Fate/Imagenary Friend 作:silika
…………………………。
「マスター、大丈夫?」
…………別にわたしは……。
「雨子。これが、戦闘だよ。喧嘩じゃ収まらない様な理不尽と不運の応酬、醜く泥臭い争い、そう言う物が戦争を作ってるの。だから、私たちは出来るだけ雨子に知らせたく無かったのよ」
…………なかまはずれ、こどもあつかい。……あたりまえ、ほんとになんにもわかってなかったから……。だけど……それで……
「私は今も五体満足で生きてる。だからまだ取り返しのつくミスだよ、雨子。ほら落ち着いて」
………………………………………………………。
「ま、マスター……えっと……僕は……」
「…………ごめんなさい……。二人だけでいっぱい話してずるいとか思って……」
「ああもう。分かった、んでしょう。じゃあもう話はそれで終わりだってば馬鹿雨子。それでも分かんないなら、これからも私とずっと一緒にいなさい。一生掛けて分からせるから」
………………私にそんな価値なんて……………。
「あるから言ってるんだっての。雨子と生きてて楽しい、幸せ。それで終わる話だから。だからそんなに泣きそうな顔をするな。価値とかなんとかほざくなら、自分をその地位へと押し上げなさい」
…………そっか。
キャスターも……こんなだめなわたしを大切にしてくれるの?
「何を当たり前なことを言ってるの? 僕は魔法少女、愛を胸に、正義のために、希望を持って戦う、人を守る存在だ。それに僕は生前も友達は少なかったからね、それだけでも十分重いよ」
…………うん。頑張る。何も知らないわたしはさようなら。ノエルちゃんに守られてばっかりじゃなくて居られるように。
◇
決戦に向けて、自身の工房へと帰ってきた榛名は炉に火を入れ、槌を握る。思い浮かべるのは一本の剣。鋭く、鋭く、ただ斬る為だけのもの。究極の刀である必要はなく、おそらく持ち帰ることさえ出来ないであろう、繋がりを斬る為だけの剣。
「————思うは剣。素晴らしき剣を思う必要はない。求めるのはただ鋭きこと。鋭く鋭く鋭く鋭く、全てを
鋭い剣を産む以外の全てのことは遠くに追いやられる。セイバーが脱落したこと、彼に成果を見せられないこと。究極の一が欲しいこと、自分の鍛治が下手であること。その全ては意識の彼方へと送られる。
打ち終えた刀身をさらに磨き上げ、振いやすい様に柄をつける。それは鋭く、どこまでも透き通る様な刀身をしていた。何時になく、初めてと言えるレベルで美しい仕上がりをしていた。
「……成長は、あったよ。セイバー」
狙った相手ではなかった彼女のセイバー。だが彼は、間違いなく成長を与えた。剣士としての師匠であり、人生の先輩として多くのことを教えた。それを反映できた人生最高の剣を、おそらくセイバー召喚の触媒となったであろう本に捧げる。
「———我捧ぐ。奉りし
本来は神に対して行う行為であり、神ならざる彼女のセイバー相手には意味はない。だが、今この場、彼が呼び出され、そして戦いの中で死んだこの瞬間だけは、セイバーは神に近い特性を得ていた。既に残り香しかなく、大した力もないが、それでも
◇
「マスター、やり残した事はないか?」
「いきなりなんだよ」
ジオの拠点にて、アサシンは椅子を抱え込む様に座りながらマスターのジオへと問いかける。アサシンとジオの関係は、主人と召使のそれではなくむしろ年の近い兄弟の様な形で推移していた。それ故に、もう目前に迫った最大の壁とその後の別れに向けて、やり残したことがないかを問う。
「お前はないのか? アサシン、やりたい事いっぱい並べてただろ」
「俺は問題ないさ。俺の予定じゃあの化け物はボコボコにするし、聖杯は従前に使えるから俺は受肉できる。それで問題はない。もちろん最後にしんだら心残りはあるが、現界した時に最初に思った事は出来たからな」
「俺は……この先どうすれば良いんだろうな。初めて青春をして、魔術を普通に好きになれたわけだが」
「それこそマスターが自分で決めるべき事だな。俺のおすすめは旅に出る事だ。生前の俺はそうして世界を知った」
ま、俺には生前なんてないが……と隠れて自嘲するアサシン。気負わず弛まず投げ出さず、重い物とて軽く背負って緩やかに、そう生きるための知恵は伝えた。親から積み増された荷物と、無意識の怨念に滅ぼされない様にするための知識だ。
今まで何もうまくいった覚えがないジオに、成功体験を与えたい。そうすれば、もう少しは楽に生きられるだろう、というのがアサシンの思惑だ。故に、そのための準備は欠かさない。ジオが使うかもしれない礼装を選定する傍で、持ち込んだ宝具を全て取り出して磨き上げる。何をどうしたとしても、ジオにこの戦いをやり遂げて終わらせてあげるために。
◇
「アイビス、百鳥、私も手伝いますよ」
「セイ、じゃなくてアナも? またなんでさ」
事務所へと戻ってきていたアイビスと百鳥の元に、紫の長髪で少し背の高い女性がやってくる。
「姉様方に、貴方は恩の一つも返せないのかしら? って言われてしまいまして。魔力にも余裕がありますから、宝具も幾らか出せますよ」
金色に輝く剣を携えた彼女は、姉二人の命令のもと手助けにやってきたのであった。大荒れに荒れた前回の聖杯戦争を、姉二人に手を掛けることなく終末へと導いてくれたという恩義を返すためにやってきている。ここに来て巨大な戦力の追加はとても大きかった。
「めちゃくちゃ助かる。キャスターの阿呆がまたやらかしてくれちゃってるらしくてね。怪獣大決戦ができるのはとてもありがたい」
「そうですね……そんなに酷使するなら見返りに一晩寝てくれませんか? 今まで言ったことはありませんが、貴方は結構タイプなんですよ」
「節操無しめ。ま、別にいいけどさ」
「さてと、百鳥、悪いな」
「ううん、お母さんと一緒なら大丈夫。私たち、役に立ってる?」
親子二人だけになった事務所で、アイビスと百鳥とが向き合う。出会って早六年、酷い戦闘が予想される時に毎度行われてきたルーチンワークである。
「もちろん。すごく助かってるから。偉いぞ」
「えへへ……もっと褒めて褒めて」
アイビスが百鳥の頭を撫で、それを受けて百鳥は猫の様に頭をアイビスへと擦り付ける。お腹の辺りにぐりぐりとして、そのままひっくり返る様にアイビスの足と頭の間に収まろうとする。それは流石に無理があるため、適当なところでアイビスは百鳥を持ち上げて膝に座らせる。
「じゃ、がんばろうか。多分キャスターは逃したのでほぼ確実だけど。残してた痕跡もあの化け物のところにいた験者っぽい奴だけだしな」
「そうだね。うん、でもアレは倒さなきゃだから」
「そらそうだ。キャスター探索がやり直しで怠いだけだしな。実害が出ない分には問題はない」
◇
「流石に欺けぬか」
「そりゃそうでしょ、あの探偵だよ? 頭良すぎるし色々見え過ぎだよ」
「最も、我らは遥か遠方であるがな」
「南極はさすがに寒いにゃー」