ルビコンわくわく独立傭兵   作:青いカンテラ

3 / 12
レイヴン

 ―――グリッド135

 

 静寂に包まれていた巨大構造物群。大災厄゙アイビスの火゙より打ち捨てられ、いまやかつての栄華の残滓を残すだけの場所に、衝突音が鳴り響いた。

 

 外装部をぶち抜いて落下してきたのは、鈍色をした鉄の巨人・・・アーマード・コアである。膝をつく降着姿勢からおもむろに立ち上がらせると、621は抑揚のない声で呟く。

 

「・・・しぬかとおもった・・・」

『それはこちらの台詞だ、621』

「あ、うぉるたー。るびこん、とうちゃく、したよ。いぇーい」

『621・・・。いや、何でもない」

 

 つい先ほど寝ぼけたせいで死にかけたというのに、呑気にVサインをしてくる621に何かを言う気力も失せたのか、代わりに深くため息をつく。

 

 この先にあるカタパルトに向かえ、と指示を出しウォルターは思う。本当に紙一重、間一髪だったと。惑星封鎖機構の衛星砲、その超遠距離狙撃が突入カプセルを宇宙の藻屑にする寸前、621が前部ブースターを起動したことでほんの僅かに狙いが逸れ、何とかルビコンに降り立つことが出来た。

 

 今まで多くの強化人間を見てきたが、これほどひやひやさせられるのは621が初めてだった。この調子で゙使命゙を果たせるのか・・・。不安こそあるが、今は621を信じるしかない。そうでなければ・・・。

 

「うぉるたー、うぉるたー」

『どうした、621。何かトラブルか』

 

 思考の淵から意識を引き戻す。今は仕事中だ、しっかりしなければ。モニターに目を向ければ、621が破壊したガードメカの脚らしきパーツを握っていた。

 

「みてみて、いいかんじの、ぼー」

『捨てろ』

「えー?」

『えー、じゃない。それは仕事に不要なものだ。今すぐ捨てなさい』

「・・・・・・わかった」

 

 渋々と言った感じで、持っていたガードメカの脚を放り投げる。カタパルトに向かうようにと言っておいたはずだが、何を遊んでいるのやら。やはり自分がしっかりと見ていなければ・・・ウォルターは密かにそう決意したのだった。

 

「わー。し、ろ、い」

『見えるか? 621。お前にはあの汚染市街に降下してもらう』

「あい」

『カタパルトにアクセスしろ』

 

 目的のカタパルトがある開けた場所に出た。眼下に広がるのは白い雪に覆われた山々と、それを天蓋のように覆う巨大建造物。見る者を圧倒する光景ではあるが、ここには観光目的で来たのではない。・・・ロクな身分も持たぬ密航者に、景色を楽しんでいるような余裕はないのだ。

 

 機体をカタパルトに接続。近くの汚染市街へと向けてその時を待つ。アサルトブースト、長距離巡航モードに変更。エネルギー充填開始。

 

『―――この惑星(ほし)でコーラルを手にすれば、お前のような脳を焼かれた独立傭兵でも・・・人生を買い戻すだけの大金が得られるはずだ・・・』

「・・・」

 

 大空へと打ち出された機体を汚染市街に向けて飛行させながら、621は思考する。

 

「・・・おなか、すいた、な」

 

 仕事の後は何を食べようかと。

 

 ルビコンではミールワームがよく食べられるらしい。ならば初めてのルビコン飯はミールワームを使ったものがいいだろうか。

 ここに来る前に読んだ雑誌では、ルビコン産は他のところのものよりも肉厚で味も濃いとあったので、食べるのが今から楽しみである。

 

「えへ・・・じゅる・・・」

『集中しろ、621』

「うぇい!」

 

 ウォルターが語る、人生を買い戻せるほどの大金。それにも夢がある。焼失したと思われていたコーラルを見つければ、それだけの莫大な富を生み出すのだから。しかし今は仕事終わりのご飯なのである。夢はいくらあっても腹を満たすことは出来ないのだ。

 

 地面が近づいてきた。長距離巡航モードのアサルトブーストを解除。両脚を前に向けてブーストを吹かし、速度を落として着地する。すぐさま排熱が行われ、冷えた空気と高温の排気が混じり合って機体周囲の大気を揺らめかせる。

 

『仕事を続けるぞ。ACの残骸を漁り、生きている傭兵ライセンスを探せ』

「りょ」

 

 ウォルターが付けた目星を頼りに、街中を駆け回る。

 

 最初に見つけたものは、独立傭兵のものだった。ランクも丁度良かったが、残念ながら失効しており使えない。

 次に見つけたものは企業所属のライセンス。使えば足がつくリスクがあるし、何より欲している独立傭兵ではないためこれも使えない。

 さらに次。独立傭兵のものではあったが、傭兵支援機構の支援を十分に受けるのは難しいと判断。

 

『そう都合よくはいかんか・・・』

 

 途中遭遇しだルビコン解放戦線゙のMTや戦闘ヘリを蹴散らし、巡回してきた惑星封鎖機構の大型武装ヘリに中指を立てる621を嗜めつつ、モニターの前で一人ごちる。

 元より当たりを引ければ御の字な死体暴きだ。そうそう目当てのものを引けるとは思ってはいなかったが、案外てこずるかもしれない。そうなると困ったことになるが・・・。

 

「うぉるたー、うぉるたー」

『どうした621。何か見つけたか』

「たのしい、うぇーい」

『・・・』

 

 621のACが垂直カタパルトを使い何度も跳び上がっているのを見て、ウォルターは頭を抱えたくなった。周辺の敵性反応はないが、それはそれこれはこれだ。この強化人間、強化手術のせいで頭のネジが飛んでいるのではないか。注意をしようとして、レーダーに新たな反応があることに気がついた。

 

『・・・近くに反応がある。621、すぐに迎え』

「う?」

『早くいけ』

「あーい」

 

 マーカーで場所を指示してやると、丁度垂直カタパルトで跳び上がった621はアサルトブーストを使いその方向へと向かった。

 巨大なパイプが周囲を巡る開けた場所、その中心部は戦闘があったらしく焼け焦げた残骸が転がっている。その残骸の中にはACが一機転がっており、それからライセンス情報を抜き取り確認する・・・当たりだ。

 

『登録番号Rb23、傭兵ランク圏内。識別名は・・・゙レイヴン゙』

「れ、い、う゛、ん・・・?」

『・・・これがお前の、ルビコンでの名義だ』

 

 

 

To be continued・・・→




【621】
強化人間C4-621、あるいはレイヴン。
強化手術の影響か、おかしな行動を取ることがしばしばある。その度にウォルターに注意されている。

【ハンドラー・ウォルター】
621のごすずん。ある目的があって621をルビコンへと送り込んだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。