Fate/Imagenary Friend 作:silika
「おはよう、雨子」
今日も今日とてノエルちゃんに叩き起こされる。うん、良い朝だ。見てるだけでお腹が減ってくるような眩しい太陽だ。というわけでおやすみ。
「ぐはっ!」
痛い、痛いよノエルちゃん。いくら無視して寝ちゃったからって、鳩尾に肘を叩き込まなくたって良いじゃんかよー!
「あーん」
「あーん」
更にもう一回寝ようとしたらノエルちゃんにキレられて高速で着替えさせられた。今は朝ごはんをあーんでやってる状態。ほとんど私は雛鳥みたいなもんだよねこれ。私は真っ当な人間だもん。
「ああ、そうだ。昨日の晩ね、ランサーと会ったんだわ」
ふえ? ……えーと、え? いつの間に? 私、置いてかれた?
「あーこら、ほら泣きそうにならない。 ちょっと散歩に出たら遭遇しただけだからね?」
そっかぁ……。なら大丈夫だねきっと。うん、実際ノエルちゃんは怪我してたりしないし、疲れても無いから。
朝、学校に行く。最近二週間くらい、ちょっとずつ休みの人が増えてる。主に町の北側に住んでる人がよく休んでる気がする。いやでも、ノエルちゃんの家も北側だし、気のせいかな。
「皆さん、季節外れの風邪が流行っているようなので、気をつけて下さいね?」
……よし、関係ねーな! 馬鹿と天才は紙一重と言うし、私は天才だから風邪なんて引かないぜ。 って痛い痛い痛い、ノエルちゃん待って待って待って、痛いからぐりぐりやめてー!
さうは言っても授業は続く。確か、聖杯戦争にかかわることは全部内緒、だからどんな事が起きても事故とか適当な事件とかで片付けられる、らしい。
「最近、爆発事故が多発しているので、みなさんも火を使う時には気をつけてくださいね?」
と、理科の先生。……爆発ってそんな簡単にするものだっけ……? え、違う? 爆発じゃなくて、サーヴァント同士の戦闘の結果? まさに言っていた、隠蔽結果がこれなのか。本当に誤魔化されてる……。すごいね……。
「これ見てくれる?」
高橋が私たちに1枚の写真を見せてくれた。……え、グロい。いやグロいグロい。バラバラ・穴開き・沢山の黒いシミのついた死体って……。コラ?
「……黒死病の患者のバラバラ死体かしら……?」
どっかで見たことあると思ったら……教科書だ。歴史の教科書の原爆のページの死体に似てる。腐ってたり、染みてたり、変な形になってたり。
「そ、おかしいよね。意味が分からないくらいにおかしいよね、この死体」
「はい、そうですね。現代日本において、黒死病は流行っていませんし、よしんば流行ったとしても即病院送りですし、ましてやこんな無惨な死体にはなりません」
そっか、確かにそうだね。うん。わざわざ追加で殺した跡が残るような死体が出てくるのは変か……。でもなんでなのかはさっぱり分からないけど。
そんなことやってると、先生がやってきて授業が始まっちゃった。話の続きはお昼かなー?
◇
「さて、さて、さて。マッピングしよっか」
某所にて。狐面を被った黒髪の女性が、地図上に情報をプロットしていた。この二週間に起きた変死事件や爆発事故などのマッピングである。
「例の死体の在処が、町の北部のここで……」
「サーヴァント同士の戦闘はえっと、この5個かな?」
「ありがとね、百鳥」
その傍らには銀の髪に翠の目をした少女が佇み、共に作業を進める。手元には依頼票で始まる紙があり、何かの仕事をしていることがわかる。
「……うん、やっぱ聖杯戦争ってクソだわ。魔術師という在り方も大概傍迷惑だけど、これはそれ以上だよ」
「うん……、駄目だよ。殺しちゃっても良い? おかあさん」
「おばか。殺しは手段として論外。私たちはこの街を愛する街の探偵。事件を解決するためには頑張っても、事件を起こしちゃ駄目でしょうが」
わかった、と百鳥は頷く。頷きながら、ナイフを研ぎ始める。邪魔なレベルで大きいナイフと、ナイフのように扱われている肉切り包丁の合計四本を、まさにこれから使うんだよと言わんばかりに研いでいる。
「よし終わり。順番に整理していくか。第一陣営、セイバーを名乗る青い聖剣使いと他所からやってきた魔術師ジオ・ミラダンテ。ライダー&キャスター陣営を襲撃した以外に目立った行動はない。多分犯罪も他にはやってないね。第二陣営、アーチャーを名乗る和装の剣士と少し向こうの街の魔術師犬塚榛名。ここも目立った行動はない」
黒髪の女はそのままメモを付け足していく。百鳥はそれを見ながら、調べられた限りのマスターたちの情報を引っ張り出していく。
「第三陣営、ランサーを名乗る甲冑の大男と他所から来た魔術使いカント・アリギーリ。今の聖杯戦争で一番好戦的な陣営。わかってる範囲でも殺人六件。ま、最悪ね。問題なのは、手段が魔術なせいで話を警察には持ってけないんだけど。日本のお巡りさんに魔術師の相手は荷が重い」
「第四陣営、ライダーを名乗る昆虫モチーフのスーツを着た人間と
「からの第五陣営、ライダーを名乗る軍服の男と、魔術を齧った傭兵ルカ・モンテゴ。おそらく現在で唯一、全ての陣営と殴り合った組。現状、少なくとも聖杯戦争関連では犯罪などは特に犯してないあたり、ただの戦闘狂である公算大。聖杯戦争という儀式に対しては一番真摯じゃないかな。ただライダーを名乗る組が二組あるのは何なのか。第六陣営、喪服のような装いで常に黒いオーラを纏ったバーサーカーと外部の魔術師カシウス・イームーロン。こいつらは一番分からん、取り敢えず、前に発見した死体が黒ずんでいたのはコイツらが原因」
そうして纏めていると、赤髪の少女がやってくる。
「どお、アイビスちゃん」
「ターシャ、どうしたの?」
「ん、アナスタシアか。ちょいこれ見て欲しいんだよね」
狐面の女性……アイビスはターシャを手招きすると、プロットした情報を見せる。それを見ていたターシャの顔色がドンドン悪くなっていく。
「これマジ? 私なーんも知らんのだけど」
「おいこら管理人。オーケーオーケー、じゃあこの術式がどこから来たのかも調査対象か……」
「うん、ごめんね……」
土地の管理人……今まさに聖杯戦争が行われている衣川町の魔術的な意味での管理人は、このターシャと呼ばれた人物とその妹の二人である。前回までのこの町での聖杯戦争の仕掛け人とでも言うべき立場であった人物でもある。
「さて、うんじゃ聞こうか、衣川の管理人にして魔術師アナスタシア・ストラトス。あなたの依頼は?」
アイビスが、自身の理念に基づいて、魔術師であるターシャことアナスタシアへと問い掛ける。それは、自分に何をして欲しいか尋ねる問いであり、相手にどう在りたいかを決めさせる問いである。
「探偵アイビス、衣川の平穏をお願いします。手段は問いません。この聖杯戦争は私たちとは無縁の儀式であり、街の平穏を乱す物です。かつてそれを主導した私たちの言えることではありませんが、止めてください」
それを受けたターシャは、自分の依頼を話し、頼む。かつて街の平穏を乱す側であったことを棚上げして、管理者として一番それを遂げられる人物へと委託する。
「承りました、っと。ま、そうは言っても私魔術師じゃないからね、ターシャも働くのは確定だよ」
そういうと、壁に引っ掛けた帽子を頭に乗せ、百鳥を引き連れ表へ行った。
サーヴァントを持たない陣営、探偵陣営参戦!
ところでこの聖杯戦争、イレギュラー無しの基本七騎が召喚されてます。あれ……おかしいですね? つまりは誰かがクラスを詐称しています