Fate/Imagenary Friend 作:silika
再び人が集まった河川敷。ここに集まったのは総勢11人である。キャスターとそのマスター。ライダーとそのマスター。アサシンとそのマスター。セイバーのマスター。そして探偵とその娘、街の管理者、彼女たちの協力者。サーヴァントが三騎、受肉したサーヴァントが二騎、戦える魔術師が四人とやたらめったら強い一般人が一人。
「お疲れ、ターシャ」
「八時間は保たせるつもりだったから、まだ余力はあるよ。アイビスがあのキャスターの分身を仕留めてくれたお陰で抑えるだけなら楽だったわ。ところで本体は?」
「最初っからこの街には居ないらしい」
「時計塔にでも流しておくか……」
アイビスがターシャを労いつつ、状況を聞く。大体六時間ほどの時間が経っているが、ほぼ変化は存在していなかった。
「正面は私が受け持ちます。私の得意分野なので。その隙に皆さんは攻撃をしてください」
アナがそう伝える。彼女が黄金の剣を振るうと、立ち所に異形の怪物たちが生まれ落ち、アナの指示を待っていた。
「……貴方は一体何者なんですか?」
「そうですね……前回の聖杯戦争の生き残り、でしょうか。受肉して過ごして居たんですけどね」
唐突に現れたサーヴァント級の巨大戦力に警戒感を隠せないノエル。だがそれを抑えて飲み込む、現状戦力は多ければ多いほど良いのだから。
「んじゃ予定通りに行こうか。俺があの化け物と聖杯との繋がりを現出させた上で流れを斬るから」
「私がそれを物理的に切り落とす。おーけー、任せなさい」
ジオが詠唱を始める。切断する対象が概念的には分かっていても、目で見えない限りは扱えない。故に、まずは流れを表出させる魔術を使う。
「ああ、そうだろうな。情報多過ぎだぜ……。
第一の情報体である化け物と第二の情報体である聖杯、その間の流路の三つが別々の色に光り輝く。そうして現出した事実は、化け物の心臓部と思しきところに聖杯が埋まっているという事実であった。
「いや、どうやって切り落とせと」
「…………クソが、失敗じゃねえか……」
ジオの意気があっさりと潰れる。何か出来るかもしれない、成せるかもしれない。そういう希望をこの聖杯戦争で持った矢先の物であったがために、それはより大きな失望へと転化する。
「————いいや、失敗になんぞさせねえ、キャスター、それから百鳥! 俺が穴を開けるから聖杯を奪え!」
「任せて」
「僕はそういうのは苦手なんだけどね!」
だが、とアサシンが立ち上がる。この中で最大の速度を持つ百鳥に声をかけ、準備を始める。
「何を……アサシン?」
「任せておけ、マスター。良いから見てろ、偽物だって本物になれるってことをな」
アサシンが聖剣を構える。
「ああ、例えどれだけ俺がカッコをつけたところで、所詮はゲームの生まれ。つまるところが人の思う夢の欠片さ。そうさ、全ては空想、夢物語だ。どこまで行こうと、俺は勝つという結果が先にある空虚な存在だ。そんな俺だが、それでも成したことの一つはあるし、マスターに頼られた事実も変わらねえ! ただ一つ、現実たれと思うものを広げよ。真剣抜刀‼︎」
構えた聖剣が力を増すアサシンの呟きと共に崩壊して、見窄らしい、使い込まれた事のわかる傷だらけの、ありふれた剣へと零落する。
「おい、アサシン、聖剣は⁉︎」
「今必要なものは外敵を討ち滅ぼす聖なる剣じゃないからな」
「人の夢より生まれし空想の英雄、人より夢を奪いし現実へといざ参らん!『
ありふれた、使い古された鉄剣が光を帯び、振り下ろされたところから伸びたビームが化け物の心臓部へと直撃する。その剣が聖剣として振る舞う時より遥かに弱い光を放つそれは、あまりにも儚げであった。だが、正しく心臓部へと直撃した光線は過たず肉を穿ち、化け物の心臓周辺の身体を完膚なきまでに破壊し、剥離する様に聖杯を浮かび上がらせた。
「———悪性をここに。私たちは炎、雨、力。それは分たれ私たちの元に。『解体——』」
心臓が浮き上がったところを、キャスターによって加速された百鳥が強襲し切り離す。あくまでも物理的に心臓から引き剥がしただけであり、接続は切れていないため化け物の体そのものは即座に修復され始める。
「マスター! 早く! お前の仕事はここからだ!」
「——ああっ、悪い!
聖杯と化け物との間の回線が遮断されたことによって、その間に敷かれていた輝きが薄くなる。だがまだ切断は出来ておらず、繋がりは残り、再び接続を回復しようとする。
「本当に惜しいけど、一度打てた刀は二度打てる。道具には使わねばならない時がある。寿命を捧ぐ、未来を捧ぐ。只今此処に切断を! 『乖離』‼︎」
神へと捧げてそして帰ってきた刀。礼装として作った刀に神を宿らせたそれは、現代のものにあってEランクではあれど、宝具に匹敵し得る神秘を持った。その神秘を只一度に放出する術式を展開する。
その剣は過たず接続を切り落とす。一太刀に全てを掛ける仕様上、使用した——今まで最上の出来栄えであった——刀は破壊され、砕け散る。
「ここからが本番です。気を抜かないでください」
達成感をために力が抜けたジオと榛名に、作戦を成功させるために少々無理をして霊核に傷が入ったアサシンの三人に声を掛けるアナ。あくまでも無限の魔力供給源を剥がしただけであり、再生能力も元々持っている魔力も別になくなってはいない。その証左に、速度こそ落ちてはいるが、心臓周辺の修復も既に終わっていた。
化け物は数多の触手に加えて、黒く染まってはいるが、ランサー、バーサーカー、アーチャー、セイバーと思しき存在を呼び出していた。それに正面から対峙するアナはと言えば、黄金剣で生み出した怪物たちによってシャドウ・サーヴァント——黒く染まったサーヴァント擬き——を相手しつつ、本体をキャスター、ライダーと並んで迎撃していた。
「ええ、さっさと詰めてしまいましょう。ライダー、行けるかしら?」
ノエルがライダーへと問う。ライダーの宝具発動条件は少々特殊なものであり、出来るかどうかがかなり重要であった。それに肯定で返すライダー。そのまま、二つ目の宝具を起動する。
「トリガー、
仮面ライダーらしく、取り出したガジェットをベルトに差し込んで起動する。何段階かの変身を超えて、バッタを基調とした肌に張り付く様な服に蟷螂を始めとした昆虫類をモチーフとしたものを中心とした装飾が数多く付いた、最終決戦仕様とでも言うべき装いへと切り替わった。
「時間が足りないからな。速攻で行かして貰う」
今まさに最前線を張っているアナとスイッチして最前面へと躍り出る。襲いかかってくる触手を殴り返すと、その部位が破裂する。胴体を殴りつけるとやはり化け物の身体が破裂していく。
圧倒的な暴によって戦闘を優勢へと持ち込むが、一方でライダーは焦ってもいた。
「ライダー、落ち着く必要はないです。そのままフルスロットルで駆け抜けてください。必要だというなら令呪も三画全て使います」
全部出し切って良いというお墨付きを得たライダーはさらに加速して、暴風の様に襲い掛かる。キャスターは戦法をライダーの支援中心に組み替え、アナは化け物の生み出してきたシャドウ・サーヴァント相手の殲滅へと移行する。
化け物が心臓部を中心に多分に破壊されたのを見て取ると、ラストスパートへと入る。戦線へと復帰したアサシンも宝具を構え、キャスターも宝具の準備を始める。そのためのわずかな時間を稼ぐために、榛名が前へと躍り出る。
「勿体無いからやりたくはないけどね! 剣は消耗品だ、使わなきゃ損!」
最初に持っていた剣は既に砕けているため、虚数ポケットから追加の刀を取り出して切り掛かる。ただ普通に振るうだけでは少々傷がつく程度であるため、一本目と同じようにその剣の未来を捧げて威力を上げる。代償に刀は代償に砕けるが、その頃には更なる一本を取り出しているため問題はない。
正面から触手を伸ばしても意味がないことを理解しているその化け物は、アナに狙われない程度に離したところから、榛名の背面へと攻撃の手を伸ばす。
「流石にそれは見えてんの。『解錠』!」
背中から襲い掛かる攻撃は、振り向いて刀を振るうにはあまりにも速いものであった。だが、榛名が一言詠唱すると、空間に裂け目が生まれると共に刀が五振ばかり射出され、狙ってきた触手を大地へと縫い止める。そうして射出された刀も手に持ったそれと同様に、一撃加えた時点で砕け散った。
刀を浪費して、神代でも上位クラスのキャスターが生み出した真性の化け物を抑え込む。視界に映る怪しい動きをする触手全てに刀を撃ち込み、自身はその剣術で正面から切り込んでいくその派手な動きは、この聖杯戦争の中で見た英雄たちの動きをしっかりと学習した証左であった。
「あと二分は保たせられる!」
「疲れたなら言ってください。私がスイッチしますので」
さらに数が増えたシャドウ・サーヴァントたちをも危なげなく生み出した怪物たちを使って迎撃しているアナは、榛名へと声を掛ける。あくまでもサポート、手伝いというのが彼女の認識のため、榛名が前へ出るならと任せてはいるが、必要ならばいつでも出る準備をしているのである。
「魔法陣128面
「———これは未来を拓く戦いである。敗北したとて、世界に影響はないであろう。だがそれは一人の若者の未来を断つ行いである。それは英雄足るなれば許されざることである。故に、ここで敵を撃つべし」
キャスターが魔法陣を幾重にも展開し、一つの砲門となる様に一つに束ね、魔力を収束する。アサシンが見窄らしい剣を構え、英雄とは立ち振る舞いであると
「敵性体分析。解析終了。対応プラン確定。クアッドソード変形」
殴り合いを榛名と並んで継続しながらも、ライダーの持つ剣が変形し、ブースターの様な形となって背部へと移る。
「令呪も残す価値はないわね。じゃあ単なる魔力リソースとして使えば良いか。———門よ開け! 敵を穿て! 『
ライダー、アサシン、キャスターの宝具の準備が終わったのを見てとった榛名は、万が一にも防がれない様に、逃げられない様に、自身は高速で対比しつつも、巨大な魔術を展開する。結局使わずに残っていた令呪三画の魔力を全て消費し、複数の虚数ポケットを開くと無数の刀を射出する。千を超える刀が一様に、自壊するほどの威力で飛んでいく攻撃はその化け物の肉を抉り皮膚の内を露出させ、大きなダメージを与えた。
「穿て、『
「とっておきだよ、『スターフォール・ブレイカー』!」
「『マキシマム・ブレイク』『ライダーキック・トワイライト』」
アサシンの剣の振り下ろしと共に光線が心臓部へと飛んでいく。別方向からはキャスターが放った光弾が、魔法陣を一つ通るごとに加速し巨大化してその化け物へと飛んでいく。それらが直撃した直後、今度は宙に飛び上がっていたライダーがブースターの加速を込みの飛び蹴りをする。三つの宝具が直撃した直後、その化け物を中心とした爆発が広がった。