Fate/Imagenary Friend   作:silika

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第十五話 遠いからこそ平和は尊い

  あまりにも静かで平和過ぎる空間。だが、古今東西あらゆる世界において、戦争中の小閑状態が長続きしたことはない。小閑とは、再び戦争をするためにある。

 

 「———! 全員退避!」

 それに最初に気づいたのはセイバーだった。川から上がってきたのは、触手を数多く持った巨大な化け物。それはこの世のモノとは思えないような醜悪な姿と匂いを発していた。あまりの醜さに、雨子は怯え、ノエルと榛名、ジオは顔を(しか)めた。いつもと反応の変わらないのはキャスターであり、戦意を(たぎ)らせていた。

 

 「GRAAAAAAA!」

 川からのそりのそりと這い出ると、その巨体を震わせ産声らしき物を上げた。そのあらんかぎりの叫びにより気分が高揚したのか、触手が暴れ始める。

 「全員集合! 僕の周りに集まって! “ここは聖域なり、故に魔の者は通さず”『護天域(ミラーフォース)』‼︎」

 キャスターの詠唱に導かれて、彼らの周りに結界が広げられる。

 

 その動きの中、化け物に声を掛ける存在がいた。山伏の服を(まと)う男とも女とも取れぬ中性的な風貌の、ものである。その人物は、幾人のも人間の声が重なったような声で話す。

 「落ち着きたまえ、鎮まりたまえ。お前の怒るべき相手はここに非ず。彼らが餌なれば、ただ喰らうべき相手よ。さあ、落ち着いたな。ならば成すことはただ一つ。喰らえ、喰らえ、喰らえ。奪え、奪え、奪え。その為の力は既にある。行け!」

 その人物が声を掛けると共に、その化け物の動きは沈静化する。代わりに、今までただ目覚めただけであったその怪物は、目的を持った行動を取り始めた。すなわち、捕食である。

 

 無数にある触手のうちの幾らかが伸び、セイバーを捕獲しに掛かる。それらのうちの幾らかはキャスターの貼ったシールドに守られ、残りを全て切り落とすセイバー。だが、次の瞬間には触手は蘇っていた。

 「とりあえず一旦は火力を入れるかな! 魔法陣6面展開(アレンジ)、魔力集中、収束《レンズ》、終了(エンド)『群星翔』(スタースパーク)

 キャスターが魔法陣を6個展開して、それぞれから光線を放つ。触手は動きが鈍いのか、全て直撃する。当たった部位は全て蒸発するものの、本体の方からさらに追加で触手が伸びてくる。キャスターは結界をあらためて展開すると、最前線へと躍り出て、鎖と光線と光弾で化け物の動きを停滞させる。

 

 「マスター、魔力は大丈夫か?」

 「ああ、流石にな。じゃあ、やるか」

 「合わせてくれますか、アサシン」

 アサシンがマスターに宝具の真名解放の許可を取り、ノエルがそれに合わせる前提の発言を行う。だが、ライダーは宝具の解放を拒否する。条件が厳しいために、現状だとほぼ意味がないとの意思表示だった。

 「——その剣は人類の敵を討ち滅ぼし、世界を救う物なり。『約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 諦めて、アサシン単体で宝具を放つ。振り下ろされた剣より放たれた光は、その化け物の体の1/4程度を蒸発させたが、それも即座に再生された。紛い物とはいえ聖剣を用いた攻撃を以ってその程度のダメージしか与えられないことに、雨子を除く三人のマスターは衝撃を受ける。加えて、バーサーカーの生み出していた黒い靄をその化け物は拡散し始めたのである。

 

 「いや……どうすれば良いの?」

 「……悪いが、俺は火力出せんぞ」

 「私も……対人ならまだしもなんですけど……」

 「そりゃ私も対人程度の火力しかないし……って言うか、いくらなんでもおかしくない? 高さ10m級の化け物の体のあの再生速度」

 どうやって対処をするか悩む三人のマスター。一方雨子はと言えばキャスターの側に行っていた。

 

 キャスターが気づいた瞬間に、かなりの全力で帰れのアピールをする。

 「マスター⁉︎ こっちはダメだから離れてて!」

 「だ、大丈夫だもん。私だって魔法は使えるし!」

 「そう言うことじゃないんだけどー!」

 さらには、それに気づいたノエルも、全てを放り投げて雨子を回収するために彼女の居るより川に近い方に駆け寄る。そんな中、まるで狙い澄ましたかのように、触手六本による叩きつけがその三人が居る場所へと行われる。

 

 「———『護天域(ミラーフォース)』‼︎」

 「———えっ?」

 「雨子!」

 タッチの差でキャスターの張った障壁と、体を割り込ませたキャスター、さらには雨子を抱え込んで守ったノエル、彼女の渡した髪飾りの守護効果によって、雨子自身はほぼ無傷であった。だが一方でその代償に、キャスターは霊基が半壊の重傷、ノエルは外傷こそ大きくは無いものの、吹き飛ばされた先で吐血をするレベルの負傷を負い、髪飾りは中央の宝石が完全に破壊されていた。

 「ノエルちゃん、桜ちゃん!」

 「———ゲホッ、ゴホ、ゴホ。……雨子、大丈夫?」

 「わたしは大丈夫だけど……ノエルちゃん、血!」

 「だから、大丈夫だってば。それより。キャスターは?」

 「僕も生きてるよ、大丈夫。これくらい、よくある話さ。魔法少女ってのはね、どんなピンチに追い込まれても、愛を捨てず、希望を持って明日へと向かう存在だから。だから。大丈夫」

 自身の不用心な行動により、彼女の大切な人が両方とも同時に重傷になってしまった為に、酷く落ち込む雨子。だが、今はそれどころでは無かった。重傷を推して、それでも安全な場所へと雨子を連れて行く二人。

 

 キャスターが居なくなった分の空いた穴は、瞬間的にならサーヴァントに届く攻撃を持つ榛名をジオがバックアップする形で埋めるが、相手のほぼ無限に見える生命力と、戦闘の中で鋭くなっていく触手捌きに全員が疲労を隠せなくなっていた。

 「これ、せめてこの無限体力のカラクリくらいは分かんないとどうしようもなくない⁉︎」

 「んなこと言ったってどう解析するよ! キャスターはあれだぞ!」

 ジオと榛名がせめてもの勝ち筋を探る手段を探し始めるが、戦闘に忙しすぎて、手が回らなくなっていた。

 

 奮戦を続けるアサシン、ライダー、セイバーの3騎であったが、長時間の、先が見えない戦闘に対してセイバーは不慣れであった。故に、長引くなれない相手との戦闘中に現れる、自力では覆し様のない致命的な時間がやってくる。

 前から来た触手四本を切り落とし、そのまま前方へと砲撃を差し込みながら、上方から飛んでくる触手をさらに切り落とし、下へと対処をする。その動きの真っ最中、触手の中に一つ、足ではなく、牙のついた口のある物がいた。

 「———なっ!」

 切り落とそうとした触手に握った刀を咥えられる。即座に手放すか、もしくは奪い返せればまだ何とかしようもあったが、どこまで行っても人間としか殺し合いをしていない彼にとっては未知の体験であり、それ故に硬直してしまった。

 化け物はその隙を逃す様な物では無く、牙と口を持った触手がセイバーに殺到し、彼の四肢を喰らい、そのまま霊核までも喰らい尽くした。

 

 「せ、セイバー! えと、ちょっと!」

 姿が見えなくなってすぐ、四人のスマホが震える。メールの着信通知、すなわちセイバー脱落の報せである。セイバーを全て食べた化け物の方はといえば、動きは止めてしまっていた。原因は不明であるが、とにかく大きな隙であることには間違いなかった。

 「「令呪を以て命じる! 宝具を使ってあの化け物を倒せ!」」

 「———敵性体分析…………解析終了、対応プラン確定。クアッドソード変形

 チャージ、100%超過。『ライダーキック』‼︎」

 「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!」

 好機と見てとったジオとノエルはほぼ同時に、令呪を使ってサーヴァントを支援していた。それを受けたライダーとアサシンが同時に宝具の真名を解放する。アサシンによるビームが通った後を、特殊なオーラを纏ったライダーによる飛び蹴りが突き刺さる。狙った通り、と言うわけでも無かったが、結果としてそれはアサシンに攻撃によって皮を吹き飛ばし、心臓部へと必殺の蹴りを突き立てることに成功した。

 

 ライダーによる蹴りが突き刺さった数秒後、爆発が発生する。それと同じくらいに、黒い病をばら撒く靄も晴れていった。

 

 ◇

 

 「想定より出力が低いな」

 「仕方ないにゃぁ。所詮は負けたサーヴァントを流用しただけなのにゃから、仕方ないと思うにゃん」

 「大体、必要な物は全部揃えたからあとはエクストラターンっしょ?」

 「探偵もうざいけど、うざいだけで済んだしね」

 「六年前に失ったリソースはほぼ補填できていない以上、この程度が限界だ」

 「あとはせいぜい暴れてもらおうぞ」

 

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