう少し焦げるまで焼くことにした。