Fate/Imagenary Friend 作:silika
『”アーチャー” が 何者か の 襲撃 に より 霊核 を 破壊 され 退去 しました
戦闘 に 参加 した サーヴァント は いません
各々 の 使える 手札 を 使い 勝利 を 掴んで ください
残り の サーヴァント は 四騎 です』
今朝、寝て起きたところまたメールが入ってた。アーチャーが、また誰か知らない人に倒されたらしい。でも今日は学校があるので頑張って起きる。
「起きた? 奇病による学級閉鎖も終わったからさっさと準備をするの」
と言いながら、凄い速度でノエルちゃんに着替えさせられててわたしのやることは何もない。ヒナみたいにご飯も口に運ばれてきた物を食べるだけ、鞄の中身はさすがに自分で作らないとダメだけど、それ以外は大体全部やって貰ってるの。
「あれ……今日は人多くない?」
「アレだ、学級閉鎖明けで休んでた子もみんな来たからでしょ」
「風邪だって聞いてましたけど……治ったんですね」
今日の教室は久しぶりに人がいっぱいいた。重い風邪の人が五分の一より多くなったら学級閉鎖、それが半分を超えたら学校閉鎖……だっけ。それで居なくなった人がみんな戻ってきたからこんなに多く感じるんだね。
「そういえば言ってた、代理店長ってまだやってるの?」
「残念ながら、ね。百鳥先輩も店長も用事があるって全然来ないし」
「そうなんだ……あれ、じゃあアップルパイとかやってないの?」
「拙の出来るものしか出してないからね。普通のスポンジケーキとちょっと味の落ちたコーヒーだけだよ」
うーん……アップルパイとかタルトとか美味しかったな……。
「あの……黒死病死体に関する続報ってありますか、高橋」
「ごめん、そっちもないよ。あれを見た後店長が拙に代理を任せたから、何かはあると思うけどね」
「そうですか……」
そっか……アイビスさんってほんとの仕事は探偵なんだっけ、忙しいね。
ノエルちゃんの家に帰ってくると、すぐにセイバーと榛名さんと、アサシンとアサシンのマスターのジオさんがやってきた。ちょっきり八人でやったゲームは楽しかったです。
「アーチャー! マスターにハメ技決めるってどう言うこと!」
「すみませんマスター、がら空きでしたから……あああああ! アサシン!」
「ふはははは、これはアイテムありの八人乱闘だぜ。謝る暇があったら逃げ回れよ。……ぐわー! マスター、良いぞ、その調子だ」
「……やったぜ! こんなリアルタイム操作系のゲームで楽しめたの初めてだぞ」
「やーい空中浮いてるみんなー、元気ー? 僕のスーパー着地狩りタイム、はーじまーるうわああ、マスター⁉︎ 何するの?」
「何って……着地狩り狩り?」
わたしに友達が八人もいた事がないから、みんなでやるのは新鮮だった。榛名さんはコンボはあんまり出来ないけどアイテムを使うのが上手で、セイバーは即死コンボを決めるのが上手い。アサシンはアイテムで無双をしてて、ジオさんは下手くそなりにゲームを楽しんでた。ノエルちゃんは漁夫りまくって、ライダーはメテオを決めようとしてカウンターメテオを食らって、キャスターはふだんとは逆に着地狩りをしようとしてて、私はそれら全部をぶっ飛ばしてる。一番上手い分ちょっとハンデは付けられてるけど、ちゃんとどうにかなるぐらいでわちゃわちゃしてるのがすごく楽しい。
「三時間も脱線しちまった……」
「大乱闘はね……熱が入ると凄いよね……」
「んでまあ、話を戻してだ。噂で聞いたんだが、世の中には問答で聖杯を獲る人物を選んだ聖杯戦争があったらしい。実際にどうするかはさておき、ちょっとやってみたくてな」
ジオさんが大きな段ボール———多分、業務用の———を開けて、ジュースを取り出しながら行言った。なるほど……ちょっとどんな感じなのか気になる。
「……あの、花火と書いてあるこちらの箱は……?」
「あ……しまった」
ノエルがもう一つの箱を指差す。たしかに花火と書いてあった。問答したいから飲み物持ってきた……はいいけど、花火?
じっとみんなで見つめると諦めたみたいに話し始めた。
「……俺さ、友達とみんなで花火をする、みたいな奴に憧れがあってさ……。アサシンに言われたんだよな、一緒に同盟した奴を誘ってみたらどうだ、って。そして気付いたら買ってた」
「つまり?」
「この後聖杯戦争で殺し合うことになるかもしれないけど、その前に友達とする青春っぽい遊びをしたかったんだよ、二十歳過ぎた奴がこんな事言ってて悪かったなバカヤロー!」
「え……かわよ」
花火……みんなで花火……私もやりたい。榛名さんは反射でかわいいって言ってから口を押さえてて、ノエルちゃんはちょっと笑ってる。これは……行けるのでは?
◇
河川敷に集まる八人の男女。セイバー組、アサシン組、キャスター組、ライダー組である。セイバーのマスターであるジオが、花火と菓子類とジュースと僅かながらに酒を積み込んだ台車を引いている。
決めた直後に市役所に河川敷の使用を申請したところ、電話一本で許可が降りてしまったために、そのまま勢いでやってきたのだ。
「あー、取り敢えずは、アサシンの俺が司会を務めさせてもらうぞ。 ……先にひとつだけ言わせてくれ。マスター組はともかく、サーヴァントまで揃ってジュースしか飲んでないのってどうなんだ?
「僕は未成年だし」
「迂闊にお酒を飲むとマスターにキレられますから……」
「純粋に自分は下戸」
アサシンが飲み物比率について言及する。だが前提として、そもそもこの場にいる人間のうち榛名、雨子、ノエル、キャスターが未成年なのである。つまるところ、酒飲みがいなくても不思議ではないのだ。
「それより話を戻そうよ。マスター抜きに僕らサーヴァントだけで会話とか珍しいんだからさ」
「あ、ああ、そうだったそうだった。ここに会話デッキがあるから、これで会話の話題を決めていこうと思う」
会話デッキと宣いながら取り出したのは一台のスマホ。その中では会話デッキジェネレーターなるアプリが稼働していた。
「合コンかよおい……」
聖杯問答を尻目に線香花火をするマスターの四人。唯一の合コン経験者ジオは遠い目をしつつ言った。
「へー、合コンってそんなんなんだ……」
「いや、主催者によってその辺は結構変わる……らしいぞ」
微妙な伝聞調に、一回しか誘われなかったんだろうな……と思うノエルと榛名。だが、それを言ってはまたジオが泣くので黙っておく。
「えー、最初のお題。……リストは俺が作ったとはいえマジか。『聖杯を取ったら何をしたいか』 言い出しっぺのルールとして俺からだな。俺が聖杯を取ったら受肉して、普通の人間として暮らしたい。生前は15で戦士になってからそれしかやってなくて30手前で死んでるからな」
「周り順的には次が僕か。僕かー……召喚されておいて言うのも何だけどさ……僕はあんまりそう言うのはないね。普通に生きて、人生の一時期を戦士として過ごして、普通に余生を過ごせた。だから、何か求める物、って言われても困るんだよね。まあ、強いて言うなら受肉、かな」
アサシンは受肉を求める一方、キャスターはただ窮地に陥っていた雨子を助けるためだけに召喚されて来たため、何をしたいかと言う問いに返答を窮する。
「次は私ですね。召喚された時の願いは……誤ることなく終わりに辿り着きたい、なので聖杯に掛ける願いはないですね」
「俺か……俺はマスターの街を守りたいと言う願いに共感してここに居るからな。だから特に掛ける願いはない。生前は普通に往生して、気づいたら座に居た。そして街を守りたいと言う願いを聞いてここに降り立った。それだけだ」
セイバーもライダーも聖杯に掛ける願いはなく、ただ戦うこととそれに付随すること、ただそれだけのためにここに降り立っていた。つまり、この場に集った四騎の英霊の全員に、何が何でも聖杯戦争を勝たなきゃいけない理由のような物がない事が発覚した。
「……おいおい、マジか。聖杯がどの程度の願いを叶えられる物か知らないが、二騎程度なら受肉できるんじゃねえか?」
「流石にマスターの意向を無視するわけにも行かないでしょう」
「それは確かに」
慌ててサーヴァントたちがマスターの元に聖杯戦争に掛ける願いを聞きにいく。
「俺は……今まさに青春の焼き直しが出来ちまったせいで無くなったんだが」
アサシンのマスターのジオが言う。元々は、自分に都合の良い世界を願うつもりだった彼だがが、アサシンとの交流の中で自身の本質的な願いがどこにあるかを知り、そして今まさにそれが叶えられていた。ただ他人と一緒に今を楽しみ、そこに存在する事を認められる。ただそれだけの、言葉にしてしまえば酷く簡単なことであった。
「私は……そう、究極の刀が打ちたい! けど……本当は自分の力だけで打ちたいから、まあ、できるなら程度ね」
とセイバーのマスター。使えるなら使いたい程度の弱い願いである。
「私はありません。使っても街に被害が出ない願いでさえあれば誰が何を願っても構いません。雨子は?」
「うーん、もう先週くらいから考えてるんだけど……思いつかない。特に欲しいものはないし、ノエルちゃんはずっと一緒に居てくれるし、キャスターも居るし、パパとママも居る。食べたい物を食べてるし、行きたいとこには連れてって貰ってる。だからあんまり思いつかないなって」
さらに無欲なノエルと雨子。聖杯戦争の参加者が集まった割に、あまりにも平和であった。我武者羅に遮二無二に叶えたい物はなく、そもそも争いを好かない人物のみ。たとえ願ったとしても細やかな物ばかり。あまりにもゆったりとした聖杯問答花火大会であった。