Fate/Imagenary Friend   作:silika

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第四話 一方その頃

——同日、深夜

 「ランサー、調子はどうだ?」

 「ああ、大丈夫だ」

 令呪を持った、熊のような大男と、それよりさらに大きい甲冑の男。彼らの前には、人間の死体が転がっている。四肢と頭部が胴から切り離され、胴は胴で、中心部に穴が空いていた。

 甲冑の男、すなわちランサーである者を連れた大男なマスターは、そのまま立ち去った。

 

 その数十分後、黒い瘴気を身に纏った人物が、もう一人の人間を連れてその場を訪れる。

 「ふむ……魔力の残滓があるな……。バーサーカー、私が検分を終えるまでは抑えておけ」

 マスターがその死体を検分する間、瘴気を纏った人物はただひたすらに佇む。マスターは、手早く検分を済ませると、早急にその場を立ち去った。その場に残された死体の皮膚は、ところどころ黒く変色していた。

 

 さらにその一時間後、死体の転がる場所へと二人の人間が訪れる。一人は黒い髪に、狐の面を被っており、もう一人は、銀の髪と翠の瞳をしている。

 「なあ、私たちはちょっと夜の散歩に出掛けただけだよな?」

 「うん、おかあさん」

 「じゃあ、なんでこんな死体に行き当たるんだろうね」

 銀髪の少女は、狐面の女性にお母さんと呼びかける。その割には、あまり似つかぬ容貌をした二人組である。彼女たちは、直ぐにその場を立ち去って、その足で警察署へと向かった。探偵の仕事として、この事件を捜査するためである。

 

 かくて、今召喚された七騎とそのマスター以外の勢力もまた、聖杯戦争への介入を始めた。

 

 ◇

 

 朝というか、深夜というか、そういう時間に来た襲撃をどうにかしたりしても、学校はお構いなしに来る、ということに私は気付いた。いやだー! 学校行きたくなーい! おうちに引きこもらせろー! ノエルちゃん家だけど、そんなことは関係ないもーん!

 「偽風邪(仮病)で休むか? 私は学校に行くけど」

 ノエルちゃんのばかー! わたしを置いてくなー! とノエルちゃんの腰に抱きついて抗議する。キャスターの目なんて気にしてられない。ノエルちゃんを引っ張って頑張ってお布団に引き摺り込む様に頑張る。でもノエルちゃんに力で勝てるわけなかったので、引き剥がされて転がされた。

 「誰も置いてくって話はしてない。ほら鞄を準備しろ」

 そう言いながらも、ノエルちゃんはわたしに制服をちゃきちゃき着けていっている。手際があんまりに良いせいで、実はわたしは何もしてないのだ。ノエルちゃんのお家にいると駄目人間一直線な気がするんだけど、どうにも離れにくい。ノエルちゃんの優しい表情になんかすごい引き寄せられる、吸い寄せられる。きれい、ちゅき。

 

 朝、教室まで手を繋いでいく。前は少し変なモノを見る目で見られたけど、もう一年くらいずっとこうだから、はいはいまたやってるよ、くらいで済まされている。むしろ、最近はポツポツと休みが増えてるせいで減ってるくらい。風邪が流行ってるとも聞くけど、ニュースとかじゃ見たことないんだよね。

 ノエルちゃんの手は握り心地が良い。ずっと握っていたくなる。にぎにぎ、にぎにぎ、にぎにぎ。やっているとノエルちゃんにいきなりにぎにぎされた。

 「朝からお熱いことで」

 友達の一人に声を掛けられる。別に今日は暑くないと思うんだけど……

 (そういうことじゃないんだよ)

 キャスターになんか言われてるけど気にしない、気にしないのだ。してないったらしてない。

 

 昼、私たちの学校では給食は牛乳と袋入りのコッペパンだけ。なのでおかずは自前で調達する必要があるのだ。私調達したことないけど。気付いたらノエルちゃんに餌付けされてたし。

 今日のオカズはハンバーグ……え? ずっと一緒にいた気がするんだけど、ノエルちゃんいつ作ったの? 

 「やぁ、君ら、今日も仲良いね」

 声を掛けてきたのは、友達の一人。高橋(たかはし)(けい)、性別は……どっちだっけ? 本当に色々な人と仲良くしてる凄い人だ。あと同い年か怪しい。

 

 「……それは何か失礼な事を考えてる面だ。留年したことはないぞ」

 らしい。……いたっ! ノエルちゃんに手の甲をつねられた。外向きの皮を被った顔で叱られる。でも、高橋も悪いと思う。高校三年生くらい大人びているし、制服はスカートとズボンを

 「あんまりそういうのは駄目ですよ」

 

 「で、その手の痣はどうしたんだ?」

 高橋に令呪について聞かれる。なんて答えれば良いんだろ。わたしはばかだからわかんない。だからノエルちゃんを見ると、すぐに嘘を言い始めた。

 「ある日朝起きたら何故かついていた、としか言えません。何なのか気にならない訳でもないですけれど……」

 「実害は無い感じか、理解した」

 ド低音な声、結構がっしりした体、綺麗に短く切り揃えられた黒髪の子がこんなセリフをいつも使ってたらカッコ良くて仕方がない。噂ではもう何人もに告られたとかなんとか聞いた。好きな人とか居ないのかな……。

 

 その日の放課後、ノエルちゃんに連れられて喫茶店に来ていた。『渡鴉(わたりがらす)』という店名で、なんとなくレトロな気がした。

 「……インベーダーゲーム内蔵テーブル、だと」

 なんとびっくり、昔懐かしなゲーム内蔵テーブルなのだ。なんでそんなのが置いてあるんだ、この店。すごいぞ、本当にすごいぞ。ノエルちゃんを見ると、ノエルちゃんもびっくりしてたから、知らなかったんだろうね、うん。それにしても楽しい。レトロゲームでしか味わえない楽しみというものがあると思う。

 

 「注文は決まった?」

 メニューそっちのけでマリオ———筐体の制作時期的にはまだドンキーコング———をプレイしていると、店員に声を掛けられた。……あれ、敬語じゃない、というか知ってる声?

 「高橋さん、ここで働いてるんですか?」

 給仕(メイド)服……? やばい、すごい可愛い。あれ、でもここってコスプレ喫茶だったのかな? ついついきょろきょろと店内に目を回すけど、他に給仕服の子はいない。

 

 「あー、これは拙の趣味だ。気にするな」

 趣味……? 趣味……コスプレ趣味、メイド、夜のメイド、夜の給仕……セフレ?

 「おい待て、その顔はアレだな、拙が援交をやってると思ってる面だな! それはヤメロ」

 高橋も読心術の使い手らしい。どういうカラクリなんだろう。 ノエルちゃんから酷くじとじとした目で見られた。あれは……そんな失礼なことばかり考えちゃ行けません、みたいな?

 

 ぎゃあぎゃあ騒いでると、高橋がお盆で殴られた。殴ったのは短く切り揃えられた銀髪に、綺麗な翠の眼ををしているお姉さん。ほわ……

 「あ、ごめんなさい、百鳥(もず)先輩」

 先輩、ってことはここで長く勤めてるのかな。可愛い、綺麗。 ノエルちゃんに頬をつねられる。そっちを見たら、怖い顔で笑ってた。百鳥先輩を眺めるのがアウトなんだろうか……? じゃあ逆にノエルちゃんを眺めることにしよう。

 

 ◇

 

 ノエルと雨子の二人が去った後、喫茶店にて。百鳥は一人呟いていた。

 「聖杯戦争のマスターが二人……仲良くできるてるから同盟中」

 今店に来ていた二人が、今行われている聖杯戦争のマスターであったためである。彼女の考えることはそれだけには留まらない。

 「聖杯戦争だと……圭には暇を出した方が良い? どうしよう。私たちだけで決める訳にもいかないよね」

 一人しかいないのに、一人称を複数形で嘯く少女は、そのまま手を止めずに思考を続ける。手は一流のお茶汲み職人として動くが、特に周りに注意しているようでもないその様は、さながら芸術の様ですらある。

 

 「圭、明日から店長代理代理を任せても大丈夫?」

 百鳥は思考を纏めると、それに基づいて高橋に質問する。高橋からしてみれば、唐突に無理難題を押し付けられた様なものである。

 「へ、いやいや、無理、無理ですってば! 拙のお茶は不味いです!」

 とってつけた様な丁寧語で全力で抗議する高橋。彼/彼女の自認においては、自身は酷く不器用な役立たずなのである。その役立たずの自分が使役されるならいざ知らず、自分で仕切るのはあまりにも恐ろしいことだった。

 

 「そうでもないと思うけど、無理なら仕方ないね……明日から臨時休業かな」

 「みっ⁉︎」

 百鳥の呟きに、高橋は奇天烈な鳴き声をあげる。強い衝撃を受け、酷く動揺した時にま行で鳴くもの、それが高橋圭である。学校で作っているキャラとは相反する様な性質が飛び出している。彼/彼女にとって、この喫茶店はとても大事な場所であり、そんな声で鳴くほどに驚いてしまうのであった。

 

 「……分かりました、やりますやります」

 最終的に、圧に押し負けた高橋は店長代理代理をすることを承諾してしまった。代わりにメニューは削減して、自分でできる範囲に留めることを条件にした。『渡鴉』は店長の趣味で経営される店であるため、その辺は好きに出来るのであった。

 

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