禪院直哉になったから逃げようとしたら十種影法術だったから詰みかける   作:アルトリア・ブラック(Main)

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題名があんまり出てこない


第六話『変わる事ができない』

ー禪院家ー

 

禪院家の前に着いてから、高専とは違うドロドロとした空気感にため息をつきたくなる。

 

呪いの吹き溜まりなだけはある

 

「ただいまー」

 

そう言って門を潜ると躯倶留隊の人間が出迎えて来て、当主が呼んでいると言われる。

 

ハァとため息がついに漏れ、当主に挨拶に向かう

 

早速昼間から飲んだくれの直毘人に酒を注ぐ感情がここにない真希の母親がいた。

 

というか人妻に酒を入れさせるとかホントクソと思いながらある程度話を済ませる。

 

成人してから当主の座を譲りたいとか言われてしまったが、禪院では当主が死ぬまでは当主候補扱いらしい。

 

(…それまでにいろんな人脈築けとか、術式の解釈を広げろとか、訓練しろとかありがたいっちゃありがたいんやけど…)

 

家中内で割とまともな分類ではある蘭太や甚壱から当主候補として推薦されるのはありがたいっちゃありがたいのだが

 

(…いかんせん、禪院扇が邪魔やな…あれ以降あからさまに狙って来ることはあらへんし…)

 

そう思いながら廊下を歩いていると少し離れた所から騒がしい声が聞こえて来る。

 

心底愉快そうな嗤い声がこちらにやって来る

 

「!直哉さま!」

 

躯倶留隊の隊員が慌てて頭を下げて「おかえりなさいませ」と言って来る

 

「ただいまやな、相変わらず悪口好きなんやな」

 

この家は心底変わらない

 

不愉快で不快な家のままだった。

 

「おい、帰って来てたのか?」

 

そう声をかけて来たのは躯倶留隊の新隊長として任命された信朗だ

 

術式もない呪力もない男でかなり差別されていたが、その実力は扇よりある気がした

 

(…原作の信朗は真希ちゃんとそこそこ良い戦いしとったからな)

 

「あの酔っ払…当主に呼ばれてん、引き継ぎ事項伝えたいから帰って来いって」

 

「へぇ、最近一級以上の任務も普通にこなせてるらしいじゃねぇか、すげぇ嬉しそうにしてたぜあの酔っ…当主様」

 

そう話しながら禪院家内を歩く

 

「そういえば、お前がいない間の扇サン所の娘の扱いだいぶ緩和してたぜ、無視される程度ぐらい」

 

「……それがマシってクソ過ぎるわぁ相変わらず」

 

大袈裟にため息をつくと『手ェ上げなくなっただけ良い方だろ』と言われる

 

「それにお前が帰って来るって知って真依の奴は喜んでたぜ、雑用終えたら会って良いかなー?とか言ってたぜ」

 

「別にええけど、真希ちゃんには相変わらず嫌われとるんやなぁ…俺」

 

殺されたくないから今の内に好感度を上げようと思っていたのだが、全然好感度上がらない

 

というか、真希ちゃんが術師になりたいと思っているらしく、真依ちゃんは勘弁して欲しいと昔言ったのを思い出す

 

「目つき悪いからだろ」

 

「生まれつきやろが」

 

「直哉さん」

「帰って来てたのか」

 

庭で稽古している蘭太と甚壱が声をかけて来る

 

「……血が濃い順に顔が厳つくなる呪いにでもかけられとるんやろか」

 

「…は?」

 

「はい?」

 

「…お前そんな目つき気にしてたの?」

 

悪かったって、と謝られる

 

「直哉、部屋に荷物を置いて来たら後で稽古を頼む」

 

「ん」

 

そう言って三人と別れる

 

(…悪口の頻度が100%から80%に減ったな…)

 

部屋を挟んだ向こう側から聞こえて来る女中の悪口にため息をつく

 

幼い頃からそうだが、誰かの悪口が聞こえて来るだけで、何を言っているか理解出来ない

 

(…夏油が村の人間の声が聞こえなくなった時ってこんな感じやったんやろうか…)

 

「真依ー、そっち終わったら次行くぞー」

 

「う、うん」

 

小さなバケツを持っている二人を見てため息が溢れる

 

「掃除しとるん?偉いなぁ、相変わらず」

 

そう言うと真希が気付き、訝しげにこちらを見、真依は部屋からひょっこりと顔を覗かせて嬉しそうにしていた

 

(…なんやこの違い…)

 

「床拭きとかやる必要あるん?って思う掃除の分類やな」

 

モップとか使えこの家

 

バケツを持ち上げると『なんで帰って来たんだよ』と言われる

 

「帰って来いってうるさいから帰って来たんよ」

 

「これこっちでええ?」そう言って運ぶ

 

「東京のお土産あるで、後で食べような」

 

 

 

 

 

 

 

禪院家に戻って来てから忌庫にある呪具をいくつか調べて、特級の道具がいくつかあるのが分かり持ち出す許可を得た後、いくつか文献も見つかり持ち出して読んでいたらいつのまにか夜になっていた。

 

(…呪いって幅広いんやな…)

 

夏の虫がうるさく鳴り続ける

 

甚爾君や真希真依ちゃんが過ごしやすいように、もう優しい人間が呪力や術式を持っていないという理由だけで死に追いやられたり、人生を壊されたりしないような家にしたかった。

 

(…こっちもそうやし、灰原君も七海君も死なせたくあらへんな、やること多すぎて考えるだけで胃が痛くなって来た…)

 

すると、ポケットに入れていた携帯が鳴る

 

(こんな時間にメール?)

 

任務やろかと見ると、宛名は甚爾君であり、子供の画像を送って来ていた。

 

(…ホンマ幸せそうやな)

 

()()()()()

 

前世、あんな散々こき使われたというのにまだ苦しめというのか

 

なんで前の記憶なんてあるのだろうか

 

()()()()()()()()()()()って

 

(…あ、ダメだわ…)

 

ズルズルと座り込む

 

(…考えすぎやな…前の人生を細部まで覚えとるってなんやねん…普通7歳あたりになったら忘れるもんやのに…)

 

頭痛が酷くなって来て眉間に手を当てる

 

誰かに酷使される苦しみは分かるから、せめて目の届く範囲の人間は幸せになって欲しかった。

 

でも、無性に妬ましくなる

 

甚爾君が幸せになってるというのを見るたびに良かったなと思えるのに、どうしてもまだ自分はここにいるのか

 

「直哉、おい、具合悪いのか?」

 

女の子の声がして来て顔を上げる。寝巻き姿の真希が立っていた。

 

「…字面と睨めっこしとったら頭痛くなって来ただけやで」

 

そう言って立ち上がると、足元がふらつく

 

「ちょっ…」

 

慌てて真希が支えてくれる

 

「一緒に倒れるで真希ちゃん」

 

「そうしたら信朗叩き起こすから平気、それより紙の方持つ」

 

そう言って落とした方を拾ってくれる

 

「あー…読みすぎた」

 

そう言いながら歩くと、真希がこちらを見て

 

「……早く大人になりたい」

 

ボソッと呟く、小さく聞き取れず「ん?」と言うと

 

「真依の居場所も、自分の居場所も、自分で作れるようになって、お前に背負わせたくねぇのに」

 

ギュッと服を掴んでくる

 

「何言うてるん?子供なんやから背負われとき」

 

そう言って前を向く

 

「っ…」

 

真希が苦しそうにしたのに気づかず、またふらつく




【躯倶留隊から見た直哉】
・星4.9
差別はしないし蘭太と同様、自分たちより早く道場を綺麗にしてくれたり当主の息子にしては男尊女卑も術式差別もしないから好印象だけど、いかんせん口が悪すぎる。でも、兄達から狙われ過ぎて荒んでしまってるからケアしてあげたいなぁとは思うが、口が悪すぎるところがマイナス。(扇殴り飛ばした時はザマァ!とか思ってた)


【真依と真希】
真依が縋ってたら直哉は少なくとも死ねないよね)^o^(
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